JIS T 8150:2006 呼吸用保護具の選択,使用及び保守管理方法 | ページ 2

4
T 8150 : 2006
c) 作業の動作,頻度及び移動範囲を解析し,呼吸用保護具が作業を妨害しないこと及び作業によって呼
吸用保護具の性能が低下しないことを確認する必要がある。
d) 呼吸用保護具使用の計画は,考えられる工程の日内変動及び日間変動を予測し,工程内で実施される
作業内容に対して適合するものでなければならない。そのために,必要な種類の呼吸用保護具を用意
し,作業内容に応じて使用することが必要である。
4.2.2 作業場などの条件 作業場などの条件は,次による。
a) 作業場などの通風,換気設備及び作業環境評価結果を調査し,環境の有害物質の種類及び濃度変動の
最高値に対して防護できる呼吸用保護具を選択しなければならない。
b) 作業場などの狭あい(隘)さ及び閉鎖性は,酸素欠乏を生じる原因となる可能性があり,また,有害
物質の空気中濃度が高くなりやすいことを考慮して,この危険に対応できる呼吸用保護具を選択しな
ければならない。
c) 作業区域にある行動上の障害物を調査し,作業中に使用する送気マスクのホースの管理など,呼吸用
保護具の着用者の行動に伴う危険を防止するための対策を確定しなければならない。
d) 作業場などの温湿度によって,ろ過式呼吸用保護具のフイルタ,吸収缶などの有効時間が変化する場
合があること,また,呼吸用保護具の着用者の生理的な負担が変化することがあることを考慮して呼
吸用保護具を選択しなければならない。
e) 作業場などの照度,騒音,視覚上の障害物などによって,呼吸用保護具の着用者の行動に伴う危険を
防止し,意思の疎通を妨げないような呼吸用保護具を選択しなければならない。
f) 高気圧下で作業を行うときは,高気圧下の使用に適した呼吸用保護具(5.8 参照),繊維ロープ,その
他非常の場合に作業者を避難させ,又は救出するために必要な用具を備えなければならない。
4.2.3 取扱う化学物質の種類及び有害性 取扱う化学物質の種類及び有害性は,次による。
a) 作業場などで取り扱われる原材料,中間体,半製品,最終製品及び副産物として,実際に存在する物
質と存在の可能性がある物質とを調査する必要がある。
b) ) において,存在する物質と存在の可能性がある物質とのばく(曝)露限界濃度として勧告されてい
る値を調査する必要がある。もし,これらの値が公表されていない場合には,有害性に関する情報を
広く収集し,ばく(曝)露による影響を推定して,その影響から着用者を防御することができる呼吸
用保護具の種類を選択する必要がある。
c) 呼吸用保護具の対象とする物質の濃度の変動を考慮し,変動幅の最高値に対する濃度倍率から呼吸用
保護具を選択する必要がある。
4.2.4 非定常作業,緊急時の作業又は避難脱出に用いる呼吸用保護具
a) 非定常作業及び緊急時の作業 非定常作業及び緊急時の作業に使用する呼吸用保護具は,次による。
1) 作業場などに存在する有害物質の種類,濃度などを推定することができない場合 次のいずれかの
呼吸用保護具をあらかじめ準備しておかなければならない。
− 全面形面体をもつプレッシャデマンド形空気呼吸器
− 全面形面体をもつ陽圧形の圧縮酸素形循環式呼吸器
− 全面形面体をもつプレッシャデマンド形複合式エアラインマスク
− 全面形面体をもつ緊急時給気切替警報装置付きプレッシャデマンド形エアラインマスク
2) 作業場などに存在する有害物質の種類,濃度などがあらかじめ推定できる場合 作業場などに存在
する有害物質の種類,濃度などがあらかじめ推定できる場合 4.1.1及び4.1.2 b) によって,適切な
呼吸用保護具を選択しなければならない。

――――― [JIS T 8150 pdf 6] ―――――

                                                                                              5
T 8150 : 2006
b) 避難脱出 避難脱出に使用する呼吸用保護具は,次による。
1) 酸素欠乏が想定される場合は,あらかじめ自給式の避難用呼吸用保護具を準備しておかなければな
らない。
2) 目への障害が想定される場合は,全面形面体をもつ避難用呼吸用保護具又は目の保護も考慮された
避難用呼吸用保護具を準備しておかなければならない。
3) ろ過式呼吸用保護具の場合は,存在が想定される有害物質について有効なものを準備しておかなけ
ればならない。

4.3 着用者の条件

 着用者の条件は,次による。
a) 年齢,体力などの肉体的条件を考慮し,呼吸用保護具の着用による負荷が少なく,呼吸抵抗が作業者
にとって耐えられるような呼吸用保護具を選択する必要がある。
b) 呼吸用保護具と同時に めがね,安全帽,耳栓などの個人保護具を使用する場合には,これらの個人保
護具と併用することができる呼吸用保護具を選択する必要がある。
c) 呼吸用保護具を使用した経験がないか,又は経験が浅い場合には,安全に使用できるような種類を選
択しなければならない。
d) 使用者のひげ,もみ上げなどで,面体の顔面への密着性を損なうおそれのある場合は,次のいずれか
による。
1) 面体形以外の呼吸用保護具を選択する。
2) 面体形呼吸用保護具を選択する場合は,面体の顔面への密着性を損なう要因を取り除かなければな
らない。
e) 使用者は,着脱法,安全な装着法,管理方法などを習得している種類の呼吸用保護具を選択する必要
がある。使用者が,上記について習得していない場合は,4.7の管理者による教育と訓練とを受ける必
要がある。

4.4 呼吸用保護具の防護性能による選択

4.4.1  基本的な考え方 環境中の有害物質の濃度がばく(曝)露限界濃度より高い環境では,着用者の吸
気中の有害物質の濃度をばく(曝)露限界濃度以下に低下させることができる呼吸用保護具を選択するこ
とが必要である。
そのために,作業場などの濃度倍率より高い防護係数をもつ呼吸用保護具を選択する必要がある。濃度
倍率が不明な場合には,IDLH環境とみなして選択する。
4.4.2 防護係数の求め方 防護係数を求めるには,次の方法による。ただし,実測で得られた防護係数は,
着用者個人の測定時の値であり,実作業時の防護係数は,より低下する可能性があるので,十分な安全性
を考慮しなければならない。
a) 試験用コンタミナンツを用いる場合 試験用コンタミナンツを用いる方法は,次による。
1) ろ過式呼吸用保護具
1.1) 試験用コンタミナンツを除去できる高性能フィルタを取り付けたものを着用して試験用コンタミ
ナンツを分散した環境内に入り,面体等の内側及び外側の試験用コンタミナンツ濃度を測定し,
面体等の漏れ率を求める。
備考 面体等の漏れ率は,フィルタからの漏れがないことを前提としているため,次の漏れ率を総合
したものとみなすことができる。
− 着用者の身体と面体等とのすき間からの漏れ率(%)
− 排気弁,弁座部及びその他各部のすき間からの漏れ率(%)

――――― [JIS T 8150 pdf 7] ―――――

6
T 8150 : 2006
1.2) 実使用されるフィルタの透過率は,製造業者が提供する情報による。
1.3) 防護係数は,次の式(1)によって求める。
100
PF (1)
Lm Lf
ここに, PF : 防護係数
Lm : 面体等の漏れ率(%)
Lf : フィルタの透過率(%)
2) 給気式呼吸用保護具
2.1) 給気式呼吸用保護具を着用して実使用条件で作動させ,試験用コンタミナンツを分散した環境内
で面体等の内側及び外側の試験用コンタミナンツ濃度を測定する。
2.2) 防護係数は,次の式(2)によって求める。
PF Co (2)
Ci
ここに, PF : 防護係数
Co : 面体等の外側の試験用コンタミナンツ濃度
Ci : 面体等の内側の試験用コンタミナンツ濃度
b) 大気じんを用いる場合 大気じんを用いる方法は,次による。ただし,詳細は,附属書による。
1) ろ過式呼吸用保護具
1.1) 大気じんを除去できる高性能フィルタを取り付けたものを着用し,面体等の内側及び外側の大気
じん濃度を測定し,面体等の漏れ率を求める。
備考 面体等の漏れ率の解釈は,4.4.2 a) 1) の備考に規定する内容と同様である。
1.2) 実使用されるフィルタの透過率は,製造業者が提供する情報による。
1.3) 防護係数は,次の式(3)によって求める。
100
PF (3)
Lm Lf
ここに, PF : 防護係数
Lm : 面体等の漏れ率(%)
Lf : フィルタの透過率(%)
2) 給気式呼吸用保護具
2.1) 給気式呼吸用保護具を着用して実使用条件で作動させ,面体等の内側及び外側の大気じん濃度を
測定する。
2.2) 防護係数は,次の式(4)によって求める。
Co
PF (4)
Ci

――――― [JIS T 8150 pdf 8] ―――――

                                                                                              7
T 8150 : 2006
ここに, PF : 防護係数
Co : 面体等の外側の大気じん濃度
Ci : 面体等の内側の大気じん濃度
c) 実測しない場合 呼吸用保護具を着用した状態で防護係数を実測しない場合は,付表2に示す指定防
護係数による。

4.5 環境条件によるろ過式呼吸用保護具の選択

 環境条件によるろ過式呼吸用保護具の選択は,次によ
る。
a) ろ過式呼吸用保護具は,酸素濃度が18 %未満の場合は,使用してはならない(4.1参照)。
b) 防じんマスク及び電動ファン付き呼吸用保護具(粒子状物質用)は,対象粒子が固体の場合には,固
体粒子専用又は液体粒子兼用のフィルタをもつものを使用することができる。対象粒子がオイルミス
トなどの液体粒子を含む場合には,液体粒子兼用のフィルタをもつものを選択する必要がある。
c) 防毒マスクは,対象有害物質がガス又は蒸気だけの場合には,対象ガス又は蒸気を除去できる吸収缶
で防じん機能のあるもの及び防じん機能のないものを付けたものを使用することができる。
しかし,ガス又は蒸気と粒子状物質とが共存する場合には,対象粒子を除去できる防じん機能付き
吸収缶を付けた防毒マスクを選択する必要がある。

4.6 法令による呼吸用保護具の選択

 労働安全衛生法及び関連法令,消防法,船舶安全法などの法令に
よって特定の呼吸用保護具の使用が規定されている場合には,その規定による。

4.7 呼吸用保護具使用の計画

 作業場などにおける呼吸用保護具の使用にかかわる管理者は,4.24.6
について,事前に必要な調査を行い,呼吸用保護具使用の計画を作成しなければならない。また,呼吸用
保護具使用の計画の管理者は,使用者に対して呼吸用保護具の着脱,安全な装着法,管理方法などについ
て教育と訓練とを施すことが必要である。さらに,必要な呼吸用保護具を常備し,常時使用できる状態に
管理しなければならない。

5. 使用方法

5.1 呼吸用保護具の機能,特徴及び使用上の注意事項

 呼吸用保護具の機能,特徴及び使用上の注意事
項は,付表3に示すとおりとする。

5.2 使用前点検

 呼吸用保護具を使用するときは,必ず製造業者が示す方法によって面体等の接合部,
面体等とろ過材又は給気源との接続部の気密性,弁類の作動性,各部の劣化の程度などについて使用前点
検を行わなければならない。点検方法の詳細は,製造業者の使用説明書による。面体形の呼吸用保護具を
選択する場合には,フィットテストができる構造のものを選ぶ必要がある。

5.3 面体と顔面とのフィットネスの検討

5.3.1  フィットテスト 面体形の呼吸用保護具を着用し,作業区域内に立ち入るときには,事前に面体と
顔面とのフィットネスを試験し,良好であることを確認しなければならない。試験方法は,次による。
a) 定性的方法
1) 陰圧試験 陰圧試験は,次による。
1.1) 呼吸用保護具を装着して吸気口又は空気流入部を,呼吸用保護具に具備されている密そく(塞)
具又は手のひらで閉鎖し,静かに吸気する。ただし,閉鎖することによって,面体と顔面との接
触状態が変化したり,改善されることがないように注意する。
1.2) 顔面との密着部分に空気の漏れが感じられず,かつ,面体内の圧力低下が感じられれば,顔面と

――――― [JIS T 8150 pdf 9] ―――――

8
T 8150 : 2006
のフィットネスは良好と考えてよい。
2) 陽圧試験 陽圧試験は,次による。
2.1) 呼吸用保護具の排気弁,呼気管などの排気口を呼吸用保護具に具備されている密そく(塞)具又
は手のひらで閉鎖し,静かに息を吐き出す。ただし,閉鎖することによって,面体と顔面との接
触状態が変化したり,又は改善されることがないように注意する。
2.2) 顔面との密着部分に空気の漏れが感じられず,かつ,面体内の圧力増加が感じられれば,顔面と
のフィットネスは良好と考えてよい。
備考 陽圧試験で漏れが認められても陰圧試験の結果が良好であれば,この面体のフィットネスは良
好と判断してよい。ただし,循環式呼吸器の場合,陽圧試験で漏れが感じられるものは,呼吸
ガスの消費が加速し,高圧ガス容器の耐用時間が短縮する原因となりやすいので,注意を要す
る。
3) 臭気,刺激などのある物質による試験 臭気,刺激などのある物質による試験は,次による。
なお,この試験は,給気式呼吸用保護具及び試験に使用する物質(試験用コンタミナンツ)を除
去することのできるフィルタをもつろ過式呼吸用保護具(2)に限る。
注(2) ここでいうろ過式呼吸用保護具は,酢酸イソアミルについては有機ガス用吸収缶を備えたもの,
刺激性の煙についてはJIS T 8151で規定するS3以上の粒子捕集性能をもつフィルタを備えたも
の,及びサッカリンエアロゾルについては防じんマスクがそれぞれ該当する。
3.1) 呼吸用保護具を着用した後,人間がきゅう(嗅)覚又は味覚によって容易に感知できる物質(例
えば,酢酸イソアミル,刺激性の煙,サッカリンエアロゾルなど。)を含む環境空気中に入る。
3.2) 臭気,刺激などを感じなければ,顔面とのフィットネスは良好と考えてよい。
b) 定量的方法
1) IS T 8159 による面体の漏れ率試験方法 使用する試験用コンタミナンツに有効なフィルタを取
り付けた面体を着用し,面体の内側及び外側の試験用コンタミナンツ濃度を測定することによって,
面体の漏れ率を求める。フィットネスの良否の評価,面体の選択,面体の着用教育などに用いるこ
とができる。
2) 大気じんを用いる試験方法 粒子状物質用フィルタを取り付けた面体を着用し,面体の内側及び外
側の大気じん濃度を測定することによって,面体のフィットネスの良否を判定する。
試験法の詳細は,附属書による。
5.3.2 面体の着用が不適切な条件 次に示すように,面体の顔面へのフィットネスを損なうなど,呼吸用
保護具の効果を低下させるおそれがある場合は,面体形の呼吸用保護具を着用してはならない。ただし,
面体内に環境空気の侵入を防ぐために十分な量の送気がある場合は,この限りでない。
a) 面体が顔の形状に適合しないか,接顔部に入り込むようなひげ,もみ上げ,前髪などがあることによ
って,面体と顔面との密着性が保てない場合。
b) フェイスシールド,フード,めがねなどを併用した場合に,面体と顔面とのフィットネスを損なう場
合。
c) 排気弁の作動を妨害する口ひげ又はあごひげがある場合。
d) 鼓膜に破れがある場合。
e) 呼吸器系及び循環器系に疾患がある場合。その他,産業医が不適切と認めた場合。
f) その他呼吸用保護具の効果を低下させるおそれがある場合。

――――― [JIS T 8150 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS T 8150:2006の国際規格 ICS 分類一覧

JIS T 8150:2006の関連規格と引用規格一覧