JIS T 9208:2016 ハンドル形電動車椅子 | ページ 2

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3.2
駆動部(driving system)
駆動モータ,減速機及びバッテリからなる部分。
3.3
制御部(controller)
操作ボックス及びコントローラからなる部分。
3.4
充電部
バッテリを充電するもので,車載式及び別置式がある。
3.5
車輪(wheels)
駆動輪及び操だ(舵)輪からなる部分。
3.6
ブレーキ(braking system)
車輪に制動力を加えるもので,手動ブレーキ及び自動ブレーキがある。
3.7
手動ブレーキ
操作レバー以外の操作によって使用者の意志で制動をかけるブレーキ。
3.8
自動ブレーキ
操作レバーを初期状態に戻したとき,自動的に制動がかかるブレーキ。
3.9
予備走行
試験前に暖機走行として行われる約1.5 kmの走行。
3.10
走行可能状態にあるハンドル形電動車椅子
電源が入っており,操作レバーを操作するだけで走行することができる状態にあるハンドル形電動車椅
子。
3.11
完全な転倒(full tip)
制止装置又は試験に関わる使用者によって支えられなければ,ハンドル形電動車椅子が完全に傾斜し,
最初の定位置から少なくとも90°又はそれ以上となる状態。
3.12
最高出力状態
操作レバーをそのハンドル形電動車椅子の最大出力を発生できる位置に維持している状態。
3.13
使用者(user,occupant)
ハンドル形電動車椅子に乗車する人。
3.14
介助者(assistant)

――――― [JIS T 9208 pdf 6] ―――――

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ハンドル形電動車椅子を介助操作する人。
3.15
使用者最大体重
ハンドル形電動車椅子に乗ることができる使用者の最大体重(積載物を含む。)。
3.16
バッテリパック
一つ以上のバッテリを収容する脱着可能なバッテリケース。
3.17
バッテリセット
電源供給可能状態に接続されたバッテリ。
3.18
基準線
試験する車椅子を直線的に走行させるときに走行すると期待する軌跡。

4 種類及び各部の名称

4.1 種類

  ハンドル形電動車椅子の種類は,次による。
なお,星数による区分及びその表示方法は,附属書JCによる。
a) 回転性能1.2 M形(タイプI)
b) 回転性能1.0 M形(タイプII)

4.2 各部の名称

  ハンドル形電動車椅子の各部の名称は,附属書JAによる。

5 リスクマネジメントによる設計

  リスクマネジメントによる設計は,次の事項について実施し,実施手順及び結果は,製造事業者及び販
売事業者によって文書化し維持しなければならない。また,関連するハザードリストとして附属書JDに
記載した事項についても,リスクマネジメントによる設計を行うことが望ましい。
a) 乗降時及び停車中に意図せずに操作レバーに触れるなど操作に関する事項
b) 電源スイッチのオン状態を確認するなど,動作状態に関する情報の提供などに関する事項
c) 人間工学的配慮事項の例は,次による。
1) 身体寸法 座った状態で操作が可能な操作機器の配置など
2) 姿勢 安定した座位の確保など
3) 聴力 警報音の特性,光による警告など
4) 視力 表示文字の大きさ及び色,音による警告など
5) 身体の動作 走行操作,ハンドル操作など

6 性能

  ハンドル形電動車椅子の機能,強度,衝撃,耐久性及び耐水性は,11.1,11.2及び11.3の試験を行った
とき,表1の規定に適合しなければならない。

――――― [JIS T 9208 pdf 7] ―――――

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表1−機能,強度,衝撃,耐久性及び耐水性能
試験方法
項目 性能
(箇条番号)
機能 最高速度 平たん路において6.0 km/h以下 11.1.1
登坂性能 11.1.2
10°の斜面を直進で登れる及び発進ができなければ
ならない。
降坂性能 11.1.3
10°の斜面において最高速度(実測値)の115 %以内
でなければならない。
制動性能 平たん路では1.5 m以内で停止できなければならな11.1.4
い。降坂では,10°の斜面において3 m以内で停止,
基準線からの変位量は0.5 m以内でなければならな
い。
傾斜停止力 10°の斜面で静止できなければならない。 11.1.5
静的安定性 11.1.6
上向き,下向き20°及び側方15°の傾斜に対して表
D.1の得点1以上でなければならない。最も不安定な
状態について標準状態と同様な試験を実施し情報を
開示する。
段差乗越性 前進又は後退によって,助走なしで25 mm及び助走11.1.7
ありで50 mmの段差乗越ができなければならない。
溝踏破走行性 幅100 mmの溝を踏破できなければならない。 11.1.8
坂道走行性 11.1.9
6°の斜面におけるS字走路を逸脱及び異常なく登降
できなければならない。
斜面直進走行性 11.1.10
3°の斜面において幅1.2 mの走路を逸脱してはなら
ない。
回転性能 1.2 M形(タイプI) 11.1.11
幅1.2 mの直角路を曲がれなければならない。
1.0 M形(タイプII)
a) 幅0.9 mの直角路を5回まで切返して曲がれな
ければならない。
b) 幅1.0 mの直角路を切返しなしで曲がれなけ
ればならない。
c) 1.8 m未満の幅で180°の回転ができなければ
ならない。
強制停止 11.1.12
車体,駆動システム,電気回路などに異常があって
はならない。
連続走行距離 11.1.13
取扱説明書に記載された連続走行距離以上でなけれ
ばならない。
動的安定性 11.1.14.1
附属書Dによって実施し情報を開示する(D.7参照)。
後方に対する動的安定性 10°の斜面において表D.1の得点1以上でなければ 11.1.14.2
前進スタート ならない。 a)
前進走行時の制動 b)
後退走行時の制動 c)
静止状態からの後方 50 mmの段差において表D.1の得点1以上でなけれ d)
への段差降り走行 ばならない。
前方に対する動的安定性 10°の斜面において表D.1の得点1以上でなければ 11.1.14.3
前進走行時の制動 ならない。 a)
傾斜面から水平面へ b)
の走行
静止状態からの前方 50 mmの段差において表D.1の得点1以上でなけれ c)
への段差降り走行 ばならない。

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表1−機能,強度,衝撃,耐久性及び耐水性能(続き)
試験方法
項目 性能
(箇条番号)
強度 垂直静荷重 附属書Cの評価要件を満たさなければならない。 11.2.1
アームサポート下方耐荷重 11.2.2
衝撃 バックサポート斜め耐衝撃性 11.2.3
前方構造物の 正面 11.2.4
耐衝撃性 オフセット
耐久性 走行耐久性 11.2.5
落下性能 11.2.6
耐水性 11.3
試験後,最高速度及び平たん路制動性能に適合し,
車体,駆動部,電気回路などに異常があってはなら
ない。

7 構造

7.1 身体支持部

  身体支持部は,次による。
a) シート,バックサポート,アームサポート及びステップは,使用者の身体を確実に支持できなければ
ならない。
b) 調節機能及び着脱機能のあるシート,バックサポート,アームサポート及びステップは,使用中外れ
ず,調整,取付け及び取外しは容易でなければならない。
c) シートベルトを装備しているハンドル形電動車椅子は,使用者の身体を確実に固定でき,シートベル
トの着脱は容易でなければならない。

7.2 駆動部

  速度,操だの制御は,手又は身体の一部で容易に操作できなければならない。

7.3 制御部

  制御部は,次による。
a) 速度は,最高速度まで任意に調節できなければならない。
b) 電気回路には,適切な保護回路を設けなければならない。
c) 発進及び停止時に,使用者に強い衝撃を与えてはならない。
7.3.1 速度切換装置
タイプII(回転性能1.0 M形)は,最高速度を2 km/h以下に設定できる速度切換装置を装備しなければ
ならない。
なお,タイプI(回転性能1.2 M形)は,速度切換装置がなくてもよい。

7.4 充電部

  充電部は,次による。
a) 使用者の見やすい場所にバッテリ残量表示装置を設ける。
b) 電気回路には,適切な保護回路を設ける。
c) 充電中は,走行できてはならない。

7.5 ブレーキ

  ブレーキは,次による。
a) 自動ブレーキを装備する。

――――― [JIS T 9208 pdf 9] ―――――

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b) ブレーキの操作は容易で,車輪を確実に制動できなければならない。
c) 登降坂時,駆動力が伝達されない状態からでも使用者の操作によって制動をかけることができるか,
又は自動的に制動がかかる機能をもたなければならない。
d) 電源を切ったとき,自動的に制動がかかる機能をもつものとする。
e) 走行中にバッテリ容量が不足し制御系の誤動作が発生する前に,自動ブレーキが作動しなければなら
ない。

7.6 ねじ

  ハンドル形電動車椅子各部の取付けにおいて,工具を使って取り付けるねじは,通常,JIS B 0205-1JIS
B 0205-4及びJIS B 0209-1JIS B 0209-5に規定する一般用メートルねじを用いることが望ましい。

7.7 附属品

  附属品として,次の装置を装備してもよい。
a) 警音器 警音器の正面前方から2 m離れた位置で,67 dB以上の音量を発する装置。
b) 後進警報装置 後進状態にある間だけ音,光などによって第三者に警告を発する装置。
c) バックミラー
d) バスケット

7.8 動力及び制御システム

7.8.1  バッテリ
バッテリは,ハンドル形電動車椅子製造事業者の指定による。
7.8.2 バッテリに接続される電線の色及びマーク
バッテリの(+)端子に接続される動力用の電線は赤とし“+”記号で恒久的に表示し,バッテリの(−)
端子に接続される電線は赤以外の色とし,“−”記号で恒久的に表示する。バッテリの(+)端子に接続さ
れる電線であっても動力用以外は,赤以外の色でなければならない。
7.8.3 絶縁
ハンドル形電動車椅子の車体は,目的をもったインピーダンス回路による場合を除き,バッテリセット,
又はハンドル形電動車椅子の電気系のその他の部品に接続してはならない。直流インピーダンスでは
10 kΩ以上,回路電流では5 mA以下でなければならない。
7.8.4 ヒューズ
使用者又は介助者が扱うヒューズの交換は,工具を必要とせず交換時に活線状態のリード線及び端子が
他の電気部品に接触してはならない。
7.8.5 コネクタの交換性
使用者又は介助者が着脱するコネクタは,製造事業者が意図しない接続ができないようにし,次による。
a) 正しい組合せだけが許される形状。
b) プラグへの電線の長さは,正しい組み付けのときだけ合致する。正しい組み付けとは,単に色分けだ
けであってはならない。
7.8.6 非絶縁電気部品からの保護
標準関節なしテストフィンガ(図1参照)を30±1 Nであらゆる方向から全ての隙間に当てる。テスト
フィンガが隙間に入った場合に,全ての位置で,標準関節付きテストフィンガ(図2参照)の関節を曲げ
たり,伸ばしたりし,非絶縁部品に接触するかどうか調べる。10 kΩ以上の直流インピーダンスをもつ回
路によって保護されるものを除き,非絶縁部品にテストフィンガが接触してはならない。

――――― [JIS T 9208 pdf 10] ―――――

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JIS T 9208:2016の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 7176-10:2008(MOD)
  • ISO 7176-11:2012(MOD)
  • ISO 7176-13:1989(MOD)
  • ISO 7176-14:2008(MOD)
  • ISO 7176-15:1996(MOD)
  • ISO 7176-1:2014(MOD)
  • ISO 7176-22:2014(MOD)
  • ISO 7176-26:2007(MOD)
  • ISO 7176-2:2001(MOD)
  • ISO 7176-3:2012(MOD)
  • ISO 7176-4:2008(MOD)
  • ISO 7176-6:2001(MOD)
  • ISO 7176-8:2014(MOD)

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