JIS Z 8739:2001 音響―音響パワーレベル算出に使用される基準音源の性能及び校正に対する要求事項 | ページ 2

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Z 8739 : 2001 (ISO 6926 : 1999)
3.l0 対象周波数範囲 (frequency range of interest)通常,オクターブバンドの中心周波数で125Hz8
000Hzまで,又は1/3オクターブバンドの中心周波数で100Hz10 000Hzまでである。
備考 対象周波数範囲は,この規格の要求事項が満たされる場合には,20 000Hzまで又は50Hzまで
拡張してもよい。
3.11 比較法 (comparison method) ある環境において供試音源から発生する音圧レベルと,同一環境で
既知音響パワー出力をもつ基準音源から発生する音圧レベルの比較によって,音響パワーレベルを算出す
る方法。
3.12 残響時間 (reverberation time) 音源停止後に音圧レベルが60dBだけ減少するために要する時間。
備考1. 残響時間が最初の10dB又は15dBの減衰から評価される場合には,それぞれT10又はT15と示
す。
2. 単位は秒。
3.13 基準音源RSS (reference sound source) この規格の要求事項に応じるものであり,ポータブルで一
般に電気音響又は空力方式による音源又は他の騒音発生装置,及び広帯域の安定出力を与える関連制御回
路を含む音源(5.参照)。
この規格の測定手順の一つを適用する場合に,JIS Z 8402-1の定義に従う。
3.14 繰返し性 (repeatability)

4. 測定の不確かさ

 この規格の手順で算出された基準音源の音響パワーレベルの単一数値は,測定の不
確かさの範囲で真値と異なるものである。音響パワーレベル算出の不確かさは,結果に影響を与える要因,
測定室の環境条件に関連した要因及び実験手法による他の要因から生じる。
表1 この規格で算出された基準音源の音響パワーレベルにおける再現性の標準偏差の推定上限値
オクターブバンド 1/3オクターブバンド 半無響室床面上の音源に関する 残響室の音源に関する再
中心周波数 中心周波数 再現性(1)の標準偏差刀 現性(1)の標準偏差刀
Hz Hz dB dB
子午線経路又 20個の離散位置
は渦巻経路 又は同軸円経路
63 50 80 2.0 2.0 2.5
125 100 160 0.8 0.8 1.0
2502 000 200 3 150 0.3 0.5 0.3
4 0008 000 4 00010 000 0.3 1.0 0.3
16 000 12 50020 000 0.3 1.0 0.4
A特性 0.3(2) 0.5 <0.2(2)
注(1) 値は音源出力の変動を除外し,実験によって実証される。
(2) 1/3オクターブバンドデータによる計算値。
特定音源を多数の異なる試験室間で移動し,各試験室において音源の音響パワーレベルがこの規格の規
定で算出される場合には,その結果は分散を示す。測定値の標準偏差は計算することができ(例えばISO
7574-4 : 1985附属書B参照),周波数に依存する。これらの標準偏差は表1の値を超えない。
表1の値は,JIS Z 8402-1に定義されたように,再現性の標準偏差SRである。表1の値はこの規格の手
順を適用する場合の測定の不確かさの累積効果を考慮するが,動作条件(例えば回転速度,電源電圧)又
は設置条件の変化によって生じる音響パワー出力の変動を除く。
測定の不確かさは表1で示す再現性の標準偏差及び望まれる信頼度に依存する。例として,音響パワー
レベルの正規分布については,音源の音響パワーレベルの真値は95%の信頼度で測定値の範囲±1.96 到

――――― [JIS Z 8739 pdf 6] ―――――

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ある。他の例については,ISO 7574-4を参照。
備考1. 表1の不確かさは,校正される特定音源に限って適用される。製品の変動性による付加的不確
かさを規定するための統計データを入手できなければ,特定の基準音源の校正は同一設計及
び製造の他の基準音源に適用されない。
2. 表1の不確かさは,二つの異なる試験環境で算出された音響パワーレベルにおける系統差を
含まない。これらの差は100Hzを超える範囲では重要でない。しかし,l00Hz以下ではこれ
らの差は重要である。200m3の残響室の場合の差は代表的に1.5dB以下である。

5. 性能要求事項

5.1 一般事項

 製造業者は基準音源がこの規格のすべてに適合しているかどうかを述べなければならな
い。

5.2 音響パワー出力の時間定常性及び繰返し性

 基準音源は,表2に示すように,1/3オクターブバンド
ごとの音響パワーレベルが繰返し性の条件の下で時間的に一定であるように,設計・製作されなければな
らない。
表2 この規格による基準音源における繰
返し性条件下の音響パワーレベルの
標準偏差の最大値
周波数範囲 標準偏差
Hz dB
50 80 0.8
100 160 0.4
20020 000 0.2
備考1. 特別な用途のために,基準音源はより制限された周波数範囲としてもよい。
基準音源の製造業者は音源の電気又は機械的パワーの変動範囲(例えば,供給電圧)を述
べなければならない。この場合,対象周波数範囲内のすべての1/3オクターブバンド音響パ
ワーレベルが±0.3dBを超えて変動してはならない。製造業者は音源の電源電圧又は機械パ
ワーのより大きい変動の影響によって基準音源で生じる音響パワーレベルを調整する手順を
与えなければならない。
2. 基準音源の音響パワーレベルは大気圧及び気温に依存する。極度な温度又は高度で使用する
ために,音響パワーレベルに対する大気圧及び気温の影響について,製造業者は適切な補正
についての情報及びその不確かさを供給することが望ましい。

5.3 総広帯域音響パワーレベル

 基準音源によって放射される総広帯域音響パワーレベルについての特
定の要求事項は存在しない。しかし,総広帯域音響パワーレベルを報告する場合には,対応する周波数範
囲も報告する。

――――― [JIS Z 8739 pdf 7] ―――――

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5.4 スペクトル特性

 基準音源は,1/3オクターブバンド中心周波数で少なくとも100Hzから10 000Hz
の間において,その用途に意図されている周波数範囲の広帯域定常音を発生させなければならない。この
周波数範囲上で,すべての1/3オクターブバンド音響パワーレベルは7.及び8.の要求事項を満たして測定
される場合には,12dB以内になければならない。同じ測定条件下で,同一周波数範囲において,それぞれ
の1/3オクターブ音響パワーレベルは隣接1/3オクターブバンドの音響パワーレベルから3dBを超えない
ものとする。周波数範囲を100Hz10 000Hzを超えて拡張する場合には,拡張した範囲に対する要求事項
はそれぞれ16dB及び4dBとする。
より限定された周波数範囲又は異なるスペクトル形状をもつ特殊な音源について,これらの基準を満た
すことが望ましい。基準音源が100Hz10 000Hzまでの周波数範囲においてこの規格の要求事項を満たさ
ない場合には,製造業者は基準音源の周波数特性がこの規格に適合しないことを述べなければならない。

5.5 指向性指数

 音源の指向性指数の最大値は,7.に適合する半無響室で測定する場合に,100Hz10
000Hzの間の1/3オクターブバンドの中心周波数において+6dBを超えてはならない。移動マイクロホンを
使用する場合には,任意トラバース中にそれぞれの1/3オクターブバンドにおいて時間重みSで測定され
た最大音圧レベルを記録し,指向性指数の計算に使わなければならない。固定マイクロホンの場合には,
任意の20位置の各周波数バンドの最大音圧レベルを使うものとする。
基準音源をJIS Z 8732に適合した残響室で限定して使う場合には,上述の要求事項は適用しないで,“限
定した残響室だけの基準音源として使用”というラベルを付ける。
基準音源が床面上のスタンドで使用するように設計されている場合には,上述の要求事項は自由音場に
ついて適用され,指向性の測定はJIS Z 8732によって無響室で実施する。

5.6 再校正

 製造業者は校正周期の最長期間を推奨しなければならない。この期間中における基準音源
の音響パワーレベルの変化は表2に示された範囲を超えてはならない。基準音源が何らかの機械的損傷を
受けた場合には,必ず再校正しなければならない。
推奨の最長期間中に基準音源の再校正が必要であるかどうかを決めるために,特定試験環境の明確な位
置で作動する音源について,複数の固定された基準点(例えば,製造業者が推奨する期間及び位置)にお
いて,ときどき1/3オクターブバンド音圧レベルを測定する。必要であれば,測定された音圧レベルを一
定の環境条件に調整するために製造業者の指定手順を実施した後に,すべての1/3オクターブバンド音圧
レベルの変化が表2の値の2.83倍を超える場合には,基準音源の再校正が必要である(JIS Z 8402-1参照)。

6. 校正時の基準音源の設置及び作動

6.1 一般事項

 音源は製造業者の説明書に従って作動しなければならない。機械又は電気駆動による音
源の主要特性(例えば,電源電圧及び周波数)及び基準音源に関連する作動パラメータ(例えば,空力音
源の回転速度)は記録されなければならない。
備考 適切な作動パラメータを測定するために,補助装置(例えば,回転速度を測定するためのスト
ロボスコープ)を使用してもよい。
基準音源は,(音響特性又は作動パラメータの)すべての測定を行う前に,安定した作動条件にしなけれ
ばならない。

6.2 基準音源の位置

6.2.1  基準音源を反射面上及び壁面から離れて設置する場合 半無響室では,校正される音源を反射面上
で通常の使用における方向に置くこと。
残響室では,壁面に対して非対称的に,最も近い壁面から少なくとも1.5m離れた床面上に音源を置く。

――――― [JIS Z 8739 pdf 8] ―――――

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少なくとも互いに2m離れた4点の位置を使用する。
6.2.2 基準音源を床面上方又は複数の壁面に近接して設置する場合 基準音源を6.2.1の条件以外の位置
で校正する場合には,これらの校正は残響室で行わなければならない。
反射面から0.5mを超えるか壁の近くの位置に置かれた基準音源は半無響室で校正することはできない。

7. 半無響室における校正手順

7.1 試験環境

 試験環境は,対象周波数範囲にわたってJIS Z 8732の附属書Aの適正要求事項に適合す
る半無響室とする。その床面は,水平方向で床面への測定表面の投影を少なくとも1m以上の範囲に広げ
たものとする。

7.2 マイクロホン

 通常の対象周波数範囲で,垂直入射で平たん(坦)周波数特性をもったマイクロホ
ンを測定半球の中心方向に向かって振動膜が向くようにするか,又は擦過入射で平たん周波数特性をもっ
たマイクロホンを測定半球の中心方向に向かって90°で振動膜面が向くようにして使用する。マイクロホ
ンの特性は,対象周波数範囲において(振動膜への)垂直入射又は平行入射で0.1dB以内の平たん周波数
特性を与えるように補正する。周波数範囲を10 000Hzの1/3オクターブバンドを超えて拡張する場合には,
平行入射時に公称平たん周波数応答をもったマイクロホンだけが使用できる。

7.3 マイクロホン位置

7.3.1  一般事項 半径2mの半球測定面を使用する。マイクロホンを反射平面上に基準音源の最上表面の
投影の幾何中心に置く。7.3.2, 7.3.3, 7.3.4又は7.3.5に与えられるマイクロホン位置の組の一つを使用する。
固定又は移動マイクロホンの機械装置が測定に影響しないように注意する。
7.3.2 子午線経路 軸対称音源の場合には,測定表面の垂直軸の周囲に120°間隔で3回のトラバースを
使用する(JIS Z 8732の附属書Fの附属書図F.1を参照)。他の音源の場合には,少なくとも8回のトラバ
ースを使用する。トラバースを一定角速度で行う場合に,与えられた弧の長さに対するマイクロホントラ
バース時間に関連する面積について適切な重み付けを行うために,正弦ポテンショメータ(電気的,機械
的又は数学的同等物)を使用する。トラバースがマイクロホンを垂直方向に一定速度で動くように制御で
きれば(すなわち角速度は,測定表面のマイクロホン位置と垂直軸間との角度の正弦に逆比例する。),面
積の重み付けを適用しなくてよい。
備考 正弦波ポテンショメータを利用する場合,その角速度は半球の頂上で無限大になる。この問題
は実際に頂上に達する直前で積分を終了することで解決される。
7.3.3 らせん経路 7.3.2のように子午線経路に沿ったトラバースを使用し,同時に少なくとも5本の環
状経路の積分番号に沿ってマイクロホンをゆっくり横断させることで,測定表面の垂直軸に沿ってらせん
経路を作る。若しくは子午線経路に沿ってマイクロホンを横切る間に,完全に一回転する回転速度で基準
音源をゆっくり回転させることによって,らせん経路を生成してもよい。必要であれば,7.3.2の面積重み
付けを使用する。この手順ごとに,測定上面の垂直軸の周辺に120°回転させて,3回のトラバースを使う。
7.3.4 固定点配列 半径 (R) 2.0mの半球表面上に床面から均等の高さ間隔に置かれた20点のマイクロホ
ン位置を,1個のマイクロホン位置を個々の高さに保つように,使用する。20点の高さは,0.025R, 0.050R,
0.075R,···,0.975Rとする。各高さごとに,らせんの水平サンプリングパターンを決めるために方位角の位
置は前の位置から60°で移動させなければならない。水平面の音源指向性が非均一であれば,第2番目の
測定集合を最初のセットの測定集合から180°移し,最初の測定集合と平均しなければならない。

――――― [JIS Z 8739 pdf 9] ―――――

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7.3.5 同軸円経路 2.0mの半球の表面上において基準音源の中心に対する垂直軸の周囲上に20個の同軸
円トラバースを使う。この同軸円トラバースは7.3.4に示された20個の高さの位置とし,半球面の同一面
積を代表する。円周経路はマイクロホン又は基準音源をゆっくり360°均一に回転することで実施しても
よい。円周スキャンの時間は少なくとも60sとする。回転テーブルが基準音源を回転するために利用でき
れば,その表面は反射面と同一平面とする。

7.4 測定

 子午線経路の4分の1円をトラバースするごとに少なくとも200s及びらせん経路用600sの積
分時間でJIS Z 8732に従って,1/3オクターブバンド音圧レベルを測定する。離散マイクロホン位置では,
各マイクロホン位置で30sにわたって積分する。同軸円経路では,積分時間はマイクロホン又は音源の一
回転又はその整数倍に対応させる。
備考 オクターブバンド及びA特性音圧レベルは直接に測定するか,1/3オクターブバンドデータか
ら二乗平均音圧によって計算してもよい。

7.5 空気吸収

 10 000Hzを超える高い周波数まで測定を拡張する場合には,JIS Z 8738に従って空気吸
収を補正する。

7.6 計算

 1/3オクターブバンド表面音圧レベルと音響パワーレベルは,JIS Z 8732に従って,次の計算
式によって計算する。
S1
Lw Lpf 10 log dB C (2)
S0
ここに, Lpf : 測定表面上の表面音圧レベル,単位dB(基準20 懿
S1 : 測定表面の面積
S0 : 1m2
C : 温度 ℃) 及び大気圧B (Pa) の影響についての補正項,単位dB
427 273 B
C 25 log dB (3)
400 273 B0
ここに, B0 : 105Pa
備考1. 式 (2) は,基準条件 一 一侮 響パワーレベルを与える。Cを適用する
とで,音響パワーレベルはBと 立した値となる。この補正項Cは,測定位置における
実際の気象条件,Bと 算する。427/400の比は, 及びB0=105Paの場合の伝
搬媒質 湛 湲祠
ンピーダンスと基準特性インピーダンス( ref=400Ns/m3との差を
調整する。これは測定位置の空気の実音響インピーダンス 柿 大きく異なる気象
条件の測定から求められた同一機械の音響パワーは少し異なる結果をもたらす。これは,異
なる気象条件における空気の が音源の実効音響放射を変えるために起こることであ
る。
音源の指向性指数の最高値DIiを,各1/3オクターブバンドについて計算する。
備考2. オクターブバンド及びA特性値は必要に応じて計算してもよい。

8. 残響室における校正手順

8.1 試験環境

 試験環境は,残響室の最小寸法が4.0mを超えるという付加要求事項とともにJIS Z 8734
の要求事項を満たさなければならない。
備考 この規格に示す再現性による測定の不確かさは,197m3238m3の範囲で容積の異なる七つの残
響室の測定結果に基づく。

――――― [JIS Z 8739 pdf 10] ―――――

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JIS Z 8739:2001の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 6926:1999(IDT)

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