JIS Z 8750:2009 真空計校正方法 | ページ 2

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4 量記号,記号及び略号

  この規格で用いる量記号,記号及び略号は,次による。
D 校正容器の円筒の内径 (m)
e 読み値の誤差
P0 到達圧力 (Pa)
pcal 校正圧力 (Pa)
pind 表示圧力 (Pa)
pres 残留圧力 (Pa)
qout 気体放出速度 (Pa・L/s,Pa・m3/s)
S 感度係数
Seff 有効排気速度(ポンプに流入する有効体積流量)(L/s,m3/s)
u 標準不確かさ
U 拡張不確かさ
CF 補正係数

5 一般原則

  被校正真空計は,参照真空計と同じ校正容器に取り付ける。被校正真空計及び参照真空計の取付口の真
空容器内面側を,同じ密度及び同じ速度分布をもつ校正気体にさら(曝)すようにする。同じ密度及び同
じ速度分布をもつ校正気体とは,厳密に二つの場所が同じ圧力であるという意味である。単に“二つの取
付口の真空容器内面側が同じ圧力”という表現をしないのは,圧力を測定せずに,例えば,気体の密度又
は気体分子の入射頻度を測定している真空計が多くあるためである。
校正容器の圧力を変化させ,被校正真空計の読み及び参照標準の示す圧力を比較して校正する。
この一般原則から,校正装置の設計のための要求事項(箇条6)が導かれる。
注記 附属書Aには,校正システムの構成の一例が記載されている。

6 要求事項

6.1 校正容器の設計

  校正容器内の気体の分布は,空間的にも時間的にも均一であることが必要である。校正容器の材質には,
その気体放出速度qout(リークはないとして)及び有効排気速度Seff(ポンプへの有効体積流量)で求まる
残留圧力pres[式 (1) 及び6.3参照]が,校正圧力に比べて十分に低くなるように選択する。
qout
pres (1)
Seff
校正容器の設計及び操作は,次による。ただし,真空容器に発生する最小圧力が100 Pa以上の場合で静
止圧力の場合には,a) e)の項目は無視してもよい。
a) 校正容器の容積は,すべての真空計及び配管部分の総容積の少なくとも20倍にする。
注記1 真空計の内容積を校正用真空容器の5 %以下に抑えることができる。
b) 校正容器(図1参照)は,少なくとも一つの対称軸をもつ円筒対称形にする。球形が理想的であるが,
球の一部分をつなぎ合わせた2回対称形の半球又は円筒でもよい。円筒の場合,その全長は内径の1
2倍にする。また,円筒の両端は半球(ドーム状でも可)であることが望ましい。

――――― [JIS Z 8750 pdf 6] ―――――

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c) 排気口及び気体導入口の断面の中心を,校正容器と同じ回転軸上(垂直軸)にする。気体導入口は排
気口及び排気システムの間にあってもよい(6.3参照)。その場合には,気体の導入口は対称軸上にあ
る必要はない。
d) 被校正真空計又は参照真空計の取付口及び取付フランジは,排気口の対称軸と直交し,高さを二分す
る面上に設置する。ポンプの排気速度を測定する場合に使用する,円筒の長さが内径Dの3/2倍であ
る容器を用いている場合には,真空計を下方のフランジから1/3(D/2)の位置に設置してもよい。
注記2 例えば,JIS B 8317-1に規定されている真空容器。
e) 校正容器の任意の点における温度差は1 K未満にする。ただし,発熱する部分をもつ真空計(例えば,
熱陰極電離真空計)から5 cm以内の場所については考えなくてもよい。
a) b) c)
図1−校正用真空容器の形の例
f) 校正中の容器の平均温度[e) 参照]は,(23±3) ℃にする。また,校正中の平均温度の変動は1 K以
内が望ましい。
注記3 校正のための測定時間全体(バックグラウンド測定及び比較校正のための測定)にわたっ
ての変動が1 K以内の場合,この変動による不確かさは,0.3 %程度と考えられる。
a) e)に規定した設計基準が満足できない場合には,被校正真空計又は参照真空計の取付口の真空容器
内面側での分子密度又は速度分布(圧力)の不均一さによる量を見積もって補正し,その不確かさを見積
もる。

6.2 真空計の取付配管

6.2.1  気体分子の収着,真空計の排気効果,放出ガスなどによって生じる分子(圧力)の不均一を最少に
するために,校正容器と真空計とをつなぐ容器側配管は,真空計自身の取付フランジの開口内径と同等以
上の内径をもつ配管を可能な限り短くして接続する。
6.2.2 被校正真空計及び参照真空計のそれぞれの測定値の読みに,他の真空計が大きな影響を与えないこ
とに注意を払う。
注記 真空計相互の影響は,一方の真空計の動作と非動作とを繰り返し,他方の真空計の読みを観察
することによって確かめることができる。
6.2.3 真空計の周囲の雰囲気は,被校正真空計及び/又は参照真空計を加熱又は冷却するような気体の流
れがないようにする。そのための保護カバーを付けることによって改善できる。

――――― [JIS Z 8750 pdf 7] ―――――

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6.3 排気系及び気体導入系

6.3.1  校正容器の到達圧力は,参照真空計で測定する最低校正圧力の1/10よりも小さくする。適切な排
気速度の真空ポンプを適切な太さの配管で校正容器へ取り付ける。
注記 低い残留圧力又は到達圧力が必要な場合には,容器を加熱して真空容器内面の吸着気体又は水
を積極的に除去する。
到達圧力が被校正真空計又は参照真空計の測定分解能より低い場合には,到達圧力による不確かさは十
分小さいと考えられる。
6.3.2 校正中,排気系の有効排気速度を一定に保つ。そのためには,気体移送式ポンプの使用が望ましい。
そうでない場合には,校正中,有効排気速度が安定であることを確かめる。
6.3.3 真空容器への油の逆流は排除する。
6.3.4 到達圧力又は残留圧力を参照真空計及び被校正真空計以外の真空計で測定するのが望ましい。
6.3.5 気体の導入口は,校正容器と排気系との間,又は校正容器の対称軸上に上向きに配置する。後者の
場合,導入口からの気体分子は,被校正真空計又は参照真空計の取付口の真空容器内面側に入射する前に,
少なくとも一度は校正容器の内壁又はバッフルに衝突するようにする。
校正気体の消費量を少なくするために,バルブを用いて有効排気速度を制御してもよい。このとき,到
達圧力の上昇を考慮しなければならない。

6.4 校正気体

  純度99.9 %以上の窒素気体が望ましい。他の気体又は混合気体を校正に使用する場合も同様の純度,成
分比率の把握が必要である。校正用気体の校正時の純度は導入した気体自身の純度ではなく,ガス導入系
及び真空容器からの放出ガスの量も含めての値である。気体の純度が不確かさの重要な要因の一つとなる
場合,純度が99.9 %以上となるようにする。

6.5 温度計及び環境条件

  温度計は,その合成拡張不確かさ (k = 2) が0.5 K以下のものを使用する。校正容器の温度は,温度計を
容器に十分熱接触させて測定する。被校正真空計及び参照真空計付近の環境温度は,温度計を適切な位置
に取り付け,ふく射から保護した状態で測定する。環境温度は,(23±3) ℃にし,校正中の温度変動は,1
Kを超えてはならない。大きな温度変動が避けられない場合には,温度変動の不確かさへの寄与を正しく
評価する。
環境条件として6.2.3に規定する気体の流れを考慮する。加えて6.1 e)に規定した温度条件を満足するよ
うに校正室の気体の流れ及び熱ふく射を制御する。

6.6 参照真空計

  参照真空計は,国家標準又は一次標準にトレーサブルな真空計(通常の場合),又はSIトレーサブルで
不確かさの付いた絶対真空計(まれな場合)を使用する。参照真空計の分解能及び測定の不確かさは,被
校正真空計のこれらと同等か小さい値であることを推奨する。参照真空計は,この規格に基づいて校正す
る気体で校正されていることが望ましい。特に,感度に気体種依存性がある真空計の場合には,校正に使
用する気体で校正する。
注記 国家標準又は一次標準にトレーサブルな真空計には,通常JIS Q 17025の5.10(結果の報告)
に従った証明書が付加されている。

――――― [JIS Z 8750 pdf 8] ―――――

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7 校正

7.1 手順

7.1.1  真空計を動作させる場合,校正依頼者が指定していなければ,製造業者の取扱説明書に従う。実際
の圧力測定のときに決まった手順に従う場合には,校正においても同じ手順を使用する。参照真空計の動
作は,常に,製造業者の説明書及び校正証明書に与えられている情報のどちらか又は両方に従うことが望
ましい。
7.1.2 被校正真空計及び参照真空計を校正容器に取り付け,校正装置のすべての機器の準備が完了した後,
校正容器を排気する。到達圧力を6.3に規定する条件と一致させるために真空容器の加熱脱ガスが必要に
なる場合がある。
7.1.3 校正容器内部の圧力が,それぞれの真空計の動作条件の範囲内に入ったときに真空計の電源を入れ
動作させる。真空計及び他の機器を安定させる。安定するまでに要する時間は,真空計の種類及び求める
不確かさの大きさに依存する。真空計によっては,真空計の脱ガスが必要になることがある。この場合に
は,安定化中に行う。真空計の測定子が,バルブによって気体の流入を遮断され真空に保たれていた場合
には,校正容器の圧力が,真空計の測定の許容動作圧力よりも低くなった場合にだけバルブを開ける。
7.1.4 到達圧力P0が6.3.1を満たすまで排気をする。校正を始める前には,到達圧力及びすべての真空計
のゼロ点を記録する。校正は圧力を上昇させていく手順が望ましい。圧力を下降させる手順の場合には,
ゼロ点の変動が不確かさに大きく寄与するので,注意が必要である。校正圧力によっては校正中の機器の
設定条件及び/又はバルブの開閉条件などを変える場合があるが,この場合はその条件における到達圧力
をはかる。
7.1.5 最初の校正圧力値の発生は,次のいずれかによる。
a) 静的平衡法 校正容器と排気システムとをつなぐバルブを閉じて,気体を校正圧力になるまで校正容
器に導入し,次による(校正する圧力点は,附属書B参照)。
1) 排気系をつないでいるバルブを閉じて,気体導入前の圧力が7.1.4で記録した値と異なる場合には,
その圧力値を記録する。
2) 気体放出又は脱離によって校正容器内の圧力がバルブを閉じた後の5分間で校正最小圧力の1/10を
超える場合には,動的平衡法に切り替えて校正する。
3) 校正圧力は,依頼者と同意した範囲内に設定する。指定されていない場合には,校正圧力の±5 %
以内にする。
b) 動的平衡法 校正容器と排気システムとをつなぐバルブは,完全に開いているか,又はある程度閉じ
た状態にし,校正気体を目的の圧力まで校正容器に導入し,次による。
1) 校正圧力は,依頼者と同意した範囲内に設定する。指定されていない場合には,校正圧力の±5 %
以内にする。
2) 校正圧力は真空計の表示圧力の変化が,2分30秒の間で0.5 %以下程度に安定させる。指定された
安定性が得られない場合には,参照真空計−被校正真空計−参照真空計の順番で,同じ時間間隔で
読み値を記録し,参照真空計の二つの読み値の平均値を校正圧力として被校正真空計と比較する。
3) バルブを部分的に閉じた状態で,到達圧力が7.1.4で記録した値と異なる場合には,気体を導入する
前の到達圧力を再度記録しなくてはならない。
a)及びb)の両方法ともに,参照真空計及び被校正真空計は,同時又は時間遅れのないように引き続いて
測定する。
7.1.6 校正前及び校正中には,次の項目を記録する。

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− 真空計の形式,製造業者,並びに参照真空計及び被校正真空計の識別(測定子及び制御計測部両方の
製造番号)
− 校正の日付
− 環境温度
− 校正容器の温度
− 校正気体の種類
− 到達圧力[7.1.5のa) 1)及びb) 3)参照]
− 真空計の設定の項目(測定子及び制御計測部)
− 真空計の設置条件(測定子の向き,校正容器への取付位置,測定子の配管,フランジの形など)
− 校正担当者の名前
− 参照真空計の読み値及び被校正真空計の読み値を含む結果の表
校正対象が測定子だけの場合,測定子の使用者が校正中と同じ状態で測定ができるようにすべての装置
及び設定条件を記録する。
7.1.7 最終の校正圧力値での測定が完了した後,校正装置にリークがないこと,及び多量の気体の吸着,
容器内壁の汚染,排気系の故障などが校正中に起きなかったことを確認するために排気する。到達圧力又
は最後の校正圧力点の1/1 000に10分(又は排気速度及び真空容器の全容積から予測した時間)以内に到
達しなかった場合には,校正装置を再調整(例えば,リークテスト,ポンプの試験,真空計の清浄化,校
正容器の加熱脱ガス)し,再校正する。

7.2 測定の評価

  それぞれの校正圧力点に対しての測定の記録から,次の表を作成する。
− 参照真空計の読みに,校正証明書及び校正中の諸条件に対する必要な補正を施した校正圧力値
− ゼロ点などの補正を施した被校正真空計の読み値(繰返し測定の平均値)
− 校正から求められた値[読み値の誤差e,補正係数CF,感度係数S(例 V/Pa)など]
− 7.3によって求めた校正値の測定不確かさ
圧力範囲の校正値の平均値を一つの校正値とすることがある(例えば,スピニングロータ真空計の有効
運動エネルギー授受係数,熱陰極電離真空計の感度係数)。

7.3 測定の不確かさ

  読み値の誤差,補正係数,感度係数など校正で求めた値の標準不確かさuはISO/IEC Guide 98-3の方法
で計算する。次のような不確かさの要因が重要と考えられる。
a) 測定の不正確さ及び時間変動による到達圧力の不確かさ
注記1 静的平衡法の場合,時間変動による不確かさは校正容器とポンプとをつなぐバルブを閉じ
た後の圧力上昇から見積もる。動的平衡法の場合,気体導入前に,校正容器とポンプとを
つなぐバルブを最初の校正点と同じ状態にして30分以上到達圧力の変動を観察すること
によって見積もる。
b) 被校正真空計又は参照真空計の取付口の真空容器内面側での分子密度又は分子の速度分布の不均一さ
による校正圧力の不確かさ 6.16.3の設計基準を満たす場合,これらの標準相対不確かさは,校正
圧力が100 Paより低い場合は0.3 %程度と見積もることができる。また,100 Pa以上では,6.1の要求
事項を満たしていないとしても0.1 %程度の不確かさと見積もることができる。
注記2 この不確かさには,次のような要因による気体の分子密度又は速度分布の不均一さが含ま
れている。要因には,希薄気体の特定な流れ(校正容器とポンプとをつなぐバルブが部分

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  • ISO/TS 3567:2005(MOD)

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