JIS A 1912:2015 建築材料などからの揮発性有機化合物(VOC),及びホルムアルデヒドを除く他のカルボニル化合物放散測定方法―大形チャンバー法 | ページ 2

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図1−大形チャンバーの概念図
6.2.1 形状 大形チャンバーの対象化学物質に接する部分は,ステンレス鋼,ガラスなどの吸着が非常に
少ない材料で作られたものとし,容積は1 m3を超え80 m3までとする。大形チャンバーは,内部の空気が
できる限り混合するよう設計されているものとする。大形チャンバーは,清掃,洗浄作業が容易に行える
構造とする。参考として2 m3大形チャンバーの例を附属書A,14 m3大形チャンバーの例を附属書B,及
び24 m3大形チャンバーの例を附属書Cに示す。
大形チャンバーのシール材は,低放散性及び低吸着性のもので,バックグラウンド濃度への影響が小さ
いものを使用する。
6.2.2 気密性 大形チャンバーは,制御されていない外気と換気することが極力少ないように気密状態と
する。したがって,大形チャンバー内は大気圧よりも少し高い気圧で操作し,試験場所による影響を防ぐ
ことが望ましい。
6.2.3 空気の供給装置 大形チャンバーは,換気量を連続的に一定の数値に制御することが可能な装置
(流量制御装置など)を備えているものとする。要求事項は7.4による。
6.2.4 設置場所 大形チャンバーは,屋内に設置する。
6.3 かくはん装置 大形チャンバー内の濃度分布を均一にする目的で,かくはんファンを装備すること
ができる。かくはんファンは,清掃,洗浄作業が容易に行える構造とし,低放散性及び低吸着性のもので,
バックグラウンド濃度への影響が小さいものを使用する。
6.4 空気清浄装置 大形チャンバーに供給する空気は,できる限り清浄な空気が必要であるため,バッ
クグラウンド濃度の上昇を防ぐために,通常,空気清浄装置を使用する。
6.5 温度・湿度制御装置 大形チャンバー内の空気は,必要温度に制御する。
温度及び相対湿度は,温度・湿度制御システムとは独立して,連続的にモニタリングする。
大形チャンバー内に結露を生じさせたり,加湿のために水をチャンバー内に直接噴霧させたりしないよ
うに注意する。
6.6 流量計 大形チャンバーの出口又は入口に流量計を設置し,大形チャンバー内の正確な換気量を測
定する。
6.7 空気捕集装置 空気捕集は,大形チャンバー出口空気を用いる。ダクト及びチューブを介して捕集
する場合は,その間をできる限り短くし,大形チャンバーと同じ温度に保つ。
なお,ダクト及びチューブの材質は,ポリテトラフルオロエチレン素材など,吸着が非常に少ないもの

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を用いる。
大形チャンバーからの排気は,試験場所から確実に排除する。
空気捕集を二重に行うために,空気捕集用分岐管を使用することもできる。
6.8 試験体・試験片のシール材 想定する放散面以外の面をシールする。シール材は,低放散性及び低
吸着性のもので,バックグラウンド濃度への影響が小さいものを使用する。
6.9 試験体・試験片設置用の架台 試験体・試験片は,大形チャンバーの中央に設置することを基本と
し,必要に応じて,架台を用いて設置する。使用する架台は,清掃,洗浄作業が容易に行える構造とし,
低放散性及び低吸着性のもので,バックグラウンド濃度への影響が小さいものを使用する。
6.10 分析装置 VOCの分析には,水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC/FID),又は質量
分析計付きガスクロマトグラフ(GC/MS)を使用する。また,ホルムアルデヒドを除く他のカルボニル化
合物の分析には,高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)を使用する。
VOCの分析装置は,JIS A 1965の箇条6(装置),JIS A 1966の箇条6(装置)若しくはJIS K 0123の5.
(装置)によるか,又はこれらと同等以上の精度をもつ装置を用いてもよい。ホルムアルデヒドを除く他
のカルボニル化合物の分析装置は,JIS A 1962の6.3.1(HPLCシステム)若しくはJIS K 0124の箇条5(装
置)によるか,又はこれらと同等以上の精度をもつ装置を用いてもよい。

7 試験条件

7.1 一般

  試験条件は,7.27.5による。また,試験は大気圧に近い状態で行う。

7.2 温度及び相対湿度

  大形チャンバー内の温度は28 ℃で,相対湿度は,JIS Z 8703に規定する50 %とする。大形チャンバー
は,次の条件の範囲内で制御する。
温度 : (28±1.0)℃ 相対湿度 : (50±5)%
なお,温湿度依存性を確認するために,その他の温湿度条件で測定を行うことが望ましい。
試験場所の空気と大形チャンバー内との温度及び相対湿度が異なるため,大形チャンバーの中に試験
体・試験片を入れるとき,大形チャンバー内の環境に初期的な変動が観測されることがあるので,これら
の変動は記録する。
注記 温度及び相対湿度は,放散速度に大きな影響を与える。
温度及び相対湿度の範囲は,時変動を示すものであり,大形チャンバー内の温度分布及び湿度分布を極
力生じさせないようにする。

7.3 供給空気及びバックグラウンド濃度

  供給空気及びバックグラウンド中のTVOC濃度は,放散試験に影響を及ぼさない程度の50 μg/m3以下と
することが望ましい。また,単一の測定対象物質は5 μg/m3以下とすることが望ましい。
なお,加湿のときに使用する純水には,影響を及ぼすような対象化学物質が極力少ないものとする。JIS
K 0557に規定するA1以上の水で,対象成分を検出しないものとする。

7.4 物質伝達率

  大形チャンバー内における建築材料などの表面の物質伝達率は,水蒸気に換算して918 m/h程度が望
ましい。
注記 物質伝達率の大小は,蒸散支配による放散の場合に影響を及ぼすことがある。影響の度合いは
基材によって異なる。逆に,内部拡散支配による放散の場合は,物質伝達率の影響が少ない。

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濃度分布を生じさせないように,適切なかくはんを行う。大形チャンバー内の濃度をなるべく均一にす
るためのかくはんファンを設置する場合は,物質伝達率が18 m/h以上となるような強制対流場を作り出さ
ない。
物質伝達率918 m/hは,建築材料などの表面を流れる雰囲気空気の風速で,おおむね0.10.3 m/sに相
当する。

7.5 単位面積当たりの換気量及び換気回数

  定常状態では,チャンバー出口濃度は,放散試験条件を設定する場合のパラメータとして選択される単
位面積当たりの換気量(Q/A)に左右される。
換気回数は,(0.5±0.05)回/hを標準とする。
異なる大形チャンバーから得られた結果を比較する場合には,換気回数の試料負荷率に対する比(n/L
値)を同一条件とする。
注記 換気回数n及び試料負荷率Lの比(n/L値)は,放散速度に影響を与えることがある。

8 試験条件の検証

8.1 試験条件のモニタリング

  温度,相対湿度及び換気量は,次の精度で連続的にモニタリングして記録する。
− 温度 ±0.5 ℃
− 相対湿度 ±5 %
− 換気量 ±10 %
温度,相対湿度は,入口又は出口空気を測定してもよい。

8.2 大形チャンバーの気密性

  大形チャンバーの気密性は,圧力維持及び/又は降下測定,又は入口及び出口空気の流量同時比較測定,
又はトレーサーガス希釈の測定によって,年1回以上の頻度で確認する。

8.3 大形チャンバー内の換気回数

  大形チャンバー出口又は入口に流量計を設置し,測定した換気量Qをチャンバーの容積Vで除したもの
を換気回数nとする。
換気回数の設定値の変動はなるべく少なくする。通常,トレーサーガスを用いた換気回数の確認は,年
1回以上の頻度で行うことが望ましい。
流量計を用いて出口で試験を行う場合には,その装置による背圧のため,大形チャンバーに流れる流量
が下がる可能性に注意する。

8.4 大形チャンバー内の換気性能係数

  換気性能係数を測定するための試験は,大形チャンバー内に何も入れない状態で行う。
一定の濃度及び流量でトレーサーガスを供給空気に混合させてから,大形チャンバー出口で濃度の経時
変化を測定する(ステップアップ法)。その経時変化から大形チャンバー内の換気性能係数ηは,名目換気
時間τnを平均空気齢 で除した値で算出される。換気性能係数は,90 %以上が望ましい。大形チャン
バー出口での空気齢は,名目換気時間と一致する。また,大形チャンバー内のトレーサーガスをファンな
どによって完全混合した後,清浄な空気を供給し,大形チャンバー出口で濃度の経時変化を測定してもよ
い。その経時変化から大形チャンバー内の換気性能係数を算出する(ステップダウン法)。
経過時間tにおける大形チャンバーの排気におけるトレーサーガス濃度ρe(t),経過時間が十分長いとき
(平衡時)のトレーサーガス濃度ρs,初期のトレーサーガス濃度ρ(0) とすると,それぞれ次の式で表され

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る。
換気性能係数 η τn /τ (1)
名目換気時間 τn V/Q (2)
e)
Q (t
ステップアップ法 τ t1 dt (3)
V 0
s
Q e t)
(dt
ステップダウン法 τ t (4)
V 0 )0(

8.5 回収率及びシンク効果

  測定対象物質の回収率及びシンク効果は,対象成分の標準ガス,パーミエーションチューブなどを用い
て発生させた既知濃度ガスを用いて測定する。ここで測定する濃度は,附属書Eに示す値と同程度である
ものとする。
大形チャンバーの性能は,トルエンについて80 %以上の平均回収率を確保できるものとする。その他の
測定対象物質の回収率を測定してもよい。
親水性の測定対象物質の回収率を測定する場合は,除湿空気を使用する。
注記 シンク効果若しくは漏れがある場合,又は校正精度が低い場合は,試験で最低限必要な精度を
満たすことが困難となる。
平均回収率は,大形チャンバーの入口濃度に対する出口濃度から算出する。
回収率の算出においては,測定濃度からバックグラウンド濃度は差し引かない。

8.6 表面気流測定

  直接,風速が計測できる場合は,微風速計を用いて雰囲気空気の風速が,0.10.3 m/sにあることを確認
する。この場合,必要に応じてかくはん装置を設置し,所定の風速が得られるようにできる限り調整を行
う。

9 大形チャンバーの準備

  試験を開始する前には,大形チャンバーの洗浄を行う。大形チャンバーを水拭き清掃する。十分にバッ
クグラウンド濃度が下がることを確認すれば,清浄な空気で長時間換気する方法でもよい。

10 試験体・試験片の準備

10.1 一般

  放散試験の準備終了後,サンプルを運搬用の包装から取り出し,試験体・試験片を準備する。試験体・
試験片を大形チャンバー内に設置した時点を試験開始とする。
試験体・試験片の保存及び試験体・試験片の準備に関する事項を,附属書Dに示す。
a) サンプル全体を試験体とする場合 できる限り大形チャンバーの外で,サンプルから運搬用の包装材
を取り除き,試験体として大形チャンバーに搬入する。大形チャンバー内で組立作業を行う場合は,
チャンバー内に包装材などが残らないように十分注意する。
b) サンプルの施工状態を試験体・試験片とする場合 施工状態をシミュレートするために製作するサン
プルは,大形チャンバーの外で作業を行い,所要の養生を行った後,大形チャンバー内に施工状態に
極めて近い状態で設置する。
c) シール工程
1) シール工程を行わない場合 試験体・試験片からの放散部位を限定しない条件で対象化学物質の放

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散速度を測定する場合は,端,裏面などをシールしない。
2) シール工程を行う場合 施工状態をシミュレートする場合など,試験体・試験片からの放散部位を
限定する条件で対象化学物質の放散速度を測定する場合は,試験体・試験片を施工状態に近い状態
で設置するか,端,裏面に相当する部分をアルミニウムはくなどを用いてシールしてもよい。
小口だけから放散する建築材料を測定する場合は,他の部分をシールして測定する。
面材の場合,シール作業の代わりに,2枚の建築材料をはり合わせることで裏面からの放散を防
ぐこともできる。

10.2 試験体可動部(扉など)の開閉

a) 扉を閉じる場合 試験体の可動部(扉,引出しなど)を閉じた条件で測定する場合,報告書に扉など
を閉じて測定した旨を記載する。
b) 扉を開く場合 試験体の可動部(扉,引出しなど)を開いた条件で測定する場合,報告書に扉などを
開いて測定した旨を記載する。

11 測定方法

11.1 バックグラウンド濃度及びトラベルブランク

  新しく放散試験を開始する前に,空の大形チャンバーについて1日換気を行った後でバックグラウンド
濃度を測定し,定量する。トラベルブランクは,空気捕集ごとに測定し,定量する。
なお,バックグラウンド濃度及びトラベルブランクは,放散試験に影響を及ぼさない程度の50 μg/m3以
下とすることが望ましい。

11.2 大形チャンバー内での試験体・試験片の位置

  試験体・試験片は,大形チャンバーの中央部に置き,必要であれば架台を用意し,空気が試験体・試験
片の放散面上を均一に流れるように努力する。
なお,施工状態をシミュレートする場合は,この限りではない。

11.3 チャンバー出口濃度を測定する時間

  a)によって試験を開始した後に,事前に設定した時間に従って,11.4によって空気捕集を開始する。
a) 放散試験 大形チャンバーを流れる換気流量及び空気の漏れのないことを確かめ,空気捕集の間の排
気流量が,空気捕集時の流量によって,影響を受けないことを確認する。
空気捕集は,通常,試験開始から1日,3日,7日,(14±1)日及び(28±2)日経過後に採取する
ものとし,追加の空気捕集を行ってもよい。
なお,測定した試験開始からの経過日数を,報告書に記載する。
注記1 試験の目的に応じて,放散量を過小評価しない範囲でこれら以外の測定日数を選んでもよ
い。
注記2 減衰のデータが必要な場合,空気捕集は試験開始から28日経過以降も採取してもよい。
注記3 測定限界以下になった場合には,試験を終了してもよい。
b) 試験体・試験片の保存 長期間の試験で,試験体・試験片を大形チャンバーから取り出す場合は,通
常,測定時と同じ条件で保存する。試験体・試験片は,空気が自由に接触できるような状態にすると
ともに,他の試験体・試験片又は保存場所からの影響をなるべく受けないように注意する。通常,空
気を捕集する1日以上前までに大形チャンバー内に戻す。
高温での保存は避ける。

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