JIS A 1912:2015 建築材料などからの揮発性有機化合物(VOC),及びホルムアルデヒドを除く他のカルボニル化合物放散測定方法―大形チャンバー法 | ページ 3

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11.4 空気捕集

  通常,捕集管として,VOCの捕集にはTenax TA 1)吸着管を,ホルムアルデヒドを除く他のカルボニル
化合物の捕集には2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(DNPH)カートリッジを使用する。
空気捕集の方法は,JIS A 1901に準じる。ただし,VOC用捕集管はJIS A 1965の6.1(サンプラ)又は
JIS A 1966の6.1(サンプラ),ホルムアルデヒドを除く他のカルボニル化合物用捕集管はJIS A 1962の6.1.1
(サンプリングカートリッジ)による。
注1) ここに示す“Tenax TA”は,この規格の使用者の便宜のために,一般に入手できるものとして
掲げた。同じ効果を得られることを証明することができれば,これと同等の他のものを用いて
もよい。

12 分析方法

12.1 VOCの分析

  Tenax TA 1)吸着管などを加熱脱着装置に取り付け,加熱によってVOCを脱離させる。VOCの分析法は,
JIS A 1965の箇条9(分析),JIS A 1966の箇条10(手順)又はJIS K 0123の10.(定量分析)による。

12.2 ホルムアルデヒドを除く他のカルボニル化合物の分析

  DNPHカートリッジ内のカルボニル化合物DNPH誘導体は,アセトニトリルを用いて溶解して脱離させ
る。ホルムアルデヒドを除く他のカルボニル化合物の分析法は,JIS A 1962又はJIS K 0124の箇条8(操
作)による。

13 放散速度の算出方法

  試験体・試験片を大形チャンバーに入れてからの経過時間tにおける単位個数当たりの放散速度quは,
式(5) による。チャンバー出口濃度ρtは,経過時間tにおける対象VOC,TVOC又はホルムアルデヒドを
除く他のカルボニル化合物の濃度を表す。また,式(6) による単位面積当たりの放散速度qAを用いてもよ
い。
バックグラウンド濃度ρbが,TVOCについて50 μg/m3を超えた場合は50 μg/m3まで,単一物質について
5 μg/m3を超えた場合は5 μg/m3まで差し引くことができる。
単位個数当たりの放散速度qu
(ρt Q
ρb )
qu (5)
u
単位面積当たりの放散速度qA
(ρt Q
ρb )
qA (6)
A
ここに, ρt : 経過時間tにおける対象化学物質のチャンバー出口濃度
(μg/m3)
ρb : バックグラウンド濃度(μg/m3)
Q : チャンバーの換気量(m3/h)
u : 試験体・試験片の個数(unit)
A : 試験体・試験片の表面積(m2)
目的によっては,放散速度qを時間/濃度の関係から,例えば,濃度/時間のデータによる減衰モデル
を適用することによって算出する方法もある。
放散速度qは,換気回数nと試料負荷率Lとを用いて表現することもできる。

――――― [JIS A 1912 pdf 11] ―――――

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単位個数当たりの放散速度qu
(ρt Q
ρb ) n
qu (ρt ρb ) (5')
u Lu
単位面積当たりの放散速度qA
(ρt Q
ρb ) n
qA (ρt ρb ) (6')
A La
ここに, n : 換気回数(回/h)
Lu : 個数単位の試料負荷率(unit/m3)
La : 面積単位の試料負荷率(m2/m3)
単位長さ当たりの放散速度ql,単位体積当たりの放散速度qvは,式(7) 及び式(8) による。
単位長さ当たりの放散速度ql
(ρt Q
ρb ) n
ql ρb )
( ρt (7)
l Ll
単位体積当たりの放散速度qv
ρb )
( ρt Q n
qv (ρt ρb ) (8)
v Lv
ここに, l : 試験体・試験片の長さ(m)
v : 試験体・試験片の体積(m3)
ここで定義されている換気回数は,空のチャンバーに対する換気回数。実際には試験体・試験片の体積
によってチャンバーの実効容積は,減少する。

14 報告書

  試験報告書には,この規格に基づいて実施した旨のほか,通常,次の内容を記載する。
a) 試験機関
− 試験機関の名称及び所在地
− 試験責任者名
− 試験実施日
b) 製品の種類
− 製品の種類(可能な場合は製品名)
− サンプルの選択プロセス(抜取り方法など)
− 製品の経緯(製造年月日,ロット番号,試験機関到着日,包装から取り出した日時及び試験体・試
験片を準備した日時など)
c) 結果
− 規定の経過時間における対象化学物質,及び/又はTVOCの放散速度
d) データ分析
− 測定されたチャンバー出口濃度から特定の放散速度qを算出するときは,用いた方法(数学的モデ
ル又は数式)
− 温湿度条件を変更して測定した場合,算出に用いた換算式
e) 試験条件
− チャンバー条件(温度,相対湿度,換気回数及び物質伝達率)
− 試験体・試験片の台数,面積及び試料負荷率

――――― [JIS A 1912 pdf 12] ―――――

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− シール工程の有無
− 対象化学物質の空気捕集に関する情報(使用した捕集管,空気捕集量,大形チャンバーに入れてか
ら捕集開始までの経過時間,空気捕集時間の長さ及び回数など)
− 試験途中の試験体・試験片のチャンバーからの取出しの有無
− 試験体・試験片の設置位置(中央又は施工状態)
f) 測定機器
− 使用した器具及び方法に関する情報(チャンバー,試験体・試験片のシール材,空気清浄装置,温
度・湿度制御装置,流量計,空気捕集装置,分析装置など)
g) 品質管理・品質保証
− 対象化学物質のバックグラウンド濃度及びトラベルブランク
− シンク効果を評価するための回収率データ
− 測定回数
− 複数回空気捕集を行った場合は,その個々の分析結果
− 温度,相対湿度及び換気回数の精度
− 品質保証の報告

――――― [JIS A 1912 pdf 13] ―――――

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附属書A
(参考)
2 m3大形チャンバーの例
この附属書は,本体に基づく装置の参考として記載したものであり,規定の一部ではない。
A.1 2 m3大形チャンバーシステムの構成
例示した2 m3大形チャンバーは,建材の素板全体の試験が可能なチャンバーである。チャンバーは,温
度制御のためアウターチャンバーとインナーチャンバーとで構成する二重槽構造である。インナーチャン
バーの容量は,2 m3である。装置は,試験温度維持機能,250 ℃までの加熱機能,かくはん機能,清浄空
気供給機能,温度・湿度制御機能,流量制御機能,空気捕集機能(サンプリングポンプ),空気圧縮機能な
どをもつ機器で構成する。
A.2 構成機器
A.2.1 一般
図A.1に2 m3大形チャンバーシステム構成図を,図A.2に2 m3大形チャンバーの装置外観図の例を,図
A.3に2 m3大形チャンバー装置立体図の例を示す。主な構成機器は,次のとおりとする。
− 2 m3大形チャンバー
− かくはん装置
− 清浄空気供給装置
− 温度・湿度制御/測定装置
− 流量制御/測定装置
− 空気捕集装置(サンプリングポンプ)
− 分析装置
− 空気圧縮機
A.2.2 2 m3大形チャンバー
インナーチャンバーは,対象化学物質の吸着/再放散の低減及び気密性確保のため,ステンレス鋼板の
全溶接構造とする。試験体・試験片の出入れに使用する扉開口部には,低放散性のパッキン材料を用いる。
A.2.3 かくはん装置
インナーチャンバー内の物質伝達率を制御するため,かくはんファンを装備する。かくはんファンへの
吸着,かくはんファン自体からの対象化学物質の放散が起こらないように,使用する素材に留意する。ま
た,気密性を確保できる構造とする。
A.2.4 清浄空気供給装置
インナーチャンバーには,化学物質の混入の極めて少ない空気を供給する必要があるため,インナーチ
ャンバーに供給する空気は,清浄空気供給装置で化学物質を除去したものを供給する。清浄空気供給装置
は,複数のフィルタから構成し,除去対象物質ごとに適切なフィルタを組み合わせる。これらのフィルタ
を,気密性の高いケースに収めることによって外部からの影響を排除し,清浄度の高い空気を供給する。
A.2.5 温度・湿度制御/測定装置
インナーチャンバー内の温度は,供給する空気そのものではなく,インナーチャンバーの周辺温度を制

――――― [JIS A 1912 pdf 14] ―――――

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御することで間接的にインナーチャンバー内の温度を制御するエアジャケット方式を採用する。インナー
チャンバー内に設置された温度検出端の出力によって,恒温槽の制御温度を調整し,インナーチャンバー
内の温度を制御する。
湿度は,インナーチャンバー内に設置した湿度検出端の出力値に連動した電熱式蒸気加湿器の出力を調
整して自動制御する。加湿に使用する純水は,7.3で規定された水を使用する。
A.2.6 流量制御/測定装置
インナーチャンバーに供給する清浄空気は,規定の換気回数に応じた量を,入口に設置したマスフロー
コントローラで調整し供給する。排気空気は,インバータ制御のファンを用いて制御する。
A.2.7 空気捕集装置(サンプリングポンプ)
インナーチャンバーの排気管に設けられたサンプリングポートから,空気を捕集できる構造とする。サ
ンプリングポンプは,マスフローコントローラを内蔵し,規定の捕集流速で捕集する。捕集流量又は捕集
時間のいずれかによって自動停止する機能をもつ。
A.2.8 分析装置
分析は,Tenax TA 1)(12.1参照)でサンプリングし,加熱脱着装置を用いて脱離し,水素炎イオン化検
出器付きガスクロマトグラフ(GC/FID),又は質量分析計付きガスクロマトグラフ(GC/MS)で分析する。
また,ホルムアルデヒドを除く他のカルボニル化合物の分析は,DNPH捕集管でサンプリングし,アセト
ニトリルで溶媒抽出し,高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)で分析する。詳細は,6.10による。
A.2.9 空気圧縮機
インナーチャンバーに供給する空気は,清浄空気供給装置を通して清浄度を高め,空気圧縮機で空気を
供給する。さらに,空気圧縮の場合の除湿効果とドライヤーユニット,電熱式蒸気加湿器との組合せによ
って,周囲空気の条件によらず,広範な湿度制御が可能となる。
A.3 機能
2 m3大形チャンバーは,次の機能をもつものとする。
a) ベーキング機能 インナーチャンバー内壁面の温度を250 ℃に維持するベーキング運転機能,及び多
量の清浄空気を供給し,槽内の有機物をパージすることが可能なもの。
b) 自動運転機能 インナーチャンバーに装備したセンサーからの入力に従い,機器の自動制御,自動運
転が可能なもの。

――――― [JIS A 1912 pdf 15] ―――――

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