JIS C 1400-21:2005 風力発電システム―第21部:系統連系風車の電力品質特性の測定及び評価 | ページ 3

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る。風速15 m/sを超える範囲の測定結果が含まれる場合,高風速サイトの場合は8.3に示す
手順による結果の信用性が高くなる。
3. 変圧器備え付けで設計される風車があるが,電気的特性の測定は風車の接続点で行われるべ
きである。試験が行われるのが変圧器の低圧側又は高圧側接続点かを決定するのは,風車の
供給者である。変圧器の出力端電圧が変わっても,風車の電力品質には影響を及ぼさない。
したがって,変圧器の出力端電圧が変わっても,定格電圧及び定格電流の記述が変更される
場合,別の評価は不要である。
7.1.1 試験条件 必要な試験条件を,次に示す(備考1.参照)。
少なくとも評価対象風車のPmcにおける皮相電力と同一の定格容量の変圧器を通じて,中圧系統へ直接
風車を連系しなければならない。
中圧系統の風車連系点の短絡容量は,評価対象風車のPmcにおける皮相電力の少なくとも50倍でなけれ
ばならない。電力系統の短絡容量は,風車の試験に先立ち,計算又は電力系統運用者への問合せによって
求められる(備考2.参照)。
風車が発電しない状態での風車端末における,第50次までの高調波を含む電圧総合ひずみ率実測値の
10分間平均値は,5 %未満でなければならない。電圧総合ひずみ率は,風車試験前の測定によって決定し
てもよい。
0.2 秒平均として測定された系統の周波数は,公称周波数の±1 %以内でなければならない。また,0.2
秒平均として測定された系統周波数の変化率は,0.2秒当たりの変化率が,公称周波数の0.2 %未満でなけ
ればならない。系統周波数が非常に安定しており,十分上記範囲にあることが既知の場合(大規模な電力
系統については一般的なケース)は,この周波数条件は,これ以上の評価を必要としない。それ以外の場
合は,測定の期間中系統周波数を記録し,上記周波数条件を満たさない測定データは排除しなければなら
ない。
10分平均として測定された風車端末における電圧は,公称電圧の±5 %以内でなければならない。系統
電圧が非常に安定しており,十分上記範囲にあることが既知の場合(電気的に強い電力系統に風車が連系
された場合に一般的なケース)は,この電圧条件はこれ以上の評価を必要としない。それ以外の場合は,
測定の期間中電圧を記録し,上記電圧条件を満たさない測定データは排除しなければならない。
10分平均として測定された風車端末における電圧不平衡率は,2 %未満でなければならない。電圧不平
衡率は,IEC 61800-3 B3に従って決定できる。電圧不平衡率が十分上記範囲にあることが既知の場合は,
この条件は,これ以上の評価を必要としない。それ以外の場合は,測定の期間中電圧不平衡率を記録し,
上記条件を満たさない測定データは,排除しなければならない。
10分間の測定期間から得られる乱流強度は,8 %と16 %との間になければならない。乱流強度は,障
害物及び地形の変化の方位区分での特定,又は風速測定に基づき評価しなければならない。いずれの場合
も,上記乱流強度以外の条件で得られた測定データは,排除しなければならない(備考3.参照)。
測定環境条件は,風車の製造業者が指定する風車及び関係装置の動作環境に従わなければならない。測
定環境条件は,一般項目として測定結果報告書に記述することが必要であるが,通常の場合は,測定環境
条件のオンライン測定までは要求しない(備考4.参照)。
備考1. この節で記述する測定条件は,信頼できる試験結果を得るために必要なものであり,信頼性
がある電力系統連系及び風車の運転の条件と混同してはならない。
2. 風車自身の影響,ほかの発電設備,需要設備などの影響によって,風車接続点において大き
く電圧が変化することがある。風車に起因する電圧変化は,電気的に強い系統へ連系するこ

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とによって制限可能である。前記対応によって,試験目的のための電圧変化の合理的な制限
が可能である。
3. 風車の設計によっては,最大出力実測値,電圧変動などの電力品質特性は,ある程度乱流強
度に依存する。基本的には,乱流強度が低いサイトにおいて,7.6.2及び7.6.3に記述する手
順によって測定・決定された特性値は,乱流強度がより高いサイトにおいて測定された特性
値よりも小さい。しかし,7.1.1で記述されたように,電力品質特性値は,乱流強度が8 %
16 %の間の条件で得られた測定だけから決定しなければならない。このことは,試験結果が
通常の乱流条件を代表するということを保障している。
4. 風車の設計によっては,最大出力実測値は空気密度に依存する。したがって,空気密度が低
いサイトで測定し,7.4に記述する手順によって決定される最大出力実測値は,空気密度がよ
り高いサイトで測定するものより低い。しかし,空気密度範囲に関する制限を設けないこと
による不確かさは,関連する追加的測定装置手順・測定手順のための費用を正当化しない。
7.1.2 試験装置 測定手順の記述は,図1に示すような測定要素で構成されると仮定する。
備考 例えば,アナログ変換器及びフィルタの機能を,デジタルデータ収集システムの一部としてソ
フトウェアで置き換えることができる。さまざまな要素が,物理的に一つの要素に分離又は編
入され得る。
図 1 仮定した測定システムの構成
測定機器は,表1に示された仕様に適合しているものとする。
表 1 測定機器必要条件の仕様
機器 必要な確度 適合規格
計器用変圧器 1.0クラス IEC 60186
変流器 1.0クラス IEC 60044-1
皮相電力変換器 1.0クラス IEC 60688
有効電力変換器 1.0クラス IEC 60688
無効電力変換器 1.0クラス IEC 60688
風速計 ±0.5 m/s −
フィルタ+A/D変換器+データ収集システム フルスケールの1 % −
測定機器レンジ及び応答は,関連する変動を測定するのに十分であるものとする。必要なレンジ応答は,
測定によって異なる。
一般に,測定レンジは,最高の全体精度を得るために可能な限り小さいものとする。適切なレンジを選
択するための指標(備考参照)を後節に記載する。
風速計を除き,センサ,変換器及びローパスフィルタの総合応答は,7.2から7.7に指定されているカッ
トオフ周波数よりも速いものとする。ローパスフィルタをかけた信号を収集するために,データ収集シス
テムのサンプル率は,常にカットオフ周波数の少なくとも2倍であるものとする。
理想的には,風車の後流及び風車自身が障害とならない位置に設置したハブ高さの風速計に基づき,風
速を測定すべきである。ロータ直径の2.5倍離れた風上位置に風速計を設置すれば,一般的にはよい。代
替として,ハブ高さの風速は,より低い位置での測定からの計算又は出力測定及び風車のパワーカーブに
関する知識から類推される修正ナセル風速とすることができる。いずれにしても,風速計の設置場所に起

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因する不確かさは,±1 m/sを超えてはならない。
備考 風速計に関しては,10分間平均値を計算するだけなので,応答時間に対する必要条件は定めな
い。

7.2 定格値

 製造業者からの情報に基づき,定格値を特定しなければならない。

7.3 最大許容出力

 製造業者からの情報に基づき,最大許容出力Pmcを確認する。

7.4 最大出力実測値

 最大出力実測値は,60秒平均値P60及び0.2秒平均値P0.2として,次の方法を用い
て測定する。
a) 測定は,連続運転時だけデータの収集を行う。
b) 出力は,風車接続点で測定する。
c) 測定は,カットイン風速から15 m/sまでの各風速ビンで,少なくとも5個の10分間時系列出力デー
タを収集する。ここで,風速は,測定データの10分間平均値とする。
d) 風速は,7.1.2に従って測定する。
e) 測定データは,点検し,疑わしいデータは排除する。
f) 測定された出力は,ブロック平均によって0.2秒平均データ及び60秒平均データに変換する。
g) 0.2は,測定期間記録された最も高い有効な0.2秒平均値として決定する。
h) 60は,測定期間記録された最も高い有効な60秒平均値として決定する。
測定は,図1に示すように構成した測定システムで,表1に示す仕様の計器用変圧器,変流器,電力変
換器及び風速計を適用して実施する。出力測定のカットオフ周波数は,少なくとも5 Hzとする。参考まで
に,出力測定のフルスケールレンジは,風車定格出力の2倍にしてもよい。

7.5 無効電力

 有効電力及び無効電力の関係は,6.5に従い測定し,次の手順を適用する。
a) 測定は,連続運転時だけでデータの収集を行う。
b) 有効電力及び無効電力は,風車接続点で測定する。
c) 測定は,カットイン風速から15 m/sまでの各風速ビンで,少なくとも5個の10分間時系列の有効電
力及び無効電力データを収集する。ここで,風速は,測定データの10分間平均値とする。
d) 収集されたデータは,10分間ごとのブロック平均を適用することによって,10分間平均データへ変換
する。
e) 10分間平均データは,ビンの方法によって分類され,無効電力が定格出力の0,10,...90,100 %と
して表に記述する。ここで,0,10,...90,100 %は,出力ビンの中央点とする。
f) mc,P60及びP0.2における無効電力は,測定された有効電力と無効電力との関係の外挿法で決定する
か,又は必要に応じて上記測定を拡張して決定する。
測定は,図1に示すように構成した測定システムで,表1に示す仕様の計器用変圧器,変流器,有効電
力及び無効電力変換器を適用して実施する。この節に示す測定結果は,10分平均値を示すだけなので,有
効電力及び無効電力測定には,カットオフ周波数の必要条件を規定しない。

7.6 電圧変動

 7.1.1に記述されているように,測定対象風車は,中圧系統へ連系されなければならない。
中圧系統は,測定が行われる風車接続点において,大きな電圧変動を引き起こす変動負荷を通常含んでい
る。さらに,風車によって引き起こされる電圧変動は,電力系統の特性に依存する。しかし,電力品質特
性評価の目的は,電力系統の状態に依存しない結果を提供することである。これを達成するため,この規
格は,測定対象風車以外に電圧変動源がない,風車接続点における電圧及び電流の時系列実測データによ
って,電圧変動を模擬する仮想回路を用いる手法を提供する。
仮想回路の適用については7.6.1に記述する。電圧変動の測定手順は,連続運転時における手順(7.6.2

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参照)と切換運転時における手順(7.6.3参照)に分けられる。この分離は,連続運転時における風車から
のフリッカ放射は,統計的雑音の特性をもち,切換運転時におけるフリッカ放射及び電圧変化は,限られ
た時間,すなわち,非同時発生的特性をもつということを反映している。
7.6.1 仮想回路 仮想回路の単相図を,図2に示す。
図 2 仮想電圧模擬のための仮想回路
仮想回路は,u0(t)の瞬時電圧をもつ理想相電圧源,抵抗Rfic及び直列接続されたインダクタンスLficをも
つ回路インピーダンスで表される。風車は,瞬時線電流の実測値である電流源im(t)で表される。この簡単
なモデルは,次に示す模擬の瞬時電圧ufic(t)を与える。
dim(t)
ufic(t)=u0(t)+Rfic im(t )+Lfic (1)
dt
理想電圧源u0(t)は,様々な方法で発生可能であるが,次に示す二つの特性を満足しなければならない。
a) 理想電圧源は,変動がないものとする。すなわち,電圧フリッカは零でなければならない。
b) 0(t)は,測定された電圧の基本波と同じ電気角αm(t)をもたなければならない。このことは,
ufic (t)−u0 (t)
t である限り,ufic(t)とim(t)間の位相差が適切であることを保障する。
u0 )(
上記特性を満足するために,u0(t)は,(2)式によって定義される。
2
u0 (t) = Un sin [m(t) ] (2)
3
ここに, Un : 系統公称電圧の実効値
測定された電圧の基本波電気角は,(3)式で記述できる。
t
αm (t)=2 π (3)
f(t) dt+α0
0
ここに, f(t) : 周波数(時間的に変化する場合がある。)
t : 時系列の始めからの時間
α0 : t = 0における電気角
Rfic及びLficは,(4)式を適用して計算される適切な回路インピーダンス位相角Ψkを得るために選択する。
2π fg Lfic Xfic
tan(Ψk )= = (4)
Rfic Rfic
仮想回路の3相短絡容量は,次の(5)式で計算される。
2
Un
S k,fic= (5)
2 2
Rfic +Xfic
Sk, fic及びSn間の適切な比が,適用されるフリッカメータアルゴリズム又は測定器が,IEC 61000-4-15
に規定される測定範囲にあるPstを与えることを確実にするために使用されなければならない。IEC
61000-4-15に規定されている手順の目的は,特定の電圧変動がフリッカを引き起こすかどうかを決定する

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ことであり,小さい電圧変動を正確に評価するには適さない。フリッカメータのレンジ内で模擬された電
圧変動を得るには,この規格は,参考としてSk, ficとSnの比50を提示するが,その正しい比を選択する
のは,評価者の責務である。選択された比がフリッカメータの適正なレンジの外にない限り,実際の比は,
その結果得られる係数に影響を及ぼさない。
7.6.2 連続運転 フリッカ係数c(Ψk,va)は,6.6.1に指定されているように決定する。これは,測定及び
シミュレーションによって行われる。
この項は,測定手順について記述する。参考資料を,附属書B.1に示す。
次の測定を,実行する。
a) 3相の瞬時線電流及び3相の瞬時相電圧が,風車接続点で測定する(備考1.参照)。
b) 測定は,少なくとも15個の10分間時系列の瞬時電圧値及び瞬時電流値(5回の試験及び3相分)が,
カットイン風速と15 m/sの間のそれぞれの1 m/s風速ビンで収集されるものとする。ここで,風速は,
10分間の平均値として測定する。
c) 風速は,7.1.2に従って測定する。
d) 切換運転は,風車の連続運転中に発生する力率改善コンデンサの開閉のような場合を除き,排除され
る。
測定は,図1に示すように構成した測定システムで,表1による仕様をもつ計器用変圧器,変流器及び
風速計を適用することによって実行する。電圧及び電流測定のカットオフ周波数は,少なくとも400 Hz
であるものとする(備考2.参照)。
測定は,回路インピーダンス位相角及び風速分布の関数として,風車のフリッカ係数を決定するために
行わなければならない。これは,6.6.1で指定されているように各回路インピーダンス位相角及び風速分布
において,次の手順を繰り返し実行する。
はじめに,10分間で測定された時系列の電圧及び電流データセットのフリッカ係数を,決定する。この
手順は,次の1)3)のステップで行われる。
1) 測定された時系列データは,電圧の時系列データufic(t)を得るために(1)式と結合する。
2) 電圧の時系列データufic(t)は,各10分間の時系列データの仮想回路における一つのフリッカ放射値
Pst,ficを得るため,IEC 61000-4-15に従って,フリッカアルゴリズムに入力する。
3) フリッカ係数は,次の式を適用することによって,それぞれの計算されたフリッカ係数で決定する。
Sk,fic
c(Ψk )=Pst, fic (6)
Sn
ここに, Sn : 風車の定格皮相電力
Sk,fic : 仮想回路の短絡容量
備考3.参照
次に,仮定された風速分布に関連したフリッカ係数が発生する頻度をスケール化するために,重
み係数が各風速ビンで決定する。重み係数は,次の4)6)の手順によって求められる。
4) 6.6で記述されているように,i番目の風速ビン内での風速fy,iの仮定発生頻度は,レイリー分布に
一致する。すなわち,(7)式が使用される。
2 2
vi−5.0 vi+5.0
fy,i = exp −π π
− exp − (7)
4 va 4 va
ここに, vi : i番目の風速ビンの中央点

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JIS C 1400-21:2005の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61400-21:2001(MOD)

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