JIS K 0121:2006 原子吸光分析通則 | ページ 5

18
K 0121 : 2006



分析対象元素の濃度 検量線溶液の添加濃度
図 23 検量線(標準添加法)
備考 この方法は,バックグラウンド吸収が無視できるか,又はバックグラウンド吸収が補正されて
おり,かつ,検量線が良好な直線性を保つ場合にだけ有効である。

9.2 定量値の表し方

 定量値は,溶液試料に対しては体積に対する質量比(ng/L,g/L,mg/Lなど)又
は質量に対する質量比(ng/kg,g/kg,mg/kgなど)で,固体試料に対しては質量に対する質量比(ng/kg,
g/kg,mg/kgなど)で適切と考えられる単位を用いて濃度を表示する。

9.3 干渉

 分析値に影響を及ぼす干渉は,分光干渉,物理干渉,化学干渉などに分けられる。
a) 分光干渉
1) 分析に使用するスペクトル線が,他の近接線と完全に分離できない場合に起こり,分析感度の低下
及び検量線の直線領域を狭くする。
2) 分析に使用するスペクトル線が,試料原子化部で生成される分子種によって吸収されたり(分子吸
収),試料のミスト及び固体粒子によって散乱される(光散乱)場合に起こり,見かけの吸光度を大
きくする。バックグラウンド補正を行うことで,干渉を除去できる。
b) 物理干渉 試料溶液の粘性,表面張力などの物理的条件の影響によって起こるもので,ネブライザー
の噴霧効率が変化し,吸光度が変化する。検量線作成用溶液と試料溶液との組成をほぼ同じくするこ
とによって,干渉を除去できる。
c) 化学干渉
1) フレーム及び電気加熱炉中で原子がイオン化することによって,基底状態の原子数が減少し,吸光
度が低下する。イオン化エネルギーの低いアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の場合に多く,
高温ほどその程度が著しい。
2) フレーム及び電気加熱炉中で分析対象元素が共存成分と作用することによって,解離しにくい化合
物が生成し,吸光度が低下する。また,電気加熱炉中で分析対象元素が共存成分と低沸点の化合物
とを生成し,灰化段階で蒸発することによって吸光度が低下する。

9.4 干渉の補正

 干渉補正は,次による。
a) バックグラウンド補正法 5.7のバックグラウンド補正用光学系のいずれかを用いて補正を行う。
b) 干渉抑制剤 フレーム原子吸光分析又は電気加熱原子吸光分析において,分析対象元素のイオン化

――――― [JIS K 0121 pdf 21] ―――――

                                                                                             19
K 0121 : 2006
[9.3 c) 1)]による吸光度の低下の抑制,及び分析対象元素と共存成分との反応による吸光度の低下
の抑制[9.3 c) 2)]などによる吸光度低下の抑制などのために用いられる試薬。解除剤,保護剤などと
も呼ばれる。前者の例としては,ナトリウムの定量において,カリウムを添加するとカリウムの方が
先にイオン化するため,ナトリウムのイオン化が抑制されてナトリウムの吸光度が増加することなど
が挙げられる。後者の例としては,カルシウムの定量におけるりん酸塩の干渉を除去するためにスト
ロンチウムを添加して,りん酸塩と優先的に反応させること,電気加熱原子吸光分析において,硝酸
パラジウム(II),硝酸マグネシウム,アスコルビン酸などを加え,分析対象元素の気化損失を抑制した
り,共存成分の気化による除去を促進したりなどすることが挙げられる。さらに,8.3.4 b)に規定する
活性アルミナなども干渉抑制剤である。また,一般に電気加熱原子吸光分析では,マトリックスモデ
ィファイヤー(Matrix modifier)ともいわれる。これらの試薬は,試料溶液だけでなく,検量線作成用溶
液にも添加する。分析対象元素を不純物として含まず,分析線波長付近にバックグラウンド吸収を示
さないものであることが望ましい。

9.5 データの質の管理

 分析結果の信頼性を確保するためには,使用する装置,測定条件,測定操作な
どを適正に選択することが望ましい。
a) 空試験値の測定 検量線作成後,検量線作成用空試験用溶液を測定し,装置に対する分析対象元素の
バックグラウンドを確認する。
b) 検量線の確認 検量線作成後,中間濃度の検量線作成用溶液を測定し,検量線の正当性及び装置性能
を確認する。
c) 操作空試験値の測定 実験室環境からの汚染並びに試料調製のときに用いる試薬及び器具からの汚染
の程度を確認する。
d) 検量線用標準液の確認 検量線作成用溶液とは別の機関が調製したものを使用し,検量線用標準液の
有効性を確認する。検量線作成用溶液とほぼ同じマトリックス濃度に調製するのが望ましい。
e) 標準物質による確認 分析する試料と類似したマトリックスをもつ標準物質を分析し,その分析値を
認証値と比較することによって信頼性を確認する。
f) 希釈分析 試料溶液を5倍程度に希釈して測定し,希釈前の試料溶液の分析値との差を確認する。
g) 併行試験 試料を2個以上に分け,個々の分析値の差を確認する。
h) 添加回収試験 試料に分析対象元素を既知量添加し,その回収率を確認する。
備考 個別規格に規定されている場合は,その方法による。

9.6 装置の使用判定項目

 次に示す項目について,装置の使用判定の基準となる値をあらかじめ実験に
よって求めておくことが望ましい。実験は,附属書に従って実施する。
備考 個別規格に規定されている場合は,その方法による。
a) 装置検出下限
b) 方法定量下限
c) 短時間安定性
d) 長時間安定性
e) 検量線の妥当性

――――― [JIS K 0121 pdf 22] ―――――

20
K 0121 : 2006

10. 安全

 原子吸光分析は,常時,高圧ガス,爆発性ガス,有害ガスなどを取り扱う作業であるため,高
圧ガス保安法,一般高圧ガス保安規則及びJIS K 0050の14.1(安全・衛生)の規定に従うほか,次の事項
に十分注意しなければならない。
a) 高圧ガス供給設備設置上の注意
1) 高圧ガス容器は,できるだけ戸外に設置し,配管によってガスを装置に導く。
2) 高圧ガス容器は,通風のよい場所に設置し,直射日光及び風雨氷雪にさらされないようにするとと
もに40 ℃以下に保つ。
3) 高圧ガス容器は,2か所以上を固定するなど,地震対策なども考慮する。高圧ガス容器の固定と配
管との一例を,図24に示す。
なお,高圧ガス容器の固定にホルダーを使用する場合は,ホルダーも固定する。
二次圧ゲージ
圧力調節器
一次圧
ゲージ
全長 約2.5m
図 24 高圧ガス容器の固定と配管(一例)
4) 高圧ガス容器類は,静電気を帯びることがあるので,接地を行う。また,燃料ガス容器は,静電気
の帯電防止のため,ゴム,合成樹脂板などの絶縁物の上に置かない。
5) アセチレンの容器は,アセトンの流出防止のため,必ず直立のまま貯蔵又は使用する。
6) アセチレン用配管には,鋼又は銅含有率が62 %以上の合金を使用しない。
7) 一酸化二窒素用圧力調節器は,凍結防止形のものを使用する。
8) 配管のガス漏れの点検は,石けん液を塗布するなどの方法によって行う。
b) 高圧ガス及び装置の取扱い上の注意
1) 高圧ガス供給設備及び装置の円滑な運転と安全な作業を進めるため,点検項目,頻度などを定めて,

――――― [JIS K 0121 pdf 23] ―――――

                                                                                             21
K 0121 : 2006
日常点検及び定期点検を行う。
2) 燃料ガス又は酸素を使用する設備付近では,引火性又は発火性物質を取り扱わない。また,それら
の物質を置かない。
3) 弁の開閉を粗暴に行わない。
4) ガス容器には十分なガスが残っていることを確認のうえ,使用する。
5) アセチレンは,0.1 MPa以上の圧力(ゲージ圧)で使用しない。
6) 緊急時対策として,アセチレン使用中は,アセチレン容器の開閉用ハンドルを取り付けたままにし
ておく。また,弁は1.5 回転以上開かない。
7) 装置の安全機構は,みだりに手を加えたり改造しない。
8) 試料原子化部,接続部などにガス漏れがないことを確かめるとともに,点火前に,使用するバーナ
ーヘッドに適したガス圧及び流量であることを確認する。
9) バーナーに手動で点火するときは,初めに助燃ガスを流し,次に燃料ガスを流して点火する。消火
するときは,初めに燃料ガスを止め,次に助燃ガスを止める。
10) アセチレン・一酸化二窒素に点火するときは,初めにアセチレン・空気に点火し,アセチレン流量
を指定流量まで増加する。次に,切替弁などを使用して空気を一酸化二窒素に切り替える。消火は,
以上の操作の逆を行う。
11) 燃焼中は,ガスの圧力及び流量に注意し,ガスの圧力及び流量に異常が生じた場合は,直ちに消火
する。
12) 燃焼中は,フレームを直視しないこと。必要な場合は,遮光板,保護めがねなどを使用する。
13) 燃料ガスにアセチレンを使用する場合は,銅,銀,水銀などを多量に含む溶液の噴霧を避ける。こ
のような溶液を噴霧すると,チャンバー内に爆発性の金属アセチリドが析出するおそれがある。
14) 過塩素酸及びその塩類を多量に含む溶液を噴霧したときは,分析終了後にチャンバー,バーナーヘ
ッドなどを洗浄する。
15) 万一に備えて,消火器及び消火砂を準備しておく。

11. 測定結果の整理

 測定結果には,次の事項を整理記載する。
a) 測定年月日及び測定者名
b) 試料名
c) 分析対象元素及び定量法の種類
d) 装置の名称,製造業者名及び形式
e) 分析線の波長
f) 分光器のスリット幅
g) 光源ランプの種類及び電流値
h) バックグラウンドを補正したときは,その補正方式
i) 原子化の方式及び条件
1) フレーム方式の場合は,バーナーの種類,燃料ガス,助燃ガスの種類及び流量(又は圧力),フレー
ム中の光束の通過位置
2) 電気加熱方式の場合は,電気加熱炉の種類,発熱体の形状及び材質並びに乾燥,灰化,原子化過程
の温度(又は電流値)及び時間,シースガス,キャリヤーガスの種類及び流量(又は圧力)
3) 冷蒸気方式の場合は,気化・導入の方式及び温度,キャリヤーガスの種類及び流量(又は圧力)

――――― [JIS K 0121 pdf 24] ―――――

22
K 0121 : 2006
4) 水素化物発生装置を用いる場合は,気化・導入の方式。フレーム加熱方式の場合は1) の諸条件,
電気炉加熱方式による場合は,加熱吸収セルの温度とキャリヤーガスの種類及び流量(又は圧力)
5) 水銀専用原子吸光分析装置を用いる場合は,還元気化,加熱気化・導入の方式
j) 試料の前処理
1) 測定試料の調製(灰化,溶解,分離,濃縮などの概要)
2) 測定試料の組成(溶媒,希釈剤,添加剤,共存塩類,酸・アルカリ濃度など)
k) その他必要な事項

12. 個別規格で記載すべき事項

 原子吸光分析による定量方法を規定するに当たっては,少なくとも次の
各項目を規定する。
a) 分析対象元素及び測定濃度範囲
b) 試料採取方法
c) 前処理方法
d) 装置操作条件
e) 定量法
f) 分析結果の表示

――――― [JIS K 0121 pdf 25] ―――――

次のページ PDF 26

JIS K 0121:2006の国際規格 ICS 分類一覧

JIS K 0121:2006の関連規格と引用規格一覧