JIS K 0121:2006 原子吸光分析通則 | ページ 4

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6.1.1 光源部 水銀分析のためのスペクトル(波長 253.7 nm)を発光する光源ランプで,低圧水銀ラン
プを用いる。
6.1.2 測光部 測光部は、次による。
a) 吸収セル 両端に石英ガラス窓をもつガス流通構造のものとする。
b) 検出部 検出部は,5.5による。
6.1.3 データ処理部 データ処理部は,5.6による。
6.1.4 水銀蒸気発生部 試料中の水銀を原子蒸気化する方式は,次による。還元気化方式の一例を図20,
加熱気化方式の一例を図21に示す。
a) 還元気化方式 試料溶液に還元剤を加え,水銀を還元気化させる。
還元容器 水銀除去用活性炭
吸収セル
除湿瓶
低圧水銀ランプ 検出器
図 20 還元気化方式の一例
備考 測定ガスの流路方式には,発生した水銀が吸収セルを通過した後,測定系から除去される開放
送気方式,又は吸収セルを通った水銀を還元容器に戻し,一定の吸収が得られるまで水銀蒸気
を系内で循環させる密閉循環方式がある。
b) 加熱気化方式 試料を加熱し,気化した水銀を捕集管に捕集し,捕集管を再度加熱して水銀を気化さ
せる。
燃焼管 試料ボート
水銀捕集管
吸収セル 水銀除去用活性炭
空気ポンプ
除湿瓶
洗気,除湿ビン
低圧水銀ランプ 検出器
図 21 加熱気化方式の一例

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備考 水銀を捕集するには,担体に金を皮膜した水銀捕集剤を充てんしてある水銀捕集管を用いる。

6.2 附属装置

 必要に応じて,次のものを付加してもよい。
a) 還元気化自動試料導入装置 前処理後の試料溶液,又は試料中の水銀を還元気化させ,自動的に測光
部に導入するなどの機能をもつ装置である。
b) 加熱気化自動試料導入装置 試料ボートを加熱気化部に自動的に導入するなどの機能をもつ装置であ
る。
c) 自動前処理機能付き試料導入装置 自動で試料を酸又はアルカリで前処理後,水銀蒸気発生部に自動
的に導入するなどの機能をもつ装置である。

7. 水,試薬及びガス類

7.1 水

 原子吸光分析法に用いる水は,JIS K 0557に規定するA3又はA4を用いる。

7.2 試薬

 試薬は,次による。
a) 試薬は,該当する日本工業規格(日本産業規格)がある場合には、その種類の最上級品質又は適切な用途のものを用い,
該当する日本工業規格(日本産業規格)がない場合には、分析に支障のない品質のものを用いる(6)。
注(6) 試験の目的によって,有害金属測定用試薬を用いてもよい。
b) 検量線作成用標準液には、国家標準にトレーサブルな標準液(計量標準供給制度に基づき供給されて
いるJCSS[Japan Calibration Service System]のロゴ付証明書を付した標準液)、又は、このような
標準液がない場合には、一般的な市販の標準液を用いる。
備考 計量証明事業者が計量証明のために測定する場合には,計量標準供給制度[JCSS(Japan
Calibration Service System)]の校正証明書を付した標準液を用いることが望ましい。
c) 試薬は,成分の溶出がなく,十分に洗浄した容器に入れ,清浄な場所に保存する。
d) 試薬の調製に用いる水は,7.1の水とするが,個別規格で規定されている場合には,それに従う。

7.3 ガス

 使用するガスは,特に断らない限り,日本工業規格(日本産業規格)で規定するものを用いる。ただし,助燃
ガスとしての空気は,粉じんを十分に除去したものを用いる。また,水銀専用の分析装置によってごく微
量の水銀を測定する場合は,空試験で確認した室内空気又は水銀を除去した室内空気を送気ガスとして用
いる(7)。
注(7) 有機溶媒を使用した試験を行っている場合には,その室内空気中の有機溶媒がバックグラウン
ド吸収を与える可能性があるので注意する。

8. 操作方法

8.1 装置の設置条件

 装置の設置条件は,次による。
a) 強力な磁場,電場,高周波などを発生する装置が近くにない。
b) 試料原子化部の上部に専用の換気ダクトを設け(8),十分な換気ができる。
注(8) 水銀専用原子吸光分析装置においては,自動前処理機能付き装置を除き,ダクトは不要である。
c) 振動が少ない。
d) ほこりが少なく,腐食性ガスがない。
e) 日光が直接当たらない。
f) 供給電源の変動は,最小限に抑える。
g) 地震対策として,装置の固定を考慮する。
h) 電気的災害を防ぐため,絶縁と接地とを十分に行う。

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i) 部屋の温度535 ℃,相対湿度85 %以下で,結露しない。

8.2 試料の調製

 試料の調整は、次による。いずれの場合でも,何らかの前処理を行った後,水に溶か
し,適切な濃度に希釈又は濃縮して分析試料とすることが原則である。
a) 固体試料 一般に,固体又はそれに近い状態の試料は,水に溶かした後に分析する。水に不溶性の試
料は,酸分解,アルカリ分解,有機溶媒による溶解,低温灰化,高温加熱灰化などの分解方法によっ
て可溶性とするとよい。しかし,いずれかの方法によっても試料溶液中に浮遊物及び沈殿物が存在す
るときは,ろ過又は遠心分離によって分離し,得られた不溶性物質は,更に,適切な方法によって個
別に溶解することが望ましい。水銀分析専用原子吸光分析における加熱気化方式では,固体試料の溶
解処理は不要である。
b) 液体試料 液体試料は,水に可溶な試料では水で希釈後又は直接分析することが多いが,浮遊物質及
び懸濁物質が存在する場合には,JIS K 0101,JIS K 0102などの規定の試料の前処理に従って処理す
ることが望ましい。一方,油脂性試料は,有機溶媒を用いて溶解・希釈することもできるが,その場
合には,用いる有機溶媒の表面張力,粘性,密度などの物理的特性,及び燃焼性,増感効果,燃焼時
における有害ガス,分解生成物の発生過程など化学的特性を考慮することが大切である。
c) 気体試料 排ガスなどに含まれる金属成分の定量には,試料ガスをセルロース,ガラス繊維,又は石
英ガラス製繊維の円筒ろ紙上に捕集するのが一般的である。これらの前処理は,JIS K 0083,JIS K 0222
などによって行うのが望ましい。
d) その他の注意事項 試料溶液は,一般に分析対象元素の濃度は必要以上に高くせず,イオン濃度とし
てはむしろ希薄溶液の状態にすれば,精度の高い分析結果が期待できる。試料溶液に含まれて妨害が
予想される元素の一定量を,あらかじめ検量線作成用溶液に添加する方法,目的元素だけを特定な有
機溶媒中に抽出する方法,干渉抑制剤を試料溶液及び検量線作成用溶液に一定量添加する方法などが
広く用いられている。調製した試料溶液は,長時間放置すると加水分解,酸化,還元などの化学変化
によって溶液の性質が変わりやすいので,調製後は早く分析することが重要である。

8.3 装置操作条件の設定

8.3.1  共通事項 共通事項は,次による。
a) 分析線の選択 分光器のダイヤルによって概略の波長を合わせ,指示計を見ながら微調節によって分
析線が最適の波長に設定されていることを確認する。波長の自動設定機能をもつ装置は,これを省略
できる。分析線としては,感度の高いスペクトル線を用いるのが一般的であるが,試料濃度によって
は,比較的感度の低いスペクトル線を用いてもよい(9)。
注(9) ),b),c)は,水銀分析専用原子吸光装置では省略できる。
b) ランプの電流値 光源ランプの輝線スペクトルの強度,分析元素の波長及び検出器の特性などを考慮
し,良好なSN比を得られる電流値に設定する(9)。
c) 分光器のスリット幅 良好なSN比を得るために,分光器のスリット幅は,目的元素の分析線を分離
できる範囲で,できるだけ広くする(9)。
d) 安定性の確認 装置を動作状態にして,十分に暖気した後,波長ずれ,ランプ強度など装置の安定性
を確認する。
e) 検量線の直線領域 原子吸光分析における検量線は,一般的に低濃度領域では良好な直線性を示すが,
高濃度領域では種々の原因によって直線性を示さない。したがって,定量を行う場合には,直線性の
良好な濃度又は吸光度の領域で使用することが望ましい。
8.3.2 フレーム原子吸光分析装置 フレーム原子吸光分析装置は,次による。

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a) バーナーの種類 分析試料及び目的元素に最も適したバーナー及びフレームを用いる。
b) 燃料ガス及び助然ガスの種類並びに流量(又は圧力) 分析試料の性質,目的元素の感度,安定性な
どを考慮して設定する。
c) フレーム中を通過する光束の位置 フレーム中での原子密度分布は,元素,フレームの状態などによ
ってかなり異なるので,光源ランプからの光束を共存元素及び測定諸条件の影響の少ない最適の位置
に設定する。
8.3.3 電気加熱原子吸光分析装置 電気加熱原子吸光分析装置は,次による。
a) 乾燥過程における温度(又は電流値)及び時間 分析試料の溶媒を除去させるのに十分で,かつ,分
析試料の液滴が飛び散らない程度の温度又は電流及び時間とする。分析試料の性状によって,加熱方
式は段階的に加熱するステップ加熱又は連続的に加熱するランプ加熱のいずれかを選択する。
b) 灰化過程における温度(又は電流値)及び時間 分析試料中に共存する有機物,無機塩類,低温揮発
性共存成分などを除去し,かつ,目的元素を蒸発させない温度又は電流値及び時間とする。分析試料
の性状によって加熱方式は,ステップ加熱又はランプ加熱のいずれかを選択する。
c) 原子化過程における温度(又は電流値)及び時間 目的元素を十分に検出させるのに必要な温度又は
電流及び時間とする。分析試料の性状によって,加熱方式はステップ加熱又はランプ加熱のいずれか
を選択する。
d) シースガス,キャリヤーガスの種類及び流量(又は圧力) 流量(又は圧力)は,発熱体が酸化され
ず,かつ,分析試料の性質,目的元素の感度,安定性などを考慮して最適値に設定する。
e) 発熱体の形状及び材質 分析試料の化学的性質,目的元素の感度,安定性などを考慮して最適の形状
及び材質とする。
8.3.4 水銀専用原子吸光装置 水銀専用原子吸光装置は,次による。
a) 反応試薬の種類 還元気化方式水銀専用原子吸光分析装置においては,前処理後の試料は,硫酸酸性
下で塩化すず(II)によって原子状水銀に還元する。前処理時に過マンガン酸カリウムで処理を行っ
た試料においては,装置導入する前に塩化ヒドロキシルアンモニウム溶液を加え予備還元しておく。
b) 気化方式 加熱気化法の装置には,妨害成分を除去するための機能が付いているものもある。また,
妨害成分の除去には,添加剤として活性アルミナ,及びアルカリ剤を単独又は混合して用いる。

8.4 測定

8.4.1  フレーム原子吸光法 所定の装置操作条件を設定し,試料溶液をフレーム中に導入し,表示値(10)
を読み取る。装置によっては,あらかじめ設定した順序に従い,標準溶液及び試料溶液をフレーム中に導
入した状態で,データを取り込む。自動試料導入装置などによる導入の場合は,これらに必要な条件及び
溶液を設定し,測定する。
注(10) 吸光度又はその比例値
8.4.2 電気加熱原子吸光法 所定の装置操作条件を設定し,試料溶液の一定量を,発熱体の所定位置に正
確に導入し,加熱終了後の表示値(10)を読み取る。自動試料注入装置などによる導入の場合は,これらに必
要な条件及び溶液を設定し測定する。
8.4.3 水銀分析専用原子吸光法 水銀分析専用原子吸光法は,次による。
a) 還元気化方式の場合 所定の装置操作条件を設定し,試料溶液を水銀蒸気発生部に導入し,表示値を
読み取る。
b) 加熱気化方式の場合 所定の装置操作条件を設定し,試料を試料ボートにとり,加熱気化部に導入し,
表示値を読み取る。

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9. 定量

9.1 定量方法

 データ処理部に示された表示値を用い,次の方法によって試料溶液中の分析対象元素の
濃度を算出する。いずれの方法も検量線の作成は,試料溶液の測定と並行して行わなければならない。
a) 検量線法 濃度の異なる4種類以上の検量線作成用溶液を用い,濃度と表示値との関係線を作成して
検量線とする(11)(12)。この検量線を用いて,試料溶液中の分析対象元素の濃度を求める(13)(図22参照)。
注(11) この方法では,試料溶液の組成及び検量線作成用溶液の組成が類似していることが望ましい。
組成を類似させることができない場合には,9.1 b)(標準添加法)を用いるとよい。
(12) 検量線作成用溶液の濃度は,試料溶液中の分析対象元素の濃度が内挿値となるように調製する。
(13) 検量線は,直線を示す範囲内での使用が望ましい。曲線となる場合には,検量線作成用溶液の
数を増して,検量線作成用溶液の濃度が分析対象元素の濃度とできるだけ近くなるようにする。
測定試料の表示値



分析対象元素の濃度
検量線用溶液の濃度
図 22 検量線(検量線法)
b) 標準添加法 同一試料溶液から4個以上の試料を等しく採取し,1個を除き,他のものには分析対象
元素の濃度が既知である溶液を段階的に加える。分析対象元素を添加しないものを含めて,それぞれ
一定量として検量線作成用溶液とする。この検量線作成用溶液を用い,濃度と表示値との関係線を作
成し,検量線とする(14)。図23において横軸の切片から試料溶液中の分析対象元素の濃度を求める。
注(14) 検量線作成用溶液の添加量は,分析対象元素の濃度と近似していることが望ましい。

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