この規格ページの目次
8
K 0121 : 2006
吸収スペクトル
バックグラウンド吸収
発光スペクトル
(中空陰極ランプ)
発光スペクトル
(連続スペクトル光源)
スペクトルバンド幅
図 11 連続スペクトル光源補正方式における光源の発光スペクトルと試料の吸収スペクトルとの関係
5.7.2 ゼーマン分裂補正方式 磁場によってゼーマン分裂したスペクトル線をバックグラウンド補正に
用いる方式である。ゼーマン効果を生じさせるための磁石及び光信号を分別する信号処理部で構成する。
磁石は,永久磁石又は交流磁石を用いる。交流磁石を利用したとき,磁場を光軸に対して平行にかける
方式と垂直にかける方式とがある。また,磁場の強度は,固定と可変の方式とがある。図12に光軸に対し
て垂直に磁場をかける方式を示す。
偏光子 光学系
分析用及びバック 試料原子化部
グラウンド補正用 永久磁石又は交流磁石
中空陰極ランプ
図 12 ゼーマン分裂補正方式の構成(一例)
図13に磁場を垂直にかけた場合のスペクトルの分裂を示す。吸収スペクトルに磁場をかけると,磁場と
平行に偏光した光だけを吸収する中央の原子吸収線(π)と垂直に偏光した光だけを吸収する両側の原子
吸収線(σ+,σ-)とに分裂する。バックグラウンド吸収は分裂もせず,偏光特性も生じない。一方,光
源からの光束は,偏光成分(P//)及び偏光成分(P⊥)に分けられるが,両方とも原子吸収線と同じ波長である。
したがって,偏光成分(P//)によって原子吸収とバックグラウンド吸収とが測定でき,偏光成分(P⊥)だけ
――――― [JIS K 0121 pdf 11] ―――――
9
K 0121 : 2006
を測定するとバックグラウンドが測定できるので,これを差し引きすることで,原子吸収が求められる。
測定光
〔P//〕
測定光
〔P// +P⊥〕
測定光
〔P⊥〕
図 13 スペクトルのゼーマン分裂例
5.7.3 非共鳴近接線補正方式 中空陰極ランプから発生する分析対象元素の共鳴線に近接するスペクト
ル線を,バックグラウンド補正に用いる方式である。分析用とは別のバックグラウンド補正用光源ランプ
(中空陰極ランプ)及びその光軸を分析用光源ランプ(中空陰極ランプ)の光軸に一致させる光学系(4)で
構成する。非共鳴近接線方式の一例を,図14に示す。
注(4) 一般的にはハーフミラーを用いる。
バックグラウンド補正用
中空陰極ランプ 光学系
ハーフミラー 試料原子化部 ハーフミラー
分析用 光学系
中空陰極ランプ
図 14 非共鳴近接線補正方式の構成(一例)
分析用,補正用共に輝線スペクトル光線を用いる。光学系によって,分析用光源から目的元素の共鳴線
を取り出し,これを分析線とする。この分析線は,原子吸収スペクトルと同一波長であり,原子吸収とバ
ックグラウンド吸収との合計が測定できる。一方,補正用光源から光学系で,分析線とは異なる近接した
輝線を取り出し,これを補正線とする。この補正線は,原子吸収スペクトルとは異なる波長なので,原子
吸収は起こさず,バックグラウンド吸収だけが測定できる。これによって,分析線の吸収から補正線の吸
収を差し引くことによって,補正ができる。
なお,補正線は分析線に十分近接しており,しかも原子蒸気によって吸収されない輝線(封入ガスであ
るネオン線,アルゴン線なども使用可能)を選ぶ必要がある。
なお,この補正法は,分析線の片すそだけのバックグラウンド吸収を測定しているために,分析線の両
端のバックグラウンド吸収の大きさが異なる場合は適切ではない。
――――― [JIS K 0121 pdf 12] ―――――
10
K 0121 : 2006
5.7.4 自己反転補正方式 中空陰極ランプに高電流を流すと生じる自己反転現象を,バックグラウンド補
正に用いる方式である。すなわち,中空陰極ランプに高電流を流すと共鳴線のスペクトルは,自己吸収を
起こし,本来,原子吸光が起こる中心付近の光が弱く,その周りが強い,やや広がったスペクトルになる。
この状態では,主にバックグラウンド吸収が測定される。一方,通常の電流を流した場合は,通常の原子
吸光とバックグラウンド吸収とが合わさったものが測定される。後者から,前者を差し引くことによって
原子吸光だけが得られる(図15)。装置としては,高電流に対応した中空陰極ランプと,これに通常の電
流(分析用,IL)と高電流(バックグラウンド補正用,IH)とを交互に流す機能をもつランプ電源とで構
成する(図16)。
IHのスペクトル
IH
IL
ILのスペクトル
図 15 自己反転現象(電流値とスペクトルとの関係)
分析用及びバック 試料原子化部 光学系
グラウンド補正用
中空陰極ランプ
分析用
ランプ電源
バックグラウンド補正用
図 16 自己反転補正方式の構成(一例)
5.8 附属装置
附属装置は,必要に応じて,次のものを付加してもよい。
a) 自動試料導入装置 試料溶液を交換,採取し,原子化部に自動的に導入するなどの機能をもつ装置で
――――― [JIS K 0121 pdf 13] ―――――
11
K 0121 : 2006
ある。
b) 自動希釈装置 フレーム原子吸光測定において,試料溶液をネブライザーに導入するときに希釈溶液
で自動的に希釈を行う装置である。希釈方法としては,測定条件上で,試料溶液の希釈倍数を設定し,
測定時に全試料溶液を一定の希釈倍数に薄めて自動測定する方法と,試料溶液の測定値(吸光度)が
検量線の濃度範囲の上限を超えた場合には,その試料溶液を検量線濃度範囲以内に入るように,適宜,
自動希釈し,再測定を行う方法とがある。
c) フローインジェクション装置 一定量の試料溶液をキャリヤー溶液に注入し,ネブライザー及び反応
器に導入する装置である。信号は,過渡的であることが多い。フローインジェクション装置の一例を,
図17に示す。
ポンプ ポンプ
試料溶液 廃液 試料溶液 廃液
ポンプ ポンプ
キャリアー
キャリヤー ネブライザー・ キャリヤー
キャリアー ネブライザー・
反応器へ 溶液溶液 反応器へ
溶液溶液
切替バルブ 切替バルブ
サンプルループ
サンプルループ
充てん時
充填時 注入時
図 17 フローインジェクション装置の一例
d) 水素化物発生装置 試料溶液中の分析対象成分(例えば,ひ素,セレン,アンチモン,ビスマス,テ
ルルなど)を還元して気体状の水素化合物とし,フレーム又は加熱吸収セルに導入する装置で,バッ
チ方式と連続フロー方式とがある。
1) バッチ方式の発生装置は,反応容器,貯留器(5),流路切換器及び流量計で構成する。
注(5) 反応容器が貯留器を兼ねるものもある。
2) 連続フロー方式の発生装置は,試料溶液,還元剤溶液などを吸い上げるポンプ,反応管,気液分離
管及び流量計で構成する。
3) 加熱吸収セルは,水素化物発生装置で生成した水素化合物を原子化し,吸光度を測定するための機
器である。電気的に加熱する方式及びフレームで加熱する方式がある。
なお,電気加熱方式は,石英ガラス製吸収セル,ヒーター及び温度制御部で構成する。水素化物
発生装置の一例を,図18に示す。
――――― [JIS K 0121 pdf 14] ―――――
12
K 0121 : 2006
図 18 水素化物発生装置の一例
備考 連続フロー方式で,ひ素及びアンチモンの5価を3価に予備還元できる予備還元機構を附属し
た装置もある。
5.9 付加機能
付加機能は,次による。
a) 吸収信号の拡大及び縮小表示
b) 繰返し測定及び統計処理
c) 吸収信号の積分,ピーク高さ及びピーク面積
d) 検量線の作成及び記憶
e) ベースライン補正
f) 感度補正
g) データ保存
h) ランプの種類の自動設定
i) 波長の自動設定
j) スリット幅の自動設定
k) ガス流量の自動設定
6. 水銀専用原子吸光分析
6.1 装置の構成
水銀専用原子吸光分析装置は,光源部,測光部,データ処理部及び水銀蒸気発生部か
ら構成する。図19に装置の基本構成を示す。
光源部 測光部 データ処理部
水銀蒸気発生部
図 19 水銀専用原子吸光分析装置の構成の一例
――――― [JIS K 0121 pdf 15] ―――――
次のページ PDF 16
JIS K 0121:2006の国際規格 ICS 分類一覧
JIS K 0121:2006の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISK0050:2019
- 化学分析方法通則
- JISK0083:2017
- 排ガス中の金属分析方法
- JISK0101:1998
- 工業用水試験方法
- JISK0102:2016
- 工場排水試験方法
- JISK0211:2013
- 分析化学用語(基礎部門)
- JISK0212:2016
- 分析化学用語(光学部門)
- JISK0215:2016
- 分析化学用語(分析機器部門)
- JISK0222:1997
- 排ガス中の水銀分析方法
- JISK0557:1998
- 用水・排水の試験に用いる水