JIS R 5204:2019 セメントの蛍光X線分析方法 | ページ 3

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10.3 溶融操作及びガラスビードの成形

10.3.1 溶融操作
溶融操作は,次による。
a) 未強熱試料又は強熱試料と融剤とを十分に混合した後,混合物を溶融るつぼ又は溶融型に移す。
なお,離促進剤を粉体で添加する場合は,溶融るつぼ又は溶融型の底面に離促進剤が付着しな
いように同時に混合する。
離促進剤を溶液で添加する場合は,混合物を溶融るつぼ又は溶融型に移した後,離促進剤を添
加し,溶融する前に低い温度で離促進剤の水分を除去する。
b) 炉を用いて,溶融るつぼ又は溶融型を加熱し,適宜,溶融物を揺動しながら,均質になるまで溶融す
る。
なお,このとき,必要に応じて蓋をする。
10.3.2 ガラスビードの成形
10.3.2.1 溶融るつぼ及び成形型を用いる場合
溶融るつぼ及び成形型を用いる場合は,次による。
a) 炉を用いて,あらかじめ成形型を加熱し,炉外に成形型を取り出し,急速に冷えないようにして,水
平となるように置く。
なお,炉の代わりに高温ガスバーナーを用いてもよい。
成形型の温度を維持するために蓄熱体を用いる場合には,あらかじめ成形型と共に蓄熱体を加熱し,
炉外に蓄熱体を取り出し,その上に成形型を水平となるように置く。
b) 炉外に溶融るつぼを取り出し,直ちに溶融物を成形型に流し込み,放冷する。
なお,冷却装置(6.6)を用いる場合には,成形型に流し込んだ後,成形型を冷却装置の上に水平と
なるように置く。
10.3.2.2 溶融型を用いる場合
炉外に溶融型を取り出し,水平となるように置き,放冷する。
なお,冷却装置(6.6)を用いる場合には,溶融型を冷却装置の上に水平となるように置く。

10.4 自動ガラスビード溶融装置による調製

  ガラスビードの調製に,溶融操作(10.3.1)及びガラスビードの成形(10.3.2)を自動で行うことができ
る自動ガラスビード溶融装置(6.5)を使用してもよい。

10.5 ガラスビードの保管

  温度及び湿度による劣化が起きないようにガラスビードはデシケーター25)中で保管する。デシケーター
は,高温にならない温度変化の少ない試験室に置くことが望ましい。また,長期保管後に使用する場合に
は,使用前にガラスビードの測定面をエタノール又はアセトンで十分に拭く。
注25) デシケーターは,シリカゲルを乾燥剤として用いたものが適当であるが,これと同等の性能を
もつデシケーターであれば,それらを用いてもよい。また,ガラスビードを保管する際にガラ
スビードをビニール袋に入れることがあるが,ビニール袋は,ブロッキング防止剤が使用され
ているため,それによってガラスビードの表面が汚染される可能性がある。この汚染による影
響は軽元素で大きいため,注意が必要である。

10.6 ガラスビードの調製条件の検定

  融剤の種類,試料と融剤との質量比率,溶融温度26),溶融時間,溶融時の蓋の有無及び成形方法などの
ガラスビードの調製条件を決定又は変更する場合,JB.1によってガラスビードの調製条件の検定を行う。

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注26) 溶融温度が1 100 ℃を超えると三酸化硫黄の揮散が無視できなくなるため,1 100 ℃以下で溶
融を行う必要がある。また,硫酸塩,硫化物,塩化物又はアルカリなどの揮散しやすい化学成
分は,溶融温度を考慮する必要がある。溶融温度を二段階で上げるとガラスビードのばらつき
を防げることがある。

11 検量線の作成及び検定

11.1 要旨

  検量線は,試薬,認証標準物質,工業標準物質又はそれらの混合物を検量線用試料として作成する。作
成した検量線は,一つ以上の認証標準物質又は工業標準物質を用いて検定する。
検量線用試料及び検定用試料の標準値が未強熱試料に対する値として示されている場合には,強熱後の
試料に対する値を計算し,含有率とする。また,標準値が強熱後の試料に対する値として示されている場
合には,標準値が含有率となる。
検量線の作成及び検定のフローを図1に示す。
検量線用ビード,検定用ビード及び
強度ドリフト補正用ビードの調製(11.3)
検量線の作成(11.4)
併行許容差を満たさなかった場合の操作
(11.5.2) 不合格 検量線の検定
対標準物質許容差を満たさなかった場合の操 (11.5)
作(11.5.3)
合格
検量線は有効と判断される
図1−検量線の作成及び検定

11.2 検量線用試料,検定用試料及び強度ドリフト補正用試料

11.2.1 検量線用試料
検量線用試料は,試薬(5.1),認証標準物質(5.2.1),工業標準物質(5.2.2)又はそれらの混合物を用い
る。
検量線用試料は,最少で7試料とし,各化学成分において含有率に偏りがないようにする。
10試料以下の検量線用試料を用いる場合,2枚のガラスビードを調製することが望ましい。
10試料を超える検量線用試料を用いる場合,1枚のガラスビードの調製で十分である場合がある。
なお,混合物を用いる場合は,2種類の物質の混合比率を変えて必要数の検量線用試料を調製してはな
らない27)。
注27) 異なる2種類のセメントの認証標準物質又は工業標準物質を選定し,それらの混合比率を変え
て検量線用試料を調製した場合,検量線用試料の分析対象の化学成分の含有率は,2種類のセ
メントの標準値から計算される。そのため,検量線用試料の化学成分の含有率とX線強度の相
関は良いが,分析対象の化学成分の含有率の間にも相関関係が生じるため,共存成分効果を適

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切に補正できない可能性がある。
11.2.2 検定用試料
検定用試料は,分析対象の化学成分が検量線の範囲にある化学成分の含有率をもつ,一つ以上の認証標
準物質を用いる。
なお,検定用試料は,検量線用試料(11.2.1)として用いていないものでなければならない。
適当な認証標準物質の入手が困難な場合,適切な工業標準物質(5.2.2)を用いる。
11.2.3 強度ドリフト補正用試料
強度ドリフト補正用試料は,任意の試料28)を用い,各化学成分について1試料又は2試料を選定29)する。
1試料の強度ドリフト補正用試料を用いる場合,化学成分の含有率が検量線の範囲の50 %以上のものを
選定する。2試料の強度ドリフト補正用試料を用いる場合,化学成分の含有率が検量線の範囲の025 %
のもの(第1ドリフト用)及び75100 %のもの(第2ドリフト用)を選定する。
注28) 検量線用試料を用いてもよい。また,試薬を混合したものを用いてもよい。
29) 強度ドリフト補正用試料の選定範囲の例を図2に示す。この例の場合,1試料では含有率が60
80 %の試料,2試料では含有率が4050 %及び7080 %の試料を用いることとなる。
1試料の場合
検量線
2試料の場合
図2−強度ドリフト補正用試料の選定範囲の例

11.3 検量線用ビード,検定用ビード及び強度ドリフト補正用ビードの調製

  ガラスビードは10.110.4によって調製し,10.5によって保管する。
a) 検量線用ビードは,検量線用試料(11.2.1)を用いて,それぞれ1枚又は2枚,調製する。
b) 検定用ビードは,少なくとも一つの検定用試料(11.2.2)を用いて,2枚一組,調製する。
c) 強度ドリフト補正用ビードは,強度ドリフト補正用試料(11.2.3)を用いて,それぞれ1枚,調製する。

11.4 検量線の作成

  検量線の作成は,次による。
a) 線強度の測定条件30)を決定し,11.3で調製した検量線用ビードのX線強度を測定する。
b) 検量線用試料の分析対象の化学成分の含有率と測定したX線強度の関係から最小二乗法によって回帰
式を求め,検量線31)を作成する。
なお,必要に応じて,バックグラウンド補正,共存成分効果の補正及びピークの重なり効果の補正
を行う32)。
c) 11.3で調製した強度ドリフト補正用ビードのX線強度の測定を行い,基準X線強度として記録する。
d) 測定した検量線用ビード及び強度ドリフト補正用ビードを10.5によって保管する。

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注30) 測定条件には,管球の印加電圧及び印加電流,分光結晶,スリット,検出器,フィルター,
元素の分析線のピークとバックグラウンドの位置及び計数時間,測定の繰返し回数などがあ
る。
なお,計数時間を長くすると,検量線の精度を改善できる場合がある。
31) 検量線の例としては,次のものがある。
原点を通る1次回帰式 : Wi=a0Ii
1次回帰式 : Wi=a1Ii+b1
2次回帰式 : Wi=a2Ii2+b2Ii+c2
ここに, Wi : i成分の含有率(%)
Ii : i成分のX線強度
a0,a1,b1,a2,b2,c2 : 定数
32) 補正方法は,附属書JDに示したような方法がある。

11.5 検量線の検定

11.5.1 操作
操作は,次による。
a) 11.3で調製した検定用ビードのX線強度を測定し,11.4で作成した検量線に測定したX線強度を代入
し,四捨五入によって小数点以下3桁に丸め,定量値を求める。
なお,X線強度の測定を検量線の作成(11.4)と異なる日に行う場合には,12.2.1によって,X線強
度のドリフト補正を行う。
b) 各化学成分において,2枚一組の検定用ビードの定量値の平均値を四捨五入によって小数点以下2桁
に丸め,2枚一組の検定用ビードの定量値の差が,定量値の平均値に対応する併行許容差以内(表1)
であることを確認する。併行許容差を満たさなかった場合は,11.5.2による。
c) 定量値の平均値と用いた検定用試料の含有率との差が定量値の平均値に対応する対標準物質許容差以
内(表2)であれば,検量線は有効となる。対標準物質許容差を満たさなかった場合は,11.5.3による。
d) 測定した検定用ビードを10.5によって保管する。
11.5.2 併行許容差を満たさなかった場合の操作
再度,11.5.1のa)を行い,2枚一組の検定用ビードのそれぞれの定量値の差が併行許容差以内(表1)で
あることを確認する。これでも併行許容差を満たさなかった場合には,新たに検定用ビードの調製を行っ
て,11.5.1のa)を行い,2枚一組の検定用ビードのそれぞれの定量値の差が併行許容差以内(表1)である
ことを確認する。これでも併行許容差を満たさなかった場合には,ガラスビードの調製条件(箇条10)を
検討し直し,検量線用ビード,検定用ビード及び強度ドリフト補正用ビードを再度,調製して11.4からや
り直す。
11.5.3 対標準物質許容差を満たさなかった場合の操作
11.4によって再度,検量線を作成して,検定し直すか,又は次を行う。
− バックグラウンド補正,共存成分効果の補正及びピークの重なり効果の補正の妥当性の検討
− 検量線用試料の選定の妥当性の検討

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表1−併行許容差 表2−対標準物質許容差
定量値の平均値(%) 併行許容差(%) 定量値の平均値(%) 対標準物質許容差(%)
00.49 0.023 00.49 0.02
0.500.99 0.032 0.500.99 0.03
1.001.99 0.044 1.006.99 0.08
2.002.99 0.049 7.0014.99 0.12
3.003.99 0.054 15.0029.99 0.15
4.004.99 0.062 30.0049.99 0.20
5.006.99 0.069 50.0079.99 0.25
7.009.99 0.081 80.00100.00 0.30
10.0014.99 0.096
15.0019.99 0.116
20.0024.99 0.134
25.0029.99 0.149
30.0034.99 0.162
35.0039.99 0.175
40.0044.99 0.186
45.0049.99 0.197
50.0054.99 0.207
55.0059.99 0.217
60.0064.99 0.226
65.0069.99 0.235
70.0074.99 0.244
75.0079.99 0.252
80.00100.00 0.260

12 試料の測定

12.1 要旨

  分析用ビードの測定を行う前に,蛍光X線分析装置の状態を確認するため,標準化した検定用ビードの
X線強度を用いて定量値を求め,その定量値が併行許容差及び対標準物質許容差以内であることを確認し,
試料の定量を行う。検定用ビードの定量値がそれらの許容差を超える場合には,新しい検定用ビードを調
製し,同様に確認を行う。それでも許容差を超える場合には,検量線の作成及び検定(箇条11)を行う。
また,少なくとも1年に1回,新しい検定用ビードを調製し,ガラスビードが適切に調製されていること
をJB.2によって確認する。

――――― [JIS R 5204 pdf 15] ―――――

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JIS R 5204:2019の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 29581-2:2010(MOD)

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