JIS T 9241-2:2015 移動・移乗支援用リフト―第2部:移動式リフト | ページ 2

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3.8
ペダル(pedal)
昇降機構の一部で,アクチュエータに使用圧力を加えるための足踏み式ペダル。
駐車用ブレーキで停止状態を維持する際に用いる足踏み式ブレーキペダルも含む。
3.9
被懸ちょう者(lifted person)
懸ちょう式リフトによる持ち上げ,移動及び移乗の対象者。ただし,懸ちょう式でない場合は,“使用者”
と呼ぶ。
3.10
介助者(attendant)
被懸ちょう者でなく,リフトの操作を行う者。
3.11
セルフロッキング方式(self-locking type)
フックとトリガで構成され,荷重がかかるとラッチロックが働く仕組み。
3.12
ロッキングシステム(locking system)
剛性身体支持具をリフトに固定する手段。
3.13
昇降装置(lifting device)
身体支持具を昇降させる装置。
3.14
制御装置(control devices)
昇降機構及び他の機能を操作する装置。
注記 ここでいう機能には,移動部基礎の脚部を開くことも含まれる。
3.15
単一故障状態(single fault condition)
リスクを軽減するための単一手段があり,その損傷が認められる,つまり単一の異常状態が存在する状
態。
3.16
身体支持具(body-support unit)
リフトの一部をなし,関連する附属装置と一体となり,被懸ちょう者を持ち上げる,移乗させる,又は
移動させる際に,その被懸ちょう者を支える支持具。
例 スリング,シート,ストレッチャがそれに当たる。
3.17
剛性身体支持具(rigid body-support unit)
剛性材料(必要ならばパッドをかぶせる。)で予備成型したり柔軟な材料をフレームに取り付けて製作し
た座面又は仰向け保持装置。リフトの持ち上げ装置に連結させるための附属的結合手段をもつ。
3.18
連結点[connecting point (s)]
身体支持具を結合する部分。

――――― [JIS T 9241-2 pdf 6] ―――――

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3.19
背もたれ(backrest)
身体支持具の一部で,附属装置とともに持ち上げ,移乗させ又は移動させる被懸ちょう者の背を支える
もの。
3.20
ハンガー(spreader bar)
身体支持具を取り付ける一つ以上の連結点をもった剛性のある部材。
3.21
昇降機構(lifting machinery)
昇降機能を果たすための機構。
例 油圧式,機械式,電気式
3.22
フレキシブル装置(flexible device)
昇降装置の中にある装置で,引き上げ機構とハンガーとを連結する装置(例えば,チェーン,テープ,
ロープなど)。
3.23
多目的リフト(multi-purpose hoist)
多様な運用ができるように,複数の異なる種類の部品を使用して,組立可能なリフトの一分類。
3.24
不利な(過酷な)条件(adverse condition)
損傷が最も起こりやすい条件。
3.25
ホールドツーラン方式(hold to run control device)
手動操作が一定の状態を保っている間だけ,対応するリフト機能を開始し,維持する制御方式。手動操
作が解除されると,対応する機能は自動的に“停止”又は“オフ”に戻る。
3.26
最大質量
区分記号が示す最大持ち上げ質量範囲の中の最大値。区分記号WXでは最大質量は製造業者が指定する
最大持ち上げ質量。
3.27
留め金具
スリングをリフトに連結するために連結点に装備された部分。
3.28
昇降サイクル(lifting cycle)
同一距離の間で機器を昇降させること。
3.29
前方(forwards)
取扱説明書において製造業者によって前方として指定された方向。
3.30
後方(backwards)

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リフトの前方移動方向から180°をなす方向。
単位 mm
主要項目
1 最高位
2 最大水平リーチ点
3 最低位
a 600 mm位置(基準の高さ)での
最大水平リーチ
b ベースからの最大水平リーチ
c 脚を700 mm開いたときのベース
からの水平リーチ
k 中央懸ちょう点の最高位置
l 中央懸ちょう点の最低位置
m リフト可動域
p 最大内側幅
q 最大水平リーチでの内側幅
r 最小の内側幅
図1−懸ちょう式リフトの主要項目寸法

4 種類及び区分

4.1 リフトの種類

  移動式リフトの種類は,表1による。
表1−リフトの種類
種類 説明 図番号
移動式 懸ちょう式 被懸ちょう者を持ち上げ自由に動かして図2
別の場所に移動させるリフト。
ストレッチャ 図3
が(臥)位のまま搬送できるよう上部が平
式 たんで,四つの車輪をもつベッド状の移送
リフト。

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図2−懸ちょう式リフトの例 図3−ストレッチャ式リフトの例

4.2 最大持ち上げ質量による区分(区分記号)

  最大持ち上げ質量による区分(区分記号)は,表2による。
表2−最大持ち上げ質量による区分(区分記号)
単位 kg
区分記号 最大持ち上げ質量範囲
WS 60以下
WM 60を超え 80以下
WL 80を超え 100以下
WLL 100を超え 120以下
WX 120を超えるもの

5 一般要求事項

5.1 リスクマネジメントによる設計

  リスクマネジメントによる設計は,製造業者又は販売業者によって実施手順及び実施結果を文書化し維
持しなければならない。
a) 予測耐用期間をリスクマネジメントファイルに記録する。
注記 予測耐用期間は,リスクマネジメントを実施するときの前提となる期間である。
b) 衣服の一部などが機器に絡み付くリスク
c) 作動する部分に関わるリスクマネジメントは,次による。
1) 動く部分をもつリフトは取扱説明書に従って正しく設置され,かつ,使用又は合理的に予見できる
誤使用をしたとしても,動く部分に関連するリスクを受容できるレベルまで低減できるように,設
計,製造及び配置をする。
2) 動く部分に接触することに起因するリスクは,接近のしやすさ,リフトの機能,部品の形状,運動
のエネルギー及び速度,並びに被懸ちょう者及び介助者の利益を考慮した上で,防護手段を用いて
受容できるレベルに低減させる。
3) 合理的なリスク軽減措置を取った後にもリスクが残る場合は,その防護手段及びリスクがある旨の

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警告をリフトに表示し,かつ,取扱説明書に記載する。
4) リフトの昇降動作によるはまり込みのリスクに関して,リスクマネジメントを実施する。
5) リフト本体の隙間へ身体が挟み込まれる又は閉じ込められるリスクに関して,リスクマネジメント
を実施する。
6) プログラマブル機器によって動作させる機能について,既知又は予見可能なハザードをリスクマネ
ジメントファイルに記録する。
d) ハンドグリップ,ハンドル,操作ハンドル及びペダル(いずれも,存在する場合)は,指示された方
法で使用した場合に,被懸ちょう者及び介助者の身体的構造に無理なく使用できるとともに,次の条
件から外れる場合はリスクマネジメントファイルに記録する。
注記 下記1)6) の条件はISOの規定を準用しているが,必ずしも日本人の体格に適合していな
い場合もあり得るため,条件に適合する場合でも,必要に応じてリスクマネジメントを行い,
ファイルに記録することが望ましい。
1) 操作力10 N以上の操作ハンドル(握るために作られた部分)とリフト構造部品との距離は,35 mm
以上とする。
2) ペダル(操作状態の位置)の上面とリフトの他の部分との距離は,つま先の隙間が鉛直距離にして
75 mm以上とする。
3) 操作力10 N以上の操作ハンドル及び握りの直径は,19 mm43 mmの範囲とする。
4) 立位で操作するリフトの場合,ペダルは床面から300 mm以内とする。
5) 立位で操作するリフトの場合,手動式制御装置の位置は,リモコンを除き床面から800 mm1 200
mmの高さとする。
6) 操作ハンドルの高さは900 mm以上とする。
e) 身体に接触する材料については,肌に触れることに関するリスクについてリスクマネジメントを実施
する。リスクマネジメントは,使用目的並びに被懸ちょう者及び介助者と材料との接触を考慮する。
f) 製造業者が身体支持具の材料を難燃性と明記する場合は,発火及び炎上についてリスクマネジメント
を実施する。
g) アームのたわみに関するリスクマネジメントを実施する。

5.2 外観

  外観は,次による。
a) 特別な機能として必要な場合を除き,手の届く全てのエッジ,角,及び表面は滑らかで,ばり及び鋭
いエッジがあってはならない。また,外部に現れるボルト・ナットなどの先端は著しく突出しないか,
又は先端に身体を損傷(せん断,押し潰しなど)させないようなカバー,クッションなど適切な保護
具を取り付けなければならない。
b) 塗装を行った場合は,塗装面は滑らかで穴,泡などが目立ってはならない。

5.3 構造

5.3.1  一般
構造一般は,次による。
a) 製造業者は,リフト構造に使用する材料の選択に当たり,使用する場所の目的に十分適合しているこ
ととする。
b) 力のかかる全ての留め金具は,不用意に外れないように,セルフロッキング方式又はロック装置を備
えていなければならない。

――――― [JIS T 9241-2 pdf 10] ―――――

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  • ISO 10535:2006(MOD)

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