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設計段階で,フィルタが容積的に大きく,かつ,高価である場合,例えば,挿入損失が高いか,又は高
電流のための要求される場合,導電障害の影響及びフィルタ費用の低減のために,より低費用のEMC対
策,例えば,ケーブル又は部品の遮へいが望ましいのか否かという対策の決定を検討するのが望ましい。
C.2.5.1.1 給電フィルタ 給電フィルタは,低域ろ(濾)波フィルタとする。フィルタの一方は機器のイン
ピーダンスに,他方は給電システムのインピーダンスに接続する。これらのインピーダンスは,通常50Ω
と異なるか,又は不明であり,他方発生する挿入損失は負荷に依存しているので,挿入損失に対するある
程度の余裕を考慮するのが望ましい。
フィルタ選択基準
− 挿入損失;
− 減衰帯域;
− フィルタリングされるチャンネル数;
− インピーダンス;
− 電流,電圧,許容力率;
− コモンモード/ノーマルモード又はデファレンシャルモード;
− 漏れ電流;
− 耐電圧;
すべての動作状態においてフィルタ特性を維持するために,次の要求を設計段階で考慮するのが望まし
い。
C.2.5.1.1.1 耐電圧 構成部品の損傷を防止するため,給電電圧に加えて,スパイク電圧及び試験電圧を考
慮しなければならない。耐電圧の定格は,JIS F 8061によるのが望ましい。
C.2.5.1.1.2 電流容量/熱抵抗 給電電流及び特にピーク電流がコア飽和によってコイルのインダクタン
スの減少を発生させる場合がある。更に許容電流は,周囲温度に依存する,すなわち,温度の上昇につれ
許容電流は低くなる(データシートの規定による。)。
C.2.5.1.1.3 動作周波数 データシートに規定された動作周波数(直流,交流 50/60/400 Hz)を考慮するの
が望ましい。
C.2.5.1.1.4 環境条件 選択される構成部品は,設置の際に与えられる環境条件に従うのが望ましい。
C.2.5.1.2 信号フィルタインタフェース及び信号伝送特性を定義する際,EMC諮問グループによって規
定されたシステム環境を考慮するのが望ましい。
特に長いケーブルをもつシステムでは,誘導障害防止のためにフィルタが必要となる場合がある。挿入
するフィルタは,目的とする信号に対し許容された以上に影響を与えてはならない。RS 232又は20 mAの
ような規格インタフェースに対し利用可能なフィルタがある。
フィルタ選択基準
− 挿入損失;
− 保護されるべき信号形式(アナログ,デジタル);
− ケーブル,信号源又は受信側のインピーダンス特性に対する整合;
− マルチチャンネルフィルタ間の混信;
− 目的とする信号による許容静電容量;
− 通過域の許容リプル;
− 耐電圧,耐パルス;
− 許容混変調ひずみ;
――――― [JIS F 8081 pdf 31] ―――――
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F 8081 : 2005 (IEC 60533 : 1999)
− 環境両立性;
C.2.5.2過電圧保護 電圧依存抵抗素子,例えば,サージアレスタ,バリスタ,ツェナダイオードなどを過
電圧制限のために適用するのが望ましい。素子はIEC 60099-1及び/又はIEC 60099-4に適合するのが望ま
しい。
備考1. 急激なフランキングパルスをもった過電圧の場合,確実な保護を考慮するのが望ましい。
2. アレスタ動作後に流れる電流を制限することを考慮するのが望ましい。
C.2.5.2.1 抑止ダイオード,ユニポーラ及びバイポーラ 抑止ダイオードは,サージアレスタ及びバリス
タのような非線形素子に属する。その選択に当たっては,次の事項を考慮するのが望ましい。
− 必要とされる過電圧抑制;
− ひずみのない目的とする信号の伝送;
目的とする信号電圧は,使用するダイオードの破壊電圧より十分低くしなければならない。
選択基準
− 目的とする信号に対する最小挿入損失(一般には1 dB未満);
− 最大反射損失(推定値 : 20 dB以上);
− 十分なピーク電力散逸性;
− 相互変調の最小散逸性(高周波で動作する機器に対して);
C.3 グループAGの機器の特別対策 船上に設置された機器及びシステムは,グループAGに分類さ
れる。個々の機器部分又は個々の設備に対する特別な推奨案若しくは注意事項が,次に示すグループA
Fに,統合システムに対するものはグループGに与えられている。
C.3.1 グループAのための対策 このグループは,世界海上遭難安全制度 (GMDSS) 用の機器及び設備を
含んで無線通信及び無線航法のすべての機器及びそれらの補助機器を含む。
補助機器としては,次のものがある。
アンテナ及びアンテナ補助器具,給電装置などと同様に補助操作盤,追加の通信ステーション,
伝送ライン(2線,4線),プロッター,プリンタなど。
主配電盤又は非常配電盤から無線通信及び航海機器への給電ケーブルは,できる限り全長にわたり連続
したケーブルとし,その他のケーブルからと分離して敷設するのが望ましい。
C.3.1.1機器の選択及び配置 低インピーダンスアンテナとのインタフェースをもつ無線送信機及び受信機
の使用が好ましい。
高インピーダンスアンテナとのインタフェースをもつ無線送信機及び受信機は,船体甲板室内でアンテ
ナケーブルの長さを最小に設置とするのが望ましい。
機器が操作机内に設置される場合,周辺の機器から十分に分離するのが望ましい。機器本来の外被を使
用するか,又は同等の遮へい対策を採用することが望ましい。
内部遮へい巻線をもつ絶縁トランスの使用が望ましい。その遮へい巻線は,接地するのが望ましい。
確実に該当するEMC規格に適合した機器を設置するために,すべての合理的,かつ,実際的な対策を
採用するのが望ましい。予期可能なEMCに関連したすべての問題も,関連する機器を適切に分離するか,
又は遮へいする等の例を適用することによって,解決できる場合がある。
無線装置が操だ(舵)室内に統合される場合,機器の外被は,適切な十分な遮へいをもつ構造でなけれ
ばならない。
C.3.1.2ケーブルの敷設 遮へいされた信号用ケーブル及び制御用ケーブルを使用することが望ましい。
――――― [JIS F 8081 pdf 32] ―――――
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F 8081 : 2005 (IEC 60533 : 1999)
機器及びコネクターケーブルの引込口は,ケーブル遮へいと機器外被との間が全体の環境に対して常に連
続的に接触しているのが望ましい。
特別な場合,特に送信又は受信アンテナの近くでは,ケーブル遮へいは甲板貫通部で接地しなければな
らない。
C.3.1.3接地 接地は,できるだけ短く,かつ,最大の接地面積を設けるのが望ましい。送信機及び受信機
に対しては,個別の接地接続を採用することが望ましい。
取外し可能な接地(ねじ締めによる。)を使用する場合,これらには将来の保守のために容易に近づける
ものでなければならない。
C.3.1.4アンテナ アンテナは,船体上部構造から適切な距離をとって配置するのが望ましい。
受信及び送信アンテナの間には,確実に適切な距離を設けるのが望ましい。
送信アンテナに近接する受信アンテナケーブルは,連続的に接地されたケーブル保護管内に敷設するか,
又は外部遮へいが貫通部で接地された二重遮へいケーブルを使用するのが望ましい。
高インピーダンスアンテナとのインタフェースは,低静電容量で接続とするのが望ましい。
アンテナ周辺の保護構造物となるばく露甲板上の構造部材は,非金属製材料とするのが望ましい。
レーダ導波管にあっては,C.3.3参照。
アンテナ放射ゾーン内の帆げた(桁),支柱及びマストは接地接続しなければならない。
C.3.2 グループBのための対策 このグループは,電気エネルギーの発電,変換,定期的開閉及び制御の
ためのすべての機器及び装置を含む。
この機器は,給電系統リアクタンスによって発生する電圧高調波を含む交流電源の非線形負荷を含む。
給電圧及び給電流に含まれる高調波成分は,同じ給電系に接続されているその他の負荷に影響を与える場
合がある。特に次の場合である。
− 追加の電力消費(高調波による鉄損及び誘電損)による熱的影響を受ける誘導又は容量負荷;
− 信号処理に対する障害を受ける電子機器;
妨害発生源及び被妨害装置の両方を含むグループBの機器は,グループEの機器に対する推奨案を講じ
ることが望ましい。
給電系統は,大きな短絡容量をもち設計するのが望ましい。この要求は,結果的に最も小さな初期過渡
リアクタンスをもった発電機を要求する。
通常の設計と比較すると,これらの要求が給電容量(発電機,ブレーカ,ケーブル)の増加をもたらす
場合がある。
給電系統を,船体構造から絶縁することが望ましい(IEC 60364-3によるITネットワーク)。
フィルタ回路は,変換器に並列に設置し,第5次及び/又は第7次高調波に対し同調させて差し支えな
い。ただし,船用発電機は,陸上電源以上の静的及び動的周波数変動をもつことを認識しなければならな
い。このことは,フィルタ回路の組込位置を難しくする。サイクロコンバーターシステムの場合,高調波
が変化するサイドバンドをもつために妨害をフィルタで除去することは難しい。更に,慎重な計画と設計
によって,ネットワーク共振は避けなければならない。
注意深い給電設計によって,例えば,変換器などの非線形負荷が全系統負荷に占める比率を僅少部分と
することができる。又は主船内給電系から適切に分離された独立専用変換器ネットワークをもつ給電設計
とすることができる。
1次及び2次巻線間の金属遮へい絶縁変圧器を,接続された電子機器からの障害を除去するために使用
して差し支えない。
――――― [JIS F 8081 pdf 33] ―――――
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F 8081 : 2005 (IEC 60533 : 1999)
蛍光灯照明器具のための補償コンデンサが,高調波を多く含む給電によって使用される場合,過負荷を
防止するためにインダクタンスチョークを装備しなければならない。蛍光灯照明器具が,電子始動器なし
で使用される場合,それらは2灯構成,又は照明グループごとにインダクタンスチョークを設けた集中補
償装置とするか,若しくは無補償とすべきである。
追加の費用で給電電子回路に低給電妨害電力変換器を採用することもできる。
C.3.3 グループCのための対策 レーダ及びソナー装置は,パルス化された電気エネルギーを使用する。
このエネルギーパルスは発信時に発生し,その他の機器の障害原因となることがある。
レーダ及びソナー装置は,受信時にはその他の機器からの障害を受ける場合がある。
大きなパルス電流を伝送するソナー機器は,二重遮へいケーブルとするか又は連続して接地されたケー
ブル保護管内に敷設したケーブルを使用しなければならない。
これと同一のケーブルが,受信信号(マイクロボルト領域の非常に低い信号レベルをもつ)伝送のため
にも使用される。これらのケーブルは,高障害レベルのケーブルに近接して敷設してはならない(例えば,
消磁システム用パルスDC,又はサイリスタ制御装置用の動力ケーブル)。
レーダ送受信機の高電力信号ケーブルは,極力短くするのが望ましい。これらのケーブルは,無線アン
テナケーブルに近接して敷設することことは望ましくなく,これが不可能な場合,これらのケーブルはケ
ーブル保護管内に敷設するのが望ましい(これには導波管は除外する。導波管の使用又は波形金属管をも
った特別ケーブルの使用が一般的である。)。
C.3.4 グループDのための対策 このグループは,電流入切による一時的な障害を発生する次の機器及び
装置を含む。
− 誘導負荷,例えばリレー,接触子,電磁弁,ソレノイドなど;
− モータ駆動負荷,例えば,電動機,ポジショニングモータなど;
− 発振又は共振を起こす傾向のあるインダクタンス及びコンデンサの組合せ;
これら負荷の入切は,広い周波数帯域の障害を誘導する。グループDの機器は,障害源として考えなけ
ればならない。
電圧サージリミッタは,対応するインダクタンスに近接して設置するのが望ましく,高周波吸収素子は,
開閉接点に近接して設置するのが望ましい。このガイドラインは,直流及び交流の両方の負荷に対し適用
するのが望ましい。
次のパルス制限素子の採用を推奨する。
直流用 :
− サプレッサーダイオード;
− バリスタ;
− RC組合せ;
− フリーホイールダイオード;
交流用 :
− バリスタ;
− VDR付き放電回路;
− コンデンサ;
− RC組合せ(回路の誘導性とRC組合せによる共振を,避けなければならない。);
C.3.5 グループEのための対策 このグループは,コンピュータとセンサ,ディスプレイ,オペレーター
パネル間のデジタル及びアナログ伝送システムと同様に,通信及び信号処理機器を含む。
――――― [JIS F 8081 pdf 34] ―――――
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F 8081 : 2005 (IEC 60533 : 1999)
このグループの機器は,しばしばスイッチング電源を装備している。ポジショニングモータ,リレー,
電子リレーなどに接続されるこれらの電源装置は,高レベルの障害を引き起こす場合がある。そのため,
グループB及びDに対する対策も考慮するのが望ましい。
このグループに属する機器は,一般に妨害発生源及び被妨害装置となるので,機器に対するイミュニテ
ィ及び妨害の両方を考慮しなければならない。
C.3.5.1設計検討 長いケーブルによるデータ伝送は,可能な最大信号レベルとするのが望ましい。必要な
場合,プリアンプをセンサ部に設けることが望ましい。低信号レベルで,長いケーブルによるデータ伝送
は,問題のない動作のために,エラー訂正又は伝送信号プロトコルを使用した伝送が必要とされる場合が
ある。
システム,特にシステム入力に対し,容量性結合障害(例えば,好ましくないケーブル敷設による。)を
許容レベル未満に収めるために,可能な限り最も低いインピーダンスとするのが望ましい。
船舶には,しばしば数百ボルトの重畳されたスパイク電圧をもった1 V2 Vの非対称,又はコモンモー
ドの障害レベルが存在する。
増幅器,特に低レベル信号用の精密増幅器は,この種の障害に対して十分な抵抗力又は保護をもつこと
が望ましい。
対称信号の伝送は,非対称なものとして誘導された低周波障害に対して耐性があり,可能な場合,使用
するのが望ましい。
A/D変換器は,積分回路タイプとするのが望ましい。
システムの内部0ボルト基準母線は,1点だけで接地するのが望ましい。この唯一の集中接地点は,検
査のために容易に近付き得る配置とし,かつ,望ましくない接地の短絡回路に対する試験が可能な接続と
するのが望ましい。
基準電位用単一接地の実施が不可能な場合,光カプラ又は変圧器によって構成機器を電気的に分離する
ことができる。
コンピュータシステムは,激しい高周波妨害を発生する場合があり,かつ,無線送信機の例のように,
システム自身がその他の機器からの高周波障害を受ける被障害機器となる場合もある。障害によってコン
ピュータの動作が妨害される場合,必要十分な遮へいを設けなければならない。
C.3.5.2増幅器 船舶における増幅器の入力線は,給電周波数から高周波数にいたる周波数範囲の電磁気妨
害を受ける。この結果,コモンモード障害が励起される。
理想的な対称信号の増幅器への入力は,このようなコモンモードノイズが入力に差動を生じさせること
はなく,その結果何ら影響はない。ただし,システムは,実際は広範囲の周波数において完全に対称とは
なりえない。その結果,望ましくない対称ノイズは,増幅器入力での信号に付加して現れる。この影響は,
例えば,フィルタの設置などの適切な対策によって,最小としなければならない。
C.3.5.3ケーブルの敷設経路 システムの選択又はシステム設計が妨害受信感度を効果的に減少できない場
合,ケーブルの分離(C.2.4参照)に加えてケーブル敷設経路及びケーブルの選択に特に注意しなければな
らない。
次の規則に可能な限り従うのが望ましい。
周波数レンジが100 kHzまでの周波数範囲で,かつ,低信号レベルにおいて,電線は,その全長にわた
ってしっかりとねん(撚)架され,遮へいするのが望ましい。遮へいは連続的なものとし,C.2.3とは反対
にその一端でだけで接地するのが望ましい。接地は,センサが接地される場合,センサ側で行うのが望ま
しく,そうでない場合,接地は増幅器/コンピュータ側で行うのが望ましい。遮へいは,電気的な接続障
――――― [JIS F 8081 pdf 35] ―――――
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JIS F 8081:2005の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 60533:1999(IDT)
JIS F 8081:2005の国際規格 ICS 分類一覧
- 47 : 造船及び海洋構造物 > 47.020 : 造船及び海洋構造物一般
- 33 : 電気通信工学.オーディオ及びビデオ工学 > 33.100 : 電磁両立性(EMC)
JIS F 8081:2005の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC60050-161:1997
- EMCに関するIEV用語
- JISC61000-4-11:2008
- 電磁両立性―第4-11部:試験及び測定技術―電圧ディップ,短時間停電及び電圧変動に対するイミュニティ試験
- JISC61000-4-2:2012
- 電磁両立性―第4-2部:試験及び測定技術―静電気放電イミュニティ試験
- JISC61000-4-3:2012
- 電磁両立性―第4-3部:試験及び測定技術―放射無線周波電磁界イミュニティ試験
- JISC61000-4-4:2015
- 電磁両立性―第4-4部:試験及び測定技術―電気的ファストトランジェント/バーストイミュニティ試験
- JISC61000-4-5:2018
- 電磁両立性―第4-5部:試験及び測定技術―サージイミュニティ試験
- JISC61000-4-6:2017
- 電磁両立性―第4-6部:試験及び測定技術―無線周波電磁界によって誘導する伝導妨害に対するイミュニティ
- JISF8061:2005
- 船用電気設備―第101部:定義及び一般要求事項
- JISF8062:1996
- 船用電気設備 第201部 システム設計―一般
- JISF8076:2005
- 船用電気設備―第504部:個別規定―制御及び計装
- JISF8076:2021
- 船用電気設備―第504部:自動化,制御及び計装