JIS G 1256:1997 鉄及び鋼―蛍光X線分析方法 | ページ 2

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ィを要求される場合には,この標準物質を使用する。このような標準物質がない場合には,使用した
基準を文書化しておく。
(2) 機器分析用鉄鋼認証標準物質 十分に均質で一つ以上の組成値に認証値の付いた機器分析用鉄鋼標準
物質(以下,鉄鋼認証標準物質という。)。検量線作成用試料及び検量線校正用試料として使用する。
ただし,分析試料とや(冶)金的履歴(2)が異なる場合もあるので,検量線作成用試料に用いる際には,
分析試料とや(冶)金的履歴及び化学組成が近似する機器分析用鉄鋼標準物質によって検量線を修正
する必要がある。この標準物質には,実用鋼と同様な組成の多成分系と,鉄を主成分とし一成分だけ
を添加した試料で他成分の含有率ができるだけ少ない二元系及び二元系試料に,さらに一成分を加え
た三元系試料がある。
注(2) 金属組織や析出物・介在物の形態に影響する溶湯試料の凝固速度,熱処理及び圧延・鍛造など
の加熱温度,冷却方法・速度などの履歴。分析試料の組成が同一であっても,や(冶)金的履
歴が異なると蛍光X線強度測定値に差が生じることがある。
(3) 機器分析用鉄鋼標準物質 検量線作成や検量線の検定に使用する標準物質であり,均質で分析試料と
や(冶)金的履歴及び化学組成が近似しており,定量成分の標準値が日本工業規格(日本産業規格)など公的に定めら
れた化学分析方法を用いて決定されたもの。機器分析用鉄鋼標準物質の標準値を決定する場合には,
化学分析用鉄鋼認証標準物質を併行分析し,その定量値が許容差を満足する(3)ことを確認する必要が
ある。そのような公的方法や,標準物質がない場合には,その分析所にて技術的に確認され,文書化
された化学的方法を用いて標準値を決定する。この鉄鋼標準物質にも(2)と同様に多成分系,二元系及
び三元系試料がある。
注(3) 判定方法の詳細は,JIS G 1201による。
(4) 検量線校正試料 検量線の確認及び校正を行うために日常用いる試料で,鉄鋼認証標準物質又はそれ
に相当する均質性がある試料であれば,や(冶)金的履歴及び化学組成が近似していなくてもよい。
この試料は装置性能基準の判定にも用いることができる。
(5) 分析試料 分析試料には,溶湯試料と製品試料がある。いずれも分析面の径を通常25mm以上の平面
状に成形できる塊状又は板状のものであることが必要である。溶湯試料は,溶融状態の鉄又は鋼から
必要量をスプーンなどで採取して,試料鋳型に注入するか又は試料鋳型で直接採取して冷却(4)する。
製品試料は,鋼片などの半製品又は製品から切り出した試料である。試料の採取は,JIS G 0303,JIS
G 0306,JIS G 0307及びJIS G 0321による。
これら試料の分析面は,巣,ガスホールなどの表面欠陥がないようにする。
注(4) 炭化物,窒化物,酸化物などの析出物,介在物をつくりやすい鋼種については,急冷効果の大
きい試料鋳型を使用し,分析成分が均一に分散するようにする。
7. 試料の調製 6.(5)で採取した試料を切断機械又は切削機械を用いて分析面の径が25mm以上,厚さが
5mm以上(5)の形状に加工し,分析面を研削機械又は研磨機械によって平面状に調製(6)(7)(8)する。研磨ベル
トやグラインダーを用いる場合には,研磨材の粒度はJIS R 6001の#60以上を通常用いる。と(砥)粒の
材質によっては分析面を汚染し,定量値に影響を与えるので,目的にあった材質を選択(9)する。
注(5) 厚さが5mm未満の試料については補助金具を用いて,試料調製が可能となるようにする。
(6) 試料表面の粗さが異なると蛍光X線強度に差が生じるので,粗さが一定に仕上がるように研磨
材や研磨機械を管理しなければならない。
(7) 研磨材が前に研磨した試料によって汚染され,それが次の試料を汚染する場合があるので,鋼

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種ごとに研磨材を区分して使用するか,あらかじめ同一鋼種試料を研磨して,前試料の汚染を
除去した後,測定試料を研磨するなどの処置が必要である。
(8) 調製した分析面には,ほこり,手あかなどが付着しないようにする。
(9) 例えば微量けい素を定量するときは,アルミナ質研磨材を,微量アルミニウムを定量するとき
は,炭化けい素質研磨材を使用する。
8. 蛍光X線強度の測定 5.2,5.3及び5.4で調整及び設定された測定条件の蛍光X線分析装置に7.で調
製した分析試料,鉄鋼認証標準物質,鉄鋼標準物質又は検量線校正試料を正しく挿入し,同一条件で測定
し,蛍光X線強度を求める(10)。
注(10) 分析試料,鉄鋼認証標準物質,鉄鋼標準物質及び検量線校正試料は同一研磨条件で調製する。
ただし,検量線校正試料は必ずしも同一条件としなくても測定強度の変動が正しく確認できる
条件であればよい。
9. 検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
9.1 補正係数の決定 重なり補正係数(11)及び総合吸収補正係数(12)を,以下の方法で求める。
注(11) 定量成分の定量値に対する共存成分の影響の割合を示す補正係数。すなわち,定量成分iの測
定スペクトル線に共存成分jのスペクトル線及び散乱線のバックグラウンドが影響する場合に,
定量成分に与える共存成分の影響を補正するための係数。
重なり補正係数は,装置の分解能によって異なるので,装置ごとに実測して求めなければな
らない。
(12) 蛍光X線が分析面に照射されたときに生じる吸収及び励起効果に対し補正するための係数。総
合吸収補正係数は実用上装置の種類に関係なく,同一スペクトル線について共通の値を用いる
ことができる。しかし,試料の成分組成が著しく異なる場合には,その値が変化するので,で
きるだけ分析試料に適したものを用いることが望ましい。
(1) 重なり補正係数 鉄及び定量成分iからなる一連のFe-i二元系の鉄鋼認証標準物質(若しくは鉄鋼標
準物質)(13)又は鉄,定量成分i及び共存成分jからなる影響共存成分jの含有率が少ない(例えば,
低合金鋼の)鉄鋼認証標準物質(若しくは鉄鋼標準物質)の定量成分iの蛍光X線強度を測定し,得
られた蛍光X線強度と定量成分iの標準値との関係の検量線を作成する。次に,鉄及び影響共存成分
jからなる一連のFe-j二元系の鉄鋼認証標準物質(14)(又は鉄鋼標準物質)を用いて,定量成分iに相
当する蛍光X線強度を測定し,定量成分iの見掛けの定量値Xiを前述の検量線から求める。この
Xi(15)と共存成分jの含有率との関係を,最小二乗法によって一次回帰計算を行い,式(1)によってスペ
クトル線及びバックグラウンドの重なり補正係数みを求める(16)。
Xi=lj・Wj+C (1)
ここに, Xi : Fe-j二元系鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の定量成分i
の見掛けの定量値 [% (m/m) ]
lj : 定量成分iに対する共存成分jのスペクトル線及びバックグ
ラウンドの重なり補正係数
Wj : Fe-j二元系鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の共存成分j
の標準値 [% (m/m) ]
C : 定数
注(13) 定量成分iの低含有率のものを使用する。

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(14) 重なり量が大きく,吸収効果が影響する成分については,式(1)が二次の関係になるため,直線
関係が成り立つように共存成分jの含有率の上限を定める。
(15) e-j二元系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質中に含まれる微量の定量成分iの影響が無視
できない場合は,定量成分iの含有率を見掛けの定量値から差し引いて補正係数ljを算出する。
(16) (2)(b)の重回帰法によっても補正係数ljを求めることができる。
(2) 総合吸収補正係数 総合吸収補正係数を次のいずれかの方法によって求める。
(a) 個別三元法 鉄及び定量成分iからなる一連のFe-i二元系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の
定量成分iの蛍光X線強度を測定し,得た蛍光X線強度と定量成分iの標準値との関係を二元系検
量線とする。次に,鉄,定量成分i及び共存成分jからなるFe-i-j三元系の鉄鋼認証標準物質又は鉄
鋼標準物質の定量成分iの蛍光X線強度を測定し,二元系検量線から未補正定量値Xiを求め,式(2)
によって総合吸収補正係数djを算出する。
Wi+li・Wj−Xi
dj (2)
X・
i Wj
ここに, dj : 定量成分iに対する共存成分jの総合吸収補正係数
Wi : 三元系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の定量成分iの
標準値 [% (m/m) ]
lj : 定量成分iに対する共存成分jの重なり補正係数
Wj : 三元系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の共存成分jの
標準値 [% (m/m) ]
Xi : 三元系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の定量成分iの
未補正定量値 [% (m/m) ]
(b) 重回帰法 多数の多成分系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質を用いて,定量成分iの蛍光X線
強度を測定し,(a)で求めた二元系検量線から未補正定量値Xiを求め,式(3)について重回帰分析を
行って総合吸収補正係数djを求める。
Wi=Xi (1+dj・Wj) −lj・Wj (3)
ここに, Wi : 多成分系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の定量成分i
の標準値 [% (m/m) ]
Xi : 多成分系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の定量成分i
の未補正定量値 [% (m/m) ]
dj : 定量成分iに対する共存成分jの総合吸収補正係数
lj : 定量成分iに対する共存成分jのスペクトル線及びバックグラ
ンドの重なり補正係数
Wj : 多成分系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の共存成分j
の標準値 [% (m/m) ]
備考 適切なFe-i二元系試料が入手できない場合には,多成分系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物
質だけを用いて,二元系検量線相当式の回帰係数並びにdj及びljを近似重回帰法によって求め
ることができる。
(c) 理論計算法 蛍光X線強度の理論式に諸物理定数を入れて共存成分に対する吸収励起の効果を算出
し,総合吸収補正係数djを求める。
9.2 基準検量線の作成 基準検量線の作成は,次の手順によって行う。
(1) 推定基準値(17)の算出 一連の多成分系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の定量成分iの標準値
Wi及び共存成分jの標準値Wj並びに9.1で算出した補正係数を用い,式(4)によって推定基準地Xiを算
出する(18)。

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Wi+ l・
j Wj
X= (4)
i
l+Σd・
j Wj
ここに, Xi : 推定基準値 [% (m/m) ]
Wi : 多成分系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の定量成分i
の標準値 [% (m/m) ]
lj : 定量成分iに対する共存成分jのスペクトル線及びバックグ
ランドの重なり補正係数
Wj : 多成分系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質の共存成分j
の標準値 [% (m/m) ]
dj : 定量成分iに対する共存成分jの総合吸収補正係数
注(17) 定量成分iと主成分である鉄(本法の主成分は,原則として鉄である。ただし,ニッケルクロ
ム鉄合金中の鉄の定量の場合だけは,主成分をニッケルとする。)との二元系の鉄鋼認証標準物
質又は鉄鋼標準物質で作成した共存成分の影響のない二元系検量線を使って多成分系の鉄鋼認
証標準物質又は鉄鋼標準物質を分析したとき得られる推定上の値。
(18) 式(4)中の 圀 分及び定量成分を除いた共存成分を代入し, 圀 澑 な
の必要な成分だけを代入する。ただし,定量成分に対する共存成分の影響が無視できる場合に
は補正を省略することができる。
(2) 基準検量線の作成 (1)で推定基準値Xiを求めた多成分系の鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質につ
いて,定量成分iの蛍光X線強度Iiを測定し,蛍光X線強度Iiと推定基準値Xiとの関係を方眼紙上
に作図するか,式(5)又は式(6)のように一次又は二次回帰式で近似して基準検量線とする(19)(20)。
Xi=aIi+b (5)
Xi=aIi2+bIi+c (6)
ここに, Xi : 推定基準値 [% (m/m) ]
Ii : 定量成分iの蛍光X線強度
a, b, c : 回帰定数
注(19) や(冶)金的履歴の影響の大きい成分の試料は,除外するか別に区分した検量線とする。
(20) 基準検量線は,共存成分の影響のない二元系検量線を推定したものであるが,djや検量線の近
似などに起因する微小誤差のために,真の二元系検量線とは完全に一致しないこともある。
10. 検量線の検定 分析試料とや(冶)金的履歴及び化学組成が近似する機器分析用鉄鋼標準物質を用い
て,8.で測定した蛍光X線強度と9.2(2)で作成した検量線とから成分iの定量値を12.によって算出し,得
られる定量値の誤差が表5に示す対標準物質許容差内であることを確認する。満足しない場合には,検量
線濃度範囲の分割,試料のや(冶)金履歴,補正係数などを検討する。
表5 対標準物質許容差
単位 % (m/m)
成分 成分含有率の範囲 対標準物質許容差(21)
全元素 表1の定量範囲 1.5× 2
σ Rw+σ
2
chem
刀地 表6による。
攀 次によって求める。
log 攀 0.653 4・log (X%) −1.151 2
注(21)(X%) は,定量成分の定量値 [% (m/m) ] を意味する。
11. 検量線の校正 検量線の校正は,次による。

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(1) 鉄鋼認証標準物質若しくは鉄鋼標準物質中の成分を定期的に定量して定量値が表5に示す対標準物質
許容差を満足するか又は検量線校正試料を定期的に定量して校正時の目標値(22)との差が表6に示す
室内再現許容差を満足することを確認する。ただし,前者による確認はある頻度で必ず行わなければ
ならない。これらを満足できない場合又は装置条件の変動があった場合には検量線の校正を行う。
表6 室内再現許容差
単位 % (m/m)
成分 成分含有率の範囲 室内再現許容差(23)
全元素 表1の定量範囲 log 刀 0.547 4・log (X%) −1.674 5
で求めた 刀圀
注(22) 検量線校正試料を蛍光X線分析の検量線作成時又は作成後の
初期の段階でその検量線を使って繰り返し分析して得た各定
量成分の暫定的な値。
(23) (X%) は,その成分の定量値 [% (m/m) ] を意味する。
(2) 検量線の校正は,例えば次の方法による。
検量線作成時からの蛍光X線強度の変化を,検量線含有率範囲の上下限付近2個の検量線校正試料
を用いて式(7)によって補正する(24)。
Ii= 椀 戀 (7)
IiH−IiL
α=
IiHH−IiL
β=I−α・
iH IiH
ここに, Ii : 分析試料分析時の定量成分iの補正後蛍光X線強度
Ii' : 分析試料分析時の定量成分iの未補正強度
IiH : 高濃度側検量線校正試料の成分iの検量線作成時の強度
IiL : 低濃度側検量線校正試料の成分iの検量線作成時の強度
IiH' : 高濃度側検量線校正試料の成分iの分析試料分析時の強度測定値
IiL' : 低濃度側検量線校正試料の成分iの分析試料分析時の強度測定値
注(24) 計算上は,分析試料の蛍光X線強度測定値に対する校正となっているが,検量線を校正する効
果は同一である。
(3) 検量線を校正した後には,鉄鋼認証標準物質又は鉄鋼標準物質を定量して定量値が表5の対標準物質
許容差を満足するか又は検量線校正試料を定量して校正時の目標値との差が表6の室内再現許容差を
満足することを確認する。
(4) 校正によって(3)の条件を満足しない場合には,検量線を9.の手順に従って再び作成する。
12. 定量値の計算 分析試料の定量値の計算は,次の手順によって行う。
(1) 未補正定量値の算出 8.で得た蛍光X線強度測定値Iiと9.で作成して11.で校正した検量線とから推定
基準値Xiを求め,これを未補正定量値Xiとする。
(2) 定量値の計算 9.1で求めたlj,djを用い,Xiを式(8)に代入して共存成分の影響を補正し,定量値Wi
を算出する(25)。
Xi=Xi・ (1+ 圀 圀
ここに, Wi : 分析試料の定量成分iの定量値 [% (m/m) ]
Xi : 分析試料の定量成分iの未補正定量値 [% (m/m) ]
Wj : 分析試料の共存成分jの含有率 [% (m/m) ]
注(25) 補正計算は共存成分の補正係数と含有率の積を用いて行うので,共存成分の含有率を知る必要

――――― [JIS G 1256 pdf 10] ―――――

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