JIS K 0123:2018 ガスクロマトグラフィー質量分析通則 | ページ 2

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3.13
タンデム質量分析(tandem mass spectrometry : MS/MS)
同種又は異種の質量分析計を直列に接続し,1台目のイオン化室で生成したイオン種のうち一つをプリ
カーサーイオン(前駆イオンともいう)として選択し,2台目の質量分析計でそのプリカーサーイオンの
分解から生じるプロダクトイオンを検出する方法。
3.14
デコンボリューション(deconvolution)
クロマトグラム上で完全に分離できなかった重複ピークから,それを構成する個々の成分ピーク及び/
又は質量スペクトルを得る操作。
3.15
ドゥエルタイム(dwell time)
SIM又はSRMにおいて選択したイオンの1測定当たりの取込み時間。
注記 附属書E参照。
3.16
ハートカット[heart-cut (s)]
カラムから溶出する特定の画分を流路切換えで次のカラムに導入する,又は系外に排出するカラムスイ
ッチング手法。
注記 最初に溶出する画分を系外に排出する場合を,特にプレカットという。
3.17
バックフラッシュ(back flash)
キャリヤーガスを逆方向に流してカラム内に保持された成分を一括してカラムから溶出させる手法。
注記 分析時間の短縮,分離カラムの保護(不要成分の排出)などのため,また,狭いバンドで溶出
させ次のカラムに導入する,又は一つのピークとして検出器に導入し定量する目的で使用する。
3.18
半定量分析(semi quantitative analysis)
量的概念を加味して行う定性分析。
3.19
反応イオン(reaction ion or reagent ion)
試薬ガスを起源とする,分析種のイオン化を促進するイオン種。
3.20
標準作業手順書(standard operating procedure : SOP)
試験,検査などの実施方法及び手順について詳細に規定した文書。
3.21
フラグメンテーション(fragmentation)
イオンを構成する一つ以上の結合が開裂することによって,そのイオンより小さい質量のイオンを生じ
る反応。
3.22
フラグメントイオン(fragment ion)
フラグメンテーションで生じたイオン。

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3.23
プリカーサーイオン(precursor ion)
あるイオンから別のイオンが生じるときのイオン。前駆イオンともいう。
3.24
プロダクトイオン(product ion)
特定のイオンから生成した全てのイオン。生成イオンともいう。
3.25
プロファイルデータ(profile data)
質量分析計で測定されたm/zと信号強度からなる生データであり,質量スペクトルに加工する前のデー
タである。生データの分解能は装置によって異なる。
3.26
分解能(resolution)
質量分析計においてm/zの異なる質量(M)のピークを区別できる尺度となる数値。質量スペクトルの
任意の質量ピークm/z=M及びm/z=M+ΔMの2本のピークは区別できるが,m/zの差がΔMより小さく2
本のピークは区別できないとき,R=M/ΔMをこの装置の分解能とする。検出器が識別できる質量の差を表
現するもので質量分解能ともいう。
注記 分解能の計算は,ピークの半値幅(FWHM : full width at half maximum)から求めるものと隣接
したピーク間の重なりの度合い(10 %谷など)から求めるものがある。
3.27
保持指標(retention index)
ガスクロマトグラフィーにおいて,成分を同定するための指標の一つで,次の式によって定義される数
値。
log Xi log Xz
I 100 z 100 1
log Xz log Xz
ここに, Xi : 対象成分の空間補正保持時間(s)
Xz : Xiより空間補正保持時間が小さく,かつ,最もXiに近い
直鎖アルカンの空間補正保持時間(s)
z : 直鎖アルカンの炭素数
Xz+1 : z+1の炭素数の直鎖アルカンの空間補正保持時間(s)
なお,直線昇温分析の場合,上式のlogXはXとなる。Kovats Index(KI)と呼ぶこともある。
3.28
マスクロマトグラム(mass chromatogram)
一定の時間間隔で質量スペクトルを測定し,コンピュータに記憶させた後,特定のm/zのイオン強度を
取り出して表示した図。抽出イオンクロマトグラム(extracted ion chromatogram : EIC)ともいう。
3.29
モジュレータ(modulator)
包括的二次元GCにおいて,前段のカラムから溶出する全成分を一定時間間隔で捕集と脱離とを繰り返
し,順次,後段のカラムに導入する装置。
3.30
ライブラリー検索(library search)

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GC/MSなどで測定した特定成分の質量スペクトルを,データ処理部に内蔵の又は外部の質量スペクトル
ライブラリーと照合し,一致度などから同定又は分子構造推定を行う手法。

4 概要

  ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)は,混合物試料の分離分析に優れているガスクロマト
グラフ(GC)と,試料成分の構造解析及びごく微量分析に優れている質量分析計(MS)とを直結した装
置であるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS装置)を用いて,それぞれの特徴を生かして試料に関す
る物質情報を高感度に得るための分析方法である。
気体又は液体の混合物試料をGC/MS装置に導入すると,分析種はガスクロマトグラフで分離され,連
続的に質量分析計のイオン源に導かれてイオン化される。生じた正又は負のイオンは,アナライザー(質
量分離部)に入り,m/zに応じて分離される。分離されたイオンは,順次,検出部でその量に対応する電
気信号に変換され,各種クロマトグラム及び質量スペクトルとして記録される。分析種ピークの保持時間
(ここでは空間補正保持時間)及び質量スペクトルから定性分析を行い,ピーク面積(又はピーク高さ)
から定量分析を行う。

5 装置

5.1 装置の構成

  装置は,ガスクロマトグラフ,インターフェース(GC/MS接続部),質量分析計及びシステム制御・デ
ータ処理部からなる。装置の構成の例を,図1に示す。
システム制御・データ処理部
直接試料導入部
カラム槽 インターフェース アナライザー
試料導入部
カラム イオン化部 (質量分離部) 検出部
(GC/MS接続部)
(分離部)
試薬ガス導入部
キャリヤーガス流量制御部
真空排気部
校正用標準試料導入部
ガスクロマトグラフ 質量分析計
図1−装置の構成図(例)

5.2 ガスクロマトグラフ

  ガスクロマトグラフの構成は,次による。
a) キャリヤーガス流量制御部 キャリヤーガス流量を制御するための部分である。基本的には圧力調節
弁,流量調節弁,圧力計などで構成されるが,最近の装置の多くは各部の小形化,電子化がなされ,
圧力センサー,流量センサー,調節弁等を用いてキャリヤーガスの流量,圧力,線速度などを電子制
御できるようになっている。また,キャリヤーガスの消費量を削減するための機能を備えているもの

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が多い。
b) 試料導入部 試料をキャリヤーガス流路中に導入する部分である。液体又は気体試料をシリンジで導
入するもの及び気体又は液体試料を計量管などで採取し,弁操作で導入するものがある。また,キャ
ピラリーカラム用の試料導入部には,分割導入方式と非分割導入方式とがある。分割導入方式には,
注入気化した試料の一部だけをカラムに導入するスプリット注入法がある。非分割導入方式には,開
閉可能な排気口を利用して溶媒処理を工夫し,そのピークの大きなテーリングを生じることなく試料
をほぼ全量導入するスプリットレス注入法,大口径キャピラリーカラムを用いて気化した試料の全量
を導入する直接注入法,試料導入部の温度を溶媒の沸点温度以下に設定し,注入口を通してカラムに
直接試料を導入するコールドオンカラム注入法,試料導入部の温度を溶媒の沸点温度以下に設定し,
試料導入後,低温で溶媒を排出した後,急速加熱して試料をカラムに導入する温度プログラム気化注
入法などがある。
また,各種前処理導入装置を直結して,試料の導入を行い,適用範囲を広げる。
c) カラム カラムは,キャピラリーカラムと充カラムとの2種類に大別できる。目的に応じて長さ,
内径,固定相の種類などを選ぶ。キャピラリーカラムは,材質が金属,ガラス,石英ガラス,合成樹
脂などで,一般に内径が0.1 mm1.2 mm,長さが5 m100 m及び固定相の膜厚が0.1 m10 mの
ものが使われる。吸着形キャピラリーカラムは,通常は吸着剤が数μm数10 μmの厚さでカラム内
壁に塗布され,各種のバインダーを用いて固定化されている。分配形キャピラリーカラムは,固定相
液体をカラム内壁に塗布したものである。固定相液体の移動を防ぐため,化学結合・架橋を施したも
のがほとんどである。充カラムは,材質が金属,ガラス,合成樹脂などでできた内径が2 mm6 mm,
長さが0.5 m5 mの管に充剤を充したものである。充剤には,固定相液体を担体に担持させた
もの,吸着剤その他が使われる。担体及び吸着剤の粒度は150 m180 m,180 m250 mなど各
種ある。
d) カラム槽 カラム槽は,内部を設定された温度に保持し,かつ,温度分布を一定に保つことが可能な
加熱機構をもつ。また,適切な分離が行え,分離にかかる時間を調節可能な昇温分析を行う場合,初
期温度,継続時間(ホールド時間),昇温速度,最終温度及び継続時間(ホールド時間)の設定が可能
でなければならない。
e) 高速GC 高速ガスクロマトグラフィー(高速GC)は通常,内径の小さい0.1 mm程度のカラムを用
い,高速昇温することによって,分離を損なうことなく測定時間を通常の数分数10分の一に短縮す
る手法である。内径の小さく膜厚が薄いカラムを用いるため試料負荷容量は小さいが,測定時間の短
縮が可能なためGC/MSへの適用も多い。高速GC及びGC×GC[f) 2) 参照]に対応したカラムは,
その上に直接ヒーターと温度センサーを巻きつけた形でカラム槽とは独立に高速昇温ができる仕様に
なっている場合が多い。
なお,通常のカラム槽でも可能な高速の昇温を行う場合も高速GCと呼ばれている。
f) 二次元GC 特性の異なる2本のカラムと検出器(質量分析計含む)との組合せによって一つのカラ
ムでは分離が困難な試料の定性分析及び定量分析,並びに複雑な組成の試料の定性分析及び定量分析
を可能にするものとして次の二次元ガスクロマトグラフィー(二次元GC)がある。
1) C-GC 二次元GCの一種で最初のカラムで分離した特定成分(分画)をハートカットし,選択的
に二番目のカラムに導入し,再度分離を行う。通常,一つのカラム槽内で流路切替え装置(部品)
を用いて測定するが,独立した二つのカラム槽を使用する場合もある。
2) C×GC 包括的二次元ガスクロマトグラフィーと呼ばれ,最初のカラムで分離した成分(分画)

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を全領域にわたって連続的に捕集と脱離とを繰り返し,極性の異なる2番目のカラムで高速分離を
行う。捕集及び脱離はモジュレータと呼ばれる装置を用いる。また,通常のカラム槽とは別に直接
加熱が可能なカラム[e) 参照]を取り付け,個々のカラム温度を独立に制御して測定する場合があ
る。

5.3 インターフェース(GC/MS接続部)

  インターフェースは,GCとMSとの接続部をいう。大気圧となっているガスクロマトグラフのカラム
出口と高真空になっている質量分析計のイオン源とを接続する部分で,カラムの種類及び真空ポンプの排
気速度によって,次のいずれかを用いる。
a) キャピラリーカラム 内径が約0.3 mm以下のキャピラリーカラムの場合は,その出口側の一端が質
量分析計のイオン源に直接又はごく近くに位置するように接続する。また,内径が約0.3 mm以上の
大口径キャピラリーカラムの場合は,直接イオン源に接続する場合もあるが,キャピラリーカラムの
前段又は後段に抵抗管を接続して使用することも多い。キャピラリーカラム又は抵抗管を介しての接
続時にはこのインターフェースの箇所を特にトランスファーラインと呼ぶ。また,b) に示す接続方法
を用いる場合もある。GC/MS接続部は,小形の恒温槽又は加熱管によって,カラム槽と同じかそれ以
上の温度に保つことができる加熱・温度制御機構及び温度測定機構をもつ。キャピラリーカラムの接
続部の例を図2に示す。
図2−キャピラリーカラムの接続部(例)
b) 充カラム及び大口径キャピラリーカラム 充カラム及び大口径キャピラリーカラムのキャリヤ
ーガス流量は5 mL/min20 mL/minであり,a) で示した方式では真空維持が困難,測定感度低下,流
量制御精度の低下などが起こる。そのため,キャリヤーガスの分離除去及び分析種の濃縮のため,通
常ジェットセパレーターを用いる。このセパレーターの材質はガラス製が一般的で,排気系をもつ。
セパレーターの構造の例を,図3に示す。この原理は,キャリヤーガスであるヘリウムと分析種との
拡散係数の差を利用するもので,図3のA部のようにガラス管の先端を細くすることによって,質量
の小さいヘリウムのほとんどを油回転ポンプで吸引する。一方,質量が相対的に大きい分析種をさほ
ど損失することなく質量分析計に導く。
また,カラムから流出するキャリヤーガス及び試料成分を口径の小さいキャピラリーを介してスプ
リットさせて,一部を質量分析計に導入する方法もある。

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