JIS K 0123:2018 ガスクロマトグラフィー質量分析通則 | ページ 3

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図3−セパレーター(例)

5.4 質量分析計

  質量分析計は,ガスクロマトグラフによって分離された分析種をイオン化し,m/zに応じて分離した後,
これを検出する部分で,次のイオン化部,アナライザー(質量分離部),検出部,真空排気部及び校正用標
準試料導入部からなる。
a) イオン化部 イオン化部は,ガスクロマトグラフのカラムから溶出した分析種をイオン化し,アナラ
イザーに導く部分である。イオン化法には,電子イオン化(EI)法,化学イオン化(CI)法その他の
方法がある。化学イオン化法には正イオン化学イオン化法(PICI)と負イオン化学イオン化法(NICI)
がある。最も一般的なEI法のイオン源は,イオンを生成するイオン化室,生成したイオンを効率よく
アナライザーに導くための押し出し電極又は引き出し電極,及びイオン化室直後に配置された電極群
(レンズ)から成る。イオン源にはイオン化室内に電子を供給するフィラメント(陰極),電子トラッ
プ(陽極)が附属し,更にフィラメントと電子トラップの外側に磁石を装着し,電子をら(螺)旋状
の軌道で運動させることでイオン源内での広がりを防ぎ,分析種のイオン化の効率を高める。イオン
の押し出し電極又は引き出し電極によってイオン化室から射出したイオンは,イオン化室直後に配置
された電極群(レンズ)によってイオンの加速,イオンビームの収束などの作用を受けながら,アナ
ライザーに導かれる。また,イオン源はイオン化室内壁への分析種及び共存成分の吸着を軽減させる
ため,水分などの残留を抑制するためにヒーターを備え,目的に応じた温度に設定可能である。CIイ
オン源には,イオン化時に,試薬ガスを導入する。イオン化部(EIイオン源)の例を図4に示す。
図4−イオン化部(EIイオン源)(例)
電子イオン化法,正イオン化学イオン化法,負イオン化学イオン化法その他のイオン化法は,次に
よる。

――――― [JIS K 0123 pdf 11] ―――――

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1) 電子イオン化(EI)法 真空下でフィラメントから放出された数10 eV以上のエネルギーをもつ電
子をイオン化室内の気体状の分析種に照射し,その運動エネルギーの一部を電子エネルギーの形で
付与してイオン化する方法。最初に分子イオン [M]+・を生じるが,一般に過剰な内部エネルギーに
よって分子構造に依存したフラグメンテーションが起こり,フラグメントイオンを生じる。分子構
造によっては,分子イオンが残らない場合もある。GC/MSで最も利用されている。
2) 正イオン化学イオン化(PICI)法 イオン化室に高純度メタンなどの試薬ガスを100 Pa程度の圧力
となるように導入し,電子などを照射して試薬ガス由来の反応イオン(例えば,メタンの場合,
CH5+,C2H5+など)を生成させる。次に,これらの反応イオンと分析種との間のイオン−分子反応
によって分析種をイオン化する。構造的に安定な偶数電子イオンであるプロトン付加分子 [M+H]+
又は脱ヒドリド分子 [M−H]+を生じやすい。また,反応熱の一部が過剰な内部エネルギーとして蓄
えられるが,反応エネルギーの小さいソフトなイオン化のため,EI法と比較して,フラグメンテー
ションは少ない。PICI法によって分子の質量の推定が容易な場合が多い。
試薬ガスの高純度メタンは,純度99.99 %以上を推奨する。
なお,メタン以外の試薬ガスとしてはイソブタン,アンモニアなどが用いられ,純度99.9 %以上
を推奨する。
注記 附属書A参照。
3) 負イオン化学イオン化(NICI)法 イオン化室をメタンなどの試薬ガスで満たすことはPICI法と
同じであるが,イオン化の機構は,反応イオン形と電子捕獲形との2種類に大別される。前者は,
試薬ガスから生じた反応イオン(OH−,CH3O−,Cl−など)又は系内に存在する水から生じた反応
イオン(OH−など)と分析種との間のイオン−分子反応によってイオン化し,[M−H]−などのイオ
ンを生じさせる。後者は,イオン化室内で運動エネルギーを失った熱電子が分析種と共鳴捕獲反応
を起こしてイオン化するもので,電子親和性の高い化合物に対して分子イオン [M]−・などを生成す
る。
注記 附属書A参照。
4) その他のイオン化法 GC/MS装置で用いられるその他のイオン化法としては,フィールドイオン化
(FI)法,光イオン化(PI)法,レーザーイオン化(LI)法,大気圧化学イオン化(APCI)法,誘
導結合プラズマによるイオン化(ICP)法などがある。ICP法は本来,無機元素の分析に用いられる
が,GC/MS装置では有機金属化合物などの元素分析的測定などに用いられる。GC/MSとしてAPCI
法を用いる場合,フラグメントイオンの生成が少ないため,構造情報を得るためにはMS/MSを行
う必要がある。
b) アナライザー イオン化部で生じた分析種由来のイオンをそのm/zに従って分離する部分で,分離方
式の違いによって次の四重極形(Q),イオントラップ形(IT),磁場形,飛行時間形(TOF),三連四
重極形,フーリエ変換形(FT),ハイブリッド形などがある。
1) 四重極形 四重極形質量分析計の概略図の例を図5に示す。

――――― [JIS K 0123 pdf 12] ―――――

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図5−四重極形質量分析計の概略図(例)
金属製又は金属を蒸着したガラス製の4本の円柱若しくは双曲面をもつロッドをお互いに平行に
イオン源の後方に設置する。この四重極ロッドの模式図の例を図6に示す。対向するロッドには同
じ電圧[高周波電圧(Vcosωt)に直流電圧(U)を重ね合わせたもの]を,隣り合うロッドには正
負逆電位をかけ,高速で切り替える。イオン源で発生したイオンを中心軸に沿って入射させると,
イオンは,x軸又はy軸方向に振動しながらz軸方向に進む。このとき,ある特定のm/z範囲のイ
オンだけ振幅が大きくならずに通過することができ,検出器に到達する。
図6−四重極ロッドの模式図(例)
四重極ロッドを通過後,検出器に到達するイオンは,式(1)による。
ロッドまでの半径及び周波数を一定にすると,式(1)は式(2)となる。検出器に到達するイオンは,
ロッド電位に比例する。このロッド電位を走査することで,質量スペクトルが得られる。
m V
K 2f 2

(pdf 一覧ページ番号 )

                         z      r
m
K V (2)
z
ここに, m : イオンの質量(kg)
z : 電荷数
K : 定数
K' : 定数
V : ロッド電圧(V)
r : ロッドまでの半径(m)
f : 周波数(Hz)
注記 附属書D参照。

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2) イオントラップ形 イオントラップ形質量分析計は,イオン化部で生成されたイオンを,高周波を
加えた電場によってアナライザー内に閉じ込めた後,高周波電圧を連続的に変化させることによっ
てm/zの大きさの順にイオンを排出して質量分離する装置である。
イオントラップ形質量分析計の模式図の例を図7に示す。アナライザーは,双曲面をもったz軸
対称の3個の回転体の電極から構成される。左右2個の電極をエンドキャップ電極,中央の1個の
電極をリング電極と呼ぶ。
リング電極に1 MHz程度の周波数で,小さな振幅Vの高周波電圧を印加しておくことによって,
イオンの安定な振動の条件が作られ,ある値以上のm/zをもったイオンが振動空間の中心部に集ま
って閉じ込められる。次に,この高周波電圧の振幅を徐々に増大させると,閉じ込められたイオン
はm/zの小さい順にエンドキャップ電極にある孔を通過して排出され,検出器に到達して質量スペ
クトルが測定される。
イオントラップ形では,同一のアナライザー内で時間を分けて2回以上のMS/MSが可能なため
MSnとも表記される。
図7−イオントラップ形質量分析計の模式図(例)
3) 磁場形 磁場形質量分析計は,通常,加速電圧一定で磁場強度(磁束密度)を変化させることによ
って広いm/z範囲にあるイオンを分離,検出する装置である。磁場セクターにおけるイオンの分離
のイメージを図8に示す。
一様の磁場の中を移動する電荷をもった粒子(イオン)は,図9に示すフレミングの左手の法則
に従い,イオンの進行方向と磁場の向きとの両方に対して垂直方向に力(ローレンツ力)がかかる
ため,その平面内で偏向される。したがって,磁場内の軌道半径がrに固定されている装置では,
式(3)を満足するm/zのイオンだけが通過することができる。
m er2B2

(pdf 一覧ページ番号 )

                         z    2Va
ここに, m : イオンの質量(kg)
Va : 加速電圧(V)
z : 電荷数
e : 電気素量(C)
r : 軌道半径(m)
B : 磁場強度(磁束密度)(T)

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注記 磁場形質量分析計は,測定の目的に応じて,磁場強度一定で加速電圧(及び電場電圧)を
変化させて質量分離する方法を用いることがある。
図8−磁場セクターにおけるイオンの分離
図9−フレミングの左手の法則
ここで,一般に多くの磁場形質量分析計は,磁場セクターのほかに電場セクターをもつ二重収束
形となっている。磁場セクターと電場セクターとを組み合わせることによって,イオンの方向収束
とエネルギー収束との二つの収束作用をもつこととなり,高感度及び高質量分解能を実現している。
二重収束形質量分析計には,磁場セクターと電場セクターとの順序の違いによって,正配置形(電
場−磁場)と逆配置形(磁場−電場)とがある。その構成図の例を図10に示す。

――――― [JIS K 0123 pdf 15] ―――――

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