JIS K 0123:2018 ガスクロマトグラフィー質量分析通則 | ページ 4

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可変スリット 可変スリット
イオン源 電場セクター 磁場セクター 検出器
a) 正配置形
イオン源 磁場セクター 電場セクター 検出器
b) 逆配置形
図10−正配置形及び逆配置形の構成図(例)
可変スリットをもつ磁場形質量分析計では,スリット幅を調節することによって,分解能を調節
することが可能である。磁場形質量分析計は,SIMによる定量,質量スペクトルによる定性などの
日常的な質量分析のほか,高分解能SIM測定などが可能である。また,安定同位体比測定に特化し
た磁場形質量分析計もある。
4) 飛行時間形 飛行時間形質量分析計(TOF-MS)は,イオン源で発生した分析種由来のイオンがパ
ルス電圧によって加速され,検出器まで到達する時間によって質量スペクトルを得る装置である。
イオン化室で生成する全てのイオンは,加速された後,検出器までフライトチューブ(無電界空
間)内をm/zに対応する速度で飛行し検出器に到達する。この飛行時間形質量分析計の模式図を図
11に示す。
図11−リニア形飛行時間形質量分析計の模式図(例)
このときの飛行速度,加速電圧,質量及び電荷数の間には,式(4)のような関係が成り立つ。した
がって,飛行速度は式(5)で,飛行時間は式(6)で求められる。式(6)を書き換えるとm/zを与える式(7)
となる。
m v2
z eV (4)
2

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2 z eV
v (5)
m
L m
t L (6)
v 2 z eV
m 2eVt2

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ここに, V : 加速電圧(V)
v : 飛行速度(m/s)
m : イオンの質量(kg)
z : 電荷数
e : 電気素量(C)
t : 飛行時間(s)
L : 飛行距離(m)
一般のGC-TOFMSは,イオンが直進し,検出器に到達するリニア形,リフレクターをもつリフレ
クトロン形及び同一軌道上を周回させる多重周回形がある。その模式図及び原理図の例を図12に示
す。リニア形は分解能が低いため,GC/MSとしての使用はほとんどない。リフレクトロン形では,
リフレクターによって同じ質量をもつが運動エネルギーが異なるイオンを同時に検出器に到達させ
るエネルギー収束作用をもつため分解能を向上できる。
リフレクター
図12−リフレクトロン形質量分析計の模式図(左)及び原理図(右)(例)
5) 三連四重極形 三連四重極(QqQ)形は空間的に四重極を直列又は曲線上に配した質量分析計で
MS/MSが可能である。三連四重極形の例を図13に示す。三連四重極では第1のアナライザー(Q1)
で特定のプリカーサーイオンを分離選択し,そのイオンを中央のqでアルゴンなどの不活性ガスと
衝突させてフラグメンテーション[衝突誘起解離(CID)]を起こさせる。CIDによって生成された
プロダクトイオンは第2のアナライザーで(Q2)で更に分離選択され検出器で検出される。Q1と
Q2の動作モードとしてはイオンの走査,特定のイオンの選択,全イオンの通過のいずれかが可能で,
その組合せによって幾つかの分析モードを実現できる。また,qでは,プリカーサーイオンの衝突
エネルギーを変えることでフラグメンテーションの程度を変えることもできる。

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図13−三連四重極形質量分析計の模式図(例)
6) フーリエ変換形 フーリエ変換形には,イオンサイクロトロン共鳴(ICR)及びキングドントラッ
プがある。ICRは,一様の高磁場中で回転運動するイオンに高周波電場を印加すると,その周波数
に一致する回転周波数をもつ特定のm/zのイオンだけが共鳴的にエネルギーを吸収し,軌道半径を
増大させて検出電極に誘導電流を生じる現象を利用する。キングドントラップ形は,紡すい(錘)
形曲面をもつ中心電極とそれを覆うように配置したわん(椀)状電極から成り,中心電極とわん(椀)
状電極との間に高電圧が印加されている。この電極間の電場内に一定のエネルギーをもつイオンを
入射したとき,イオンが中心電極の周りを回転及び振動運動し,わん(椀)状電極に誘導電流を生
じる。これらの記録された波形をフーリエ変換し,質量スペクトルを得る。その模式図の例を図14
に示す。
図14−キングドントラップ形の模式図(例)
7) ハイブリッド形 ハイブリッド形質量分析計は,MS/MSを行うために異なるタイプのアナライザー
を結合した装置である。GC/MS/MSとして使用される装置には,四重極形及び飛行時間形若しくは
四重極形及びフーリエ変換形(FT)を組み合わせたQqTOF形,QqFT形などがある。
c) 検出部 検出部は,次の二次電子増倍管,マイクロチャンネルプレート及びファラデーカップに大別
する。また,イオンを検出器に直接入射せず,事前に電子に変換する変換ダイノードと組み合わせて,
検出部を構成することがある。
1) 二次電子増倍管 二次電子増倍管は,検出器に入射したイオン又は電子が,ガラス又はセラミック
製の曲がったパイプ(チャンネル形),若しくは連続して設置したダイノード(ディスクリート形)
への衝突を繰り返す間に電子数を増倍させ,応答量を増加させる。検出器入口にシンチレータを配
した光電子増倍管は,変換ダイノードによって発生した電子をシンチレータに照射し,発生した光

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子を光電管に通した後,光電子に変換,その後はディスクリート形と同じく二次電子を増倍させる
ことができる。二次電子増倍管では,106倍108倍に電流値は増幅される(増幅率)。上記3例を図
15図17に示す。
図15−チャンネル形二次電子増倍管(例)
図16−ディスクリート形二次電子増倍管(例)
図17−光電子増倍管(例)
2) マイクロチャンネルプレート マイクロチャンネルプレート(microchannel plate : MCP)はチャン
ネルと呼ばれる細孔が蜂の巣状に配置されている金属被覆された薄いガラス板である。その例を図
18に示す。チャンネル入口付近にイオンが入射すると,チャンネル内壁で衝突を繰り返し,電子数
を増加させる。MCP1枚の増幅率は103程度であるため,複数枚を組み合わせる,又はMCPと二次
電子増倍管検出器とを組み合わせることで増幅率を向上させる。その概略図の例を図19に示す。主
に飛行時間形質量分析計の検出器として用いられている。

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図18−マイクロチャンネルプレート(MCP)(例)
注記 矢印の太きさは,発生二次電子量を示す。
図19−チャンネル内での電子の増幅の概略図(例)
3) ファラデーカップ カップ状の導電体で捕捉したイオン(荷電粒子)によって発生した電子電流を
計測することによって,捕捉したイオンの数を決定する。電子増倍管のような間接的に感度を増幅
する機構はもたないが,捕捉した荷電粒子と計測する電流の値は直接的に比例するため,精度は高
いといわれている。同位体質量分析計に使用される場合が多い。
d) 真空排気部 真空排気部は,イオン化部及びアナライザー及び検出部を真空に保つためのもので,前
段に油回転ポンプ,後段にターボ分子ポンプ又は油拡散ポンプが用いられることが多い。イオン化部
は,通常,EI法の場合0.01 Pa以下,CI法の場合10 Pa100 Pa程度,アナライザーは1×10−5Pa
1×10−3Pa以下に保たれる。イオン化部とアナライザーの間に隔壁を設け,それぞれ異なる排気シス
テムをもつ装置がある。また,これらの排気システムは附属の校正用標準ガス導入部,CI用試薬ガス
導入部,直接試料導入部などの排気にも用いられる。
e) 校正用標準試料導入部 m/z,感度,分解能を調整するための標準試料をイオン化部に導入するための
装置で,圧力(流量)制御機構,開閉弁,排気機構などからなる。

5.5 システム制御・データ処理部

  システム制御部は,装置各部の制御,質量スペクトル,クロマトグラムの採取,記録,処理,表示など
を主に行う部分で,中央演算ユニット(CPU),記録媒体などから構成され,オペレーティングシステム及
び各種ソフトウェアが組み込まれたコンピュータ本体,キーボード,ディスプレイなどからなる。通信機
能をもち,ローカルエリアネットワーク(LAN)などを通して装置の遠隔制御,測定データへの接続が可
能な装置もある。また,GC/MS装置本体に接続した各種前処理,試料導入装置を同時に制御できるものも
多い。

5.6 附属装置

  附属装置は,次による。
a) ガスクロマトグラフへの試料導入附属装置 ガスクロマトグラフへの試料導入附属装置は,次によ

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