JIS T 7207:2019 医用加湿器―加湿システムの基礎安全及び基本性能に関する個別要求事項 | ページ 10

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kJ/m3を送気ガスのエネルギーの上限値として使用できる。
酸素/空気以外のガス混合物を考慮するときは,次に留意が必要である。エネルギーの大部分が水蒸気
に含まれていることを考えると,43 ℃,100 %RHの空気の相当量が許容可能なエンタルピーの上限になる。
乾燥空気の比重は,0.978 6 m3/kg,乾燥空気のエンタルピー含有量は197 kJ/m3である。どのような混合ガ
スを使用しても患者が呼吸する容積が等量だと仮定すると,乾燥ガスの安全なエンタルピーの上限値は,
197 kJ/m3である。単位容積当たりのこのエンタルピーは,患者に供給されるエネルギーのより適切な尺度
になる。
送気ガス温度が継続して41 ℃を超える場合,患者に熱ハザードを与える可能性がある。患者ケアで必
要とされることはほとんどないが,いずれの飽和度水準であっても送気ガス温度41 ℃の継続供給だけで
は患者に対する熱ハザードにはならない。ガス温度,飽和度レベル及び患者への暴露時間の組合せによっ
ては,41 ℃を超える送気ガスは危害を与える場合がある。
皮膚の火傷を引き起こす際の暴露時間と温度との相対的な重要性を研究した論文では,表面温度が44 ℃
以上で暴露時間6時間以上の場合に,表皮細胞に不可逆的な損傷が発生すると結論付けた[43]。これは,ア
メリカ海軍メディカルリサーチアンドディベロプメントコマンド(U.S. Navy Medical Research and
Development Command)[41] が実施した研究で実証されている。この研究では,45 ℃の完全に飽和したガス
は,1時間以内であれば気道粘膜に損傷を与えることなく吸入できると結論付けた。
体温に等しい温度の完全飽和ガス(37 ℃,100 %RH)は,37 ℃の通常の体温の患者との間では熱エネル
ギーの相互伝達がない。体温と同じ温度の乾燥ガス(37 ℃,0 %RH)は,蒸発によって熱を奪う。41 ℃の
完全飽和ガスは,患者吸気で乾燥ガス181.3 kJ/m3未満の熱エネルギーを提供できる。患者を熱損傷から保
護するため,送気ガス温度が43 ℃を超えると,加湿器の加温は停止する。120秒間の平均で43 ℃,100 %RH
ガスと同等のエネルギー量(197 kJ/m3 乾燥ガス)を超えてはならないという熱のオーバーシュートは,
患者に対する影響は小さく,加湿器の構成を単純化するために認められる。
したがって,測定ガス温度が操作者に継続的に表示されること,及び測定ガス温度が43 ℃を超えると
加湿器が自動的に加温を停止し,過温アラーム状態が発生することが重要である。
201.12.4.101で規定する試験条件は,流量が大きく変化したときに高エネルギーガスの過剰なオーバーシ
ュートが患者に供給されないことを確実にするために重要である。
201.13.1.101† 特定の危険状態の追加
過度な液体の供給は,患者の傷害及び送気チューブ内の水分貯留の原因になるおそれがある。
201.13.102† 加湿器制御機能の独立及び関連するリスクコントロール手段
この要求事項によって,作動装置の制御に監視装置を使用することを防止する。これは,万一監視に不
具合が生じた場合,作動装置で検知されない誤動作が発生することを防止するためである。
201.101.1† 一般
規格外の呼吸システムのコネクタは,受容できないリスクの原因になる可能性がある。緊急の状況にお
いて,標準の呼吸システムを人工呼吸器又は加湿器に取り付ける試みがなされるからである。規格外の呼
吸システムのコネクタは,類似しているが互換性のないコネクタと併用すると,漏れの原因になる可能性
がある。
201.101.4† 附属品ポート
ISO 594-1[53] 又はISO 594-2[54] に適合するルアーテーパ又はルアーロックコネクタは,呼吸システムで
の使用は認められない。静脈内輸液,及び非経口若しくは経腸栄養液の誤接続によって異物が肺に誤えん
(嚥)され,重篤なり(罹)患及び死亡につながった症例報告がある。

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201.101.8.2† 漏れ
60 cmH2Oは,ISO 5367の漏れ試験の実施に現在提案されている圧力である。ISO 5367:2014では,係合
するセンサ又は相手口からの5 mL/分の漏れは,呼吸システムで許容される漏れ量合計の10 %に当たる。
201.102.1† 一般
安全使用は,加湿器と附属品との相互作用に依存することから,この個別規格ではシステム全体の性能
に関する要求事項を患者側接続ポートに規定した。したがって,システム全体の性能に関する要求事項は,
加湿器の製造業者及び加湿器との併用を意図する送気チューブ(加熱送気チューブ及び非加熱送気チュー
ブの両方)の製造業者に適用される。加湿器及びその附属品は,送気チューブでの凝縮を減少させる手段
を備えることが望ましい。
例 送気チューブの加温,又はウォータートラップの設置
呼吸システム,その部品又は附属品の製造業者は,製品がこの個別規格の要求事項に適合しているか検
証する責任を負う。
患者側接続ポートまでの送気チューブは,システム全体の性能に関する要求事項の一部を構成する。送
気チューブの製造業者は,送気チューブ(加熱送気チューブ及び非加熱送気チューブの両方)を推奨され
る加湿器と併用して試験を実施することによって,システム全体の性能に関する要求事項に適合すること
を確実にする必要がある。
201.102.3† 送気チューブ
加湿器が発生する熱及びその他の電気加温によって,送気チューブの屈曲,閉塞及びせん(穿)孔が発
生することが報告されている。この個別規格の要求事項への適合を試験し,試験において屈曲,閉塞及び
せん(穿)孔の発生がなかった送気チューブは,臨床使用における基礎安全及び基本性能の要求にかなう
と考える。
201.104.1† 一般
加湿器と呼吸ガス供給源との接続,及び加熱送気チューブ制御装置と送気チューブとのヒータの接続は,
機能接続である。これらの機能接続が途切れた場合,又は接続した機器が故障した場合,加湿器は,表
201.101に示す基本性能を維持する必要がある。カテゴリ1の加湿器の場合,アラーム状態が発生するの
であれば,加湿出力の損失は受容可能である。カテゴリ2の加湿器の場合,アラーム状態は要求されない。
いずれの場合においても,基礎安全は維持されなければならない。
201.104.2† 電子カルテへの接続
患者の治療介入に関する電子文書化は,近年急速に治療の標準になっている。主たる動機は,正確で完
全な文書化によって個別の患者の治療の質を向上させ,また,集約されたデータの完全性及び正確さを向
上させることによって継続的な質の向上を容易にすることである。在宅医療環境においては,遠隔監督機
能の提供が急速に標準になっている。
201.104.3† 分散形アラームシステムへの接続
患者は,必ずしも患者の部屋からのアラーム信号を操作者が確実に聞けるほど近くにいるとは限らない。
患者の自宅,治療施設又は医療施設の一部の部屋からのアラーム信号が聞こえないことは合理的に予測で
きる。したがって,加湿器は,アラーム信号を信号発生箇所で追加して発生させる分散形アラームシステ
ムに接続する手段を備えることを推奨する。分散形アラームシステムは,操作者が居る可能性のある他の
部屋へのアラーム信号の配信を容易にし,それによって迅速な応答及び患者の治療介入の支援を可能にす
る。
202.8.1.101† 一般要求事項の追加

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幾つかの加湿出力で複数回イミュニティ試験を実施することを要求するのは,小委員会の意図ではない。
しかし,製造業者は,当該イミュニティ試験で最も不利な加湿出力を判断し,その条件を使用することが
望ましい。
基本性能が維持されていることを示すために,この個別規格で要求する個別試験の後で,加湿出力の変
化の監視に市販の湿度計を使用して受容基準としてもよい。
208.6.8.4.101† アラーム信号不活性化終了に関わる要求事項の追加
アラーム信号を長時間停止すると,患者の危害の原因になり得る。操作者にアラーム状態の発生を通知
できないからである。とはいえ,患者管理中には聴覚アラーム信号があっては続けることが難しい手順が
しばしば必要とされる。したがって,操作者の操作によってアラーム音中断を延長することは,加湿器が
操作者又は近隣の人の邪魔になることを防ぐ上で役立つ。
加湿器は,アラーム状態でないときに操作者がアラーム信号を一時停止できるアラーム音中断機能を備
えていることが望ましい。この機能によって,聴覚アラーム信号による操作者への妨害を最小限にできる。
附属書BB† 表示される測定ガス温度の精度の判定
加湿器の温度センサと全く同じ場所で温度を測定することは,ガスの流量,ひいてはガスから加湿器の
温度センサまでの熱伝達特性を変更しなければ困難である。試験の目的は,加湿器温度センサのいずれか
で温度を測定して温度を補間することである。回路内の温度低下は,非線形の可能性がある。標準温度セ
ンサは,できるだけ加湿器の温度センサの近くに配置するが,ガス流量パターンへの影響は最小限にとど
めることを目的とする。
附属書CC† 加湿出力の測定
加湿出力は,BTPS基準条件における気体の単位体積当たりの水蒸気の質量(mg/L)と定義されている。
BTPS条件は,他の基準条件に比べて生理的により適切である。
呼吸システムの非等温環境で操作するとき,市販の湿度計は,応答速度が不十分で継続的に正確な結果
を提供できない。したがって,このような機器の使用は,定流量での湿度測定に限定することが望ましい。
このような機器の使用は,この個別規格が規定する全ての試験で基本性能の維持の検証に適している。た
だし,201.12.1.101の要求による換気ガスのフロー条件での加湿出力の測定を除く。換気ガスのフローは
定常流ではなく,また,計器の時間応答が非常に遅いため換気フロー波形の急激な変化にも対応できない。
露点湿度計を使用するには,規定されたmg/Lの単位(基準BTPS)から露点の相当値に換算する必要が
ある(表AA.1を参照)。
表AA.1−最低必要加湿出力の等露点
加湿器分類 BTPS条件での絶対湿度 露点
mg/L ℃
カテゴリ1 33 32.2
カテゴリ2 12 15.9
附属書DD 比エンタルピーの計算
式(DD.2) †
全エンタルピーの計算は,理想気体の基本的性質の論理的理解に基づく。アマガー(Amagat)の法則に
よると,理想気体の場合,混合気体の体積は分体積の和に等しい。したがって,全エンタルピーは,各ガ
ス成分について計算されたエンタルピーの合計(すなわち,乾燥ガスエンタルピー及び水蒸気エンタルピ

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ーの合計)である。式(DD.2)の形は,ISO 8185[2] と同じであるが,結果に密度を掛けて所望の体積基準単
位を得る。この式は,この個別規格の参照文献にも記載されている[44]。
附属書FF † 標準温度センサ
標準温度センサは,追加の銅熱部を含み,回路全体の温度の平均化,センサに発生する結露の影響の最
小化,センサの正確な位置決めの影響の低減,センサへの熱伝達の増加,ステム効果の最小化,安定した
温度測定を確実にする。
非等温状態では,温度の測定は容易ではない。温度計を使用するだけの問題ではない。エネルギー入力,
エネルギー出力,熱伝導率は,全て考慮する必要がある。校正された良好な温度測定器を使用して狭い管
内の流れるガス温度を測定した場合,最大10 ℃程度異なる結果を示すことがある。この個別規格で規定す
る方法は,ばらつきの発生を抑えた標準的な温度測定方法を規定することによって,比較及び再現を可能
にすることを意図する。
サーミスタを検出素子として選択している。小形で容易に利用可能であり,ドリフトが低く,当該温度
範囲で有意な出力信号をもち,かつ,容易に簡易回路に接続可能だからである。
サーミスタの特定の値及び寸法は,市販の装置に適合するように規定されているので,組み込んだセン
サの熱損失及びステム効果が標準化されている。
サーミスタセンサを測定回路に組み込むときは,サーミスタが使用する電流によって著しい自己発熱し
ないことを確実にするように注意が必要である。
抵抗を直接測定するには,4 1/2デジット(又はそれ以上)の良好なマルチメータを使用できる。この測
定を行う場合,測定でメータが発生する電流による著しい自己発熱がないように注意する必要がある。

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附属書BB
(規定)
*表示される測定ガス温度の精度の測定
BB.1 試験の準備
附属文書に従って組み立てた加湿器及び附属品に,附属書FFに規定する標準温度センサ2個を組み込
み,表示される測定ガス温度の精度を確認する。センサの構成を図BB.1に示す。
必要であれば,延長チューブを用いて,周囲の通風及び温度でセンサが不要な影響を受けないようにす
る。このチューブは,送気チューブと同じ径で,かつ,いずれのセンサも周囲の通風の影響を受けないよ
う送気チューブ径の少なくとも10倍以上の長さとすることが望ましい。
加湿器の温度センサの通常の位置から二つの標準温度センサまでの距離(図BB.1に示す距離l )は,等
距離で,20 mm30 mmとする。
1 加湿器の温度センサ
2 密閉
3 標準温度センサ
図BB.1−表示温度の制度試験の構成
BB.2 試験手順
次の手順で試験を実施する。
a) 少なくとも2秒の間隔で温度を測定する。
b) 附属文書に記載された流量の範囲で加湿器を作動する。
c) 設定温度を最小値に設定し,測定ガス温度が,定常状態の2個の標準温度センサの算術平均値の±2 ℃
の範囲にあることを確認する。
d) 設定温度を最小値から最大値の設定に変更する。
e) 表示される測定ガス温度が,最大設定温度の定常状態の2個の標準温度センサの算術平均値の±2 ℃
の範囲にあることを確認する。

――――― [JIS T 7207 pdf 50] ―――――

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JIS T 7207:2019の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 80601-2-74:2017(MOD)

JIS T 7207:2019の国際規格 ICS 分類一覧

JIS T 7207:2019の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISB7761-3:2007
手腕系振動―第3部:測定及び評価に関する一般要求事項
JISC0445:1999
文字数字の表記に関する一般則を含む機器の端子及び識別指定された電線端末の識別法
JISC0447:1997
マンマシンインタフェース(MMI)―操作の基準
JISC1509-1:2017
電気音響―サウンドレベルメータ(騒音計)―第1部:仕様
JISC1509-2:2018
電気音響―サウンドレベルメータ(騒音計)―第2部:型式評価試験
JISC2134:2007
固体絶縁材料の保証及び比較トラッキング指数の測定方法
JISC2134:2021
固体絶縁材料の保証及び比較トラッキング指数の測定方法
JISC4003:2010
電気絶縁―熱的耐久性評価及び呼び方
JISC60079-0:2010
爆発性雰囲気―第0部:電気機器―一般要件
JISC60079-2:2008
爆発性雰囲気で使用する電気機械器具―第2部:内圧防爆構造“p”
JISC60079-6:2004
爆発性雰囲気で使用する電気機械器具―第6部:油入防爆構造“o”
JISC60364-4-41:2010
低圧電気設備―第4-41部:安全保護―感電保護
JISC60695-11-10:2015
耐火性試験―電気・電子―第11-10部:試験炎―50W試験炎による水平及び垂直燃焼試験方法
JISC6965:2007
ブラウン管の機械的安全性
JISC8282-1:2019
家庭用及びこれに類する用途のプラグ及びコンセント―第1部:一般要求事項
JISC8303:2007
配線用差込接続器
JIST0601-1-3:2012
医用電気機器―第1-3部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項―副通則:診断用X線装置における放射線防護
JISZ8736-1:1999
音響―音響インテンシティによる騒音源の音響パワーレベルの測定方法―第1部:離散点による測定