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Z 8404-2 : 2008 (ISO/TS 21749 : 2005)
を数台もつ試験所を考えた場合,そのタイプの測定機器の中からランダムに選択して計測する場合の不確
かさをとりあげると,測定機器間の差は偶然効果と考えられる。
逆に,特定の1台(又は数台)の測定機器について不確かさを述べようとする場合,測定機器全体に対
する,その測定機器の系統効果が問題となる成分である。
5.2 不確かさのタイプAの評価における時間の役割
5.2.1 不確かさの時間依存性及び時間間隔の選択
多くの偶然効果は時間に依存し,しばしば環境変化を原因とする。次の三つのレベルの時間依存性が考
えられる。
a) 短期的変動(併行精度又は測定機器精度)
b) 中間的変動(日間の,オペレータ間の,又は機器間のもので,中間精度として知られる。)
c) 長期的変動[ラン間の変動,安定性(すべてのプロセスについて問題となるとはいえない。),又は中
間精度]
ここでの短期,長期の表現は,あくまで目安にすぎない。使用者は,その単位が分,時間又は日のいず
れであれ,その測定プロセスにとって重要な時間を定義することが必要である。
このアプローチをとる一つの理由は,現代の測定機器が短期的にはますます精度(併行測定)を上げて
いるものの,時間の経過とともに主に環境原因によって起こる変化は,測定プロセスにおける不確かさの
支配的原因となりうるからである。時間的に再現性がない測定結果については,不確かさを述べるのは適
切でないことがある。顧客は,測定が行われた日にち又は時節に関係なく,測定結果の不確かさを知る権
利をもつ。
多くの測定プロセスを説明するのには,2段階の時間的因子で十分である。新しい測定プロセス又は特
性が十分に理解されていないプロセスでは,3段階が必要になることがある。そのため3段枝分かれ計画
を検討するが,2段枝分かれ計画はその特別な場合に相当する。
4段階以上の枝分かれ計画は,この規格では検討しないが,ここで検討するアプローチの方法をそのよ
うな多段階計画まで拡張してもよい。JIS Z 8402-3を参照。
5.2.2 3段枝分かれ計画を用いた実験
5.2.2.1 経時的に現れるばらつきの原因の影響を調査する際,一般的には3段枝分かれ計画が望ましい。
データの収集及び解析は直接的に行い,通常は時間的因子を取り扱う場合には交互作用効果を推定する必
要はない。枝分かれ計画は,どの段階でも使用できる。不確かさの原因が十分に理解されておらず,また,
以前に調査したこともないような測定システムについては,3段が望ましい。
次に示す段階は,多くの測定システムの特性に基づくものであり,必要に応じて,特定の測定状況にあ
わせて適用する。
a) 段階1 : 測定の併行精度を得るために,短時間で行った測定
b) 段階2 : 日を変えて(又はその他の適切な時間経過後)行った測定
c) 段階3 : 月ごとに分けて行った一連の測定
これらの段階に関する記号の定義は,次による。
− 段階1 : J (J > 1)一日の繰返し回数(併行条件での繰返し)
− 段階2 : K (K > 1)一つのランの日数
− 段階3 : L (L > 1)ランの回数
この基準によるデータの収集には,次のバランス型3段枝分かれ計画が望ましい。これは,測定プロセ
スにおける長期的変動を示すものである。
――――― [JIS Z 8404-2 pdf 11] ―――――
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Ylkj = + l+ lk + lkj
ここで測定値Ylkj (l = 1,···,L; k = 1,...,K;j = 1,···,J )は,l番目のランでの,k番目の日の,j番
目の繰返しを表す。添字は,ラン,日及び繰返し中に変動する測定プロセスの偶然効果の項目を表す。こ
の実験の目的は,これらのばらつきの要因を定量化する分散成分を推定することにある。日及びランに対
する効果,δ及びγの分散成分をσD2及びσR2とし,測定誤差εの分散はσ2とする。これらの分散成分が,
標準不確かさを定める基礎となる。
表1−3段枝分かれ計画の分散分析表
要因 自由度 平方和 平均平方 平均平方の期待値
ν SS MS
L 1 SS MS 2 2D 2R
ラン R R J JK
日(ラン内) L(K )1 SSD(R) MSD(R) 2
J 2D
LK(J )1 SS MS 2
誤差 E E
変動の要因,平方和(SS)及び対応する自由度(ν)を,それぞれ,第1列,第3列及び第2列に示す。平方和
を対応する自由度で除した平均平方(MS)は,第4列に示してある。最終列は,平均平方の期待値である。
図1は,J = 4,K = 3及びL = 2の場合の概念図である。
ラン1 ラン2
日1 日2 日3 日1 日2 日3
図1−3段枝分かれ計画
5.2.2.2 類似する複数のゲージの値付けをしようとする場合には,この計画を,Q (Q > 1)のチェック用標
準(チェック用標準については,5.2.3参照)及びI (I > 1)のゲージについて繰り返すことができる。その
ような計画は,使いやすい又は計算しやすいという利点がある。特に,幾つかのチェック用標準について
情報が集められるので,各レベルでの繰返し回数を多くする必要はない。
測定は,1人のオペレータが行うことが望ましい。オペレータの違いが測定値に与える影響は,自動化
システムにおいては通常は考慮しなくてよい。ただし,線,端(エッジ),又はその他ものの形に関する判
断を伴う測定システムの場合は,オペレータ依存性が強くなる。オペレータ間で結果に相当な差が生じる
と考える理由がある場合は,計画の中の“ラン”を“オペレータ”に置き換えてもよい。同一の精度レベ
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ルで測定を実施できるオペレータ群の中から,ランダムにL人の (L > 1)オペレータを選択する。(必要に
応じて,オペレータ間で精度比較ができることを検証するために,併行測定をするオペレータについて小
規模実験をする。)次に,指示どおり,データ収集及び解析をする。この場合,レベル3の標準偏差によっ
て,オペレータの効果を推定する。
各チェック用標準を測定するゲージについてはランダム化する。すなわち,最初のチェック用標準を選
択してゲージをランダム化し,第二のチェック用標準を選択してゲージをまたランダム化するというよう
に続ける。
チェック用標準及びゲージによる,J回の繰返しから得た各グループの平均及び標準偏差を求める。
この結果を,関連する環境要素の読取値及び重要な因子の特定とともに記録することが望ましい。こう
した情報を記録する方法としては,チェック用標準の測定ごとに,固定されたフィールド内の1行又は1
列情報をもつ一つのコンピュータファイルにまとめることが望ましい。表計算ソフトが,この目的に適し
ている。代表的な項目リストを,次に示す。
a) 年
b) 月
c) 日
d) オペレータ
e) 使用したチェック用標準
f) 使用したゲージ
g) 回の繰返しの平均
h) 回の繰返しからの短期的標準偏差
i) 自由度
j) 環境要素の読取値(関連のある場合)
上のモデルから,自由度LK (J −1)の誤差の標準偏差を,確率的誤差に対する平均平方MSEを使って推
定し,次のように計算する。
L K J
(Ylkj Ylk )2
l 1 k 1 j 1
S MS
E LK ( J)1
ただし,
J
1
Ylk =
J Ylkj
j=1
は,各グループにおけるJ回の繰返しの平均である。
自由度 L (K−1)の日の効果に対する平均平方MSD(R)は,次のように計算する。
L K
(Ylk Yi 2)
MSD(R) Jl 1k 1
L(K )1
ただし,
K
1
Yl Ylk
Kk 1
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自由度 L−1のランの違いに対する平均平方MSRは,次のように計算する。
L
(Yl Y )2
l 1
MS R JK
L 1
ただし,
L
1 lY
Y
Ll 1
表1の分散分析表から,平方根記号の中の差が正の場合,日に対する標準偏差の推定量は,次のように
なる。
MS D(R) S E
D SD
J
また,ランに対する標準偏差の推定量は,次のようになる。
MS R MS D(R)
R SR
JK
負の場合は, D R
しくは ロ,又は両方をゼロとみなす。
2段枝分かれ計画では,測定プロセスの短期的及び日間変動についてデータを集めることもある。この
実験で収集したデータは,5.2.3でとりあげるチェック用標準で収集したものと似ている。チェック用標準
を複数使用する場合,“チェック用標準”の要因は3段枝分かれ実験の“ラン”の要因及びモデル並びに解
析が同じであるので,“チェック用標準”の要因は偶然要因とみなしてもよい。
5.2.3 二つのばらつきの段階を評価するためのチェック用標準
5.2.3.1 チェック用標準に関する手順
経時的な変化が現れるばらつき原因の影響を調査するためには,単一のチェック用標準に関する測定を
実施することが望ましい。データの収集及び解析は直接的に行い,時間に依存する誤差を扱う場合に交互
作用効果を推定することは一般に不要である。測定は二つの段階で行うが,多くの測定システムを特徴付
けるためには,これで十分である。次の段階は,多くの測定システムの特性に基づいているが,必要に応
じて,特定の測定状況に合わせることが望ましい。
− 段階1 測定値 : ゲージの精度を推定するために短期間でとったもの
− 段階2 測定値 : 長期的変動を推定するために日を変えてとったもの
経時的にチェック用標準の測定をするスケジュール(1日1回,週2回,又はすべての測定条件のサン
プリングをするため適切とされる頻度)を決定して,それに従うことが望ましい。チェック用標準の測定
は,試験品目について報告されている値と同じようにすることが望ましい。例えば,報告値が相互に5分
間の間隔をおいて行った2回の繰返しの平均である場合,チェック用標準値は,同じ方法で実施した2回
の測定の平均であることが望ましい。この規則に対する例外が,1日最低J = 2回以上の繰返しが必要な場
合である。こうした冗長性がなければ,測定システムの短期間の精度を確認できない。
5.2.3.2 モデル
ここで検討する不確かさの要因を説明する統計的モデルは,バランス型2段枝分かれ計画である。
Ykj k kj
試験品目についての測定値はYkj (k = 1,···,K;j = 1,···,J )で表し,最初の添字は日を,また,2番目
の添字は繰返しを示す。添字付きの項は,それぞれ日,短い間隔で変動する測定プロセスの偶然誤差を表
している。実験の目的は,これら変動の要因を定量化する分散成分を推定することである。
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Z 8404-2 : 2008 (ISO/TS 21749 : 2005)
5.2.3.3 実験の実施の間隔
5.2.3.3で規定する二つの段階は,多くの測定システムの特性に基づくものであり,また,必要に応じて,
特定の測定状況に合わせることができる。代表的な計画例を図2に示す。各段階が次に表されるようなJ =
4回/日の繰返しの例である。
− 段階1 : J (J > 1)回の短期繰返しによって,ゲージ精度をとらえる
− 段階2 : K (K > 1)日(又はその他の適切な時間経過)
日1 日2 日3 ··· 日K-1 日K
図2−2段枝分かれ計画
5.2.3.4 データ収集
図2に示すとおりに,繰返し測定が日間で行われるように,全体が正確に枝分かれ計画であることが重
要である。J回の繰返しの各グループについて,平均偏差及び標準偏差を,次の情報とともに記録すれば
十分である。
a) 年
b) 月
c) 日
d) オペレータ
e) 使用したチェック用標準
f) 使用したゲージ
g) 回の繰返しの平均
h) 回の繰返しの併行標準偏差
i) 自由度
j) 環境要素の読取値(関連のある場合)
この2段枝分かれ計画の場合,表2の分散分析表を3段枝分かれ計画の分散分析表から求めることがで
きる。
――――― [JIS Z 8404-2 pdf 15] ―――――
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JIS Z 8404-2:2008の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO/TS 21749:2005(IDT)
JIS Z 8404-2:2008の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.020 : 度量衡及び測定一般
JIS Z 8404-2:2008の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISQ0035:2008
- 標準物質―認証のための一般的及び統計的な原則
- JISZ8101-1:2015
- 統計―用語及び記号―第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語
- JISZ8101-2:2015
- 統計―用語及び記号―第2部:統計の応用
- JISZ8101-3:1999
- 統計―用語と記号―第3部:実験計画法
- JISZ8402-1:1999
- 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第1部:一般的な原理及び定義
- JISZ8402-2:1999
- 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第2部:標準測定方法の併行精度及び再現精度を求めるための基本的方法
- JISZ8402-3:1999
- 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第3部:標準測定方法の中間精度
- JISZ8402-4:1999
- 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第4部:標準測定方法の真度を求めるための基本的方法
- JISZ8402-5:2002
- 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第5部:標準測定方法の精度を求めるための代替法
- JISZ8402-6:1999
- 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第6部:精確さに関する値の実用的な使い方