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b) 感覚反応の変化のしやすさは,評価者又はパネルに固有のものであり,避けることができない。しか
し,訓練によって,パネルを構成する評価者の反応を高度に一致させることができる。これらの要因
を認識することは,結果の解析に重要なことである。
c) 結果から引き出される結論の妥当性は,用いる試験方法及び質問事項を含む実施方法による。
4.2 問題点の記述
官能評価分析においては,一つの問題に対する適切な試験を選択するまでに議論を
重ね,熟考を要することが多い。これは,最初にその問題の意味することを明確にするためである。例え
ば,少数の評価者による識別試験で試料間に有意差があることを確かめもせずに,多数の評価者を用いた
し(嗜)好試験を行うことは好ましくない。
評価の対象となる試料が多いときには,次のような予備試験を行うことが役立つ。
− 刺激の大きさの適切な順番を確かめる。例えば,見本溶液の濃度の順番を確かめる。
− 評価する試料数を確かめる。
− 評価するのに適切と思われる属性を確かめる。
問題のタイプは2種類に大別できる。第一は,試料の特徴を描写することが試験の主目的である場合,
第二は,二つ以上の試料の差を識別することが試験の主目的である場合である。後者においては,次の項
目のうちで何が知りたいのかを明確にすることが重要である。
a) 差の有無
b) 差の大きさ
c) 差の方向又は質
d) 差が及ぼす影響,例えば,し(嗜)好への影響
e) 差を検出している評価者はパネルの全員か一部だけか。
4.3 試験方法の選択
問題の性質を確認した後に,適切な試験方法を選択する。選択には,必要と考え
る信頼度,試料の性質,利用可能な評価者が関係する。
各試験方法について,当該試験が適切であるかどうかを確かめる。予備試験が必要な場合もある。
試験方法の性質及び試料のタイプによるが,感覚疲労及び順応効果のために1回の評価では限られた数
の試料しか評価することができない。
統計処理の計画は,常に試験実施前に決定するとよい。このことは,2回以上に分けて試験しなければ
ならない試料数の場合に特に必要である(不完備形実験計画法の検討など)。統計処理の計画の詳細は,専
門書を参照することが望ましい。
ほとんどの場合に対照試料を用いるが,対照試料を用いることによって評価できる試料数は制限される。
ある特定の問題へのアプローチの仕方を決定すると,試験方法の選択は利用できる評価者の人数及びタ
イプに関係することになる。
4.4 評価者の選抜及び訓練
(ISO 5496及びISO 8586を参照) 各試験について,必要とする評価者の最少人数を提示する。訓練は評価精度を向上させるし,ある程度の選抜も有効である。試料を識別し,その感覚を表現する能力をもつ評価者の選抜は,し(嗜)好試験のための評価者の選抜とは全く異なることに
注意する必要がある。前者には選抜及び訓練が必要であるが,後者には母集団の中の特定層,例えば,消
費者の特定のグループをパネルが代表していることだけが必要である。
すべての評価者は同レベルの能力をもつべきであり,このレベルは試験法の目的に応じて選択する(例
えば,訓練を受けていない評価者,選ばれた評価者,専門評価者)。
選抜する場合には,次の基準が重要である。
a) 評価者を必要な人数だけ確保できる(例えば,会社の場合,管理職の了解があり,一般従業員を評価
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者として利用できる。)。
b) 動機付け(やる気及び興味)が明確である。
c) 健康状態がよい。
目的によって評価者を選抜するのがよく,必要ならば,ある試験を反復して訓練する。この場合に,理
想的には想定される全範囲の試料を訓練に用いる。いかなるタイプの試験方法を選抜に用いてもよい。
次の点は重要である。
− 選抜は,実際の試験状況に合った方法を用いるのがよい。
− 評価者がまぐれで正答しているのではないことを保証するために,同じ試験を2回以上繰り返す
のがよい。
試験を繰り返すには均質な試料が必要であるが,均質な試料を確保することが容易でない場合がある(例
えば,野菜,果物,肉などのように個体差及び部位による差のある試料)。
特性が既知の二つの均質な試料があれば,識別試験法が可能である。三つ以上の試料があれば順位法又
は格付け法を用いてもよい。
評価者の選抜は,識別能力及びその識別結果の一貫性をもとに行うとよい。地位又は事前情報の有無に
関係なく,この選抜はもちろん参加者全員に適用してよい。選抜で確保する評価者数は,欠席を考慮して
パネルに必要な人数より多いこと(例えば,50 %増し)が望ましい。
選抜では,一貫性があり正しい能力を選ぶための基準に照らして,得られるデータすべてを検査するの
がよい。識別能力の高い少数パネルは,識別能力の低い評価者を含む大規模パネルよりも統計的な効率が
低いかもしれないことを心に留めておくとよい。しかしながら,パネル数を増やすために単に識別能力の
低い人をパネルに加えることは,その官能評価分析をよくすることにはならない。同様に,推奨されてい
る評価者数を確保できない場合に,少人数パネルが反復評価した結果は,データ数が等価の大規模パネル
の結果と必ずしも同じにはならない。
試験に参加する評価者は,パネルの中からランダムに選ぶが,各自の参加回数が均等化するようにすべ
きである。頻繁な参加には,それなりの動機付け及び能力の保証が必要だからである。評価者の能力は変
化するため,頻繁にその能力を検査することが望ましい。
4.5 感度試験
感度試験は,評価者の選抜及び訓練によく用いられる。次の三つのタイプがある。
a) 評価者のいき(閾)値を確かめるための試験(ISO 3972参照)。
b) 腐敗検知試験のように,ある濃度の物質とそれ以外の低濃度の物質が共存する場合と共存しない場合
の試験。
c) 下降系列又は上昇系列を用いた希釈法。
4.6 試験に用いる材料
試料のサンプリングに関する規格が存在していれば,それに従う。該当する規
格が存在しない場合には,サンプリング方法について関係者間の合意を得なければならない。
試験に用いた試料が母集団を代表する場合だけ,全体として妥当な結論が得られる。
試料及び試験目的に適した方法で,試料準備及びパネルへの試料呈示を行うことが望ましい。各評価者
に呈示する試料は,できるだけ同一になるよう注意が必要である。
試料のばらつき(その試験で必要な試料間差以外の変動)は最小化しなければならない。
ある刺激の差だけに関する試験の場合,他の刺激の影響を受けないようにしなければならない(例えば,
フレーバの差だけに関する試験で,適切な色の照明を用いて外観の差をマスクする。)。
容器は試験に影響しないものを選択する。外観を評価する場合は,照明条件を一定にする。
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4.7 試験室
(ISO 8589参照) 官能評価分析は,専用の試験室で実施することが望ましい。仕切られた場所(ブース)のほうが,各評価者は与えられた課題に直ちに集中して取り組める。試料準備を含め,試験に関係しない活動は試験結果を変えるかもしれないので,試験中は許可しないほうがよい。試験室は快
適な温度にし,においのない空気で換気する。空気の流れを制限することによって,過度の温度変動が防
止できる。たばこ又は化粧品のようなしつこいにおいは,試験室の環境を汚染するので許可してはならな
い。
音の発生は抑制するのがよい。低い背景雑音のほうがレベル変動する雑音より通常は我慢できる。会話
は背景雑音より余計に気を散らす。試験の中断は最も気を散らす。
照明の色及び強度の両方を制御することは通常有効であるが,カラー照明が試料の外観の差を完全に隠
すことはめったにない。
試料が触れる面は吸湿性でないものがよい。試験室の寸法は重要である。非常に低い天井及び非常に狭
いブースは圧迫感があり,閉所恐怖症の感覚を引き起こす。座り心地のよいいすが必要である。
4.8 器具
試験監督者は,試料の性質,試料数などに応じて器具を選択しなければならない。また,器
具が試験結果に影響を及ぼしてはならない。当該試料のために標準化された器具が存在し,その器具が試
験に適している場合は,当該器具を用いなければならない(例えば,標準化された器具としてISO 3591
で規定するワインテイスティング用グラスがある。)。
4.9 試験の実施
試験の実施は,試験前に評価者に対して行う簡潔な説明に依存する。質問票の設計で
は,評価者から得られる結果だけでなく,データ処理の方法まで考慮するほうがよい。
試料の呈示方法及び呈示順は,試験の重要な要素である。試験結果のバイアスが最小になるように,試
料は,例えば,3けたの乱数を用いてコード化する。試験ごとに試料のコードを変更することは重要であ
る。評価の順番も結果に影響することがあるので,一般に順番を固定する。少数の試料及び少数の評価者
を用いた場合には,すべての可能な順番で等しい回数評価するように,順番を均等化させる。大規模な試
験では,順番はランダム化する。
結果の照合検査には次の3段階がある。
a) すべてのデータが記録されているかどうか確認する。
b) 結果の解釈を助けたり疑ったりするのに役立つ付加情報が書かれているかどうかを確認する。
c) 評価者が望ましい興味レベルで試験に参加し続けるよう動機付けされているかどうかを確認する。
パネルを使いすぎると,能力が低下することがある。可能ならば,試験前1時間は喫煙をやめ,水以外
は口にしないように評価者に依頼する。同様に,芳香のある化粧品を用いるのは望ましくない。外部のに
おいを評価者がもち込むと,そのにおいがパネルの落ち着きに影響することに留意する。
かぜ,心の動揺などに悩んでいる評価者は,回復するまで試験から除外する。
試験を実施する時間帯は重要であり,評価者の感度に影響する。例えば,食品の試験の場合,空腹及び
満腹は評価者の能力に影響を与えるため,最も感度の高い日中の時間帯は,食事の時間帯からはずれた午
前の半ば及び午後の半ばである。
試験中の会話は評価者の集中力に影響するので,余計な会話はしないようにする。
5. 試験方法
5.1 試験方法のタイプ
感度試験(4.5参照)のほかに,最も一般的に用いられている試験方法は,次の
三つのグループに分かれる。
a) 二つの試料に差があるかどうかを決定するために用いる識別試験法(5.2参照)。
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b) 差の順序若しくは大きさ,又は試料が該当するカテゴリー若しくは分類を評価するために,尺度又は
カテゴリーを用いる試験方法(5.3参照)。
c) 試料特有の官能特性を確かめるために用いる分析形試験法又は記述的試験法。これらの試験方法は定
量的でもある(5.4参照)。
5.2 識別試験法
5.2.1 一般 次の試験方法は,二つの試料に差があるかどうかを決定するために用いられる。
a) 2点試験法(5.2.2参照)
b) 3点試験法(5.2.3参照)
c) 1対2点試験法(5.2.4参照)
d) 2対5点試験法(5.2.5参照)
e) 非A試験法(5.2.6参照)
これらの試験方法で得られるデータの解析法を6.2に示す。
5.2.2 2点試験法(7.2参照)
5.2.2.1 定義 2種類の試料を評価者に呈示し,それらの属性又は優劣を比較する試験方法(JIS Z 8144
参照)。
5.2.2.2 適用 次のような目的には2点試験法を勧める。
a) 二つの試料に差があるかどうかを決定し,差がある場合には,差の方向を決定する。
b) し(嗜)好に差があるかどうかを確かめる。
c) 評価者の選抜及び訓練をする。
この試験方法の利点は,他の試験方法に比べて簡便で感覚疲労が小さいことである。この試験方法の欠
点は,比較したい試料の中から2試料ずつ対にして試験する必要があるため,試料数が増加するに従い,
試験回数が急速に増加し,ついには実施不可能になることである。
5.2.2.3 評価者 望ましい評価者数は,専門家で7人以上,選ばれた評価者で20人以上,評価能力によ
る選抜及び訓練を受けていない評価者で30人以上である。消費者試験のような大規模な試験では,数百人
を必要とする。
5.2.2.4 手順 事前に決められた順番又はランダムな順番で,コード化された試料を1対以上,評価者に
呈示する。各対の二つの試料は同じものか違うものである。差,差の方向又はし(嗜)好に関する最も適
切な質問を評価者に呈示する[5.2.2.2a) 及びb) を参照]。差の質問及びし(嗜)好の質問を同時にしては
ならない。
5.2.2.5 結果の解析 6.2.2に示す。
5.2.3 3点試験法(7.3参照)
5.2.3.1 定義 同じ試料 (A) 2点と,それとは異なる試料 (B) 1点とをコード化して同時に評価者に呈示
し,性質が異なる1試料を選ばせる試験方法 (JIS Z 8144参照) 。
5.2.3.2 適用 次のような目的には,3点試験法を勧める。
a) 試料間のわずかな差を検出する。
b) 限られた人数の評価者しか使えない。
c) 評価者の選抜及び訓練をする。
この試験方法はし(嗜)好の決定のために用いてはならない。
この試験方法には,次の欠点がある。
a) 多数の試料を評価するには経済的ではない。
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b) 刺激の強い試料では,2点試験法よりも感覚疲労の影響が大きくなるかもしれない。
c) 二つの試料が等しいことを保証するのは難しいかもしれない。
5.2.3.3 評価者 望ましい評価者数は,専門家で6人以上,選ばれた評価者で15人以上,評価能力によ
る選抜及び訓練を受けていない評価者で25人以上である。
5.2.3.4 手順 同じ試料 (A) 2点と,それとは異なる試料 (B) 1点とをコード化して同時に評価者に呈示
し,性質が異なる1試料(奇数試料)はどれかと質問する。3個の試料の組合せは,
BAA ABB
AAB BBA
ABA BAB
のように奇数試料の順番が異なる3通りの組合せについて,奇数試料がA又はBの2通りの計6通りあり,
各試料の呈示回数は等しいほうがよい。
5.2.3.5 結果の解析 6.2.3に示す。
5.2.4 1対2点試験法 (ISO 10399参照)
5.2.4.1 定義 基準となる試料 (A) を評価者に呈示し,一方で,これと同じ試料 (A) 及びこれと比較す
べき試料 (B) をそれぞれコード化して呈示し,これらコード化された試料の中から基準となる試料と同一
のものを選ばせる試験方法 (JIS Z 8144参照)。
5.2.4.2 適用 この試験方法は,与えられた試料と基準となる試料との間に差があるかどうかを決定する
ために用いられる。評価者が基準となる試料を熟知している場合には,この試験は特に適している。刺激
が持続する試料(例えば,あと味がある食品)の場合には,この試験法よりも2点試験法 (5.2.2),A非A
試験法 (5.2.6) のほうが適している。
5.2.4.3 評価者 望ましい評価者数は,20人以上である。
5.2.4.4 手順 基準となる試料であると明示した試料を評価者に最初に呈示する。次に,基準となる試料
と同じもの一つを含む,コード化した試料二つを呈示する。基準となる試料と同じ試料はどちらか評価者
に質問する。
5.2.4.5 結果の解析 6.2.4に示す。
5.2.5 2対5点試験法
5.2.5.1 定義 同じ試料 (A) 2点と,それとは異なる試料 (B) を3点,合計5点をコード化して同時に評
価者に呈示し,Aグループに属するものとBグループに属するものとに分類させる試験方法 (JIS Z 8144
参照)。
5.2.5.2 適用 次のような目的には,2対5点試験法を勧める。
a) 少数(例えば,10人)の選ばれた評価者しか使えない場合。
b) 他の試験方法よりも効率よく差を確かめたい場合(この手法は統計的に効率がよい。)。
この試験方法の欠点は,感覚疲労及び記憶効果の影響が更に強いことを除き,3点試験法(5.2.3)の欠
点と同じである。
5.2.5.3 評価者 望ましい評価者数は,選ばれた評価者で10人以上である。
5.2.5.4 手順 同じ試料二つと別の同じ試料三つとからなる,コード化した五つの試料を1セットにして
評価者に呈示する。評価者は,五つの試料を二つのグループに分ける。評価者の人数が20人未満の場合,
試料を呈示する順番は,次の20通りの組合せからランダムに選択するとよい。
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JIS Z 9080:2004の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 4120:1983(MOD)
- ISO 4121:1987(MOD)
- ISO 5495:1983(MOD)
- ISO 6658:1985(MOD)
- ISO 8587:1988(MOD)
JIS Z 9080:2004の国際規格 ICS 分類一覧
JIS Z 9080:2004の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8144:2004
- 官能評価分析―用語
- JISZ9015-0:1999
- 計数値検査に対する抜取検査手順―第0部:JIS Z 9015抜取検査システム序論
- JISZ9015-1:2006
- 計数値検査に対する抜取検査手順―第1部:ロットごとの検査に対するAQL指標型抜取検査方式
- JISZ9015-2:1999
- 計数値検査に対する抜取検査手順―第2部:孤立ロットの検査に対するLQ指標型抜取検査方式
- JISZ9015-3:2011
- 計数値検査に対する抜取検査手順―第3部:スキップロット抜取検査手順
- JISZ9041-1:1999
- データの統計的な解釈方法―第1部:データの統計的記述
- JISZ9041-2:1999
- データの統計的な解釈方法―第2部:平均と分散に関する検定方法と推定方法
- JISZ9041-3:1999
- データの統計的な解釈方法―第3部:割合に関する検定方法と推定方法
- JISZ9041-4:1999
- データの統計的な解釈方法―第4部:平均と分散に関する検定方法の検出力