この規格ページの目次
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3.6
局所空気齢(local age of air)
空気がチャンバー入口からチャンバー内の任意の点に移動するのにかかる時間。
3.7
平均空気齢(the mean age)
チャンバー内空気の平均齢で,チャンバー内の全ての点に対する局所空気齢の平均値。
3.8
換気性能係数(coefficient of air change performance)
名目換気時間と平均空気齢との比。
3.9
風速(air velocity)
チャンバー内で試験片の表面を流れる雰囲気空気の速度。
3.10
物質伝達率(mass transfer coefficient)
試験片とその表面を流れる雰囲気空気との間の対象物質の濃度差によって生じる物質移動の係数。
3.11
建築材料(building product)
建築物に用いる材料。
3.12
試験開始(test start)
チャンバー内部に試験片を設置した時点。
3.13
経過時間(time)
試験開始から空気捕集の開始時点までの時間(時間又は日)。
3.14
空気捕集時間(sampling period)
捕集管などを用いてチャンバー出口からの空気を捕集する時間。
3.15
チャンバー出口濃度(emission test chamber concentration)
チャンバー出口で測定した対象化学物質の濃度。空気捕集時間中において,チャンバーの出口で採取し
た対象物質の総量を空気捕集量で除した値。
3.16
バックグラウンド濃度(background concentration)
清浄な空気を供給し,試験片を入れないで測定したときのチャンバー出口濃度。
3.17
トラベルブランク(travel blank)
捕集管自体の汚染及び開閉・輸送するときの汚染を考慮するために,空気捕集を除く全ての操作を行っ
た捕集管の対象化学物質の質量。
3.18
試料負荷率(product loading factor)
――――― [JIS A 1901 pdf 6] ―――――
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試験片の表面積とチャンバー容積との比率。
3.19
回収率(recovery)
単位時間中にチャンバーから排出される空気中の対象化学物質の総量を,同一の単位時間中にチャンバ
ーに供給される既知の対象化学物質の総量で除した数値。
注記1 回収率は,この試験方法に基づいて行った試験の精度に関する情報とされる。
注記2 VOC,ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物を対象化学物質とする場合は,その標準
ガス,又はパーミエーションチューブなどを用いて発生させた,既知濃度ガスを用いて試験
を行う。
3.20
放散速度(emission factor)
試験開始時点から規定する経過時間において,単位時間当たりに放散される対象化学物質の質量。この
規格では,単位面積当たりの放散速度qAを適用する。
注記1 その他の異なる必要条件に基づく放散速度も定義することができる。例えば,単位長さ当た
りの放散速度ql,単位質量当たりの放散速度qm,単位体積当たりの放散速度qv,単位個数当
たりの放散速度quなどがあげられる。
注記2 ISO 16000-9では,“specific emission rate”が用いられている。
3.21
サンプル(sample)
建築材料の一部又は小片。
3.22
試験片(test specimen)
試験対象となる建築材料又は製品の放散特性についてチャンバー内で試験を行うために,特別に準備さ
れたサンプルの一部。
3.23
揮発性有機化合物(volatile organic compound: VOC)
沸点の範囲が50 ℃100 ℃から240 ℃260 ℃までの有機化合物。この規格で規定する試験方法は,
ガスクロマトグラフで分析した,n-ヘキサンからn-ヘキサデカンまでの範囲で検出されたVOCの範囲に
適用する。
注記 この規格で規定する試験方法は,総揮発性有機化合物(TVOC)の定義で特定された化合物の
範囲に適用する。ある製品について試験を行うVOCを対象揮発性有機化合物(target volatile
organic compounds)(以下,対象VOCという。)と称する。
なお,対象VOCのガイドライン値は,附属書JEを参照。
3.24
総揮発性有機化合物(total volatile organic compound: TVOC)
ガスクロマトグラフで分析し,n-ヘキサンからn-ヘキサデカンまでの範囲で検出されたVOCの総量。
この規格では,ピーク面積の総和を用いてトルエンに換算して求めた値を示す。
注記1 TVOCは,捕集した空気中のVOCの合計に近い値となる。
注記2 質量分析計を検出に用いる(GC/MS)場合,全イオン検出法(TIM)で測定し,全イオンク
ロマトグラム(TIC)上の該当するVOCの総量値を用いる[JIS A 1965の11.3(TVOC),及
――――― [JIS A 1901 pdf 7] ―――――
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びJIS K 0123の8.8 a)(全イオン検出法)参照]。
3.25
ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物(aldehydes)
カルボニル基をもつ有機化合物。アルデヒド及びケトンがその代表であり,最も単純なアルデヒドがホ
ルムアルデヒドである。ホルムアルデヒドを除くアルデヒド類及びケトン類を総称して他のカルボニル化
合物という。
注記 対象ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物のガイドライン値は,附属書JEを参照。
3.26
空気(air)
試験に用いる空気で,大気の組成と同様のもの。
3.27
トレーサーガス(tracer gas)
換気量測定に用いる気体。
4 記号及び単位
この規格で用いる記号及び単位は,表1による。
表1−記号及び単位
記号 説明 単位
A 試験片の表面積 m2
ρ(0) 初期のトレーサーガス濃度 μg/m3
ρe(t) 経過時間tにおけるチャンバーの排気におけるトレーサーガス濃度 μg/m3
ρs 経過時間が十分長いとき(平衡時)のトレーサーガス濃度 μg/m3
ρt 経過時間tにおける対象化学物質のチャンバー出口濃度 μg/m3
qA 単位面積当たりの放散速度 μg/(m2・h)
ql 単位長さ当たりの放散速度 μg/(m・h)
qm 単位質量当たりの放散速度 μg/(g・h)
qv 単位体積当たりの放散速度 μg/(m3・h)
qu 単位個数当たりの放散速度 μg/(unit・h)
L 試料負荷率 m2/m3
Q チャンバーの換気量 m3/h
V チャンバーの容積 m3
ka 水蒸気の物質伝達率 m/h
l 試験片の長さ m
m 試験片の質量 g
n 換気回数 回/h
kQ 単位面積当たりの換気量 m3/(m2・h)
t 経過時間 時間又は日数
u 試験片の個数 unit
v 試験片の体積 m3
η 換気性能係数 −
τn 名目換気時間 h
平均空気齢 h
――――― [JIS A 1901 pdf 8] ―――――
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5 原理
この試験は,チャンバーを用いて,チャンバー出口濃度,通過する空気流量及び試験片の表面積を求め,
試験対象となる建築材料の単位面積当たりの対象化学物質の放散速度を測定する方法である。
一定の温度,相対湿度及び換気量の条件をもつチャンバー内で空気を流通させ,出口で捕集した空気か
らチャンバー出口濃度及び換気量を知ることによって,特定の経過時間tにおける単位面積当たりの対象
化学物質放散速度,この規格では対象化学物質の放散速度を,箇条13に規定する方法で算出する。
6 器具
6.1 一般
建築材料から放散される対象化学物質の放散速度を測定するときに用いる主な器具は,次による。
− チャンバー
− 試験片のシール材
− 空気清浄装置
− 温度・湿度制御装置
− 積算流量計
− 空気捕集装置
− オーブン
− 分析装置
6.2 チャンバー
チャンバーのシステムの概念図を,図1に示す。ただし,出口空気と入口空気とを循環してはならない。
図1−チャンバーの概念図
注記 チャンバーの例は,附属書JA,附属書JB,附属書JC及び附属書JDを参照。
6.2.1 形状
チャンバーの形状は,内部の空気が確実に混合するように設計しなければならない。通常,チャンバー
に取り付けられた部品は,チャンバーの洗浄及び加熱処理が容易なように取り外し可能でなければならな
い。
チャンバーの対象化学物質に接する部分は,ステンレス又はガラスで作られたものとし,容積は20 L(±
5 %)1 000 L(±5 %)とする。チャンバーのシール材,ファンなどの混合装置の材質は,低放散性及び
――――― [JIS A 1901 pdf 9] ―――――
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低吸着性のもので,かつ,バックグラウンド濃度への影響が小さいものを使用する。
なお,接着剤・塗料及び塗布性の材料の試験に用いるチャンバーは,20 L以上のチャンバーとの相関関
係が確認されていれば,数リットルから20 L未満のチャンバーを用いてもよい。
6.2.2 気密性
チャンバーは,制御されていない外気と換気することが極力少ないように気密状態とする。したがって,
チャンバー内圧力は,実験室内の圧力に比べて正圧となるようにし,チャンバー内を気密状態に保たなけ
ればならない。
なお,チャンバー内を気密状態に保つことによって,試験場所による影響を防ぐことができる。
6.2.3 空気の供給装置及び混合装置
チャンバーは,換気量を連続的に一定の数値に制御することが可能な装置(流量制御装置など)を備え
ているものとする。要求事項は7.5及び8.4による。
6.3 試験片のシール
試験片の表面からだけ放散される化学物質を測定する場合は,端部及び裏面をアルミニウムはくなどで
シールする。
6.4 空気清浄装置
チャンバーに供給する空気は,できる限り清浄な空気が必要なことから,バックグラウンド濃度の上昇
を防ぐための空気清浄装置又は清浄なボンベ空気を使用する。
6.5 温度・湿度制御方法
温度の制御は,チャンバーを必要温度に制御した恒温槽などの試験場所に置く方法,又はチャンバー内
を必要温度に維持する方法のいずれかによる。通常,相対湿度の制御は,供給空気を必要湿度に維持する
方法とし,温度及び相対湿度は,温度・湿度制御システムとは独立して,連続的にモニタリングする。
なお,チャンバー内に結露を生じさせたり,水を噴霧させたりしないように注意しなければならない。
6.6 積算流量計
チャンバー出口に積算流量計を設置し,チャンバー内の正確な換気量を測定する。積算流量計と同等以
上の性能をもつ装置を用いてもよい。
6.7 空気捕集方法
空気捕集は,チャンバー出口の排気を用いて行う。空気捕集用分岐管を用いる場合は,チャンバー出口
から直接捕集する。ダクト及びチューブを介して捕集する場合は,その間をできる限り短くし,チャンバ
ーと同じ温度に保つ。
なお,ダクト及びチューブの材質は,四ふっ化エチレン樹脂など,吸着が非常に少ないものを用いる。
空気捕集時の空気流量がチャンバーの換気量よりも小さい場合は,分岐管などを用いて空気捕集中の換気
量を一定に保つ。また,チャンバーからの排気は,試験場所から確実に排出する。
注記 空気捕集を二重に行うために,空気捕集用分岐管を使用することもできる。
6.8 オーブン
チャンバー内に付着した対象化学物質を揮発させるために,オーブンを使用する。
6.9 分析装置
VOCの分析には,水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC/FID),又は質量分析計付きガス
クロマトグラフ(GC/MS)を使用する。また,ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物の分析には,
高速液体クロマトグラフ(HPLC)を使用する。
VOCの分析装置は,JIS A 1965の箇条6(装置),JIS A 1966の箇条6(装置)若しくはJIS K 0123の5.
――――― [JIS A 1901 pdf 10] ―――――
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JIS A 1901:2015の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 16000-9:2006(MOD)
JIS A 1901:2015の国際規格 ICS 分類一覧
- 83 : ゴム及びプラスチック工業 > 83.140 : ゴム及びプラスチック製品 > 83.140.01 : ゴム及びプラスチック製品一般
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.040 : 気質 > 13.040.20 : 雰囲気
JIS A 1901:2015の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA1902-1:2015
- 建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散量測定におけるサンプル採取,試験片作製及び試験条件―第1部:ボード類,壁紙及び床材
- JISA1902-2:2015
- 建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散量測定におけるサンプル採取,試験片作製及び試験条件―第2部:接着剤
- JISA1902-3:2015
- 建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散量測定におけるサンプル採取,試験片作製及び試験条件―第3部:塗料及び建築用仕上塗材
- JISA1902-4:2015
- 建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散量測定におけるサンプル採取,試験片作製及び試験条件―第4部:断熱材
- JISA1962:2015
- 室内及び試験チャンバー内空気中のホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物の定量―ポンプサンプリング
- JISA1965:2015
- 室内及び試験チャンバー内空気中揮発性有機化合物のTenax TA(R)吸着剤を用いたポンプサンプリング,加熱脱離及びMS又はMS-FIDを用いたガスクロマトグラフィーによる定量
- JISA1966:2015
- 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・加熱脱離・キャピラリーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析―ポンプサンプリング
- JISK0123:2018
- ガスクロマトグラフィー質量分析通則
- JISK0124:2011
- 高速液体クロマトグラフィー通則
- JISK0557:1998
- 用水・排水の試験に用いる水
- JISZ8401:2019
- 数値の丸め方
- JISZ8703:1983
- 試験場所の標準状態