JIS A 1901:2015 建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法―小形チャンバー法 | ページ 7

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A 1901 : 2015
附属書JD
(参考)
チャンバーの例(物質伝達率制御方式)
JD.1 物質伝達率制御方式チャンバー
物質伝達率制御方式チャンバーは,通常のチャンバー内に,試験片表面近傍を一定の気流速度を保ち,
かつ,試験片表面に形成される境界層外縁では,チャンバー内濃度が均一となるよう工夫したチャンバー
である。一般には,従来のチャンバーに相当するアウターチャンバー,アウターチャンバー内に格納され,
試験片表面近傍の気流速度を一定に保ち,試験片表面に形成される濃度境界層が自由に発達するよう十分
な間隔を確保したインナーチャンバー,インナーチャンバー内に一定の空気流動を発生させられる送風装
置などで構成する。両チャンバーは,なるべく解体,洗浄,加熱処理などを容易とする大きさ及び形状が
求められる。
JD.2 器具
図JD.1に,物質伝達率制御方式チャンバーの例を示す。図に示すアウターチャンバーは,1 000 mm (x)
×800 mm (y)×500 mm (z) の容積をもつ。チャンバーはステンレス製(SUS304)で,一部チャンバー内観
察のためガラス面を含む。
単位 mm
図JD.1−物質伝達率制御方式チャンバーの例
インナーチャンバーは,整流用の入口ノズルが設置されており,インナーチャンバー入口で均一な風速
を形成し,インナーチャンバー壁面上に自然な速度境界層が発達する形式となっている。試験片は,この

――――― [JIS A 1901 pdf 31] ―――――

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インナーチャンバーの一面に設置される。試験片表面には,試験片表面からの物質放散によってその表面
に濃度境界層を形成するが,その濃度境界層厚がインナーチャンバー断面の厚さより小さくなることが望
ましい。インナーチャンバー内に空気流動を発生させるファンは,インナーチャンバー内に設置されるが,
これを駆動するモータはチャンバー内への汚染防止のため,アウターチャンバーの外側に設置され,シー
ルされた駆動軸によってファンを駆動する。駆動軸のシールには,チャンバー内の汚染を防止するため,
潤滑油などは使用しない。
JD.3 液面蒸発による物質伝達率測定
試験チャンバー内に設置された試験片表面の物質伝達率は,試験片設置面に,その面積と等しい純水を
満たした容器を設置し,試験チャンバー内の水蒸気圧(試験チャンバー出口の水蒸気圧と等しいものとみ
なす),純水の蒸散率(単位時間当たりの蒸散質量)及び純水の飽和蒸気圧の測定から求める。
なお,蒸散によって気化熱が奪われ液面温度が低下する。そのため,飽和蒸気圧の算定には,純水の表
面温度の計測が重要となるが,周辺空気温度との温度差が大きくなる場合には,液面温度が周辺空気温度
とほぼ同一となるよう管理する必要がある。
物質伝達率の測定に際しては,純水以外の揮発性液体を使用することも可能であるが,揮発性物質の蒸
気が有毒でないこと及び蒸気濃度が,その爆発下限よりも十分低いことを確認する。
物質伝達率ka(m/s)は,式(JD.1) によって算出する。
qw
ka (JD.1)
A ρo
ρsat
ここに, ka : 物質伝達率(m/s)
qw : 蒸散率(mg/s)
A : 試験片の表面積(m2)
ρo : 試験チャンバー出口の蒸気濃度(mg/m3)
ρsat : 液面の飽和蒸気濃度(mg/m3)
1時間に換算された物質伝達率ka'a'm(m/h)は,kaを3 600倍して求める。
JD.4 物質伝達率を制御した放散試験
まだ乾いていないペイント表面など,物質伝達率がその放散特性に大きく影響する可能性がある建築材
料からの放散試験は,物質伝達率制御方式チャンバーによって放散試験を行うことが望ましい。
一般に,静穏な室内壁面の対流熱伝達率は,36 W/(m2・K)程度といわれている。ルイスの関係によって
対応する物質伝達率は,空気の比熱を1 200 J/(m3・K)とすると,2.5×10−35.0×10−3 m/sとなる。対応し
て1時間に換算された物質伝達率kaは,918 m/h程度となる。試験片表面の物質伝達率が,この程度の
値となるよう調整して放散試験を行うことが望ましい。
なお,放散性状は,チャンバー内の放散物質濃度の影響を受けることがある。チャンバー内濃度が放散
物質の飽和蒸気圧濃度近くになる場合は,チャンバー内濃度が実際の室内濃度に対応するよう,チャンバ
ー試験での試料負荷率及び換気回数を調整する必要がある。

――――― [JIS A 1901 pdf 32] ―――――

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A 1901 : 2015
附属書JE
(参考)
対象VOC,ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物のガイドライン値
この附属書は,厚生労働省のシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会によって策定された室
内空気汚染に関わるガイドラインに基づいて参考として記載するものであり,規定の一部ではない。
この指針値は,現状において入手可能な科学的知見に基づき,人がその化学物質の示された濃度以下の
暴露を一生涯受けたとしても,健康への有害な影響を受けないであろうとの判断によって設定された値で
ある。これらは,今後集積される新たな知見,及びそれらに基づく国際的な評価作業の進捗に伴い,将来
必要があれば変更されるべきものである。
JE.1 対象となるVOC,ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物
対象VOCの例を表JE.1に,ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物の例を表JE.2に示す。この規
定をそのまま用いてフタル酸エステル,防ぎ(蟻)剤などのSVOCを測定することは難しい。
表JE.1−対象VOCの例
化学物質名 CAS-No. ガイドライン値
トルエン 108-88-3 260 最一
キシレン o-キシレン 95-47-6 870 最一
m-キシレン 108-38-3
p-キシレン 106-42-3
p-ジクロロベンゼン 106-46-7 240 最一
エチルベンゼン 100-41-4 3800 最一
スチレン 100-42-5 220 最一
テトラデカン 629-59-4 330 最一
表JE.2−ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物の例
化学物質名 CAS-No. ガイドライン値
ホルムアルデヒド 50-00-0 100 最一
アセトアルデヒド 75-07-0 48 最一
参考文献 シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告−第1回第3回のまとめ,
2000年6月29日
シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告−第4回第5回のまとめ,
2000年12月22日
シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告−第6回第7回のまとめ,
2001年7月24日
シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告−第8回第9回のまとめ,
2002年1月22日

――――― [JIS A 1901 pdf 33] ―――――

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附属書JF
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
ISO 16000-9:2006,Indoor air−Part 9: Determination of the emission of volatile organic
JIS A 1901:2015 建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び
他のカルボニル化合物放散測定方法−小形チャンバー法 compounds from building products and furnishing−Emission test chamber method
(I) JISの規定 (II) (III)国際規格の規定 (IV) JISと国際規格との技術的差異の箇条(V) JISと国際規格との技術的差
国際 ごとの評価及びその内容 異の理由及び今後の対策
規格
箇条番号 内容 箇条 内容 箇条ごと 技術的差異の内容
番号
及び題名 番号 の評価
1 適用範囲 使用するチャンバー,測 1 変更
適用範囲に,測定対象とな 特に技術的な差異はない。 関連するJISとの整合化を優先
定対象の建材などを規 る建材は特に例示してい させたが,特に,ISO規格の内容
定 ない。 とはそご(齟齬)は来していない。
3 用語及び 用語の定義について規 3 JISとほぼ同じ 変更 JISでは,ISO規格の元規格で ISO規格に合わせる形で整合化
定義 定 あるENに従い用語を規定した を図ったが,JIS用語として広く
3.16,3.19,3.20,3.23, が,ISO規格審議において,こ 定着しているものについては整
3.24,3.25 れらの用語が修正されている。合化を見送った。今後,関連する
JISを中心に用語規格を取りま
とめ,ISOへの提案を検討する。
3.1,3.5,3.6,3.7,3.8, 3 − 追加 JISが先行していたため,これ JISとして必要な用語であるた
3.10,3.12,3.13,3.14, らの用語はISO規格には規定 め削除することなく,残してい
3.17,3.26,3.27 されていない。 る。
4 記号及び 4
A,ρ(0),ρe(t),ρs,Q,V, − 追加 JISが先行していたため,これら
単位 ka,l,m,u,v,η,τn, の記号及び単位はISO規格には
規定されていないが,JISでは必
要な記号であることから削除せ
ず,残す(追加)こととした。
5 原理 測定方法の原理につい 5 JISとほぼ同じ 変更 特に技術的な差異はない。 JISが先行していたため,文言に
て規定 ついては若干の相違があるが,技
A1
術的な差異はない。
901 : 2
0 15
2

――――― [JIS A 1901 pdf 34] ―――――

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A1
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(I) JISの規定 (II) (III)国際規格の規定 (IV) JISと国際規格との技術的差異の箇条(V) JISと国際規格との技術的差
9
国際 ごとの評価及びその内容 異の理由及び今後の対策
01
規格
: 2
箇条番号 内容 箇条 内容 箇条ごと 技術的差異の内容
番号
0
及び題名 番号 の評価
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6 器具 器具について規定 JISが先行していたため,ISO規
6.2 チャンバー Annex C JISと規格構成が異なる 変更 チャンバーの形状について規 格に規定されていない項目もあ
6.2 が,規定内容はJISとほぼ 定を追加 るが,JISとして必要な項目であ
7.2 同じ るため,削除せず残す(追加)こ
6.2.1 形状 − 規定なし。 追加 ととした。
6.2.2 気密性 6.4 JISとほぼ同じ 変更
9.5
6.2.3 空気の供給装置及び混 6.3 JISとほぼ同じ 変更
合装置
6.3 試験片のシール − − 追加 試験片のシール方法を追加
6.4 空気清浄装置 6.3 JISとほぼ同じ 変更
7.3
6.5 温度・湿度制御方法 7 JISと規格構成が異なる 変更
7.4 が,規定内容はJISとほぼ
9.2 同じ
6.6 積算流量計 − − 追加
6.7 空気捕集方法 6.5 JISとほぼ同じ 変更
7.7
6.8 オーブン − − 追加 VOCなどを揮発させるための
装置に関する規定を追加
7 試験条件 試験条件について規定 8 試験条件について規定 文言などを修正しているが,技JISが先行していたため,ISO規
術的な差異は特にない。 格に規定されていない項目もあ
7.2 温度及び相対湿度 8.1 変更 温度範囲が異なる。 るが,JISとして必要な項目であ
温度 : 28±1.0 ℃ 23±2 ℃ るため,削除せず残す(追加)こ
7.3 供給空気質及びバック 8.2 変更 ととした。
グラウンド濃度
7.4 物質伝達率 − − 追加
7.5 単位面積当たりの換気 8.4 一致
量及び換気回数 Annex B 変更

――――― [JIS A 1901 pdf 35] ―――――

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JIS A 1901:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 16000-9:2006(MOD)

JIS A 1901:2015の国際規格 ICS 分類一覧

JIS A 1901:2015の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISA1902-1:2015
建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散量測定におけるサンプル採取,試験片作製及び試験条件―第1部:ボード類,壁紙及び床材
JISA1902-2:2015
建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散量測定におけるサンプル採取,試験片作製及び試験条件―第2部:接着剤
JISA1902-3:2015
建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散量測定におけるサンプル採取,試験片作製及び試験条件―第3部:塗料及び建築用仕上塗材
JISA1902-4:2015
建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散量測定におけるサンプル採取,試験片作製及び試験条件―第4部:断熱材
JISA1962:2015
室内及び試験チャンバー内空気中のホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物の定量―ポンプサンプリング
JISA1965:2015
室内及び試験チャンバー内空気中揮発性有機化合物のTenax TA(R)吸着剤を用いたポンプサンプリング,加熱脱離及びMS又はMS-FIDを用いたガスクロマトグラフィーによる定量
JISA1966:2015
室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・加熱脱離・キャピラリーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析―ポンプサンプリング
JISK0123:2018
ガスクロマトグラフィー質量分析通則
JISK0124:2011
高速液体クロマトグラフィー通則
JISK0557:1998
用水・排水の試験に用いる水
JISZ8401:2019
数値の丸め方
JISZ8703:1983
試験場所の標準状態