JIS B 8815:2013 電気チェーンブロック | ページ 5

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B 8815 : 2013
附属書A
(参考)
巻上機の総運転時間及び残存耐用時間
A.1 巻上機の総運転時間
A.1.1 荷重率K
巻上機の総運転時間は,劣化要因が同じ場合は負荷と運転時間を基に算出する。巻上機は,運転中の負
荷が計画時に想定した状態から変わることで,実際に使用できる時間が少なくなることもあれば,延長さ
れることもある。最大使用荷重,荷重率及び運転サイクルを想定することで,期待する寿命を備えた巻上
機を選定することができる。
一般に,機械部品の寿命Lhと負荷の大きさPとの間にはLh∝(1/P)3の関係がある。巻上機の場合は,負
荷の大きさPが一定ではないため,巻上機の寿命時間を考えるときの負荷の大きさは,変化する負荷の大
きさ及び巻上機の運転時間割合から算出する荷重率Kで表す。ここで,荷重率Kは式(A.1)及び式(A.2)で
求める。
K=3 Km (A.1)
ここに, K : 荷重率
Km : 荷重スペクトル係数(表1又はJIS B 8822-1参照)
3
ti Pi
K=
m (A.2)
tT Pmax
ここに, ti : 荷重値ごとの通電時間
(t1,t2,t3,···,tn),nは任意の整数
tT : 荷重値ごとの通電時間の合計
(tT=t1+t2+t3+···+tn)
Pi : 作業ごとの荷重値
(P1,P2,P3,···,Pn),nは任意の整数
Pmax : 巻上機の定格荷重
A.1.2 荷重率と運転時間率との関係
荷重率と運転時間率との関係例を,図A.1に示す。図A.1の各モデルの状態は,次による。
a) モデル1は軽作業であり,定格荷重をつるのは10 %以下で,全体の荷重率は0.5以下。主に倉庫又は
使用頻度の低い工場に該当する。
モデル1(軽) Km=0.1×13+0.4×0.43+0.5×0.13=0.125,K=3 .0125 =0.5
b) モデル2は中作業であり,定格荷重はもちろん,幅広い重さの荷を運搬するのに用いており,荷重率
は0.63。比較的使用頻度の高い工場に該当する。
モデル2(中) Km=0.167×13+0.167×0.7333+0.167×0.4673+0.5×0.23=0.25,K=3 .025 =0.63
c) モデル3は重作業であり,荷(60 %)とつり具(40 %)との合計がほぼ定格荷重(100 %)で,荷重
率は0.8。自動車工場といった,使用頻度がかなり高い工場に該当する。
モデル3(重) Km=0.5×13+0.5×0.43=0.5,K=3 5.0 =0.8
d) モデル4は超重作業であり,定格荷重に近いジグを常につった状態で使用され,荷重率は1.0。スポッ
ト溶接機などをつり下げ,常に上下運転しているケースに該当する。

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モデル4(超重) Km=0.9×13+0.1×0.83=1.0,K=3 0.1 =1.0
a) モデル1(軽) b) モデル2(中)
c) モデル3(重) d) モデル4(超重)
図A.1−荷重率と運転時間率との関係の例
A.1.3 等級と荷重率とによる総運転時間
クレーン構造規格及びこの規格では,荷重の状態及び等級に応じた総運転時間を規定している。等級,
荷重率(K)及び総運転時間(Lh)の関係を図A.2に示す。

――――― [JIS B 8815 pdf 22] ―――――

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100 000
50 000
E F F F
(
つ 25 000
り D E F F M8
上 12 500
げ C D E F M7
装総 6 300 巻
置運 B C D E M6 上
な転 3 200 機
ど時 A B C 1 D M5 等
の間 1 600 級
使 A A B C M4
用 800
時 A A A B M3
間 400
M2
)
200
M1
Lh (h) 100
0 0.5 0.63 0.8 1
荷重率 K
常態として定格荷重の50%以上
常態として定格荷重の50%未満 常態として定格荷重の80%以上
常態として定格荷重の63%以上
63%未満の荷重の荷をつるa)
の荷重の荷をつるa) の荷重の荷をつるa)
80%未満の荷重の荷をつるa)
注記1 図中のM1M8は,表1の巻上機等級を示す。
注記2 図中のAFは,クレーン構造規格のつり上げ装置などの等級(クレーン等級)を示す。
注記3 図中の実線は等級M5として設計された巻上機がもつ理論上の総運転時間,網掛け部分は表1に示す等級の考
え方に基づいた等級M5の巻上機が使用できる範囲を示している。使用者がクレーン等級D(つり上げ装置な
どの使用時間 : 1 600時間以上3 200時間未満,区分 : 常態として定格荷重の80 %以上の荷重の荷をつる。)
の巻上機を選択する場合,巻上機等級としてはM6が必要である。ここで,荷重率及びつり上げ装置などの使
用時間の計画値が図中の1の箇所であったとき,使用者が製造業者に詳細な使用条件を提示して確認するこ
とによって,等級M5の巻上機を選択することができる。
注a) クレーン構造規格の区分による。
図A.2−荷重率及び総運転時間による等級の区分
A.2 残存耐用時間
A.2.1 一般
総運転時間は定められた運転パターンに基づく理論上の寿命であるが,実際に使用された巻上機の残存
耐用時間は使用状況の調査結果に基づき算出する。
A.2.2 残存耐用時間と負荷との関係
残存耐用時間は,当初想定したよりも負荷を下げた状態で使用することによって延ばすことができる。
しかし,種々の対策によって劣化の進行を遅らせることはできても劣化そのものを停止させることは不可
能であることから,残存耐用時間は負荷を下げた分だけ無条件に延びるわけではない。また,負荷を上げ
た場合は,残存耐用時間が想定よりも短くなることに留意する必要がある。等級と総運転時間とは,A.1.2

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に示す4種類の荷重率で年間稼働日数を250日として10年間使用することを想定して決められている。し
かし,使用条件が途中で変わることで残存耐用時間が10年よりも延びる場合もあれば,逆に10年以内に
残存耐用時間がなくなる場合もあるため,定期的に確認する必要がある。
A.2.3 残存耐用時間に関する注意事項
残存耐用時間に関する注意事項を,次に示す。
a) 例えば,等級M5のホイストが,荷重の状態“中”(荷重率K=0.63)で使用することを想定した後,
荷重の状態“軽”(荷重率K=0.5)に下げて運転すれば,残存耐用時間は2倍に延長できる。逆に荷
重の状態“重”(荷重率K=0.8)にすれば,残存耐用時間は1/2に短縮される。このため,実際の使用
状況を調査してなるべく正確な荷重の状態及び運転時間を記録すれば,それに基づいて残存耐用時間
を算出することによって,巻上機が使用できる時間を正確に把握することが可能となる。
b) 例えば,レンタル機械の場合には,使用者の用途によって様々な使われ方をする。この場合は,使用
する用途によって荷重の状態と運転時間とを推定するか,過去の運転履歴又は現場での実態調査を参
考に求める。
c) 例えば,機械のメンテナンス用に設置した巻上機のように,使用される日数が少なく,使用する時間
も僅かな場合(目安として年間運転時間が総運転時間の3 %を下回る場合)は,残存耐用時間を毎年
算出せず23年ごとぐらいの長い間隔で評価を行ってもよい。ただし,毎年実施する年次自主検査に
おいては運転条件が変わっていないことを確認する。また,取扱説明書に記載されている使用方法,
点検,修理などの指示事項は遵守する。
d) 使用履歴の分からない巻上機を使用するときは,使用前(又は使用後の早い時期)に特別アセスメン
トを実施する。特に,製造後10年を経過している場合には,使用前に特別アセスメントを実施する。

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附属書B
(参考)
電気チェーンブロックの使用に関する注意事項
B.1 一般
この附属書は,電気チェーンブロックを安全に使用するために,製造業者が使用者へ取扱説明書,カタ
ログなどで提供する電気チェーンブロックの使用に関する注意事項について記載する。
この附属書では,使用に関する注意事項のランクを,次の(危険),(警告)及び(注意)として区分す
る。
− (危険)は,回避しないと,死亡又は重傷を招く差し迫った危険な状況を示す。
− (警告)は,回避しないと,死亡又は重傷を招くおそれがある危険な状況を示す。
− (注意)は,回避しないと,軽傷又は中程度の傷害を招くおそれがある危険な状況,又は物的損害だ
けが発生するおそれのある場合を示す。
B.2 取扱い全般
a) (警告)電気チェーンブロックは,総運転時間を超えて使用しない。
b) (警告)取扱説明書及び注意銘板の内容を熟知しない人は運転しない。
c) (警告)法定資格のない人は,クレーン操作及び玉掛け作業を行わない。また,行わせない。
d) (警告)作業開始前の点検及び定期自主検査を必ず実施する。
e) (注意)取扱説明書は製品の廃棄まで保存し,常時閲覧できる場所に保管する。
B.3 据付け及び取付け
a) (危険)横行及び走行レール端には,必ずストッパを取り付ける。
b) (危険)電気チェーンブロックを設置する場所は,十分な強度をもたせる。
c) (警告)据付けは,専門業者又は専門知識のある人以外は行わない。
d) (警告)アース工事を必ず行い,漏電遮断器を電路に取り付ける。
e) (注意)電気チェーンブロックに雨又は水がかかるなど,製品の仕様を超えた環境に据え付けない。
B.4 運転及び操作
a) (危険)使用前にブレーキの動作を確認し,ブレーキが正常に作動しないときは絶対に運転しない。
b) (警告)損傷している,又は異音若しくは異常振動を発生している電気チェーンブロックは運転しな
い。
c) (警告)ロードチェーンに次の異常がある場合は運転しない。
− ねじれ,もつれ,亀裂又はかみ合い異常がある場合。
− 規定より伸び又は摩耗が大きい場合。
d) (警告)定格荷重を超える荷は,絶対につらない。
e) (警告)つり荷に人が乗らない。また,人の乗る用途に使用しない。
f) (警告)つり荷の下に絶対入らない。
g) (警告)人の頭上を越えて荷を運搬しない。

――――― [JIS B 8815 pdf 25] ―――――

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