JIS G 0561:2011 鋼の焼入性試験方法(一端焼入方法) | ページ 2

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G 0561 : 2011
単位 mm
フランジ付き試験片 アンダーカット付き試験片
図2−試験片の寸法

6.2 試験片の調製方法

  鋼材規格に規定のない場合,試験片の調製方法は,次による。
a) 鋼材の径,辺又は対辺距離が3032 mmの場合は,これをそのまま供試材とし,鋼材の径,辺又は対
辺距離が32 mmを超える場合,又は,鋼片の場合は,径3032 mmに鍛造又は圧延して供試材とす
る。
b) 試験片の機械加工前の成形工程において,製品の変形は,できる限り断面方向で一様であることが望
ましい。
なお,標準試験片を別に鋳造して作製する場合は,成形前の鋳片の断面積は,供試材の直径である
3032 mmに相当する断面積の少なくとも3倍以上が望ましい。
c) 他に規定がない場合は,表2に示す焼ならし温度に60分間保持して焼ならしを施した後,表面の脱炭
層を除去し,規定寸法の試験片を削り出して,冷却する側の端面を精密に仕上げる(図2参照)。ただ
し,受渡当事者間の協定によって,供試材の焼ならしを省略してもよい。

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表2−供試材・試験片の焼ならし及び焼入温度
化学成分の規格値又は規格値の最大値 焼ならし温度a) 焼入温度a)
Ni % C % ℃ ℃
3.00以下 0.25以下 925 925
0.26以上 0.36以下 900 870
0.37以上 870 845
3.00を超えるもの 0.25以下 925 845
0.26以上 0.36以下 900 815
0.37以上 870 800
JIS G 4801のSUP6,SUP7,SUP9,SUP9A, 900 870
SUP10,SUP11A,SUP12,SUP13
JIS G 4053のSACM645 980 925
注a) 温度の許容差は,±5 ℃とする。
d) 供試材に焼ならし以外の熱処理を行った場合及び試験片に熱処理を行った場合は,熱処理履歴を記録
して報告しなければならない。
e) 鋼材の径,辺又は対辺距離が32 mmを超える場合,又は,鋼片の場合,圧減比(鍛錬成形比)が4以
上であれば,鍛造又は圧延を省略して30 mmの供試材を削り出し,c)と同様に焼ならしした後,規定
寸法の試験片を削り出してもよい。また,受渡当事者間の協定によって,焼ならしを省略してもよい。
ただし,試験片の中心軸は,もとの鋼材又は鋼片の表面から2025 mmの位置とする。8.1で規定す
るもとの鋼材又は鋼片の中心から等距離の位置(図3参照)の硬さを測定する。
注記 通常,鋼材又は鋼片の中心から等距離の位置の硬さを測定するために,供試材(又は試験片)
に測定位置が判別できる印をつけている。
1 硬さ測定面
図3−試験片の機械加工によるサンプリングの例
f) 特別な協定がある場合は,試験片を鋳造によって作製してもよい。

7 焼入方法

7.1 加熱方法

  加熱方法は,次による。

――――― [JIS G 0561 pdf 7] ―――――

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a) 試験片は,表2に示す焼入温度に保たれている炉に装入し,少なくとも20分をかけて中心部まで均一
に昇温した後,その温度に3035分間保つ。ただし,受渡当事者間の協定によって,表2以外の焼入
温度によってもよい。
b) 加熱時間は,あらかじめ試験片の中心部に熱電対を差し込んで温度を測定した結果によって,必要と
する最短時間を決めておく。
c) 加熱の際,適切な方法1)を用い,試験片の焼入端面にスケールがなく,研磨で硬さ測定面の脱炭層が
完全に除去される程度に酸化脱炭を防止する。
注1) 例えば,保護ガスを応用する,焼入れする端面を黒鉛又は鋳鉄切粉中に埋める,又は特殊な
耐熱鋼製キャップをはめる。

7.2 焼入作業

  焼入作業は,次による。
a) 焼入温度に加熱した試験片を試験片支持台に垂直に設置し,噴水の阻止装置を速やかに開き,試験片
全体が冷却するまで少なくとも10分間冷却する。それ以後は水中で冷却してもよい。
b) 試験片支持台は,焼入開始時にぬれていてはならない。
c) 試験片を加熱炉から取り出してから焼入れ開始までの時間はできるだけ短くし,5秒以内にしなけれ
ばならない。試験片は,加熱炉からの取出し及び試験片支持台に設置の際に,その端部をはさみジグ
で保持するだけとし,フランジ及びアンダーカットの側面が焼入れされないようにする。

7.3 焼入剤

  温度530 ℃の水を用いる。(20±5)℃の水を用いることが望ましい。

8 硬さの測定方法

8.1 硬さ試験片

  硬さ試験片は,次による。
a) 冷却した試験片は,互いに180度隔てた相対応する位置を,試験片の全長にわたり各々厚さ0.40.5
mmを研削して除去し,その両面の硬さを測定する(図4参照)。
b) 径32 mmを超える鋼材から直接試験片を削り出した場合,通常はもとの鋼材の中心から等距離の位置
の硬さを測定する(図3参照)。
c) 試験片の研削は,研削熱で組織変化を起こさないように注意しなければならない。研削熱による組織
変化の検出は,次による。
1) 腐食液
第1液 体積分率 硝酸(密度1.381.42 g/mL)5 %+水95 %
第2液 体積分率 塩酸(密度1.18 g/mL)50 %+水50 %
2) 方法 試験片を温水で洗浄し,第1液が黒くなるまで(約3060秒間)腐食する。次に温水で洗浄
し,第2液に3秒間浸した後,更に温水で洗浄して微風で乾燥し,腐食面を観察する。腐食面にま
だらが生じた場合は,研削中に組織が変化したことを示す。研削によって起きた組織上の変化は,
硬さ試験を行う前に取り除き,表面再仕上げ及び再腐食を行う。ただし,組織変化のはなはだしい
場合は,別に新たに平たん面を作り,硬さ測定面としなければならない。

8.2 硬さ測定位置

  硬さの測定位置は,次による。
a) 硬さの測定位置は,試験片の軸方向に焼入端から1.5 mm以上離れた測定点とし,いずれの点にする

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かは必要に応じて定める。
b) 焼入性曲線を描くときは,通常は焼入端から1.5−3−5−7−9−11−13−15 mm及びそれ以降5 mm間
隔の各点とする。
c) 材料規格で規定される低い焼入性の鋼の焼入性曲線を描く場合は,最初の測定点は焼入端から1.0 mm
とし,以降,焼入端から11 mmまでは1.0 mmの間隔とする。最後の五つの測定点は,焼入端から13
−15−20−25−30 mmの各点とする。
単位 mm
図4−硬さ試験片及び硬さ測定点

8.3 硬さの測定

  硬さの測定は,次による。
a) 硬さの測定は,焼入端又はその反対側の,いずれから始めてもよい。
b) 硬さの測定は,ロックウェルCスケール硬さ又はビッカース硬さで行う。ロックウェルCスケール硬
さ及びビッカース硬さを測定する方法は,8.2によるほか,JIS Z 2245及びJIS Z 2244による。
c) 硬さ測定機上の試験片移動装置は,測定面の中心を正確に位置出しし,硬さの圧痕間隔を±0.1 mmの
精度で移動するものとする。Vブロックは,試験片が傾くため使用しないのが望ましい。既に硬さを
測定した研磨面の裏側の面を使用して硬さを測定する場合には,既にある測定くぼみの影響がないよ
うに注意しなければならない。
注記 硬さの測定には適切な試験片台を使用し,正しい測定位置を保つことが望ましい。

9 記録

  試験片の両面で得られた対応する点の硬さの平均値を求め,軸方向にわたる硬さの推移を,附属書JA
に示す焼入性図表に記録する。焼入性図表は,ロックウェルCスケール硬さ目盛又はビッカース硬さ目盛
のいずれか一方を省略した図表を用いることができる。図表の縦横の軸比は2対3にとる。図表の縦軸は,
測定した対応する点の硬さの平均値を,横軸は,試験片の焼入端面から測定点までの距離を示す。
なお,溶鋼番号・オーステナイト結晶粒度[粒度番号及び試験方法(JIS G 0551による表示)]・化学成
分・熱処理温度・試験片の採取位置・水温及びその他特殊な熱処理履歴を記録しておくとよい。
焼入性指数は,次の例に従って示す。

――――― [JIS G 0561 pdf 9] ―――――

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例1 焼入端からの距離が12 mmにおける硬さが36 HRC又は354 HVの場合
J 12 mm=36 又はJ 12 mm=354HV
ただし,受渡当事者間の協定によって,ISO規格の表記方法である J36-12又はJHV 354-12
を使用してもよい。
例2 硬さ45 HRC又は446 HVに対する焼入端からの距離が6 mmの場合
J 45=6 mm又は J446HV=6 mm
ただし,受渡当事者間の協定によって,ISO規格の表記方法である J45-6又はJHV 446-6を
使用してもよい。

10 報告

  試験報告書が必要な場合には,次の事項のうちから,受渡当事者間の協定によって選択する。
a) この規格によって試験した旨の表示
b) 材料の種類
c) 溶鋼番号
d) 化学成分
e) サンプリングの方法
f) 焼ならし処理及び試験片の焼入加熱の条件
g) 硬さ試験方法
h) 試験結果
注記 試験結果の相互比較が可能なように,水温を記録することが望ましい。

――――― [JIS G 0561 pdf 10] ―――――

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JIS G 0561:2011の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 642:1999(MOD)

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