JIS H 8304:2017 セラミック溶射 | ページ 4

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A.6.5.3.3 封孔処理剤
封孔処理剤は,次に適合するものを用いる。また,封孔処理剤の主な種類を,表A.3に示す。
a) 適正な浸透性能をもち,溶射皮膜中に十分浸透する。
b) 乾燥又は固化後,化学薬品及び溶剤に溶けにくく,溶射皮膜の保護機能がある。
c) 溶射皮膜に受ける機械的作用に対して耐えられる。
d) 溶射皮膜の使用温度に対して耐久性がある。
e) 食品に関する用途に使用される溶射皮膜に施す場合は,食品衛生上,無害である。
f) 取扱い及び封孔処理作業に対して安全である。
g) 溶射皮膜及び素地を劣化させない。
表A.3−封孔処理剤の主な種類
封孔剤特性 封孔剤の種類 処理方法
乾燥しない封孔剤 a) ワックス類(植物性,鉱物性) 90 ℃に溶射皮膜を加熱して浸透させ
b) 潤滑油類 (植物性,鉱物性) る。竹,木,金属材料などの平ごてを
用いる。
大気中で自然乾燥 a) 常温形フェノール樹脂類 浸せき,はけ塗り,スプレー塗布,真
する封孔剤 b) 常温形エポキシ,フェノール樹脂類 空含浸などを行う。
c) 常温形ビニール樹脂類
d) 常温形ポリエステル樹脂類
e) 常温形シリコン樹脂類
f) 常温形ポリウレタン樹脂類
焼付け型の封孔剤 a) フェノール樹脂類 浸せき,はけ塗り,スプレー塗布,エ
b) エポキシ,フェノール樹脂類 ヤーレス,静電塗装などで塗布し,焼
c) エポキシ樹脂類 成炉(加熱乾燥炉)に入れる。
d) ポリエステル樹脂類
e) シリコン樹脂類
f) ふっ素樹脂類
g) フラン樹脂類
触媒反応型の封孔 a) エポキシ樹脂類 浸せき,はけ塗り,エヤーレス塗り及
処理 b) ポリエステル樹脂類 びスプレー塗布を行った後,竹,木,
c) ポリウレタン樹脂類 金属材料などの平ごてを用いる(加熱
d) フラン樹脂類 炉などを用いないときに用いる。)。
その他の封孔剤 a) ナトリウムけい酸塩類 浸せき,はけ塗りなどを行う。
b) エチルけい酸塩類
c) 嫌気性メタクリル酸類
注記 封孔処理剤は,溶射直後,できる限り速く封孔浸透させることが望ましい。封孔剤成膜を放置すると,
結露の可能性があり,汚れた汚染物(ごみ)などが気孔の孔に入りやすい。封孔処理剤には,顔料(染
料)などが含まれている場合があるが,浸透性をよくするために同一溶剤でうすめて使用する。
A.6.5.4 機械加工による溶射皮膜の仕上げ処理
機械加工による溶射皮膜の仕上げが必要なときは,研削仕上げをする。
A.7 屋外溶射作業
屋外溶射作業は,次の条件で行う。
a) 溶射設備,溶射材料などの仮設置場,仮設電源,仮設休憩場などを設ける。

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b) 溶射作業中に発生する粉じん,ヒュームなどの防護のための仮設物を設ける。
c) 屋外作業では,溶射材料,溶射設備など保持状態が天候によって左右され,溶射加工品の皮膜品質へ
悪影響を及ぼすことから,安全な保護シートなどで,風雨にさらされない保護対策を講じる。
d) 飛散するブラスト材料,溶射フレーム,火花などからの防御措置を行う。
e) 溶射に使用したブラスト廃材などは,所定の場所で処置する。
f) 溶射加工品が大型の構造物の場合,仮設足場はブラスト,溶射作業などに支障がないようにする。
A.8 安全衛生管理措置
溶射作業を行うには,関係法令を遵守し,常に安全及び衛生に注意する。特に注意する項目を,次に示
す。
a) ブラスト作業及び溶射作業では,粉じん,溶射フレーム,ヒューム,ガスなどが発生するため,これ
らを十分処理することができる集じん設備,防災シートなどを備える。溶射施工場所及び通気性の悪
いところでは,溶射作業中温度上昇,酸素欠乏,一酸化炭素発生などに対応するため,事前にその対
策を講じる。
b) ブラスト及び溶射作業を行うときは,作業者は,発生する粉じん及び溶射フレームから保護するため
のマスク,遮光面,保護めがね,保護手袋,耳栓などを必ず着用する。
c) プラズマ溶射装置の配電ターミナル及び配線部分は,感電防止のために,電気絶縁物で防護し,外部
に露出させない。また,接地も適切に行う。

――――― [JIS H 8304 pdf 17] ―――――

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附属書B
(参考)
耐摩耗試験
B.1 要旨
研磨紙を張り付けた摩擦輪で皮膜を摩擦し,皮膜質量の減少,皮膜厚さの減少又は素地の露出によって,
皮膜の耐摩耗性を調べる。
B.2 装置
装置は,試験片取付台,摩擦輪,往復運動機構,試験力負荷機構,往復運動回数読取器などによって構
成される。試験装置の例を図B.1に示す。
図B.1−往復運動摩耗試験機の例
a) 試験片取付台 摩擦輪との摩擦往復運動において試験片が動かないように試験片を確実に固定できる
もの。また,試験片又は研磨紙からの脱落粉が,試験中に試験面に残存しないもの。この際,吸引装
置などを用いて脱落粉を除去してもよい。
b) 摩擦輪 直径50 mm及び幅12 mmの円筒で,試験片を新しい研磨紙面で摩擦するようにするため,1

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回の往復運動ごとに正確に0.9°回転する自転装置がついているもの。
c) 往復運動機構 毎分60 DS(DSは,Double strokeの略で,摩擦輪の一往復のこと。)30 mmのストロ
ークで,試験面の摩擦を均一に行うことができるもの。
d) 試験力負荷機構 摩擦輪と試験片との間に29.4 Nまでの試験力をかけられるもの。
なお,試験力を任意に可変できるものが望ましい。
e) 往復運動回数読取器 摩擦輪と試験片との間の往復運動回数を正確に読み取ることができるもの。自
動停止装置と連動して停止するものが望ましい。
f) 研磨紙 摩擦輪に張り付ける研磨紙は,JIS R 6252に規定するGC又はWAの研磨紙で,裏面に接着
剤を付けたものであり,その粒度がP240,P280又はP320のもの。
なお,この研磨紙は,12 mm×158 mmに裁断して用いる。また,研磨紙は,同じロットのものを使
用し,研磨紙のばらつきによる誤差を少なくする。
B.3 試験片
試験片は,JIS H 8503の4.(試料)によって調製する。
B.4 評価方法及び試験条件
皮膜質量の減少,皮膜厚さの減少又は素地の露出のいずれの方法によって耐摩耗性を評価するかは,受
渡当事者間の協定による。また,試験条件は,受渡当事者間の協定による。
試験条件は,皮膜の性能,用途などが多岐にわたるので,一定の条件を規定できないが,望ましい条件
を表B.1に示す。
表B.1−試験条件
試験力 研磨紙の粒度
N
14.724.5 P240,P280,P320
B.5 操作
操作は,次の手順による。
a) 研磨紙を摩擦輪の円筒に沿ってちょうど1回転するように,正確に,かつ,滑らかに巻き付ける。
b) 試験片を試験片取付台に固定し,受渡当事者間の協定による試験力及び研磨紙によって,皮膜の予備
研磨を行う。
なお,試料の表面は,素地又は溶射条件によって必ずしも一定でないので,面を調整するためだけ
に行う。往復運動回数は,50100 DS程度を行うとよい。
c) 試験片を試験片取付台から外し,皮膜の表面を柔らかい布で清浄にした後,次の操作を行う。
1) 皮膜質量の減少によって耐摩耗を評価する場合は,試験片の質量を,0.1 mgの桁まで読み取ること
ができる化学はかりで測定する。
2) 皮膜厚さの減少によって耐摩耗を評価する場合は,皮膜厚さを厚さ測定器を用いて図B.2に示す3
か所で測定する。厚さ測定器は,非破壊式のものを使用するのが望ましい。

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単位 mm
図B.2−厚さ測定器を用いた場合の厚さ測定位置
3) 素地の露出によって耐摩耗を評価する場合は,素地の露出がないことを確認する。
d) 予備研磨面が摩擦されるように摩擦する位置を変えずに,再び試験片を試験片取付台に固定する。
e) 受渡当事者間の協定による試験力及び研磨紙によって摩擦試験を行い,次の場合に摩擦試験を終了す
る。
1) 試験片の質量を,0.1 mgの桁まで読み取ることができる化学はかりで測定し,減少量が10 mg以上
になったとき。
2) 皮膜厚さを厚さ測定器を用いて図B.2に示す3か所で測定し,皮膜厚さの平均値の減少量が明らか
に,厚さ測定器によって測定できる量になったとき。厚さ測定器は,非破壊式のものを使用するの
が望ましい。
3) 素地(図1参照)が露出したとき。摩耗量が少ない試料の場合には,400 DSを1サイクルとし,素
地の露出の有無を肉眼によって確認して,摩耗の状態を把握する。このサイクルを素地が露出する
まで繰り返す。また,素地の観察のため試験片を試験片取付台から外した後,摩擦試験継続する場
合は,研磨面が摩擦されるように摩擦する位置を変えずに,再び試験片を試験片取付台に固定する。
なお,試験に際し研磨紙の摩擦面は,再使用してはならない。研磨紙は,400 DSを限度とし,こ
れに達したものは,直ちに交換する。
B.6 耐摩耗性の求め方
耐摩耗性の求め方は,次による。
a) 皮膜質量の減少によって耐摩耗を評価する場合の耐摩耗性は,次の式によって算出する。
WR N/(W1W2 )
ここに, WR : 耐摩耗性(DS/mg)
N : 摩耗試験終了時の往復運動回数(DS)
W1 : B.5 c) で得た予備研磨後の試験片の質量(mg)
W2 : B.5 e) で得た摩耗試験終了時の試験片の質量(mg)
b) 皮膜厚さの減少によって耐摩耗を評価する場合の耐摩耗性は,次の式によって算出する。
WR N/(t1t2 )
ここに, WR : 耐摩耗性(DS/mm)
N : 摩耗試験終了時の往復運動回数(DS)
t1 : B.5 c) で得た予備研磨後の皮膜厚さの平均値(mm)
t2 : B.5 e) で得た摩擦試験終了時の皮膜厚さの平均値(mm)
c) 素地の露出によって耐摩耗を評価する場合の耐摩耗性は,あらかじめ受渡当事者間で取り決めた往復
運動回数(DS)で素地の露出を確認したときの回数を求める。この際,摩擦輪の回転によって余分に

――――― [JIS H 8304 pdf 20] ―――――

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