JIS M 8814:2003 石炭類及びコークス類―ボンブ熱量計による総発熱量の測定方法及び真発熱量の計算方法 | ページ 3

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7. 試験試料の準備

 石炭及びコークス試料は,212     ‰        田       を通過するまで粉砕したものを用い
る。条件によっては,低石炭化度炭・中石炭化度炭の場合,最大粒径 250 ‰ かっ
ている。
試料は十分に混合し,試験室内水分と適切な平衡状態になければならない。試料水分は発熱量測定の数
時間前までに測定するか,又は体積が小さくて密閉性のよい容器中に保存しておいた試料をただちに水分
測定することによって,試験用試料の適切な水分補正を行う。
試験用試料の水分測定は,ISO 331又はJIS M 8812に規定する方法による。

8. 発熱量測定手順

8.1 概要

 発熱量の測定は,規定条件下における2種類の試験からなる。一つは規定の条件下における
校正物質(安息香酸)の燃焼試験,もう一つは燃料(石炭及びコークス)燃焼試験である。この2種類の
発熱量測定試験の操作は,全く同じである。実際,同じ操作を行うのは,つまり,温度上昇補正θを推定
する際に考慮できないコントロール不可能な熱的損失によって生じる系統誤差を適切に相殺するための要
求事項である。
試験は,(燃焼ボンブ内の高圧酸素気中で),燃焼反応を行い規定した燃焼生成物を定量的に得ること及
び全試験過程で生じる温度変化を測定することから成る。
温度上昇補正θを計算するためには,図2に概略を示すように燃焼前,燃焼中(=反応)及び燃焼後に
わたって温度測定を行うことが必要である。断熱熱量計の場合には,通常,燃焼前及び燃焼後は,それぞ
れ初期(点火時)温度及び最終温度を決めるのに必要な長さの時間だけ測定すれば十分である(附属書A
参照)。等温壁型熱量計及び静的外筒形熱量計の場合には,燃焼前及び燃焼後は,熱量計の熱交換特性を明
らかにし,燃焼が進行する燃焼中における熱量計と恒温槽との熱交換に関して適切な補正をする必要があ
る。そのため,燃焼前及び燃焼後は,断熱熱量計の場合より長くしなければならない(附属書B参照)。
試験中はかくはん動力を一定に保持して,かくはん速度を一定にしておく必要がある。かくはん速度が
速すぎると,かくはん動力の好ましくない増加を引き起こし,その結果,かくはん動力を一定に保持する
ことが困難になる。不安定なかくはんは,短時間にかくはん動力の著しい変動を生じやすくする。
図 2 温度上昇―時間曲線(等温壁式熱量計)

――――― [JIS M 8814 pdf 11] ―――――

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燃焼中,燃焼ボンブ頭部は,他の部分に比べかなり熱くなるので,温度が急激に上昇する間は,熱量計
水の温度上昇の増分が緩やかになるように,燃焼ボンブ頭部の上部の水は十分にかくはんされていること
が大切である。アネロイド方式の場合には,どの程度局所的高温部が発生するかは,特にその設計次第で
ある(附属書C参照)。
反応性の低い燃料の場合には,著しい未燃焼試料又はすすを含む難燃性の残さが残ることがある。こう
した試料は既知量の助燃剤を混合すれば,多くの場合完全燃焼を達成することができる。燃焼助剤を加え,
試料を薄紙か又はライスペーパーに包めば,着火時の試料形態を変えることができる。
助燃剤として使用する物質は,化学的に安定して蒸気圧が低く,かつ,燃焼熱がきちんと確認されたも
のでなければならない。助燃剤の燃焼熱は個々の試験試料の0.1 %以内であることが望ましい。例えば,
n-ドデカン又はパラフィン油は液体であり,容易に分散するとはいえ,安息香酸が理想的な物質である。
その使用量は,試料を完全燃焼するのに必要な最小量にとどめることが望ましく,その発熱量は実験にお
ける全燃焼熱の1/2を超えてはならない。助燃剤に対する試料の最適比率は,燃料試料の特性に依存し,
実験によって決める必要がある。
助燃剤が液体のときは,燃料試料に先立ちるつぼに助燃剤を添加すれば,試料を十分にぬらすことがで
きる。

8.2 測定のための燃焼ボンブの準備

8.2.1  一般操作 試料をるつぼに,百万分の2又はそれ以上の精度ではかりとる。つまり,試料1 gに対
して(9.2及び10.2参照),0.1 mg の単位まではかりとる。燃焼用導火線及び/又は点火線は,いずれも試
料と同等の精度ではかりとる。いいかえれば,すべての試験を通して,その質量は許容精度内で同一に保
持する(9.4及び9.6.1参照)。
点火線は燃焼ボンブの電極間に,緩みなくしっかりと固定する。燃焼ボンブの点火回路の抵抗をチェッ
クする。通常のボンブでは,ボンブ頭部の外部コネクタ間又は絶縁してある電極間コネクタとボンブ頭部
間の抵抗は,510 Ωを超えないことが望ましい。
導火線を点火線に結び付けるか又はしっかり接触させ,支持台にるつぼを載せて,導火線と試料とを接
触させる。必ず,燃焼ボンブ内でのるつぼの位置が,ボンブ壁に対して対称になるように設置する。
備考8. 点火線が電気伝導性であり,かつ,燃焼性であるなら,他の代替操作によってもよい。点火
線の長いほう,オープンループを作るのに十分な長さ側を電極に結び付ける。るつぼを固定
した後,ループを試料に近接させておく。ペレットの場合には,試料に接触するようにする
(点火線と試料との間に若干の距離をおいたほうが,点火操作がうまくコントロールできる
場合がある)。点火線とるつぼは,接触しないように注意しなければならない。特に金属製る
つぼを使用するときは,接触すると点火回路が短絡する原因になる。この条件下では特殊な
導火線は不要である。燃焼ボンブの点火回路の抵抗が,ごくわずか増加するだけである。
燃焼ボンブに規定量の蒸留水を入れる。例えば,試料 1 g に対して,1.0±0.1 mlとする(9.2.2 参照)。
次に燃焼ボンブを組み立てて,酸素を圧力3.0±0.2 MPaまでゆっくりと充てんする。ボンブ内に残留する
空気を置換する必要はない。ボンブ内の酸素充てん圧が不注意にも,3.3 MPaを超えた場合には,試験を
取り止め,最初からやり直す。酸素の充てん中はボンブには触れない。
[警告事項] 燃焼ボンブに酸素充てん中は,ボンブ上部に身体又は身体の一部をかざしてはならない。
以上の準備の後,燃焼ボンブを熱量計にセットする。

――――― [JIS M 8814 pdf 12] ―――――

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8.2.2 助燃剤の使用 軽量るつぼを使用する。助燃剤の質量は,発熱量に対するその寄与分が正しく補正
できるように,できるだけ正確にはかりとる。助燃剤として炭化水素油を用いるときは,燃料試料以上に
燃焼熱が大きいので特に注意する。
例えば,助燃剤としてライスペーパー(薄い上質紙)又は液体を用いるときには,まず燃料試料より先
にはかりとる。安息香酸を助燃剤として使用するときは,最後にはかりとる。固体物質を混合するときに
は,いかなる量もロスすることがないようにする(ひょう量によってチェック)。その混合物をきれいなテ
ーブル上で,るつぼの底をたたきながら,ならし固める。更に試料を押し固めるには,表面を平らに磨い
た棒を使うとよい。

8.3 熱量計の組立

 熱量計水の水温が設定した初期温度の±0.3 K 以内になるように温度調節し,その必
要量を熱量計槽に注ぐ。熱量計槽の水量は,すべての試験を通して,0.5 g以内又はそれ以上の精度で等し
くなるようにする(9.6.1参照)。熱量計槽は,恒温槽に入れる前に,その外部表面が乾いていること及び
汚れがないことを確かめる(正確な量の水を含む。)。熱量計槽を恒温槽に取り付けてから,熱量計槽内に
燃焼ボンブを取り付ける。
代替法として,全熱量計の質量が一定のベースで発熱量の測定を行うことも可能である(9.6.2参照)。
その場合は,熱量計槽内にボンブを取り付けてから水とともに質量をはかる。この場合はすべての試験を
通して,燃焼ボンブ,水及び熱量計槽を合わせた全質量が,0.5 g以内又はそれ以上の精度内に収まるよう
にする。
組み立てた熱量計は,十分量の水を含み,燃焼ボンブ頭部及びキャップの平らな表面が,水の中に十分
浸せきされていなければならない。
備考9. 有効熱容量が10 kJ/Kのオーダーの場合には,水は0.5 g以内の精度ではかりとる。
燃焼ボンブの頭部が水に覆われたら,すぐにガス漏れを検査する。ガス弁が完全に水に浸たらないとき
は,空気中に出ている開口部に水滴を付けてガス漏れを調べる。点火回路にリード線を接続し,温度計を
取り付ける。
[警告事項] ガスがボンベから漏れているときは,試験を取りやめ,ガス漏れの原因を取り除いてから,
再び試験を開始する。ガス漏れは,危険であると同時に必ず誤差の原因となる。
冷却水,温度調節器,かくはん機などは,機器の取扱説明書に従って調節・調整する。熱量計のかくは
ん機が適切に動作することを確かめる。熱量計のタイプに関係なく,組み立てた熱量計が恒温槽内又はジ
ャケット内で,定常状態に到達するには約5分間を必要とする。熱量計がいつ定常状態に達したかどうか
の判断基準は,熱量計の操作原理による(附属書A及び附属書B参照)。

8.4 燃焼反応及び温度測定

 熱量計が定常状態に到達したならば,0.001 K 又はそれ以上の精度で,温度
読取りを始める。燃焼前のドリフト速度を確認したり,断熱計が適切に機能しているかをチェックするに
はl分間隔で温度を読み取ることが望ましい。水銀温度計を使用するときは,読み取る約10秒前くらいに
温度計を軽く弾いてから読み取り,かつ,視差による誤差を避けるように注意する。
燃焼前の終わりに,初期温度tiが確認されたならば,導線に点火して燃焼を開始する。導線に点火する
まで,スイッチは閉じた状態にしておく。通常,電流は点火線が燃焼又は一部融け始めると自動的に遮断
される。燃焼ボンブの点火回路の抵抗が通常の低い値である限り,反応を開始するのに必要とする電気的
エネルギーは極めて小さいので,その値を改めて測定し計算する必要はない。
[警告事項] 点火時及びそれ以後20秒間は,体のいかなる部分も熱量計の上にかざしてはならない。
1分ごとに温度を読み取る。初期温度tiに相当する時間を,主要燃焼期の開始時間とする。試料点火後,
温度が急激に上昇する最初の23 分間は,0.002 K の単位まで読み取れば十分である。その後可能になり

――――― [JIS M 8814 pdf 13] ―――――

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次第,0.001 K の単位又はそれ以上の精度で温度の読取りを始めるが,これは主燃焼期間がはじまってか
ら,5分間以上経過しないうちに行う。燃焼前,燃焼中及び燃焼後の長さの判断基準並びに温度の読取り
に必要な回数は,それぞれ附属書A及び附属書Bに示す。

8.5 燃焼生成物の分析操作

 燃焼後の最終時点で,必要とする温度をすべて読み終わってから,燃焼ボ
ンブを熱量計から取り出し,ゆっくりと圧力を抜き,燃焼ボンブを開ける。ボンブの内部,るつぼ及び固
体残さについて,不完全燃焼の形跡の有無を注意深く検査する。もし,未燃焼試料又は,すす状の沈着物
が認められた場合は,その試験結果は廃棄する。点火線の未燃焼部分を取り外して確認する。
備考10. 不完全燃焼の場合には,燃焼ボンブの生成ガス中に一酸化炭素が存在する結果になる。適切
な検出管を通して生成ガスをゆっくり放出すれば,一酸化炭素の有無及び濃度が分かる。300
ml ボンブ排ガス中の一酸化炭素濃度0.01 %は,約10 Jの誤差に相当する。
ボンブの内容物を,蒸留水でビーカー中に洗いだす。また,ボンブの頭部の裏面,電極及びるつぼの外
壁も必ず洗浄する。
校正試験の場合は,集めた洗浄液を約50 mlに希釈し,硝酸を定量する。すなわち,0.1 molの水酸化ナ
トリウム溶液(5.4.3)で,pH 約5.5 になるまで,又はろ過したメチルオレンジ(5.4.5)を指示薬として,
滴定によって硝酸を定量する。
“硫黄”及び/又は硝酸の補正は,燃焼過程での実際の生成量に基づいて行う。この場合,燃料燃焼から
のボンブ洗浄液は,次に述べる方法又はそれと同等な方法で定量する。燃料中の硫酸含量及び硝酸の補正
値が既知である場合は,燃焼ボンブ内の最終的な液体生成物の定量を省略してもよい(10.1参照)。
集めたボンブ洗浄液を約100 ml に希釈する。洗浄液を煮沸し二酸化炭素を追い出してから,フェノー
ルフタレイン(5.4.6)を指示薬として,まだ熱いうちに水酸化バリウム(5.4.1)で滴定する。炭酸ナトリ
ウム溶液(5.4.2)20.0 ml を加えて,温溶液をろ過し蒸留水でろ過残さを洗浄する。溶液が冷却後,ろ過
したメチルオレンジ溶液(5.4.5)を指示薬として,塩酸溶液(5.4.4)でろ液を滴定する。このときフェノ
ールフタレインの色変化は無視する。

8.6 温度上昇補正

8.6.1  温度上昇の観測 燃焼終了時の温度をtf,点火又は燃焼開始時の温度をtiとすると,観測される温
度上昇はtf−tiと表される。
8.6.2 等温壁式熱量計及び静的ジャケット式熱量計 燃焼ボンブ中の過程で生じた温度上昇に加え,観測
される温度上昇には,熱量計と恒温槽との間の熱交換及びかくはん動力からの寄与が含まれている。熱交
換に関する補正熱は,かくはん動力からの寄与を含め,いわゆる熱漏えい補正値 Δtexで表される。
すなわち,tf−ti=θ+Δtex
であり,
したがって, θ= (tf−ti)−Δtex
となる。
Δtexを求めるには様々な方法があるが,最も一般に用いられている方法は,ルノー―ファウンドラー
(Regnault−Pfaundler)及びディキンソン(Dickinson)外挿法である。
備考11. ルノー―ファウンドラーの方法は異なるタイプの試料について,時間−温度関係の変動を機
械的に計算することができるので,二つの方法のなかでも信頼性が高い。
等温壁型熱量計及び静的外筒型熱量計のΔtex及び温度上昇補正値θを求める詳細な数値計算法は,附属
書Bに示す。Δtexの補正式の用地得は,次のとおりである。
* ルノー―ファウンドラー法(B.5.2参照)

――――― [JIS M 8814 pdf 14] ―――――

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Δtex=(τf−τi)×gf+[(gi−gf)/(tmf−tmi) ]×[n×tmf−(ti−tf)/2−Σtk] (k=nn−1)
ここに, gi : 燃焼前(初期読取期間)における温度上昇速度(K/min)
gf : 燃焼後(最終読取期間)における温度上昇速度(K/min)
tmi : 燃焼前における平均温度(℃)
tmf : 燃焼後における平均温度(℃)
ti : (= t0 ) 主要期間(燃焼中)の開始時 (点火時点)における温
度(℃)
tf : (= tn ) 主要期間の終了時における温度(℃)
tk : 主要期間中1分間隔で読み取った温度(℃)( ti は燃焼期間
に入って1分後のものであり,tn= tfである。)
τi : 主要期間の開始時(点火時)の時間(分)
τf : 主要期間の終了時の時間(分)
n : 1分単位で表した燃焼期の分割区間数 (長さ)(n=τf−τi)
* ディキンソン 外挿法(B.5.3参照)
Δtex=gi (τx−τi )+gf (τf−τx)
ここに, τx : 温度変化 (tx ti) が観測温度上昇 (tf ti) の0.6 倍になった時
間(分)
gi 及び gf は,通常,それぞれτi 及びτfにおける温度上昇速度(K/min)を表す。
備考12. 一貫して統一されていればこの単位ではなく,温度はこれとは異なる別の任意の単位で表し
てもよい(9.6.1参照)。
8.6.3 断熱熱量計 断熱系では熱交換は無視するものと定義する。ただし,通常は,かくはん動力は断熱
制御系の温度で相殺されて,補償が保証されている(附属書A参照)。したがって,温度上昇補正値θは,
次のようになる。
θ= tf−ti
そうでなければ,かくはん動力は試験中一定の温度ドリフトとして現れるので補正は容易であるが,温
度測定にかかる全期間は長引く可能性がある。
温度上昇補正値θの数値計算方法は,附属書Aに示す。
8.6.4 温度計補正 水銀温度計を使用する場合は,温度計の証明書に規定されているように,測定した燃
焼開始温度ti及び燃焼終了温度tfを補正しなければならない。

8.7 試験の基準温度

 燃焼期終了時の温度(tf)を,試験の基準温度とする。

8.8 その他

 ボンブ式断熱熱量計又はボンブ式断熱自動熱量計については,従来のJISに詳しい操作手
順が記述されている。詳細は附属書1を参照。

9. 校正

――――― [JIS M 8814 pdf 15] ―――――

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JIS M 8814:2003の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 1928:1995(MOD)

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