JIS C 1400-1:2017 風力発電システム―第1部:設計要件 | ページ 4

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C 1400-1 : 2017 (IEC 61400-1 : 2005,Amd.1 : 2010)
V(z,t) 極値ガスト及びシアー条件の時間変化として記述する風速度の主方向成分 (m/s)
x, y, z 風の流れ場の記述に用いる座標系。風の方向(主方向),風と直角方向(横方向)及
び鉛直方向に対応する。 (m)
zhub 風車のハブ高さ (m)
zr 基準地上高さ (m)
z0 対数風速プロファイルの粗度長 (m)
α ウィンドシアーの指数 (−)
β 極値風向変化モデルのパラメータ (−)
δ 変動係数 (−)
Γ ガンマ関数 (−)
γf 荷重の部分安全率 (−)
γm 材料の部分安全率 (−)
γn 損傷結果に対する部分安全率 (−)
θ(t) 風向の時間変化 (°)
θcg ガスト時における平均風速方向からの最大角度偏差 (°)
θeN 再現期間N年の極値風向変化 (°)
Λ1 主方向無次元パワースペクトル密度fS1(f)/σ12が0.05に等しくなる場合の波長として定
義する乱流尺度パラメータ (m)
σ 予想乱流標準偏差 (m/s)
σ
eff 有効予想乱流標準偏差 (m/s)
σwake 風車後流乱流標準偏差 (m/s)

最大風車後流中心乱流標準偏差 (m/s)
σ
σ 予想乱流標準偏差σの標準偏差 (m/s)
σ1 ハブ高さにおける風速度の主方向成分の標準偏差 (m/s)
σ2 ハブ高さにおける風速度の横方向成分の標準偏差 (m/s)
σ3 ハブ高さにおける風速度の上方向成分の標準偏差 (m/s)
E〈 〉 括弧内のパラメータの期待値 (−)
Var〈 〉 括弧内のパラメータの分散 (−)

4.2 略語

  この規格で用いる略語の意味は,次による。
A (部分安全率の)異常設計条件(abnormal)
a.c. 交流
d.c. 直流
DLC 設計荷重ケース(design load cases)
ECD 風向変化を伴う極値コヒーレントガスト(extreme coherent gust with direction change)
EDC 極値風向変化(extreme direction change)
EOG 運転中の極値ガスト(extreme operating gust)
ETM 極値乱流モデル(extreme turbulence model)
EWM 極値風モデル(extreme wind speed model)
EWS 極値ウィンドシアー(extreme wind shear)

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C 1400-1 : 2017 (IEC 61400-1 : 2005,Amd.1 : 2010)
F 疲労(fatigue)荷重の解析
N (部分安全率の)通常又は極値の設計条件(normal and extreme)
NWP 通常風速プロファイルモデル(normal wind profile model)
NTM 通常乱流モデル(normal turbulence model)
S 風車クラスS(special wind turbine category)
T (部分安全率の)輸送及び建設の設計条件(transport and erection)
U 終極(ultimate)荷重の解析

5 主要構成要素

5.1 一般事項

  風車の構造,機械システム,電気システム及び制御システムの安全性を確保するための工学的及び技術
的要求事項を,5.25.5に規定する。この要求事項からなる仕様書は,風車の設計,製造,据付け,運転・
保守マニュアル,及びそれらに関連した品質マネジメントプロセスに適用する。さらに,風車の据付け,
運転及び保守に用いる様々な方法において確立されている安全手順を考慮する。

5.2 設計方法

  この規格は,設計上の荷重を予測するために構造動力学モデルの使用を要求する。そのようなモデルは,
箇条6に規定する乱流条件などの風条件及び箇条7に規定する設計条件を用いて,風速範囲にわたって荷
重を決定するために用いる。関係する外部条件と設計条件との組合せの全てを解析する。この規格におい
ては,この組合せの最小セットを設計荷重ケースとして定義する。
予測設計値の信頼性を高め,かつ,構造動力学モデル及び設計条件を検証するために,風車のフルスケ
ール試験データを用いることができる。
設計の妥当性の検証は,計算及び/又は試験で行う。この検証で試験結果を用いる場合,この規格中で
定義する特性値及び設計条件を反映するために,試験中の外部条件を示す。試験条件を選択する場合には,
試験荷重を含む,関連する安全率を考慮する。

5.3 安全カテゴリ

  風車は,次の二つの安全カテゴリのいずれかに従って設計する。
− 通常安全カテゴリ 故障が人身の傷害又は経済的及び社会的影響を起こすリスクのある場合に適用す
る。
− 特別安全カテゴリ 安全要求事項が我が国の法規制によって決まる場合及び/又は追加の安全要求事
項が受渡当事者間で合意される場合に適用する。
通常安全カテゴリの風車に対する部分安全率は,7.6の規定による。
特別安全カテゴリの風車に対する部分安全率は,受渡当事者間の合意による。特別安全カテゴリに基づ
いて設計された風車は,6.2に定義する風車クラスSの風車である。

5.4 品質保証

  品質保証は,風車及びその全ての部品の設計,調達,製造,据付け,運転及び保守において不可欠であ
る。
品質システムは,JIS Q 9001の要求事項に適合することが望ましい。

5.5 風車銘板

  風車の銘板には,次の事項を明瞭で,かつ,消えないように表示する。
− 風車製造業者名及び国名

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C 1400-1 : 2017 (IEC 61400-1 : 2005,Amd.1 : 2010)
− 形名及び製造番号
− 製造年
− 定格出力
− 基準風速,Vref
− ハブ高さの運転風速範囲,VinVout
− 運転周囲温度範囲
− 風車クラス(表1参照)
− 風車接続端での定格電圧
− 風車接続端での周波数又は公称変動範囲が2 %を超える場合には,その周波数の範囲。

6 外部条件

6.1 一般事項

  風車の設計においては,この箇条に記載する外部条件を考慮する。
風車は,荷重,耐久性及び運転に影響する,環境条件及び電気的条件の影響を受ける。適切なレベルの
安全性及び信頼性を確保するために,環境,電気及び土壌のパラメータを考慮して設計し,これらのパラ
メータは,設計文書に明確に記載する。
環境条件は,風条件,その他の環境条件に分けられる。電気的条件は,電力系統の条件に関係する。土
壌特性は,風車の基礎の設計に関係する。
各外部条件は,通常及び極値の条件に分けられる。通常外部条件とは,一般的に周期的に起きる構造荷
重条件に関係するものである。一方,極値外部条件とは,頻度としてはまれに起きる外部設計条件を示す。
設計荷重ケースは,風車の運転モードなどの設計条件とこれらの外部条件との潜在的に危険な組合せであ
る。
風条件は,構造的な健全性に影響する主な外部条件である。その他の環境条件は,制御システム機能,
耐久性,腐食などの設計仕様に影響する。
風車クラス別の設計に必要な通常条件及び極値条件を,6.26.5に示す。

6.2 風車クラス

  設計において考慮する外部条件は,風車を据付けしようとするサイト又はサイトの種類によって異なる。
風車のクラスは,風速及び乱流パラメータによって定義する。この分類の目的は,大多数のサイトをカバ
ーすることである。風速及び乱流パラメータの値は,多くの異なるサイトを代表するために定めており,
個々のサイトの固有条件を正確に表現するためのものではない(11.3参照)。風車のクラス分けは,風速及
び乱流パラメータによって,明確に定義された風車全体の強度範囲を提供する。表1は,風車クラスを定
義する基本パラメータを示している。
特殊な風条件などの外部条件又は特別安全カテゴリ(5.3参照)が設計者又は顧客によって要求される場
合には,追加のクラスとして,風車クラスSを設定する。風車クラスSに対する設計値は,設計者が定め,
設計文書に記載して指定する。このような特殊設計の場合には,風車を用いる上で想定される苛酷さと同
程度以上の環境条件を,設計条件として選択する値に反映させる。
注記 洋上条件,又はハリケーン,サイクロン,台風のような熱帯性低気圧が発生する場合で,風車
クラスI,II及びIIIとして定義された風条件から逸脱する条件に対しては,風車クラスS又は
附属書JAの風車クラスTの設計が必要な場合がある。さらに,高乱流カテゴリAとして定義
する風条件から逸脱する条件に対しては,附属書JAの極高乱流カテゴリA+が必要な場合があ

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る。
表1−風車クラスの基本パラメータa)
パラメータ 風車クラス
I II III S
Vref(m/s) 50 42.5 37.5 設計者が指
乱流カテゴリAにおけるIref(−) 0.16 定する数値
乱流カテゴリBにおけるIref(−) 0.14
乱流カテゴリCにおけるIref(−) 0.12
この表の値は,ハブ高さにおいて適用する。
Vref : 10分平均基準風速
A : 高乱流カテゴリの場合に選定
B : 中乱流カテゴリの場合に選定
C : 低乱流カテゴリの場合に選定
Iref : 風速が15 m/sのときの乱流強度b) の期待値
注記 風車クラスは,乱流カテゴリと組み合わせて用いられる(例 乱流カテゴリAを想
定したクラスIの場合,クラスIA)。
注a) 年平均風速Vaveは,この規格の風車クラスの基本パラメータとして用いない。これ
らのクラスの風車設計に対する年平均風速は,式(9)で表す。
b) refは,この規格では代表値ではなく,平均値として定義されていることに注意する。
風車クラスSを除く,クラスIAからIIICまでを,標準風車クラスと呼ぶ。
風車設計で用いる外部条件を全て特定するには,これらの基本パラメータのほかに,幾つかの重要な追
加パラメータが必要である。標準風車クラスに対する追加パラメータは,6.36.5に示す。
風車クラスIIIIの設計寿命は,20年以上とする。
風車クラスSの風車については,製造業者は設計文書に,用いたモデル及び設計パラメータの値を記載
する。この箇条6に規定するモデルを採用する場合には,パラメータの値を記載するだけでよい。風車ク
ラスSの設計文書には,附属書Aに規定する情報を記載する。
6.3内の細分箇条の見出しに括弧書きで追加した略語は,7.4で定義する設計荷重ケースの風条件を記載
するときに用いる。

6.3 風条件

  風車は,選択した風車クラスで定義された風条件に対して,安全に耐えるように設計する。
風条件の設計値は,設計文書に明確に記載して指定する。
荷重及び安全を考慮する場合,風条件は,風車の通常の運転中に頻繁に発生する通常風条件と,1年又
は50年の再現期間で定義される極値風条件とに分類される。
風条件は,多くの場合,一定の平均流と,変動する決定論的なガストプロファイル又は乱流のいずれか
との組合せで表現される。全てにおいて,水平面に対して最大8°までの平均流の傾斜角による影響を考
慮する。なお,この傾斜角は,高さ方向に変化しないものと仮定する。
“乱流”とは,10分間の平均値からの,風速度のランダムな変化を意味する。乱流モデルを用いる場合,
モデルは変動する風速,ウィンドシアー及び風向の影響を含み,かつ,ウィンドシアーを変化させること
によって回転サンプリング(風車の回転時の検出ポイント)を考慮できるものとする。
なお,乱流の風速度の3方向成分は,次のように定義する。
− 主方向−平均風速度の方向
− 横方向−水平かつ主方向に直角

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C 1400-1 : 2017 (IEC 61400-1 : 2005,Amd.1 : 2010)
− 上方向−主方向及び横方向に対して直角方向,すなわち,鉛直方向から平均流の傾斜角分だけ傾いた
方向。
標準風車クラスの場合,乱流モデルにおけるランダムな風の速度場は,次の条件を満足させる。
a) 6.3.1及び6.3.2で与える値をもつ乱流標準偏差σ1は,高さによって不変であると仮定する。平均風向
に直角な成分は,次に示す標準偏差1) とする。
− 横方向成分 : σ2≧0.7σ1
− 上方向成分 : σ3≧0.5σ1
注1) 実際の値は,乱流モデルの選択及びb)の要求事項に依存する。
b) ハブ高さzにおける主方向乱流尺度パラメータΛ1は,式(5)による。
7.0 z z≦ 60 m
Λ1= (5)
42 m z≧ 60 m
パワースペクトル密度の三つの直交成分S1(f),S2(f)及びS3(f)は,慣性小領域中の周波数の増加に伴
って,式(6)及び式(7)に漸近する。
2
5
2 Λ1 3
3
.005 σ1
S1 ( f ) f (6)
Vhub
4
S2 ( f )
S3 ( f ) (7)
S1 ( f )
3
c) 既知のコヒーレンスモデルを用いる。コヒーレンスモデルは,自己スペクトルによって分割された,
主方向に直角な面において空間的に離れた2点での主方向速度成分のコスペクトルの大きさによって
定義する。
これらの要求事項を満たす推奨乱流モデルとして,附属書Bに記載するMannの一様シアー乱流モデル
がある。これらの要求事項を満たす,よく用いられる他のモデルも,附属書Bに記載する。これら以外の
乱流モデルの使用を選択する場合には,荷重に大きく影響することがあるため,慎重に行うことが望まし
い。
6.3.1 通常風条件
6.3.1.1 風速分布
風速分布は,通常設計条件におけるそれぞれの荷重条件の発生頻度を決定するため,風車設計において
重要である。10分間の風速の平均値は,式(8)で表すハブ高さにおけるレイリー分布に従うと仮定する。
2
Vhub
1− exp
PR (Vhub ) π (8)
2Vave
ここに,標準風車クラスでは,Vaveは,式(9)によって選定する。
Vave=0.2 Vref (9)
6.3.1.2 通常風速プロファイルモデル(NWP)
風速プロファイルV(z)は,平均風速を地上高さzの関数で表したものである。標準風車クラスの場合,
通常風速プロファイルは,式(10)の指数法則による。
α
z
V(z) Vhub (10)
zhub

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JIS C 1400-1:2017の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61400-1:2005(IDT)
  • IEC 61400-1:2005/AMENDMENT 1:2010(IDT)

JIS C 1400-1:2017の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 1400-1:2017の関連規格と引用規格一覧