JIS K 0116:2014 発光分光分析通則 | ページ 5

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4.8.4 管理のための測定
データの質の管理のために,必要に応じて,バックグラウンド等価濃度,短時間安定性,長時間安定性,
装置検出下限及び方法定量下限,検量線の直線性などを測定し,記録する。
4.8.4.1 バックグラウンド等価濃度(BEC)
バックグラウンド等価濃度は,次によって求める。
a) 準備 次の溶液を調製する。
1) 測定対象元素の検量線用ブランク溶液
2) 測定対象元素のBEC予測値からその10倍の濃度を含んだ溶液
b) 測定 次の手順で測定する。
1) ) 2)の溶液を噴霧し,発光強度が安定した後に測定波長を最高強度位置に合わせ,測定条件の最適
化を図る。
2) ) 1)の溶液を噴霧し,安定した後に10回連続測定を行い,測定強度の平均値(Xb)を算出する。
3) ) 2)の溶液を噴霧し,安定した後に10回連続測定を行い,測定強度の平均値(X1)を算出する。
c) 計算 次の式によって算出する。
B Xb / k
ここに, B : BEC
k : 検量線の傾き
(X1−Xb)/C1
C1 : a) 2)の溶液濃度(mg/L)
4.8.4.2 短時間安定性
短時間に繰り返し測定を行って得られる結果の一致の程度を推定するために,次の方法によって相対標
準偏差を求めて,判定の指標とする。
a) 準備 次の溶液を調製する。
1) 測定対象元素の検量線用ブランク溶液
2) 測定対象元素のBEC予測値の100倍濃度を含んだ溶液
b) 測定 次の手順で測定する。
1) ) 2)の溶液を噴霧し,発光強度が安定した後に測定波長を最高強度位置に合わせ,測定条件の最適
化を図る。
2) あらかじめ定めた積分時間8)を設定し,感度調整を行う。
3) ) 1)の溶液を噴霧し,安定した後に10回連続測定を行い,強度又は強度比を求めて,その平均値(Xb)
を算出する。
4) 同様にa) 2)の溶液を噴霧し,安定した後に10回連続測定を行い,強度又は強度比(Xi)を求める。
注8) 装置及び測定条件によって異なる。
c) 計算 次の式によって算出する。
n1
Sr (S/X ) 100
ここに, Sr : 相対標準偏差
Xn1 : (Xi−Xb)の平均値
S : (Xi−Xb)の標準偏差
注記 検出下限の100倍から1 000倍の濃度域においては,相対標準偏差は1 %以下9)となることが
望ましい。
注9) 分析の目的に応じて規定する。

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4.8.4.3 長時間安定性
長時間安定性は,機器の設置環境及び測定条件によって影響される。この試験で求める長時間安定性の
相対標準偏差から機器の校正又は補正の頻度を決定する。試験方法の一例を,次に示す。
a) 準備 濃度の異なる複数の溶液を準備する。
b) 測定 校正又は補正を行わずに,3回の繰り返し測定を,30分間隔で3時間にわたり計7回行う。
c) 計算 各元素の濃度ごとに求めた繰り返し測定の平均値7回分から,それぞれ相対標準偏差を算出す
る。
4.8.4.4 装置検出下限(ILOD)
装置検出下限は,次によって求める。
a) 準備 次の溶液を調製する。
1) 測定対象元素の検量線用ブランク溶液
2) 測定対象元素のBEC予測値の10倍の濃度を含んだ溶液
b) 測定 次の手順で測定する。
1) ) 2)の溶液を噴霧し,発光強度が安定した後に測定波長を最高強度位置に合わせ,測定条件の最適
化を図る。
2) 3秒積分8)によって4桁以上8)の積分強度が得られるように感度調整を行う。
3) ) 1)の溶液を噴霧し,安定した後に10回連続測定を行い,測定強度の平均値(Xb)と標準偏差(Sb)
とを算出する。
4) ) 2)の溶液を噴霧し,安定した後に10回連続測定を行い,測定強度の平均値(X1)を算出する。
c) 計算 次の式によって算出する。
I 3 Sb / k
ここに, I : ILOD
k : 検量線の傾き
(X1−Xb)/C1
C1 : a) 2)の溶液濃度(mg/L)
4.8.4.5 方法定量下限(MLOQ)
方法定量下限は,次によって求める。
a) 準備 次の溶液を調製する。
1) 空試験溶液
2) 空試験溶液の発光強度の2倍以上の発光強度を与える濃度の測定対象元素を含んだ溶液
b) 測定 次の手順で測定する。
1) ) 2)の溶液を噴霧し,発光強度が安定した後に測定波長を最高強度位置に合わせ,測定条件の最適
化を図る。
2) 実際の測定条件によって装置の感度調整を行う。
3) ) 1)の溶液を噴霧し,安定した後に10回連続測定を行い,測定強度の平均値(Xlb)と標準偏差(Sd)
とを算出する。
4) ) 2)の溶液を噴霧し,安定した後に10回連続測定を行い,測定強度の平均値(Xl1)を算出する。
c) 計算 次の式によって算出する。
M 2 10 Sd / k

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ここに, M : MLOQ
k : 検量線の傾き
(Xl1−Xlb)/C2
C2 : a) 2)の溶液濃度(mg/L)
4.8.4.6 検量線の直線領域の確認
検量線の直線性は,測定対象元素の濃度が異なる5種類以上の検量線作成用溶液(1種類は,その検量
線の上限に相当すると見積もられる濃度の溶液。)の発光強度を測定し,作成した検量線の直線性を確認す
る。直線関係が認められた場合,最小二乗法によって回帰分析をし,その相関係数が0.995以上であるこ
とが望ましい。直線性が得られない場合は,測定波長の変更又は直線性が得られる範囲となるように,試
料溶液及び検量線作成用溶液の希釈などを行い,直線範囲で測定することが望ましい。ただし,装置及び
測定条件によっては,2次式等の検量線を用いることもある。
4.8.4.7 データの質の管理のための分析
データの質の管理には,検量線作成用溶液とは別途調製した標準液(ロット等計量計測トレーサビリテ
ィソースが異なる検量線作成用溶液から調製し,ほぼ同じマトリックス濃度に調製するのが望ましい。)を
必要に応じて分析し,検量線作成用溶液の有効性及び装置性能を確認する。
この分析は3回以上行い,その平均濃度値が,認証値又は既知濃度値と不確かさとの範囲内で一致する
ことを目安とする。
注記 個別規格に規定されている場合は,その方法による。
4.8.5 操作ブランクの測定
試料溶液と類似したマトリックスをもつ空試験溶液を,一連の測定試料ごとに測定する。操作ブランク
の測定によって,実験室環境からの汚染,試料調製の際に用いる試薬及び器具からの汚染,並びに装置の
メモリーによる汚染の程度を評価する。空試験溶液の測定値が,方法定量下限以下であることを目安とす
る。
4.8.6 定期的な装置性能及び精度の確認
装置の性能を確認するために,濃度既知の標準物質又は検量線作成用溶液を用意し,規定の発光強度,
バックグラウンド等価濃度,装置検出下限値,繰り返し精度などが得られることを分析での使用前又は定
期的に確認する。また,装置が正確に校正されていることを確認するために,日ごとの検量線作成直後及
び分析試料10個ごと,並びに全試料分析終了後に,検出下限の1 000倍程度の濃度の検量線作成用溶液及
び検量線用ブランク溶液を,未知試料として測定する。検量線用ブランク溶液の分析値は,方法定量下限
以下であることを目安とする。分析試料10個ごとに測定する検量線作成用溶液の分析値が,規定した範囲
10)に入らない場合には,その前に測定した10個の分析試料は,検量線を作成し直して,再び分析する。も
しドリフトが原因で規定した範囲10)に入らない場合には,分析試料5個ごとに検量線作成用溶液及び検量
線用ブランク溶液を測定することが望ましい。装置性能及び精度の確認記録は,操作条件とともに文書に
して保管する。
注記 個別規格に規定されている場合は,その方法による。
注10) 分析の目的,試料,測定対象元素などに応じ,個別に規定する(例えば,±5 %以内)。

4.9 装置の設置条件

  装置の設置に当たっては,一般に次の事項に注意する。ただし,機器に応じた設置条件が優先する。
a) ほこりが少なく,腐食性ガスがない。
b) 装置に直射日光が当たらない。

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c) 装置仕様に指定された室温(例えば,1828 ℃)及び湿度(例えば,70 %以下)の範囲内であり,
結露しない。また,急激な変化を生じさせない。
d) 強力な磁場,電場などを発生する装置が近くにない。
e) 装置を設置する床は,平たんで装置の質量に耐えるだけの強度があり,振動が少ない。
f) 装置を卓上に設置する場合,卓が装置の質量に耐えるだけの強度がある。地震対策を考慮する。
g) 供給電源は,装置仕様に指定された電圧,電気容量及び周波数であり,電圧変動は10 %以内で,周波
数の変動がない。
h) 電気的災害を防ぐため,絶縁及び接地(30 Ω以下のD種接地が必要。)を十分に行う。
i) 電気配線は,関連する規格に適合させる。
j) 発光部の上部に専用の換気ダクトを設け,十分な換気ができる。
k) 発光部からの高周波が他の機器に影響を与えない。
l) 所轄の総合通信局へ申請し,事前に許可を得る。

4.10 安全

  安全は,JIS K 0050の箇条15 a)(安全衛生)の規定に従うほか,次の事項に注意しなければならない。
a) 高圧ガス取扱い上の注意 高圧ガス取扱い上の注意は,次による。
1) 高圧ガスの取扱いは,高圧ガス保安法及びそれに関連する諸法令の基準に従う。
2) 液化ガス容器を使う場合,圧力の異常変化,外槽への水滴付着及び液面異常変化に注意する。
3) 高圧ガス容器は,できるだけ戸外に設置し,配管によってガスを装置に導く。
4) 高圧ガス容器は,風通しのよい場所に設置し,直射日光,風雨氷雪などにさらされないようにする
とともに40 ℃以下に保つ。
5) 高圧ガス容器は,2か所以上で固定するなど地震対策を考慮する。
6) 配管のガス漏れの点検は,石けん液塗布などの方法によって行う。
7) 高圧ガス供給設備及び装置の円滑な運転及び安全な作業進行のため,点検項目,頻度などを定めて,
日常点検及び定期点検を行う。
b) 装置取扱い上の注意 装置取扱い上の注意は,次による。
1) 装置の安全機構は改造しない。
2) 装置の安全機構は,常に正常に作動する状態にする。
3) トーチ,ネブライザーなどの接続部にガス漏れがないことを確かめるとともに,プラズマ点灯前に
ガス圧力及び流量の設定が適切であることを確認する。
4) プラズマ点灯時は,換気ダクトを作動し,発生するガス,雰囲気ガスなど使用したガスの排気を十
分に行う。
5) プラズマ点灯時は,高周波エネルギーの遮蔽には注意する。
6) プラズマ及び波長校正用低圧水銀灯からの光を直視しない。これらを観察する必要がある場合には,
紫外線防止のための保護具を用いる。
7) 試料溶液の噴霧状態を目視で確認する場合,試料の代わりに水を用いる。
8) 発光部は.装置の運転停止後もしばらく高温であるため,その調整,点検などは温度が低下したこ
とを確認した後に行う。
9) 装置の点検及び修理は,主開閉器を切ってから行う。詳細については,装置の取扱説明書を参照す
る。
c) 試料取扱い上の注意 試料取扱い上の注意は,次による。

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1) 発火性金属の分析用試料調製及び分析では,その切削時の発火に注意する。
2) 試料溶液調製の場合,有毒性,引火性などに十分注意し,必要に応じ保護具を着用する。
3) 試料の残り,切削くず及び廃液は,環境汚染とならない方法で処理する。
4) 放射性同位元素を試料として扱う場合,放射線障害の防止に関する法律の定めに従う。

4.11 分析結果に記載すべき事項

  分析結果には,次のうち必要な項目について記載する。また,データの質の管理のための分析結果は,
測定対象元素の分析結果の信頼性を示しており,試料の分析結果とともに報告することが望ましい。
a) 一般事項及び装置仕様 一般事項及び装置仕様は,次による。
1) 試料の分析年月日
2) 装置の製造業社名及び形式名
b) 試料及び試料処理 試料及び試料処理は,次による。
1) 試料名
2) 試料採取場所及び採取方法
3) 試料調製方法(試料分解法,分離濃縮法など)
c) 測定条件 測定条件は,次による。
1) 定量方法[発光強度法,強度比法(内標準法),標準添加法]
2) 装置操作条件,測定分析線など
d) データの質の管理 データの質の管理は,次による。
1) 標準物質などの分析年月日
2) 測定項目とその結果

5 スパーク放電発光分光分析

5.1 装置の構成

  スパーク放電発光分光分析装置は,励起源部,発光部,分光測光部,データ処理部及び制御部から構成
する。装置の基本構成の一例を,図13に示す。
励起源部 発光部 分光測光部 データ処理部及び制御部
図13−スパーク放電発光分光分析装置の構成(例)
5.1.1 励起源部
励起源部は,スパーク光源を維持するための電気エネルギーを供給・制御する電源回路及び制御回路か
らなる。
5.1.2 発光部
発光部は,分析試料を励起し発光させるための部分で,次の試料電極,対電極及び試料支持台からなる。
a) 試料電極 5.3に示す方法で電極として調製された棒状,平盤状などの分析試料本体。
b) 対電極 試料電極の対極として用いる棒状電極。
c) 試料支持台 励起源部及び電気的に接続された試料電極並びに対電極を支持し,電極間隙及び発光部
高さを調節できる機能をもつもの。

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JIS K 0116:2014の国際規格 ICS 分類一覧

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