JIS T 9001:2021 医療用マスク及び一般用マスクの性能要件及び試験方法 | ページ 2

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表3−一般用マスクの洗濯処理後の品質基準
項目 単位 品質基準 試験方法
(箇条番号)
洗濯 微小粒子捕集効率(PFE) % ≧95 5.1.1
製品にて機能を標
処理 バクテリア飛まつ捕集効率(BFE) % ≧95 5.1.2
ぼうする項目につ
後 ウイルス飛まつ捕集効率(VFE) % ≧95 5.1.3
いて,実施する。
花粉粒子捕集効率 % ≧95 5.1.4
圧力損失 Pa/cm2 <60 5.1.5

5 試験方法

5.1 機能性試験

5.1.1 微小粒子捕集効率(PFE)試験
5.1.1.1 原理
ろ過して乾燥させた空気を噴霧器に通し,ラテックス粒子を含有している懸濁液からエアロゾルを生成
させる。このエアロゾルを清浄な空気(クリーンエア)と混合して希釈した後,乾燥させ,試験に供する。
このエアロゾルを面風速9.6 cm/sの一定流量下のチャンバ中へ導入し,試験片を介した上流側及び下流側
のエアロゾル粒子数を測定し,微小粒子捕集効率(PFE)を算出する。
5.1.1.2 試薬及びその他の材料
a) ポリスチレンラテックス粒子試薬 公称粒径0.1 μmの真球状ポリスチレン系標準粒子を,純水に分散
させたもの。また,受渡当事者間の協議によって,公称粒径0.3 μmの真球状ポリスチレン系標準粒子
を純水に分散させた試薬を用いてもよい。
なお,使用したポリスチレンラテックス粒子の粒径を,試験結果に付記する。
b) イオン交換水 JIS K 0557に規定するA1の水
c) 超純水 JIS K 0557に規定するA4の水
5.1.1.3 試験装置及び試験器具
試験装置の構成を,図1に示す。

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図1−微小粒子捕集効率(PFE)試験装置の構成図例
a) 圧縮空気供給部 気化油を含まず乾燥空気を圧縮供給できる,オイルフリー式でエアードライヤを内
蔵し,吐出圧力が0.2 MPa以上であり,吐出空気量が108 L/min以内である能力をもつコンプレッサ。
b) EPAフィルタ JIS Z 8122に規定するHEPAフィルタ。クリーンエアを得るために,圧縮空気供給
部の後に設置する。また,試験経路内を経由した空気から試験粒子をろ過するために,環境への排出
前に設置する。
c) エアロゾル生成器 機械的破砕分散方式のアトマイザをもち,ヒーターによる加熱及び乾燥空気との
混合希釈にて,規定濃度のエアロゾルを生成する機器。1 m3当たり107108の粒子数の生成能力をも
つ。
d) 加湿器 試験経路内へ導入する空気を,あらかじめ加湿する機器。
e) 試験ダクト 内径79 mm±1 mm,長さ約1 030 mmで,材質がステンレス製の円筒形ダクト。試験ダ
クトは鉛直に支持され,上端から粒子を導入し,下端から定流量吸引ポンプで吸引する構造とする。
また,上端から約790 mmの位置で上下に分割されており,そこに試験片を取り付ける機構をもつ。
また,試験ダクトは,クリーンエアを導入する場合と,生成したエアロゾルを含む空気を導入する
場合との経路を切り替えるための機構をもつ構造とする。
f) 試験片支持部 内径79 mm±1 mmで,試験片が平面状態でたるまずに支持できる構造の,装置部位。
試験ダクト中間のかん(嵌)合部に位置し,試験ダクトを上下から挟み込むことで試験片を固定する。
g) 差圧計 試験経路内で,試験片を介した上流側と下流側との差圧を測定するもの。
h) 定流量吸引ポンプ 流量計を備え,一定流量28.3 L/minで試験空気を吸引することができるポンプ。
i) 温度·相対湿度測定装置 試験経路内の温度及び相対湿度を測定する装置。
j) パーティクルカウンタ 生成したエアロゾルを計数するための光散乱方式気中粒子計数機であって,
幾何粒径が0.3 μm及び0.1 μmに近い粒径区分をもつもの,又は0.3 μm及び0.1 μmが境界となる粒径
区分をもつもの。
試験ダクトの,試験片を介した上流側及び下流側に,各々パーティクルカウンタへの採取管を取り

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付けて接続する。なお,採取管の内径は,使用するパーティクルカウンタの吸引流量から面風速9.6
cm/sになるよう計算し定める。
注記 パーティクルカウンタの吸引流量が0.3 L/minの場合,採取管の内径は8.1 mmとなる。
5.1.1.4 試料及び試験片の調製並びに試験環境
試料を,温度20 ℃±3 ℃,相対湿度(50±5)%の下で4時間以上調湿した後,直径11 cmに切り出した
試験片を5枚準備する。
試験片は,製品から採取しなければならない。プリーツ状のマスクは,左右の溶着部を切り取り,フィ
ルタ部のプリーツを開いて平板状の試験片にして試験に供する。立体状のマスク,サイズの小さなマスク
など,製品から試験に必要な大きさの平板状の試験片を採取できない場合は,製品の全ての層が積層され
ている試験片を作製して試験に供してもよい。
試験装置は温度20 ℃±3 ℃の室内に設置し,試験ダクト内の温湿度は,温度20 ℃±3 ℃,相対湿度(50
±5)%となるように,加湿器によって調整する。
5.1.1.5 試験手順
5.1.1.5.1 ポリスチレンラテックス懸濁液の調製
a) ポリスチレンラテックス粒子試薬を試薬瓶ごと,5分間10分間イオン交換水の入った超音波洗浄機
の水浴に軽く沈め,粒子を分散させる。
b) 超純水を入れたメスシリンダ中に,試薬瓶からポリスチレンラテックス粒子試薬を数滴滴下し,超音
波洗浄機にかけて分散させ,ポリスチレンラテックス懸濁液を調製する。
なお,超純水へのポリスチレンラテックス粒子試薬の希釈率は,1 000 : 1以上が望ましい(例えば,
300 mLの超純水に1滴滴下するなど)。
5.1.1.5.2 試験装置の準備
a) ポリスチレンラテックス懸濁液をアトマイザに所定の量加え,アトマイザを装置に取り付ける。
希釈乾燥空気の流量と,アトマイザに送気する噴霧流量との,二つのニードルバルブを調整し,約
1 000 : 110 000 : 1の希釈率に設定する。
b) 試験装置を動作させ,パーティクルカウンタで試験ダクト中の粒子数を計測し,使用するポリスチレ
ンラテックス粒径に対応する粒径区分の粒子数(以下,シングルカウント数という。)が,1分間当た
り1個以下であることを確認する(清浄であることを確認する。)。
c) ポリスチレンラテックス球からなるエアロゾルの生成を開始し,試験ダクト内へ導入する。
d) パーティクルカウンタで試験ダクト内のエアロゾルを計数し,シングルカウント数が1 m3当たり107
個108個(例えば,パーティクルカウンタの吸引流量が300 mL/分であれば,1分間当たり3 000個
30 000個)となるように,希釈乾燥空気の流量及び噴霧流量を調整する。
なお,流量の希釈率を調整しても,粒子数が規定の範囲内に収まらない場合は,新たに濃度を変え
て調製したポリスチレンラテックス懸濁液を用い,規定の範囲内に収まるまで調整を繰り返す。
5.1.1.5.3 バックグラウンドの測定
a) 試験ダクト内のエアロゾル数の安定を確認後,改めてパーティクルカウンタによる1分間計数を連続
10回実施する。
得られたシングルカウント数について,上流側10回,下流側10回を各々平均し,式(1)によって換

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算係数を算出し,JIS Z 8401の規則Bに従って小数点以下3桁に丸める。
Ub
R (1)
Db
ここで, R : 換算係数
Ub : 上流側バックグラウンドのシングルカウント数平均値
(個)
Db : 下流側バックグラウンドのシングルカウント数平均値
(個)
5.1.1.5.4 試験片の測定
a) 試験ダクトへの空気導入経路をクリーンエア側に切り替えて1分間以上クリーンエアを流し,試験ダ
クト内が清浄になることを確認する。
b) 定流量吸引ポンプを止め,試験ダクトを開ける。
c) 試験片支持部に試験片をマスクの外側が上になるようにセットする。
d) 試験ダクトを閉じ,定流量吸引ポンプを動作させ,28.3 L/minで,少なくとも1分間クリーンエアを
導入する。
e) 試験ダクトへの空気導入経路を生成エアロゾル側へ切り替える。
f) 1分間ごとに連続3回パーティクルカウンタで,上流側及び下流側の各シングルカウント数を測定す
る。
g) 試験ダクトへの空気導入経路をクリーンエア側に切り替えて1分間以上クリーンエアを流し,試験ダ
クト内が清浄になることを確認する。
h) 定流量吸引ポンプを止め,試験ダクトを開ける。
i) 試験片を取り替える。
j) ) i)の工程を1回とし,繰り返し5回測定する。
5.1.1.6 試験結果
式(2)によって微小粒子捕集効率(PFE)を算出し,5枚の試験片それぞれの値及び平均値をJIS Z 8401の
規則Bに従って小数点以下1桁に丸める。
なお,算出結果が100 %となった場合は,報告値は“99.9 %以上”とする。
Ds
PFE = 1 R 100 (2)
Us
ここで, PFE : 微小粒子捕集効率(%)
Ds : 下流側シングルカウント数の5回の平均値(個)
Us : 上流側シングルカウント数の5回の平均値(個)
R : 換算係数
5.1.2 バクテリア飛まつ捕集効率(BFE)試験
5.1.2.1 原理
空気中の細菌を含むエアロゾルが,マスクの不織布フィルタを通してろ過される程度を試験する方法。
試験片を,6段階の細菌用アンダーセン型カスケードインパクタ(以下,カスケードインパクタという。)
とエアロゾルチャンバとの間に装着する。エアロゾルチャンバに導入された細菌懸濁液のエアロゾルを,
定流量吸引ポンプでマスク試料を通して吸引し,カスケードインパクタで回収する。マスクのバクテリア

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飛まつ捕集効率(BFE)は,マスク試料を装着した状態でカスケードインパクタに回収された細菌の総コ
ロニー数と,試験片を装着しない状態でカスケードインパクタに回収された細菌の総コロニー数とによっ
て求め,百分率で表す。
5.1.2.2 試薬及びその他の材料
a) 水 微生物学用培地の作製に使用可能な分析用品質のもので,新規に蒸留され,イオン交換したもの
で,限外ろ過したもの及び/又は逆浸透膜でろ過した,あらゆる毒性物質及び細菌成長阻害物質を含
んでいないもの。
b) 混釈平板培養法用寒天培地(EA) 次の成分をよくかくはんし,pHを7.2±0.2に調整した後,オー
トクレーブによって滅菌したもの。
脱水酵母エキス 2.5 g
カゼイン製トリプトン 5.0 g
グルコース 1.0 g
寒天(JIS K 8263に規定するもの) 12 g15 g 1)
水 1 000 mL
注1) 必要質量は,製品のゲル強度による。
c) トリプトンソーヤ培地(TSB) 次の成分をよくかくはんし,pHを7.2±0.2に調整した後,オートク
レーブによって滅菌したもの。
カゼイン製トリプトン 17 g
大豆製ペプトン 3g
塩化ナトリウム(JIS K 8150に規定するもの) 5g
グルコース 2.5 g
りん酸水素二カリウム(JIS K 9017に規定するもの) 2.5 g
水 1 000 mL
d) ペプトン食塩水 次の成分をよくかくはんし,pHを6.9±0.2に調整した後,オートクレーブによって
滅菌したもの。
カゼイン製ペプトン 1g
塩化ナトリウム 8.5 g
水 1 000 mL
e) 生理食塩水 次の成分をよくかくはんし,その後,オートクレーブによって滅菌したもの。
塩化ナトリウム 8.5 g
水 1 000 mL
f) 黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus) 菌株の保存番号ATCC 6538(菌株の保存機関 :
American Type Culture Collection)による。
g) トリプトンソーヤ寒天培地(TSA) 次の成分をよくかくはんし,pHを7.2±0.2に調整した後,オー
トクレーブによって滅菌したもの。
カゼイン製トリプトン 15 g
大豆製ペプトン 5g
塩化ナトリウム 5g
寒天 15 g

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