JIS K 0116:2014 発光分光分析通則 | ページ 3

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以上の金属を溶解して調製する。又は純度が測定されて仕様値として確定され,共存物が干渉しない
ことを確認した金属若しくは化合物を用いて検量線作成用溶液を調製する。
4.3.3 ガス
ガスは,通常,JIS K 1105に規定する純度99.99 %(体積分率)以上のアルゴンを用いる。アルゴン以外
のガスも使用する場合も,JISで規定するものを用いる。また,JISによるガスがない場合には,分析に支
障がないものを用いる。

4.4 サンプリング及び試料溶液の調製

4.4.1  サンプリング
試料採取は,分析目的,試料の性質及び測定項目に最も適した方法で,試料母集団を代表できる,又は
各試料の特性の差を明らかにできるような試料採取を行う。個別規格がある場合にはそれによる。また,
試料の取扱いは,外的要因,経時変化などに対する変質を防ぎ,なるべく速やかに前処理を行う。
4.4.2 試料溶液の調製
一般的な試料溶液の調製法を次に示すが,個別規格がある場合には,それに従って調製する。
a) 試料別調製方法 試料別調製方法は,次による。
警告 過塩素酸を使用する場合,単独で有機物の分解を行うと爆発するおそれがあるため,必ず硝
酸を共存させた状態で加熱する。
1) 金属試料 金属試料は,一般に塩酸,硝酸又はこれらの混酸で溶液化する。これらの酸だけで分解
が困難な試料では必要に応じて過塩素酸,りん酸,硫酸などを添加し,白煙が出るまで加熱して残
さを完全に分解する。モリブデン,ニオブ,タングステンなどの難溶性金属及びこれらを含む合金
の場合は,ふっ化水素酸を添加すると分解が促進される。分解時には,塩酸,硫酸などの非酸化性
酸の使用による測定対象元素の揮散(水素化ひ素,水素化りんの生成など),酸化性酸による難溶性
酸化物の生成(クロム,アルミニウムの不動態化など)などがあるので,試料の種類及び測定対象
元素に応じて適切な酸を選択する。また,金属試料中には酸に難溶な酸化物(酸化アルミニウム,
二酸化けい素など)及び炭化物(炭化クロム,炭化ニオブなど)が存在することが多いので2),こ
れらの成分,又はこれらと複合酸化物を形成するような成分(カルシウム,マグネシウムなど)を
測定対象とする場合には,酸溶解後の残さを融解又は密閉式の加圧容器3)を用いて酸分解すること
によって溶解し,合わせて測定する必要がある。
注2) ネブライザーを詰まらせるおそれのある懸濁粒子が含まれている場合は,測定前にろ過を
行うのがよい。ただし,ろ過操作からの汚染及び損失に注意する。
3) 密閉式の加圧容器は,金属製の外容器及びふっ素樹脂製などの内容器から構成されるので,
金属製の外容器からの汚染に注意する必要がある。この場合,ふっ素樹脂製の内容器を二
重にすると汚染は低減できる。また,ふっ素樹脂製などの内容器及び外容器を用いたマイ
クロ波分解装置を利用してもよい。石英製の内容器を用いる場合には,ふっ化水素酸の使
用はできない。
2) セラミックス試料 セラミックス試料の分解は,一般に酸分解法又はアルカリ融解法を用いる4)。
酸分解法では,単独の酸又は複数の酸を組み合わせて用いるが,密閉式の加圧容器3)を用いると酸
添加量及び分解時間を低減できる。アルカリ融解は酸で分解できない場合に用い,単独の融剤又は
混合融剤と試料とを混合した後,加熱して融解する。
セラミックス試料は組成及び形態によって,分解に用いる酸又は融剤の種類が異なる。けい素を
主成分とする試料は,密閉式の加圧容器3)を用いてふっ化水素酸,硝酸及び硫酸で分解するが,酸

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分解できない場合は,炭酸ナトリウムなどでアルカリ融解する。アルミニウムを主成分とする試料
は,塩酸,硝酸,硫酸と硝酸との混酸などで分解するが,酸分解できない場合は,炭酸ナトリウム
などでアルカリ融解する。難溶性のセラミックス試料を分解する場合,試料分解前に粉砕する必要
がある。
注4) 粉砕時には,セラミックスの硬度が高いため,粉砕容器の材質の選択,試料による共洗い
など,粉砕容器から混入する汚染元素に注意する。
3) 生体関連試料 生体試料,医薬品,食品,農作物などは,一般に硝酸を用いて酸分解する。試料に
よっては硝酸だけでも分解できるが,必要に応じて少量の過酸化水素,過塩素酸,ふっ化水素酸,
塩酸,硫酸などを添加することによって分解する。開放系又は密閉系で分解するが,密閉式の加圧
容器3)を用いると,環境からの汚染,揮発性元素の損失などが抑制できる。共存元素が高濃度に含
まれる場合には,マトリックスの影響を減らすために試料溶液を希釈して測定するが,測定対象元
素の濃度が低い場合にはマトリックスからの分離及び/又は濃縮操作が必要となる。体液のような
液体試料は,希硝酸,界面活性剤溶液などによる希釈だけで測定できる場合がある。
4) 水試料 表層水,地下水,雨水,排水などの水試料は,懸濁物質を含んでいることが多い。試料中
の溶存元素を測定するためには,試料を孔径0.45 ィルターによってろ過した後に,硝酸を
加えてpH 1以下にして保存する。保存した試料に酸を加えて検量線作成用溶液の酸濃度とできるだ
け一致させたものを分析用試料とする。一方,試料中の溶出可能な元素を測定するためには,試料
をろ過せずに硝酸を加えてpHを約1の酸性にして保存する。酸性化保存した試料に,硝酸と塩酸
とを加えてホットプレート上で約85 ℃で加熱する。溶解していない物質は一晩放置して沈殿させ
るか,又は試料が透明となるまで遠心分離する。沈殿又は遠心分離によって得られた上澄み試料に
水を加え一定の容量にしたものを分析用試料とする。
5) 地質学的試料 岩石,鉱物,土壌,石炭などの地質学的試料に含まれる測定対象元素の全量を定量
する場合には,ふっ化水素酸及び硝酸を用いた酸分解によって溶解する。試料が有機物を含むとき
には,更に硝酸及び過塩素酸又は過酸化水素水の混酸を追加して溶解する。試料の組成によっては,
酸分解の過程で元素の揮散又は沈殿を生じる場合がある。密閉式の加圧容器3)を用いると,酸添加
量及び分解時間を低減でき,また,元素の揮散を抑制できる。試料が難分解性の鉱物を含むときに
はメタほう酸リチウムなどの融剤を用いる融解法を適用する。融解生成物は,希酸に溶解し,試料
溶液とする。融解生成物を酸に溶解する場合,けい酸の沈殿が生じたときには,ろ過によって沈殿
を除く。試料に含まれる測定対象元素を存在状態に応じて(例えば,酸可溶態など)定量する場合
には,適切な溶媒又は溶液を用いて測定対象元素を溶出する。酸分解液及び溶出液に含まれる粒子
をろ過したものを試料溶液とする。
6) 大気粉じん(塵)試料 ローボリュームエアーサンプラー又はハイボリュームエアーサンプラーを
用いて,大気粉じん(塵)をフィルター5)上に捕集する。その際,試料捕集用フィルターと同一の
特性をもつフィルターを試料採取地点に携行し,空試験用試料とする。試料はフィルターとともに,
ふっ化水素酸及び硝酸を用いて酸分解する6)。粒子状炭素などの有機物の多い試料を分解する場合,
更に硝酸,及び過塩素酸又は過酸化水素の混酸を追加して溶解する。得られた溶液を遠心分離又は
ろ過し,試料溶液とする。
注5) フィルターの材質は,石英繊維,セルロースエステル,ふっ素樹脂などであり,材質によ
って圧力損失,吸湿率,不純物の含有量などの特性が異なる。
6) ふっ素樹脂製フィルターは,酸分解されない。

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7) 石油関連試料 石油関連試料は燃焼などによって無機質化した後,酸で分解して溶液化するか,有
機溶媒によって直接試料を溶解又は希釈してもよい。後者の場合には,検量線作成用溶液も同じ有
機溶媒で調製し,全ての溶液ができる限り同じ物理特性をもつように注意しなければならない。有
機溶媒としては蒸気圧の比較的低いキシレン,脂肪族炭化水素の混合溶液,例えば,ケロシンなど
を用いることで,プラズマを安定に維持することができる。また,試料溶液及び検量線作成用溶液
中の測定対象元素は,同じ化学形態であることが望ましい。
8) 高分子関連試料 ポリエチレン,ゴム類などの高分子関連試料に含まれる測定対象元素を定量する
場合は,一般に酸分解法又は乾式灰化法を用いる。酸分解法では,試料によっては硝酸だけでも分
解できるが,必要に応じて過酸化水素水,過塩素酸,ふっ化水素酸,塩酸,硫酸などを添加する7)。
密閉式の加圧容器3)を用いると酸添加量及び分解時間を低減できる。乾式灰化法では,試料を白金
るつぼなどに採取し,硫酸を加え,450 ℃550 ℃に温度を上げ,有機物を分解除去する。放冷後,
残さを希硝酸などで溶解し,試料溶液とする。
注7) 高分子関連試料に含まれる共存物質の影響によって,測定対象元素の損失が生じることも
あるので,試薬の選択には注意する。
b) 前処理における分離及び濃縮 a)の操作で調製した試料溶液のマトリックス濃度が高く,測定対象元
素の濃度が低い場合は,マトリックスからの測定対象元素の分離及び濃縮を行う。分離・濃縮方法と
しては,イオン交換,溶媒抽出,固相抽出,共沈殿,水素化物発生法などがある。フローインジェク
ション装置によるオンライン方式では所要時間と試薬量とが軽減され,汚染の可能性が小さくなるこ
ともある。測定対象元素の濃縮及び分離を定量的に行うためには,測定対象元素の化学形態をそろえ
る必要がある。
c) 前処理における誤差要因及びその対策 試料の前処理における分析誤差の要因としては,次に示す外
部からの汚染,水及び試薬中の不純物,試料の未分解,測定対象元素の損失がある。前者二つの要因
は,微量元素の測定において特に影響が大きい。
1) 外部からの汚染 外部からの汚染源としては,作業者の指又は被服との接触,大気浮遊粒子,使用
容器などがあり,これらが複合することもある。密閉式の加圧容器3)を用いると大気浮遊粒子の汚
染は軽減される。使用容器からの汚染は,JIS K 0553に準じた洗浄方法によって軽減できる。
2) 水及び試薬中の不純物 試料の前処理に用いる水及び試薬に不純物として含まれる測定対象元素は,
試料中の濃度に対して無視できない場合がある。また,空試験溶液の測定値を差し引く場合も,分
析値の再現性低下の原因となる。空試験溶液の測定値は,高品質の水及び高純度試薬を用いること
によって軽減できる。
3) 試料の未分解 測定対象元素又は試料によっては,完全に分解しない場合がある。試料が完全に分
解したか否かは,例えば,蛍光X線分析法などの非破壊分析法又は標準物質の分析結果との比較か
ら確認することができる。酸分解法で溶解しない試料は,融解法で分解できる場合がある。
4) 測定対象元素の損失 揮発性の元素,揮発性の酸化物,ハロゲン化物及び有機金属化合物は,乾式
灰化などの開放系分解を用いる場合には,全量又は部分的な損失を起こしやすい。この損失は,密
閉式の加圧容器3)又は還流形蒸留器を用いることによって軽減できる。測定対象元素は,沈殿,共
沈殿,容器内壁などへの吸着によっても失われることがある。

4.5 検量線作成用溶液,検量線校正用溶液及び検量線用ブランク溶液の調製

4.5.1  検量線作成用溶液及び検量線校正用溶液
検量線作成用溶液及び検量線校正用溶液の調製は,次による。

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a) 調製 検量線作成用溶液又は検量線校正用溶液として,測定対象元素の1元素又は複数元素(内標準
元素を含む。)を含む溶液を調製する。
b) 調製時の注意事項 調製時の注意事項は,次による。
1) 溶液を混合する場合,沈殿を生じないような試薬及び元素の組合せにする。また,使用する標準液
の不純物が測定対象元素の濃度に影響しないことを確認する。
2) 使用する分析線に分光干渉が生じないような元素の組合せにする。
3) 検量線作成用溶液及び試料溶液の液性及び濃度は,試料溶液にできるだけ一致させる。
4.5.2 検量線用ブランク溶液
検量線用ブランク溶液の調製は,次による。
a) 調製 測定対象元素を添加せず,検量線作成用溶液と同じ液性及び濃度組成からなる溶液を調製する。
b) 調製時の注意事項 調製時の注意事項は,次による。
1) 測定対象元素による汚染がないように使用する水及び試薬類に注意する。
2) 使用する容器からの汚染に注意する。

4.6 測定条件の設定

4.6.1  測定条件の最適化
測定条件の最適化は,次による。
a) 調整 波長校正及び光軸の調整は,次による。
1) 波長校正 測定する元素の波長と分光器の波長とを一致させる。全波長範囲を調整することが望ま
しい。調整方法は,分光器が,シーケンシャル形か同時測定形のいずれか,また,真空紫外領域波
長の測定において不活性ガスパージ方式か真空方式の違いによって異なる。装置ごとに定められた
手順に従って実施することが望ましい。一般的には,アルゴンの発光線,水銀ランプからの発光線
又は短・中・長波長の元素を含んだ調整用溶液を用いる。
2) 光軸調整 トーチの取付位置の調整を行うことによって光軸調整を行う。測定対象元素の発光強度
が最大になるようにトーチ位置を移動するか,分光測光部の集光系に設置されたミラーの角度の調
整を行う。
b) 最適条件 1530分の暖機運転によってプラズマが安定した後,分析目的に応じ4.6.3を考慮して,
次の最適条件を設定する。
1) 分析線 4.7.1に従って分析線を選択する。
2) 測定条件 条件の最適化は,高周波出力,キャリヤーガス流量及び測光高さを調整することによっ
て行う。シグナルをバックグラウンドで除した値(SB比)が最も大きくなる条件が望ましいが,発
光強度も考慮して条件の最適化を行う。一般に,高周波出力を高くすると発光強度が増加するが,
同時にバックグラウンド強度も増加するためSB比は必ずしも向上しない。キャリヤーガス流量を
上げ過ぎるとプラズマの温度が低下し発光強度は減少する。横方向観測方式のプラズマでは,測光
高さを調整することによって最適化を行う。
4.6.2 干渉
干渉は,次による。
a) 分光干渉 測定対象元素の分析線に種々の発光線及びバックグラウンドが重なり分析結果に影響を及
ぼす。分光干渉を及ぼす要因は,次による。
1) 他の元素の発光線による干渉 アルゴンの発光線又は試料中に含まれる共存元素の発光線が,測定
対象元素と近接した波長をもつ場合に生じる。干渉の割合は,分光器の分解能,二つの発光線の波

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長差及び強度比によって決まる。干渉を避けるためには,干渉を受けない別の分析線を選択する。
適切な分析線が見つからない場合には,分光干渉補正を行う。
2) 分子バンドによる干渉 NO(波長 : 200240 nm),OH及びNH(波長 : 300340 nm),CH(波長 :
380390 nm)などの分子バンドスペクトルが測定対象元素と近接した波長をもつ場合に生じる。
分子バンドスペクトルは空気中又は溶液中のN,O,H,Cに起因するため,検量線作成用溶液,試
料溶液の酸の種類及び濃度をできるだけ一致させてバックグラウンド補正を行う。
3) 再結合によるバックグラウンドの増加 試料中に高濃度で含まれる元素の発光によってバックグラ
ウンドが増加する。バックグラウンド補正を行うことで干渉を除去できる。
b) 物理干渉 試料導入系には,通常,ネブライザーが使用されるため,試料溶液の物理的性状の違いに
よって噴霧効率が変化し,誤差の原因となる。物理的性状には,粘度,表面張力,密度などがあり,
試料溶液中の酸の種類,酸の濃度,共存元素濃度などによって変動する。物理干渉を軽減するには,
検量線作成用溶液と試料溶液の液性とをできるだけ一致させることが望ましい。一致させることが困
難な場合には強度比法又は標準添加法を用いる。ペリスタルティックポンプを用いて送液することに
よって干渉を軽減できる。
c) イオン化干渉 イオン化干渉とは試料溶液中に高濃度の共存元素が存在する場合,これらの元素のイ
オン化のときに発生する電子によって,プラズマ内の電子密度が増加し,イオン化率が変化する現象
をいう。特に,アルカリ金属,アルカリ土類金属などのイオン化エネルギーの低い元素が多量に存在
すると,測定対象元素のイオン化率が大きく変化する。この変化の割合は,軸方向観測方式の方が大
きいために,横方向観測方式を用いることが望ましい。
d) 化学干渉 化学干渉とは,測定の過程において生成する化合物によって生じる干渉であるが,ICPの
場合,プラズマの温度が高いので化合物はすぐに分解されるため,通常の分析条件では,ほとんど問
題にならない。
4.6.3 使用判定項目
分析目的に応じて,次に規定する項目を評価する。4.8.4に従って実施することが望ましい。評価の基準
値は,必要に応じて個別規格で規定する。
a) バックグラウンド等価濃度(BEC)
b) 短時間安定性
c) 長時間安定性
d) 装置検出下限(ILOD)
e) 方法定量下限(MLOQ)
f) 検量線の直線性

4.7 定量分析

4.7.1  分析線の選定
分析線の選定に当たっては,次のような項目に注意しなければならない。
なお,特に同時測定形分光器の装置の場合,試料中に含まれる共存元素の発光線が測定対象元素と近接
した波長をもつ場合に分光干渉が生じるので,注意しなければならない。
a) 各元素の発光線の中から,目的とする定量範囲に適する発光強度を与える発光線を選択する。この場
合,検出下限,測定精度などに関する検討を十分に行う。
b) 共存成分による各種の干渉(妨害)がある場合には,干渉のない発光線を選択する。干渉のない適切
な発光線を選択できない場合は,干渉量を適切に補正する。個別規格で分析線が規定されている場合

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