JIS Z 3604:2016 アルミニウムのイナートガスアーク溶接作業標準 | ページ 2

                                                                                              3
Z 3604 : 2016

8 検査要員及び試験要員

8.1 一般

  製造事業者は,規定された要求事項に従って溶接による製造物の検査及び試験の計画,施工,監視のた
めに,力量をもつ十分な数の要員を自らの判断で確保しなければならない。

8.2 非破壊試験要員

  非破壊試験要員は,JIS Z 2305による規定によって適格性が確認されなければならない。外観試験につ
いては,必ずしも適格性確認試験を要求されない。適格性確認試験が要求されない場合は,製造事業者が
要員の力量を検証しなければならない。

9 設備

9.1 製造及び試験の設備

  次に示す設備は,必要なときに利用できなければならない。
a) 溶接電源(附属機器を含む。),自動及び/又は全自動溶接設備(ロボットを含む。)及びその他の機械
b) 開先加工及び切断のための設備
c) 温度計を含む,予熱及び溶接後熱処理のための設備
d) ジグ及び固定器具
e) 製造に使用するクレーン及びハンドリング設備
f) 適用される製造プロセスに直接関わる個人用保護具及びその他の安全設備
g) 溶接材料の乾燥庫,携帯容器など
h) 表面の清掃用具
i) 破壊試験及び非破壊試験装置

9.2 設備の仕様(description)

  製造事業者は,製造に使用する必要不可欠な設備のリストを整備・保持しなければならない。このリス
トは,工場の容量及び能力の評価に欠かせない主要な設備の仕様を示していなければならない。
このリストには,例えば,次のものを含める。
a) 最適な溶接方法が可能な溶接機器(附属機器を含む。)の性能(電流容量,出力特性,耐久性など)
b) クレーンの最大能力
c) 工場内で取扱いできる部材の寸法
d) 自動又は全自動溶接設備の性能
e) 溶接後熱処理のための炉の寸法及び最高温度
f) 加工用ローラ,曲げ及び切断設備の能力
その他の設備は,汎用のものを含むおおよその総数で明記されることが要求される(例えば,イナート
ガスアーク溶接方法に対する溶接電源の総数)。

9.3 設備の適正

  設備は,当該の適用に適したものでなければならない。
注記 溶接及び熱処理設備の承認は,特に別の規定がなければ一般には要求されない。

9.4 新設備

  新規の(又は改造した)設備の設置後,適切な試験を実施しなければならない。試験は,設備の正しい
機能及び作動の安全を検証する。試験は,関連のある場合は,常に適切な規格に従って実施し,文書化し
なければならない。

――――― [JIS Z 3604 pdf 6] ―――――

4
Z 3604 : 2016

9.5 設備の保守

  製造事業者は,設備の保守計画を文書化しなければならない。計画は,関連する溶接施工要領書に記載
されている重要な確認項目について,保守点検を確実にしなければならない。ただし,製品の品質を保証
するために必要不可欠な点検項目に限定してもよい。
それらの点検項目の例を,次に示す。
a) 開先加工及び切断のための設備における,ガイドの状態及び機器の状態
b) 溶接設備の状態,並びに条件設定のための電流計,電圧計及びシールドガス流量計の状態
c) ワイヤ送給装置,溶接トーチ及びコンジットの状態
d) 冷却水循環装置(冷却水ホースを含む。)及び冷却水の状態
e) 入出力ケーブル,ガスホース,制御ケーブル,接続具(端子,コネクター類)などの状態
f) 自動及び/又は全自動溶接設備(ロボットを含む。)の制御システム,及び作動状況の状態
g) 温度計測器具,その他測定用の器具の状態
h) 適用される製造プロセスに直接関わる個人用保護具及びその他の安全設備の状態
不具合のある設備は,使用してはならない。

10 溶接及び関連業務

10.1 生産計画

  製造事業者は,適切な生産計画を立てなければならない。
考慮する事項には少なくとも次の項目を含めなければならない。
a) 溶接物の製造順序に関する仕様(例えば,個々の部品又は小組立品,それに続く最終組立の順序)
b) 溶接物を製造するのに必要な個々の工程の識別
c) 溶接及び溶接と同類種のプロセスに対する適切な施工要領書の引用
d) 溶接順序
e) 個々の工程を実施する順序及び時期
f) 独立検査機関との関係も含む検査及び試験に関する要領
g) 環境条件(例えば,風,雨からの保護など)
h) バッチ,構成部材又は部品ごとの適切な単位での品物の識別
i) 適格性が確認された要員の割当て
j) 全ての製造時溶接試験の計画・手配

10.2 溶接施工要領書

  製造事業者は,JIS Z 3422-2に規定する溶接施工要領書を作成し,これが製造過程において正しく使用
されることを確実にしなければならない。

10.3 溶接施工法の承認

  溶接施工法は,製造開始前に承認されなければならない。製造事業者は,JIS Z 3422-2又は仕様書に記
載された承認方法に従わなければならない。

10.4 作業指示書

  製造事業者は,作業者へ指示する目的で,直接,溶接施工要領書を使用することができる。これに代え
て専用の作業指示書を使用してもよい。このような専用の作業指示書は,承認された溶接施工要領書から
作成することによって,別個の承認を必要としない。
専用の作業指示書には,例えば,次のものを含める。

――――― [JIS Z 3604 pdf 7] ―――――

                                                                                              5
Z 3604 : 2016
a) 溶接作業を行う者の適格性要求
b) 母材の種類
c) 母材の取扱いに対する注意
d) 作業所の環境条件に対する注意
e) 使用する機材(溶接機器及び附属機器,シールドガス,溶加棒,ワイヤ及びタングステン電極)
f) 開先及び開先加工
g) 母材の前処理に対する要求及び処理方法(機械的方法及び化学的方法)
h) 溶接条件(一般事項及び標準条件範囲)
i) 溶接機器及び附属機器の点検整備
j) ジグ,固定具及びひずみ防止に対する注意
k) 裏当て金及び裏当て要領
l) タック溶接要領
m) 予熱及びパス間温度
n) 溶接始終端及びビード継ぎ目の処理
o) はつり及び層間の清掃に対する注意
p) 溶接の表面形状
q) 点検,仕上げ及び補修
r) ひずみ取り
s) 外観及び表面の不完全部に対する要求
t) 内部の不完全部に対する要求

10.5 文書の作成及び管理要領

  この規格で用いる文書の作成及び管理要領は,JIS Z 3400による。

11 母材及び溶接材料の保管

  保管は,顧客から支給された材料を含めて,吸湿,結露,酸化,汚れ及び損傷の観点から材質に悪影響
を及ぼさないように保管しなければならない。保管中は,識別性を確保しなければならない。
取扱いに当たっては,素手,汚れた手袋などは避け,著しく汚損したり又はきずを付けないように注意
する。

12 溶接後熱処理

  この規格で用いる溶接後熱処理は,JIS Z 3400による。

13 溶接関連の検査及び試験

13.1 一般

  適用される検査及び試験は,契約の要求事項に適合していることを保証するために,製造工程中の適切
な時点で実施されなければならない。その検査及び/又は試験の位置及び頻度は,契約及び/又は製品規
格,溶接方法並びに溶接構造物の種類による(箇条5参照)。

13.2 溶接前の点検,検査及び試験

  溶接開始の前に,次に示す項目を点検しなければならない。
13.2.1 溶接技能者の適格性証明書の適切性及び有効性

――――― [JIS Z 3604 pdf 8] ―――――

6
Z 3604 : 2016
溶接作業は,溶接管理技術者の適切な指導・監督の下に,溶接技能者によって行われるものとする。こ
こで,溶接管理技術者とはJIS Z 3410又はこれと同等以上の溶接管理技術者を,溶接技能者とはJIS Z 3811
の試験に合格した者又はそれと同等以上の技量をもつ者とする。
注記 これと同等以上の溶接管理技術者の例として,LWS A 7601がある。
13.2.2 溶接施工要領書の適切性
溶接施工要領書は,10.2による。
13.2.3 母材の識別及び管理
母材は,次に示す日本工業規格(日本産業規格)に規定するもの,又はこれに準じたものを使用する。
JIS H 4000,JIS H 4040,JIS H 4080,JIS H 4090,JIS H 4100,JIS H 4140,JIS H 5202,JIS H 5302
13.2.4 溶接材料の識別及び管理
a) 溶加棒,溶接ワイヤ及び溶接用タングステン電極は,次による。
1) 溶加棒及び溶接ワイヤは,JIS Z 3232に規定するものとし,母材の種類,板厚,その他必要な条件
を考慮して,健全な溶接部が得られるものを使用する。溶加棒及び溶接ワイヤの種類の選定は,表
1を指針として溶接管理技術者が行う。また,ミグ溶接のワイヤの径に対する溶接電流範囲例を,
表2に示す。

――――― [JIS Z 3604 pdf 9] ―――――

                                                                                                                                           7
Z 3604 : 2016
表1−母材の組合せによる棒及びワイヤの選定指針
母材 AC7A AC4D AC4C A7003 A6061 A5086 A5154 A5052 A5005 A2219 A2014 A3004 A1200 A1100 A1070
ADC12 A7204 A6005C A5083 A5254 A5110A A2017 A3003 A1050
(A7N01) (A6N01) A5056 A5454 (A5N01) A3203
A6063
母材 A6101
b), e) f) e), f) e), g)
b), d), e) b) b), d), e) b), e) ), d), e) d), e) b), e) a), d), e)
a), d), e) a), d), e)
A1070 A4043 A4043 A4043 A5356 A4043 A5356 A5356 A4043 A1100 A4145 A4145 A4043 A1200 A1100 A1070
A1050
A1100 b), e) f) e), f) e), g)
b), d), e) b) b), d), e) b), e) ), d), e) d), e) b), e) a), d), e)
a), d), e)
A3003 A4043 A4043 A4043 A5356 A4043 A5356 A5356 A4043 A1100 A4145 A4145 A4043 A1200 A1100
A3203
A1200 b), e) f) e), f) e), g)
b), d), e) b) b), d), e) b), e) ), d), e) d), e) a), d) ), d), e)
A4043 A4043 A4043 A5356 A4043 A5356 A5356 A4043 A1200 A4145 A4145 A1200 A1200
b) e) b), c), e), g)
b), c), d) b) b), c) b), c), d)
b), c), d), e) d), e) b), c), d)
A3004 A4043 A4043 A4043 A5356 A4043 A5356 A5356 A5356 A5356 A4145 A4145 A5356
A2014 f) i) i)
A2017 − A2319 A4145 − A4145 − − − A4145 A4145 A4145
A2219 e) d), e)
d), e), f) e) e), f) e) e) e), f) d), e), f)
A4043 A2319 A4145 A4043 A4043 − A4043 A4043 A4043 A2319
A5005 b), c) e) e) b), c) ), c), e), g)
b) b), c) b), c), d), h)
b), c), d), e)
A5110A A5356 A4043 A4043 A5356 A4043 A5356 A5356 A5356 A5356
(A5N01)
A5052 b) e) b), c), e) b), c) b)
b), c), e), g) b), c) b), c), d)
A5356 A4043 A4043 A5356 A4043 A5356 A5356 A5356
A5154 b), c) b), c), e) b), c) ), c), d) b), c) b), c)
注記1 この組合せは,常温及び低温で使用される一般的な溶接構造物を対象とし
A5254 A5356 − A4043 A5356 A5356 A5356 A5356
A5454 たものであるが,使用温度が65 ℃を超える可能性のある場合には,A5356,
A5086 b) b), d), e) ) b) b) A5183,A5556及びA5654の使用は避けたほうがよい。
A5083 A5356 − A5356 A5356 A5356 A5183 注記2 棒及びワイヤを示すBY及びWYは,省略した。
A5056 注記3 母材のうち製造工程又は製品形状を表す記号は省略したが,いずれの形状
A6061 e), f)
b), c), d), e) b), c), d), e)
b), c), e) b), c), e)
A6005C A5356 A4043 A4043 A5356 A4043 のものにも適用できる。
(A6N01) 注a) 1100又はA1200を用いてもよい。
A6063 b) 5356,A5556又はA5183を用いてもよい。
A6101 c) 5654又はA5554を用いてもよい。
A7003 b), c) e) b), c), e) )
d) 用途によってA4043を用いてもよい。
A7204 A5356 A4043 A4043 A5356
(A7N01) e) 4047を用いてもよい。
AC4C b), c), e) e), f) e), h) f) 4145を用いてもよい。
Z3
ADC12 A4043 A4043 A4043 g) 陽極酸化処理後,色調差を生じてはならないときは,A5356を用いたほうが
6
AC4D e), f), h)
0
よい。
4
− A4043
: 2
h) 母材と同組成の溶加材を用いてもよい。
AC7A b), c), h)
0
A5356 i) 2319を用いてもよい。
16
2

――――― [JIS Z 3604 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS Z 3604:2016の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 3604:2016の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISH4000:2014
アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条
JISH4040:2015
アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線
JISH4080:2015
アルミニウム及びアルミニウム合金継目無管
JISH4090:1990
アルミニウム及びアルミニウム合金溶接管
JISH4100:2015
アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材
JISH4140:1988
アルミニウム及びアルミニウム合金鍛造品
JISH5202:2010
アルミニウム合金鋳物
JISH5302:2006
アルミニウム合金ダイカスト
JISZ2305:2013
非破壊試験技術者の資格及び認証
JISZ2343-1:2017
非破壊試験―浸透探傷試験―第1部:一般通則:浸透探傷試験方法及び浸透指示模様の分類
JISZ3001:1999
溶接用語
JISZ3001:1950
医療用刀
JISZ3080:1995
アルミニウムの突合せ溶接部の超音波斜角探傷試験方法
JISZ3081:1994
アルミニウム管溶接部の超音波斜角探傷試験方法
JISZ3082:1995
アルミニウムのT形溶接部の超音波探傷試験方法
JISZ3090:2005
溶融溶接継手の外観試験方法
JISZ3105:2003
アルミニウム溶接継手の放射線透過試験方法
JISZ3232:2009
アルミニウム及びアルミニウム合金の溶加棒及び溶接ワイヤ
JISZ3233:2001
イナートガスアーク溶接並びにプラズマ切断及び溶接用タングステン電極
JISZ3253:2011
溶接及び熱切断用シールドガス
JISZ3400:2013
金属材料の融接に関する品質要求事項
JISZ3410:2013
溶接管理―任務及び責任
JISZ3422-2:2003
金属材料の溶接施工要領及びその承認―溶接施工法試験―第2部:アルミニウム及びアルミニウム合金のアーク溶接
JISZ3811:2000
アルミニウム溶接技術検定における試験方法及び判定基準