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A 8706-2 : 2013
附属書C
(規定)
遠隔操縦の安全要求事項
C.1 適用範囲
この附属書は,ドラム式カッタ搭載自走式木材破砕機に受信器を組み込んで使用する有線式遠隔操縦及
び無線式遠隔操縦の安全要求事項について規定する。
この附属書は,ごく単純な命令(例えば,始動,停止及び設定変更)だけを必要とし,運転員の補助な
しに機械自身が周囲状況を観測して作業を行えるような自律式制御には適用しないが,自律式制御の機械
を遠隔操縦状態で使用する場合には適用する。この附属書は,遠隔操縦式ではない機械に装着した遠隔操
縦式のアタッチメントには適用しない。
注記 この附属書は,遠隔操縦装置の性能判定基準を規定するものではない。各箇条の題名として“無
線操縦”又は“有線操縦”と示してある場合,その要求事項は対応する操縦装置にだけ適用す
る。受信器を必要としない有線式遠隔操縦にも,C.3C.5の要求事項を適用するのが望ましい。
C.2 用語及び定義
この附属書で用いる用語及び定義は,次による。
C.2.1
遠隔操縦
機械と分離した遠隔操作器から機械に装着した受信器への,有線又は無線信号の伝達による機械の操縦。
C.2.2
遠隔操縦装置
遠隔操縦する機械に運転情報及び操作の指令を伝達する装置。遠隔操縦装置は,遠隔操作器及び受信器
からなる。
C.2.3
遠隔操作
有線又は無線によって,機械から離れた位置にいる運転員が行う機械の運転。
C.2.4
遠隔操作器
離れた位置から,機械を操縦するため,所要の全ての運転機能を起動させる操作装置を備えた機器。遠
隔操縦のための信号は,遠隔操作器と受信器との間で送受信する。
C.2.5
受信器
機械側に搭載し,遠隔操作器から発信した信号を受信して,それら信号を,機械を運転する指令信号に
変換する機器。
注記 受信器は,次の構成要素からなる。
− 遠隔操作機器からの信号を受信する受信部
− 信号の内容を確認するための監視部
− 機械の制御機器を駆動するための出力部
――――― [JIS A 8706-2 pdf 21] ―――――
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A 8706-2 : 2013
受信器には,確認のための信号を返す手段を含んでもよい。
C.2.6 操縦ケーブル
有線式遠隔操縦で,遠隔操作器と受信器との間の信号を伝達する電線。
C.3 安全要求事項
C.3.1 一般
C.3.1.1 設計
遠隔操縦式のドラム式カッタ搭載自走式木材破砕機において,遠隔操作の操縦装置は,次の条件のとき
機械は停止し安全な状態を保持するように設計しなければならない。ただし,作業装置(供給装置,破砕
装置,排出装置など)の遠隔操縦はこの限りでない。
a) 遠隔操作をしていないとき
b) 遠隔操縦装置の電源が中断したとき
c) 遠隔操作器と受信器との間の交信が中断したとき
ただし,バッテリ消耗を防ぐなど意図的な中断で運転員の操作によって即座に交信を再開できる場
合を除く。
d) 機械本体の動力低下によって遠隔操縦装置のいずれかの部分の機能が中断したとき
e) 遠隔操縦用の信号が減衰したとき
取扱説明書には,遠隔操作器と受信器との通信が範囲外になったとき,障害で停止したとき,遠隔操縦
装置の電源が中断したときなどに全停止機能が作動しない場合があることを記載しなければならない。
C.3.1.2 無線遠隔操縦
無線遠隔操縦式の機械が遠隔操縦による通信範囲外にあるときは,機械の走行は停止し安全な状態を保
持するように設計しなければならない。ただし,作業装置の遠隔操縦はこの限りでない。
無線遠隔操縦装置を搭載した数台の機械が近接して作業する場合,それぞれの遠隔操縦装置には,遠隔
操縦を始める前に,運転員が操縦する対象の機械を識別する手段を備えていなくてはならない。
この目的のため,運転員が遠隔操縦を開始するときに特別な灯火(例えば回転灯)を使用することが望
ましい。
C.3.2 信号の信頼性
信号を伝達する装置は,異常な電磁放射,一時的な信号の減衰,遠隔操作器の故障などによって生じる
誤信号によって,機械が動作するのを防止する誤信号探知及び/又は補正装置を備えていなければならな
い。情報交信プロトコルは,その通信経路及び伝達される情報の完全性を保証しなければならない。完全
性を確認できない場合は,機械は直ちに安全な状態で停止しなければならない。
遠隔操縦装置は,JIS A 8316に規定する電磁両立性の要求事項に適合しなければならない。
C.3.3 遠隔操作器
C.3.3.1 設計
機械は非常停止を除き,同時に複数の遠隔操作器から遠隔操縦可能であってはならない。
遠隔操作器は,遠隔操縦装置を起動・停止させるための,キースイッチ又はアクセスコードのような装
置又は手段を備えていなければならない。
遠隔操作器は,機械運転員の自由な動きをできる限り妨げない設計とする。
C.3.4 操縦装置
C.3.4.1 中立位置
――――― [JIS A 8706-2 pdf 22] ―――――
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A 8706-2 : 2013
遠隔操作器上の走行操縦装置は,運転員がそれらを放したときには中立位置に戻らなければならない。
遠隔操作器の操縦装置が中立位置にあるとき,その結果起こる機械の動作は,対応する機械本体の操作装
置を中立位置にしたときの動作と同じでなければならない。
操縦装置の操作に機能上固定位置がある場合及び機械本体の対応する操作装置に固定位置がある場合は,
中立に戻す必要はない。
C.3.4.2 表示
遠隔操作器の操縦装置には,機械本体及び作業装置の動作方向を示す操作表示が,機械本体上の操作表
示と同じもので明確に表示されていなければならない。
C.3.4.3 意図しない誤作動の防止
遠隔操作器上の操縦装置は,意図しない誤作動が発生しないよう配置,動作ロック又は防護されていな
ければならない。遠隔操作器を運転員が手から落としたり,運転員が転倒したときに,意図しない動作が
起きないよう防護する手段を設けなければならない。
遠隔操作器上には,無認可の者が起動するのを防止するため,操作装置が不作動状態となって操作でき
ないようにする手段を設けなければならない。
C.3.4.4 制動・停止機能
遠隔操作器上の走行操作が中立位置のときには,(製造業者が指定する最大傾斜で)機械を静止状態で保
持できなくてはならない。遠隔操縦機械の制動装置は,JIS A 8325に適合しなければならない。
C.3.4.5 運転席の操縦装置の優先
運転席に直接,操縦装置が装着されている場合,遠隔操縦装置よりも優先する。
C.3.5 有線操縦
有線操縦は,運転員が危険範囲の外側の位置から機械を操縦できなければならない。
操縦ケーブルは,十分な長さをもち,柔軟で運転員が危険範囲外の安全な操縦位置で操縦できなければ
ならない。引張力に関し,使用する電気ケーブル及び接続部はJIS B 9960-1の13.4.2(外部ダクト)及び
13.4.3(機械の可動部への接続)に適合しなければならない。
操縦ケーブルが過度に引っ張られたり,よじれたり,切断したときに制御機器が作動して意図しない機
械の動作が生じてはならない。
C.3.6 全停止操作
C.3.6.1 一般
遠隔操作器及び機械上に,手動操作用の全停止装置を設けなければならない。
全停止装置を起動すると直ちに機械の全ての動作が安定な方法で停止しなければならない。
C.3.6.2 特性
全停止操作を意図的に初期設定に戻さない限り,機械の運転を再開可能であってはならない。また,全
停止操作を初期設定に戻したときは,機械は停止状態でなければならない。
全停止装置が複数備えられている場合,操作又は起動した全停止装置の全てを初期設定に戻さない限り,
機械の運転を再開可能であってはならない。
C.3.6.3 全停止操作ボタン
全停止操作は,押しボタン式とする。
そのための機器又はその表示は,赤色とする(JIS C 8201-5-1参照)。
全停止ボタンの背景は対比の強い色とする。
全停止ボタンは,フェールセーフ設計とする。
――――― [JIS A 8706-2 pdf 23] ―――――
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C.3.7 選択スイッチ
機械上に直接操縦装置を備えている場合,機械上の運転席に直接操縦又は遠隔操縦のいずれかを選択す
るスイッチを備えなければならない。
選択スイッチで直接操縦を選択したときは,直接操縦だけが有効にならなければならない。また,遠隔
操縦を選択したときに遠隔操縦できるようにならなければならない。
選択スイッチは,キースイッチ若しくはアクセスコード,又は施錠可能な運転室のスイッチの使用だけ
が可能とする。
C.3.8 衝突,衝撃及び振動
遠隔操作器及び受信器は,運転時の衝撃及び振動によって機械の意図しない動作を引き起こさない設計
でなければならない。
遠隔操作器は,次の試験に耐えなければならない。
− JIS C 60068-2-31による自然落下試験
− ISO 15998による衝撃試験(11ミリ秒にて衝撃負荷15 G)
受信器は,ISO 15998による振動試験に耐えなければならない。
C.3.9 周囲環境からの防護
C.3.9.1 遠隔操作器
遠隔操作器の周囲環境からの防護等級は,JIS C 0920の4.(指定方法)に規定するIP65とする。
C.3.9.2 受信器
受信器の対環境防護等級は,その取付け位置による。受信器が運転室内又はそれに準じる位置にある場
合はIP54に,他の場合はIP65にそれぞれ適合しなければならない。他の場合でIP65を満足しない受信器
は,ボックスで覆うなど周囲環境からの防護を十分に行わなければならない。
C.3.10 電源
C.3.10.1 一般
遠隔操作器又は受信器の電源が切れた場合には,機械の意図しない危険な動作が生じてはならない。走
行操縦装置及び走行機能は,中立位置に戻らなければならない。すなわち,走行機能が安全に停止し,ブ
レーキが自動的にかからなければならない。
電源が復帰したときに意図しない機械の危険な動作が生じてはならない。遠隔操縦運転は,通信の復帰
操作を行った後にだけ可能とする。
C.3.10.2 遠隔操作器
遠隔操作器に電力が供給されていることを,光学的な装置(発光ダイオード又は操作盤上の灯火)で表
示するのがよい。
C.3.11 警報機器
機械が遠隔操縦で作業中は,機械に取り付けられた回転灯が点灯しなければならない。その回転灯を運
転席又はその至近に設置して,周囲の人に機械が遠隔操縦されていることを示さなければならない。
機械が遠隔操縦されているときは,遠隔操作器から機械の警笛を操作できなければならない。
C.3.12 走行
C.3.12.1 無線操縦
走行速度は,6 km/hを超えてはならない。
C.3.12.2 有線操縦
走行速度は,人の歩行速度以内とし,6 km/hを超えてはならない。
――――― [JIS A 8706-2 pdf 24] ―――――
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A 8706-2 : 2013
C.3.13 形式情報
次の情報を遠隔操縦装置に恒久的な方法で取り付けていなければならない。
− 製造業者名
− 形式名
− 製造年
− 製造番号
形式情報は,遠隔操作器と受信器との関係を明確に示し,遠隔操作器,受信器,運転室内又は運転席近
くの読みやすい表面に明示しなければならない。
C.3.14 警告表示の図記号
機械が遠隔操縦できるものであることを示す危険源の図記号は,JIS A 8312によって機械上に表示しな
ければならない。その表示は,機械の周りに人が近づかないよう明確に指示するものでなければならない
(図C.1参照)。
図C.1−図記号と補助文字とを用いた安全標識の例
C.4 前進方向の表示
全旋回式で遠隔操縦で走行する機械は,下部走行体の側面に前進方向を表示して,遠隔操縦を行う運転
員に機械の走行方向を知らせなければならない。また,遠隔操作器に進行方向を絵文字で表示しなければ
ならない。
C.5 取扱説明書
遠隔操縦式機械の取扱説明書には,無線操縦の際に遠隔操作器から機械を運転できる推奨最大安全距離
に関する情報を含まなければならない。それ以外にも,特殊な条件及び環境での機械使用,停止手順及び
遠隔操作器の保守のための安全行動といった遠隔操縦特有の情報も含めなければならない。
また,取扱説明書には,次の警告記事又は同じ意味の記事を含まなければならない。
“警告 : この機械は遠隔操縦可能である。機械は不意に動くことがある。機械に近づいてはならない。”
――――― [JIS A 8706-2 pdf 25] ―――――
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JIS A 8706-2:2013の国際規格 ICS 分類一覧
JIS A 8706-2:2013の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA8301:1952
- モータグレーダ用切刃
- JISA8301:2000
- 土工機械―整備用開口部最小寸法
- JISA8302:2017
- 土工機械―運転員及び整備員の乗降用・移動用設備
- JISA8307:2006
- 土工機械―ガード―定義及び要求事項
- JISA8310-1:2019
- 土工機械―操縦装置及び表示用図記号―第1部:共通図記号
- JISA8310-2:2019
- 土工機械―操縦装置及び表示用図記号―第2部:特定機種,作業装置及び附属品図記号
- JISA8312:1996
- 土工機械―安全標識及び危険表示図記号―通則
- JISA8312:2021
- 土工機械―機械安全ラベル―通則
- JISA8315:2010
- 土工機械―運転員の身体寸法及び運転員周囲の最小空間
- JISA8316:2010
- 土工機械―電磁両立性(EMC)
- JISA8323:2001
- 土工機械―運転席及び整備領域―端部の丸み
- JISA8324:2001
- 土工機械―電線及びケーブル―識別の原則
- JISA8325:2010
- 土工機械―履帯式機械―制動装置の性能要求事項及び試験方法
- JISA8327:2017
- 土工機械―機械装着警報ブザー類及び警音器―試験方法及び性能基準
- JISA8331:2005
- 土工機械―機械装着救出装置―性能要求事項
- JISA8334:2006
- 土工機械―取扱説明書―内容及び様式
- JISA8335:2017
- 土工機械―非金属製燃料タンクの性能要求事項
- JISA8336:2009
- 土工機械―表示機器
- JISA8340-1:2011
- 土工機械―安全―第1部:一般要求事項
- JISA8345:2004
- 土工機械―キーロック始動装置
- JISA8407:2000
- 土工機械―操縦装置の操作範囲及び位置
- JISA8919:2007
- 土工機械―操縦装置
- JISB8361:2013
- 油圧―システム及びその機器の一般規則及び安全要求事項
- JISB8370:2013
- 空気圧―システム及びその機器の一般規則及び安全要求事項
- JISB9700-1:2004
- 機械類の安全性―設計のための基本概念,一般原則―第1部:基本用語,方法論
- JISB9700-2:2004
- 機械類の安全性―設計のための基本概念,一般原則―第2部:技術原則
- JISB9703:2019
- 機械類の安全性―非常停止機能―設計原則
- JISB9707:2002
- 機械類の安全性―危険区域に上肢が到達することを防止するための安全距離
- JISB9708:2002
- 機械類の安全性―危険区域に下肢が到達することを防止するための安全距離
- JISB9711:2002
- 機械類の安全性―人体部位が押しつぶされることを回避するための最小すきま
- JISB9713-2:2004
- 機械類の安全性-機械類への常設接近手段-第2部:作業用プラットフォーム及び通路
- JISB9713-3:2004
- 機械類の安全性―機械類への常設接近手段―第3部:階段,段ばしご及び防護さく(柵)
- JISB9716:2019
- 機械類の安全性―ガード―固定式及び可動式ガードの設計及び製作のための一般要求事項
- JISB9960-1:2019
- 機械類の安全性―機械の電気装置―第1部:一般要求事項
- JISC0920:2003
- 電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)
- JISC60068-2-31:2013
- 環境試験方法―電気・電子―第2-31部:落下試験及び転倒試験方法(試験記号:Ec)
- JISD1201:1998
- 自動車,及び農林用のトラクタ・機械装置―内装材料の燃焼性試験方法