JIS H 1270:2015 ニッケル及びニッケル合金―分析用試料採取方法及び分析方法通則 | ページ 2

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いこと,及び欠陥がないことを目視で調べる。欠陥があった場合は,表面を再仕上げするか,又は
廃棄する。分析用試料は乾燥し,調製した表面を汚染しないように注意する。

5.3 試料のはかり方

  試料のはかり方は,次による。
a) 分析試料をはかりとる際には,よくかき混ぜて平均組成を代表するように注意し,また,異物が混入
していないことを確かめなければならない。
b) 分析試料のはかりとりには,化学はかりを用い,1 mg又は0.1 mgの桁まで読み取る。
なお,0.1 mgの桁までの読取りは,分析方法の個別規格に規定している場合及び有効数字4桁の定
量値を必要とする場合である。
c) 分析試料のはかりとり量は,各成分の定量方法規格で規定する。

6 各成分定量方法

  分析試料中の各成分の定量方法は,次のいずれかの方法の中から,各成分の予想含有率に適した分析方
法を選択する。
a) 次に掲げる規格に規定された化学分析方法の場合
JIS G 1281,JIS H 1272,JIS H 1273,JIS H 1274,JIS H 1275,JIS H 1276,JIS H 1277,JIS H 1278,
JIS H 1279,JIS H 1280,JIS H 1281,JIS H 1282,JIS H 1283,JIS H 1284,JIS H 1285,JIS H 1286,
JIS H 1289
b) 次に掲げる規格に規定された機器分析方法の場合
JIS H 1287,JIS H 1288

7 分析値のまとめ方

7.1 空試験

  化学分析方法による分析においては,分析方法規格群の各規格に空試験の規定がなくても,全操作を通
じて空試験を行い,分析値を補正する。

7.2 分析回数

  分析回数は,分析依頼者からの要求による。要求がない場合は,JIS Z 8402-6によるのが望ましい。た
だし,8.2 a) の真度の検討を行って分析値の妥当性が確認されれば,1回の分析でもよい。

7.3 分析値の採択

  化学分析方法による分析においては,8.2の分析値の精確さの検討,特に8.2 a) の真度の検討を行って
検討結果が満足できる場合にだけ分析値を採択することが望ましい。

7.4 分析値の表示

  分析値は,質量分率で表し,百分率を示す%を用いて表示する。ただし,分析値が非常に小さい場合は,
μg/gで表示してもよい。分析値の報告桁は,分析依頼者からの要求による。要求がない場合は,分析方法
の許容差を考慮して決定する。数値の丸め方は,JIS Z 8401による。
日本工業規格(日本産業規格)(JIS)の製品規格の規定によって分析値を報告する場合は,製品規格に規定された化学成
分の数値の有効最小位の桁数に,JIS Z 8401の規則Aによって丸める。

8 化学分析方法の許容差の取扱い方

8.1 化学分析方法の許容差

――――― [JIS H 1270 pdf 6] ―――――

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化学分析方法の許容差は,化学分析方法の個別規格に規定する。ただし,個別規格で“分析精度”を規
定している場合は,室内標準偏差及び室間標準偏差にf (n) を乗じて,それぞれ室内再現許容差及び室間再
現許容差とする。f (n) の値は,JIS Z 8402-6の表1(許容範囲の係数)による。nの値は,室内再現許容差
の場合は同一分析室内における分析回数,室間再現許容差の場合は分析に関与した分析室数とする。
許容差又は分析精度を規定していない場合は,8.3による。

8.2 分析値の精確さの検討

  分析値の精確さの検討は,次によって行う。
a) 真度の検討 分析試料と化学的特性が近似し,認証値又は標準値が分析試料予想含有率に近い認証標
準物質又はJIS Q 0032記載の所内標準物質を含む実用標準物質(以下,認証標準物質又は実用標準物
質という。)を一つ選んで,試料はかりとり量及び定量操作が分析試料と全く同一で,分析試料と併行
して分析し,得られた認証標準物質又は実用標準物質の分析結果と認証値又は標準値との差の絶対値
が,採用した分析方法の対標準物質許容差以下の場合は,同時に分析して得られた分析試料の分析値
の真度は満足できるものと判断する。複数の試料について,分析操作が同一で,分析試料予想含有率
が認証値又は標準値に近いとみなされる場合は,それらの試料に対し,一つの認証標準物質又は実用
標準物質によって真度の検討を行ってもよい。
対標準物質許容差は,分析方法規格に対標準物質許容差が規定されている場合は,その規定に従う。
対標準物質許容差の規定がなく,室間再現許容差計算式が規定されている場合は,対標準物質許容
差C(質量分率)は,次のいずれかの方法によって求める。
1) 使用した認証標準物質又は実用標準物質の認証書に個々のデータが記載され,認証値又は標準値決
定時の分析値の標準偏差が求められる場合は,式(1)によって求める。
2
sC 2
C 2 sR (1)
NC
ここに, sC : 試料と併行に分析した認証標準物質又は実用標準物質の
認証値又は標準値決定時の分析値の標準偏差(標準偏差
を求める個々のデータは,認証値又は標準値決定試験参
加分析室ごとの平均値)(質量分率)
NC : 用いた認証標準物質又は実用標準物質の認証値又は標準
値決定試験参加分析室数
sR : 室間再現標準偏差(質量分率)[室間再現許容差計算式に
おいて,f (n)=1とし,含有率の項に認証値又は標準値を
入れて得た値]
2) 使用した認証標準物質又は実用標準物質の認証書に,個々のデータが記載されていなく,不確かさ
の値だけが記載されている場合は,式(2)によって求める。
2 2
C 2 UCRM/ k sR (2)
ここに, UCRM : 使用した認証標準物質又は実用標準物質の認証値又は標
準値の不確かさ
k : 包含係数。JIS K 0211に定義され,拡張不確かさを得る
ために合成標準不確かさに乗じる係数で,通常は23
の値をとる。
国際一致規格で,室間再現許容差が数値の表で示されている場合は,認証値又は標準値における
室間再現許容差を補間法によって求め,得た値に0.357 1(=1.0/2.8)を乗じた値を室間再現標準偏

――――― [JIS H 1270 pdf 7] ―――――

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差として式(1)又は式(2)に代入してCを求める。
室間再現許容差が規定されていない場合は,式(3)においてmCRMに認証標準物質又は実用標準物
質の認証値又は標準値[質量分率(%)]を入れて室間再現標準偏差を求め,その値を式(1)又は式(2)
に代入してCを求める。
.0653 4
sR .0032 46mCRM (3)
注記1 補間法とは,例えば隣り合った2点間について一次式を求め,この一次式から許容差を近
似することをいう。
b) 併行精度の検討 同一分析室において,同一分析用試料を併行条件で2回分析して得られた2個の分
析結果の範囲が,その分析方法規格に規定している併行許容差(r)以下であれば,これら2個の分析
結果の間に異常な差はないものと判断する。この場合,併行許容差計算式の成分含有率の項には,2
個の分析値の平均値を代入する。
c) 室内精度(中間精度)の検討 同一分析室において,同一分析用試料を,時間などの誤差因子を変え
て2回分析して得られた2個の分析結果の範囲が,その分析方法規格に規定している室内再現許容差
(Rw)以下であれば,これら2個の分析結果の間に異常な差はないものと判断する。この場合,室内
再現許容差計算式の成分含有率の項には,2個の分析値の平均値を代入する。
注記2 JIS Z 8402-3では,併行標準偏差と再現標準偏差との間の誤差因子をもつ場合を中間精度
と呼んでいて,この語が正規の用語であるが,従来からの呼称に従って,室内精度の用語
を用いる。
d) 室間精度の検討 二つの異なる分析室において,同一分析用試料をそれぞれ分析して得られた結果の
範囲が,その分析方法規格に規定している室間再現許容差(R)以下であれば,これら二つの分析室
の分析結果の間に異常な差はないものと判断する。この場合,室間再現許容差計算式の成分含有率の
項には,2個の分析値の平均値を代入する。

8.3 許容差が規定されていない場合の取扱い方

  分析方法規格に許容差又は分析精度が規定されていない場合の許容差,又は分析方法規格の定量範囲に
対して許容差若しくは分析精度の適用範囲が狭い場合の適用範囲外の許容差は,次の式によって算出する。
a) 併行許容差
.0663 8
r .0041 8m1 (4)
ここに, r : 併行許容差[質量分率(%)]
m1 : 併行許容差を求める二つの分析結果の平均値[質量分率
(%)]
b) 室内再現許容差
.0 663 8
Rw .0062 7m2 (5)
ここに, Rw : 室内再現許容差[質量分率(%)]
m2 : 室内再現許容差を求める二つの分析結果の平均値[質量
分率(%)]
c) 室間再現許容差
.0653 4
R .0090 9 m3 (6)
ここに, R : 室間再現許容差[質量分率(%)]
m3 : 室間再現許容差を求める二つの分析結果の平均値[質量
分率(%)]

――――― [JIS H 1270 pdf 8] ―――――

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8.4 許容差の判定方法

  併行許容差,室内再現許容差及び室間再現許容差の判定は,各々の分析結果の報告桁を報告桁の一番少
ない結果に合わせてその差を求め,許容差も分析結果の報告桁に丸めて比較する。対標準物質許容差の判
定は,分析結果の報告桁を認証値又は標準値の表示桁に合わせてから認証値又は標準値との差を求めて比
較する。ただし,分析結果の報告桁が少なく,認証値又は標準値の表示桁に合わせることができない場合
は,認証値又は標準値及び許容差を分析結果の報告桁に丸めて比較する。
許容差を分析結果の報告桁に丸めるとゼロとなる場合は,その報告桁の位が1となる値を許容差とする。

9 化学分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ

  化学分析方法によって得た定量値(質量分率)は,8.2 a) に規定された認証標準物質を用いた真度を満
足していれば,適用した分析方法の国際単位系(SI)への計量計測トレーサビリティが得られている。

10 機器分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ

  機器分析方法によって得た定量値(質量分率)の計量計測トレーサビリティは化学分析方法で分析し,
併行して分析した認証標準物質又は実用標準物質の分析値によって精確さが確認された標準値をもつ試料
と冶金的履歴が同じ標準物質群によって作成された検量線を使って分析することで得られる。機器分析用
の認証標準物質又は実用標準物質は,分析試料と冶金的履歴が異なる場合があり,その影響で機器用認証
標準物質又は実用標準物質を用いて作成した検量線が精確でない可能性があるため,精確さが確認された
標準値をもつ試料と冶金的履歴が同じ標準物質(群)を用いて検量線の確認又は修正を行う必要がある。
検量線の精確さ確認の方法は,個別規格による。

11 再分析

  機器分析方法による分析値に疑義が生じた場合は,化学分析方法によって再分析することができる。

12 審判分析

  審判分析が必要となった場合は,化学分析方法で実施する。

13 安全衛生に関する注意

  原子吸光分析,ICP発光分光分析並びに炭素及び硫黄の定量における高圧ガスの取扱い,原子吸光分析
におけるフレームの点火・消火,蛍光X線分析におけるX線の被ばく,危険薬品(三酸化二ひ素,ふっ化
水素酸,有機溶媒など)の使用及び廃棄処理には十分に注意し,災害の防止及び環境の保全に努めなけれ
ばならない。
参考文献 JIS Z 8402-1 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第1部 : 一般的な原理及び定

JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第2部 : 標準測定方法の併行
精度及び再現精度を求めるための基本的方法
JIS Z 8402-3 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第3部 : 標準測定方法の中間
精度

JIS H 1270:2015の国際規格 ICS 分類一覧

JIS H 1270:2015の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISG0203:2009
鉄鋼用語(製品及び品質)
JISG1281:1977
ニッケルクロム鉄合金分析方法
JISH1272:1998
ニッケル及びニッケル合金中の銅定量方法
JISH1273:1998
ニッケル及びニッケル合金中の鉄定量方法
JISH1274:1998
ニッケル及びニッケル合金中のマンガン定量方法
JISH1275:1998
ニッケル及びニッケル合金中の炭素定量方法
JISH1276:1998
ニッケル及びニッケル合金中のけい素定量方法
JISH1277:1998
ニッケル及びニッケル合金中の硫黄定量方法
JISH1278:1998
ニッケル及びニッケル合金中のりん定量方法
JISH1279:1998
ニッケル合金中のクロム定量方法
JISH1280:1998
ニッケル合金中のモリブデン定量方法
JISH1281:1998
ニッケル合金中のバナジウム定量方法
JISH1282:1998
ニッケル合金中のタングステン定量方法
JISH1283:1999
ニッケル及びニッケル合金中のコバルト定量方法
JISH1284:1999
ニッケル合金中のアルミニウム定量方法
JISH1285:1999
ニッケル及びニッケル合金中のほう素定量方法
JISH1286:1999
ニッケル合金中のチタン定量方法
JISH1287:2015
ニッケル及びニッケル合金―蛍光X線分析方法
JISH1288:2015
ニッケル及びニッケル合金―スパーク放電発光分光分析方法
JISH1289:2015
ニッケル及びニッケル合金―ICP発光分光分析方法―ニオブ,タンタル及びジルコニウム定量方法
JISK0050:2019
化学分析方法通則
JISK0113:2005
電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則
JISK0115:2004
吸光光度分析通則
JISK0115:2020
吸光光度分析通則
JISK0116:2014
発光分光分析通則
JISK0119:2008
蛍光X線分析通則
JISK0121:2006
原子吸光分析通則
JISK0211:2013
分析化学用語(基礎部門)
JISQ0032:1998
化学分析における校正及び認証標準物質の使い方
JISR6001:1998
研削といし用研磨材の粒度
JISR6010:2000
研磨布紙用研磨材の粒度
JISZ8401:2019
数値の丸め方
JISZ8402-6:1999
測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第6部:精確さに関する値の実用的な使い方