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Z 0620 : 2018
附属書B
(参考)
危険源,危険状態及び対策に関する事項
設置,試運転,調整,運転,保守点検の作業区分において,代表的な危険状態及び対策に関連する事項
を表B.1に整理して示す。危険源の分類はJIS B 9700:2013の附属書Bによる。実際には設備の規模によっ
て危険源が異なるため,機械安全リスクアセスメントを実施して危険源を同定し,対策することが必要で
ある。
表B.1−移動ラックの危険源,危険状態及び対策に関連する事項
危険源の分類 危険状態 対策に関連する事項
機械的危険源 人と動作中の機械 通路内で,人が移動ラックに挟まれる。7.3 a)
との接触 7.5.5
7.3 e)
走行台車が走行中に人,フォークリフトト
ラックが通路に進入する。
機械同士の接触 7.5
走行台車が減速せず,隣の移動ラック又は
固定ラックに接触する。
機械と荷物との接 7.3 a)
荷物が通路に落下し,移動ラックと荷物と
触 が接触する。
停止機能の欠陥 7.3 d)
指定位置停止できず,予期せぬ接触など危
険状態になる。
機械の転倒 移動ラックが安定を失って転倒する。 5.2.1
墜落,つまずきなど 走行レールにつまずき転倒する。 7.4 c)
強度不足 ラックが破損,倒壊し人が下敷きになる。 5.2.1
電気的危険源 給電部に人が接触 駆動装置の給電部に触れて感電する。 JIS B 8943の11.1(給電装置)
し生じる危険 制御盤内給電部に触れて感電する。 JIS B 9960-1
器機能不良 電源断路器機能不良によって安全部位にJIS B 9960-32
通電され感電する。 JIS B 8943の11.4(電源断路器)
熱的危険源 過負荷によって駆 過熱した部位に触れてやけどする。 7.3 c)
動機能部の過熱 過熱源からの爆発,火災,放熱によってや
けどする。
放射による危 電磁放射 信号障害によって移動ラックの予期せぬ7.2 b)
険源 作動で人が挟まれる。
レーザ光線放射 人が直接光線を見て眼に障害を受ける。7.5.4
JIS B 8943の12.1(制御機器一
般)
人間工学原則 ヒューマンエラー, 11.2
作動している移動ラック内に手を入れ,駆
の無視による 人間挙動など 動装置に挟まれる。
危険源 7.5.6
通路確認を怠り移動ラックを作動,通路内
の人,フォークリフトトラックが挟まれ
る。
手動制御器の不適 7.5.6
手動操作器,その操作モードの不適切な設
切な設計,配慮又は計で人の危険性が高まる。
同定 不適切な動作速度によって人が危険にさ7.4 b)
らされる。
――――― [JIS Z 0620 pdf 26] ―――――
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Z 0620 : 2018
表B.1−移動ラックの危険源,危険状態及び対策に関連する事項(続き)
危険源の分類 危険状態 対策に関連する事項
機械が使用さ 不適切な設置場所 4.3
床レベルが悪く移動ラックが自走し,人が
れる環境に関 挟まれる。
連する危険源
危険源の組合 不適切な設備の運 9.2
据付け・試運転時の不適切な手段,又は情
せ 用 報によって人の危険性が高まる。
システム知識の未熟者の操作によって人7.3 b)
への危険性が高まる。
機能不良状態での運用によって人への危11.2
険性が高まる。
表B.2は表B.1の一部であり,幾つかの典型的な危険源の例を示す。それぞれの発生原因は,想定され
る重要な結果に関連する。結果の順番は,優先順位を示すものではない。
表B.2−典型的な危険源の例
作業 作業内容 危険部位 危険の内容
運搬 フォークリフトトラックでトラックにトラック周囲 荷積み中に機器が落下して押し潰される。
積み込む。
組立て フォークリフトトラックでトラックかトラック周囲 荷積み中に機器が落下して押し潰される。
及び設置 ら荷下ろしをする。
走行レール
アンカーボルト設置後,走行レールを設 走行レールにつまずき転倒する。
置する。
二次コンクリートを打つ。 走行レール 走行レールにつまずき転倒する。
走行台車
走行台車の設置後,ビーム,ターンバッ 走行台車につまずき転倒する。
クル,シャフトなどで走行台車を組み付
ける。
走行台車
走行台車上にラックを建てる。支柱枠, 走行台車につまずき転倒する。
ビームでつなぐ。 ラック 部材に挟まれる。
高所から人が落下する。
設定 検出器が正常に動作することを確認す走行台車 走行台車につまずき転倒する。
る。
モータの電流値計測 走行台車 モータによって感電する。
手動操作にて走行動作を確認する。 走行台車 予期しない方向に走行台車が動き衝突す
る。
点検箇所以外の駆動部に巻き込まれる。 走行装置 誤って手を入れ,巻き込まれる。
走行台車
通路内に人がいることを気付かず,移動 自動運転の走行台車に挟まれる。
ラックを自動起動させる。
部外者が台車間通路内に進入する。 走行台車 台車間通路内で接触する,又は衝突する。
台車間通路
運転 機械周辺の障害物の有無を確認する。台車間通路 走行レール,番地板などにつまずき,転倒
する。
台車間通路
外観目視(干渉・定位置・油漏れ有無な 走行レール,番地板などにつまずき,転倒
ど)確認する。 する。
ラック内の荷物の出し入れを行う。 ラック 棚から積み荷が崩れて人に当たる,下敷き
になる。
通路内に個体があるのに気付かず走行走行台車 人,物が移動ラックに挟まれる。
台車を作動させる。
――――― [JIS Z 0620 pdf 27] ―――――
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Z 0620 : 2018
表B.2−典型的な危険源の例(続き)
作業 作業内容 危険部位 危険の内容
運転 走行台車
走行台車の作動中に人,フォークリフト 移動ラックと衝突し,フォークリフトトラ
トラックが通路に進入する。 ックから人が落下,挟まれる。
ラック
規格外の荷姿,重量のものを棚に積載す ラックから積み荷が崩れて人に当たる,下
る。 敷きになる。
ケーブル
背面通り抜け仕様でないのに,フォーク ケーブルを引っ掛け切断し感電する。
リフトトラックで通り抜ける。
台車間通路
走行台車が減速せず,隣の移動ラック又 移動ラックの衝突によって荷物が落下し人
は固定ラックにぶつかる。 に当たる,下敷きになる。
台車間通路
収納物のある棚に格納しようとして,荷 ラック背面から落下した荷物が人に当た
物をラック背面に落とす。 る,下敷きになる。
清掃 機械周辺の障害物の有無を確認する。台車間通路 走行台車につまずき転倒する。
保全 (走行モータ,減速機) 走行台車 過熱したモータに触りやけどする。
きずの有無,異音発生の確認,ブレーキ 鋭利な個所(角)で手を切る。
作動確認,ブレーキギャップオイル漏れ
台車間通路 走行台車につまずき転倒する。
を確認する。
(車輪,シャフト,ベアリング) 走行台車 予期しない動作で,車輪,シャフトに手が
きずの有無,変形の有無,異音発生を確 巻き込まれる。
認する。 台車間通路 走行台車につまずき転倒する。
走行レール
(走行レール)きずの有無,変形・摩耗 点検時,鋭利な角で手を切る。
の有無を確認する。
台車間通路
(光通信確認)受光器・投光器が正常に 走行台車につまずき転倒する。
作用していることを確認する。
レーザ光線機器の異常有無を確認する。 台車間通路レーザ光を直接見て,眼をいためる。
台車間通路
(検出器確認)検出器が正常に作動する 走行台車につまずき転倒する。
ことを確認する。
盤内の電気部品を確認する。 制御盤 盤内充電部に触れて感電する。
走行台車 モータ端子に触れて感電する。
作動の正常性をリモコン操作で確認す走行台車 予期しない動作で移動ラックと接触し,転
る。 倒又は挟まれる。
台車間通路 走行台車につまずき転倒する。
モータの電流値を計測する。 台車間通路 給電部に触れ感電する。
通路内を掃き掃除する。 台車間通路 走行台車につまずき転倒する。
走行台車 制御装置の誤作動によって暴走した移動ラ
ックに接触し転倒する,又は挟まれる。
通路内の人に気付かず起動された移動ラッ
クに接触し転倒する,又は挟まれる。
端子台の緩みを確認する。 分電盤 作業本人以外の人が電源を入れ,作業本人
が感電する。
走行台車上に乗り走行動作を確認する。 走行台車 他の移動ラックと衝突し,人が落下又は挟
まれる。
給電装置を点検する,又は交換する。走行台車 作業本人以外の人が電源を入れ,作業本人
が感電する。
参考文献 JIS B 8943 立体自動倉庫システム−スタッカクレーン設計通則
JIS Z 0620:2018の国際規格 ICS 分類一覧
JIS Z 0620:2018の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA5540:2008
- 建築用ターンバックル
- JISB1180:2014
- 六角ボルト
- JISB1181:2014
- 六角ナット
- JISB1186:2013
- 摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット
- JISB1256:2008
- 平座金
- JISB7502:2016
- マイクロメータ
- JISB9700:2013
- 機械類の安全性―設計のための一般原則―リスクアセスメント及びリスク低減
- JISB9703:2019
- 機械類の安全性―非常停止機能―設計原則
- JISB9705-1:2019
- 機械類の安全性―制御システムの安全関連部―第1部:設計のための一般原則
- JISB9713-3:2004
- 機械類の安全性―機械類への常設接近手段―第3部:階段,段ばしご及び防護さく(柵)
- JISB9960-1:2019
- 機械類の安全性―機械の電気装置―第1部:一般要求事項
- JISB9960-32:2011
- 機械類の安全性―機械の電気装置―第32部:巻上機械に対する要求事項
- JISB9961:2008
- 機械類の安全性―安全関連の電気・電子・プログラマブル電子制御システムの機能安全
- JISC0508-1:2012
- 電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全―第1部:一般要求事項
- JISC0508-2:2014
- 電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全―第2部:電気・電子・プログラマブル電子安全関連系に対する要求事項
- JISC0508-3:2014
- 電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全―第3部:ソフトウェア要求事項
- JISC0508-4:2012
- 電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全―第4部:用語の定義及び略語
- JISC0508-5:2019
- 電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全―第5部:安全度水準決定方法の事例
- JISC0508-6:2019
- 電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全―第6部:第2部及び第3部の適用指針
- JISC0508-7:2017
- 電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全―第7部:技術及び手法の概観
- JISC6802:2014
- レーザ製品の安全基準
- JISG3101:2015
- 一般構造用圧延鋼材
- JISG3101:2020
- 一般構造用圧延鋼材
- JISG3113:2018
- 自動車構造用熱間圧延鋼板及び鋼帯
- JISG3131:2018
- 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯
- JISG3138:2005
- 建築構造用圧延棒鋼
- JISG3138:2021
- 建築構造用圧延棒鋼
- JISG3141:2017
- 冷間圧延鋼板及び鋼帯
- JISG3141:2021
- 冷間圧延鋼板及び鋼帯
- JISG3201:1988
- 炭素鋼鍛鋼品
- JISG3302:2019
- 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯
- JISG3350:2017
- 一般構造用軽量形鋼
- JISG3350:2021
- 一般構造用軽量形鋼
- JISG3352:2014
- デッキプレート
- JISG3353:2011
- 一般構造用溶接軽量H形鋼
- JISG3444:2015
- 一般構造用炭素鋼鋼管
- JISG3444:2021
- 一般構造用炭素鋼鋼管
- JISG3445:2016
- 機械構造用炭素鋼鋼管
- JISG3445:2021
- 機械構造用炭素鋼鋼管
- JISG3466:2015
- 一般構造用角形鋼管
- JISG3466:2021
- 一般構造用角形鋼管
- JISG4051:2016
- 機械構造用炭素鋼鋼材
- JISG5101:1991
- 炭素鋼鋳鋼品
- JISG5201:1991
- 溶接構造用遠心力鋳鋼管
- JISG5502:2001
- 球状黒鉛鋳鉄品
- JISH8610:1999
- 電気亜鉛めっき
- JISH8617:1999
- ニッケルめっき及びニッケル-クロムめっき
- JISZ0110:2018
- 産業用ラック用語
- JISZ1522:2009
- セロハン粘着テープ